この記事では、セメント瓦の基本情報、陶器瓦との違いについて解説します。
セメント瓦のリフォーム方法や次世代型セメント瓦についても紹介します。
目 次
閉じるセメント瓦とは
セメント瓦の特徴
セメント瓦は1970年代から1980年代に流行したセメント製の屋根瓦のことです。
セメント瓦は陶器瓦より価格が安く製造しやすいため、住宅不足が顕著だった高度経済成長期に広く普及しました。
伝統的な陶器瓦のフォルムに似せて製造した屋根なので、一般の人は陶器瓦と見分けにくいです。
しかし、実は簡単に見分けることができます。
セメント瓦と陶器瓦の比較
屋根材 | 価格 | 耐久性 | 重さ | 製造 | 色あせ |
---|---|---|---|---|---|
セメント瓦 | 安い | 30~40年 | 重い | 中止 | 色あせる |
陶器瓦 | 高い | 40~50年 | 重い | 製造中 | 色あせない |
耐久性と屋根の葺き替え適正時期
経年劣化が進んだセメント瓦は、瓦をはがして、屋根の防水シートであるルーフィングを貼り直す処置が望ましいです。
元のセメント瓦を使いまわす「葺き直し」も可能ですが、長期的な視点に基づくと、地震や強風に強い金属屋根で葺き替えることをおすすめします。
テイガクのお客様では、築後35年前後で葺き替え工事をされるお客様が多いです。
たしかし、35年経過していると、ルーフィング機能は低下しているだけではなく、自然災害の影響で瓦がずれていることが多いです。
陶器瓦とセメント瓦の見分け方
セメント瓦は色あせる
セメント瓦は、経年とともに色あせます。
しかし、陶器瓦はお茶碗と同じで、釉薬(うわぐすり)によって表面がガラスコーティングされているため、色あせしないです。
経年と共に屋根の色の変化でセメント瓦であるかどうかが区別できます。
【Youtube動画】セメント瓦の見分け方
セメント瓦の表面はザラザラ
セメント瓦と陶器瓦の側面を触れてみると、セメント瓦か陶器瓦か区別ができます。
セメント瓦はザラザラしています。
特に塗膜が剥がれているところは、セメント瓦の素地が現れ、触れるとジョリジョリする粗い素地です。
一方、陶器瓦はツルツルしています。
セメント瓦を裏返すと、塗装されていないことがあり、セメント特有のグレー色を確認することもできます。
スレートとセメント瓦の違い
戸建て住宅の屋根として広く普及しているスレート屋根の主成分はセメントです。
お馴染みのコロニアルやカラーベストもセメントでできてきます。
したがって、広義の意味でスレートの屋根はセメント系の屋根とも言えます。
本来のスレートは粘板岩を意味し、ヨーロッパでは粘板岩をスライスして屋根材として使用しています。
しかし、日本ではセメントを粘板岩の代替品として使用し、いつしか、セメントでできた薄い屋根をスレートとよぶに至っています。
学術的に明確な分類はなされていませんが、屋根の厚みが1cm未満をスレート、1cm以上あればセメント瓦と判別してよいでしょう。
テイガクのセメント瓦の定義
屋根材の厚さ | |
---|---|
10㎜未満のセメント系屋根 | スレート(コロニアルなど) |
10㎜以上のセメント系の瓦屋根 | セメント瓦 |
そして、最近では、特殊な樹脂を混入した「新しいセメント瓦」も登場しています。
商品名では「ルーガ」が有名です。
発売中止になったセメント瓦が再び注目されています。
セメント瓦のデメリット
セメント瓦は現在ではほとんど新規で製造されていません。
1970年代に製造されたセメント瓦は入手できないはずです。
なぜ陶器瓦は販売が継続し、セメント瓦は販売中止になったのでしょうか?
理由は陶器瓦に比べてデメリットが多かったからです。
ここでは、セメント瓦のデメリットについて説明します。
陶器瓦よりも寿命が短い
一般的にセメント瓦は陶器瓦よりも寿命が短いです。
セメントは陶器と異なり、水分を吸収することで機能が低下します。
セメント瓦の塗膜がはがれると、雨水を吸収しやすくなります。
色があせる/苔が生えやすい
セメント瓦は、セメントの上に塗料を塗って仕上げられています。
時間が経つと、セメント瓦は色があせてしまいます。
また、色があせたところはザラザラしているので、苔が生えやすくなります。
コストパフォーマンスが悪い
セメント瓦の屋根塗装費用は30~40万円程度かかり、それだけのお金があれば新築時、セメント瓦から色あせない陶器瓦に変更することができます。
コストパフォーマンスを考えると、メンテナンス費用がかかるセメント瓦を選択する理由はありません。
そのことに世の中の人が気づき、次第にセメント瓦のシェアが低下しました。
セメント瓦のリフォーム方法
劣化が進んだセメント瓦のリフォーム方法は、大きく3つの改修方法があります。
屋根の状態によって適切な対処法が異なります。
-
部分修理・差し替え
-
塗装
-
葺き替え
部分修理・差し替え
セメント瓦は現在、生産されていません。
同じ形のセメント瓦を入手することは難しいため、瓦を部分的に張り替えることはほぼできません。
そのため、強力な粘着テープやシーリングで接着補修する補修方法となります。
もし雨漏りが生じている場合は、セメント瓦を処分して新しい屋根に葺き替える処置が必要です。
セメント瓦の補修費用
工事内容 | 工事価格 |
---|---|
部分修理(接着補修) | 5万円前後(税込) |
セメント瓦の塗装
セメント瓦は色あせるため、塗装工事をおこなう人が多いです。
高圧洗浄機でセメント瓦にこびりついたコケなどの汚れを取り除き、高圧洗浄で取れない部分は職人さんが汚れを取り除きます。
その後、割れや欠けた部分を接着補修し、ずれている瓦は葺き直しします。
最後に、塗装を繰り返し(基本的に3度塗り)、キレイな状態に仕上げます。
セメント瓦の塗装費用
工事内容 | 工事価格 |
---|---|
屋根塗装(スリラー除去なし) | 30万円前後(税込) |
屋根塗装(スリラー除去あり) | 40万円前後(税込) |
モニエル瓦はスラリー層の除去が必要!
モニエル瓦(コンクリート瓦)に代表される一部のセメント系の瓦は、塗膜の部分にスラリー層とよばれるセメント成分の保護層があります。
スラリー層があるセメント瓦はスラリー層を除去する作業が必要(かなり大変です)となり、通常の屋根塗装と比べて費用がかかります。
セメント瓦を葺き替え
セメント瓦の建物は築後から相当数経過しているため、最近、セメント瓦の葺き替えを希望されるお客様が増えています。
セメント瓦は陶器瓦とほぼ同じ重さであるため、地震対策で葺き替えをされるお客様も多いです。
セメント瓦の葺き替えは、金属屋根による葺き替えが一般的な改修方法になっています。
ガルバリウム鋼板やエスジーエル鋼板などの、従来のトタンよりも耐久性に優れた屋根材で張り直す工事を行うことが多いです。
セメント瓦の葺き替え費用
工事内容 | 工事価格 |
---|---|
ガルバリウム鋼板(断熱材一体型) | 180万円前後(税込) |
エスジーエル鋼板(断熱材一体型) | 190万円前後(税込) |
次世代型セメント瓦
樹脂混入繊維補強軽量セメント瓦
ルーガは、セメント瓦に特殊樹脂と気泡を混入させた新しいタイプの屋根材です。
従来のセメント瓦を改良させた屋根材といえます。
ケイミュー株式会社とよばれる屋根材製造の最大手メーカーが製造しています。
塗膜はグラッサコートとよばれる無機塗料が採用され、ほぼ色あせすることはありません。
重さは陶器瓦の半分の重さで、耐久性が高い(割れにくい)特徴が評価されています。
販売から10年以上経過し、デザインの良さもあって人気が高まっているセメント瓦です。
セメント瓦に関するよくある質問
セメント瓦にアスベストが含まれているのか?
ほとんどのセメント瓦にはアスベストは含まれていません。
セメント瓦は1cm以上の厚みがあるため、屋根材の強度を高めるアスベストを含める必要がないからです。
セメントに砂利を加えたコンクリート瓦(モニエル瓦)は、アスベストが含まれていないことをメリットとして販促された屋根です。
セメント瓦を割って調べる方法
セメント瓦を割ってみると、アスベストが入っているかわかります。
アスベストは繊維質なので、屋根を割って断面を見ると細い糸のようなものが現れます。
細い糸がアスベストの繊維です。
アスベストが含まれている場合、アスベストが飛散する恐れがあるので注意をしてください。
モニエル瓦とは?
モニエル瓦とは、ヨーロッパから輸入された洋風瓦のことで、セメントに砂利を加えたコンクリートでできた屋根材です。
セメント瓦の一種になり、1990年代は、セメント瓦の代表的な商品として広く普及しました。
瓦屋さんの中には、セメント瓦のことをモニエル瓦とよぶ人がいるほどです。