遮熱塗料の効果はない?色の方が屋根の遮熱効果や屋根の表面温度に関わる

遮熱塗料とは?

一般的に遮熱塗料の定義は「JIS規格のK5675」とされています。
屋根用高日射反射率塗料」が遮熱塗料のことであり、日射反射率が高い塗料が当てはまります。

同じ屋根用塗料で同じ色でも、「一般タイプ」と「遮熱タイプ」2種類の塗料が塗料メーカーから販売されています。
「遮熱タイプ」には日射反射率を高める成分が含まれていると解釈してください。

屋根の夏の暑さを解消に効果があることは証明されています。
ただし、その効果は限定的です。

日射反射率が高い塗料

日射反射率は、日差しを反射することで熱の吸収を抑制させます。
遮熱塗料は日射反射率を高めてくれる特殊な効果があります。
その効果はメーカーのデータによって様々ですが、一般的な塗料(かつ同色塗料)に比べておよそ5%から40%程度、日射反射率を高めてくれます。
なお、日射反射率40%以上が遮熱効果があるとされ、東京都クールルーフ推進事業では日射反射率50%以上を高日射反射率塗料としています。
遮熱塗料を用いることで助成金がもらう条件も日射反射率50%が多いです。

色で変わる日射反射率

暗い色を明るい色に変えるだけで日射反射率は変化します。
むしろ、色の要因の方が大きいです。
日射反射率を高めた暗い色の遮熱塗料より、明るい色の一般塗料のほうが日射反射率が高い場合があります。
明るい色、すなわち白に近い色にするだけで、十分な遮熱効果が得られる場合があります。

遮熱塗料よりも色が重要

遮熱塗料の有無と色の違いによる遮熱効果を判定した文献を見つけました。

①屋根面への遮熱塗料の施工により、屋根表面の温度が低下し、連動して室内温度の低下に寄与する。
②同塗料の施工により実測された日射反射率は、必ずしもメーカー記載のカタログ値と同程度とは限らない。
③塗装の色による遮熱効果の差異は大きく、一般塗料であっても明度の高い白色系の塗料を用いることで相応の遮熱効果が期待できる。
④今回の実験の範囲では、断熱塗料と称される塗料の遮熱効果は全般的に低めであった。

出典: 屋根面の遮熱効果に関する検討

塗料会社による文献ではなく、ゼネコンのエビデンスです。
バイアスがない正確で信頼がおける文献だと筆者は評価しています。
遮熱塗料かどうかよりも、色にこだわった方が良いということです。

全日射反射率と近赤外日射反射率の違い

塗料メーカーの中には、日射反射率の基準として、全日射反射率と近赤外日射反射率の2つを並列表記しているメーカーがあります。
全日射反射率と近赤外日射反射率は、共に高いほど日差しを反射させる指標です。
高いほど遮熱効果を発揮してくれます。
ただし、全日射反射率の高さは”眩しさ”を含みます。
そのため、全日射反射率が高い塗料を用いると、近隣居住者様から眩しいといった苦情が出るおそれがあります。
建物が密集している地域の場合は、近赤外日射反射率の高い塗料を選びましょう。

外壁塗料では規格認証されていない

某大手塗料メーカーのカタログにある製品詳細をみると、屋根用の遮熱塗料の規格欄に「JISK5675」の文字列が記されています。
しかし、外壁塗料には「JIS規格」が記されていません
これは「JISK5675」が「屋根用」の規格だからです。
外壁塗料には「JIS規格」の認証を示すことができないです。
どの塗料メーカーも同じような表記をしています。
外壁における遮熱塗料の効果がエビデンスとして構築されていないからだと筆者は推測しています。

夏場における熱の流入は屋根から

夏場における熱の流入部位は以下の通りです。

流入部位 流入率
屋根 11%
外壁 7%
開口部(窓・ドア) 73%
出典:(一社)日本建材・住宅設備産業協会より

外壁からの熱の流入量は全体のわず7%です。
外壁に遮熱塗料を塗ることの必要性を考え直してしまう数字です。
面積が外壁の半分程度である屋根に遮熱塗料を塗布することのほうがメリットが大きいこともわかります。

断熱塗料の効果

世間では遮熱塗料の有用性が外壁塗料の分野でも大々的に宣伝されています。
さらに断熱塗料と称される塗膜が厚い塗料も販売されています。
もちろん、一定の効果は得られると思います。
しかし、効果は限定的であるのが筆者の意見です。

建築の学問でも、断熱効果はあるいは建材の厚み、あるいは断熱材の厚みに比例します。
建築物省エネ法による断熱等級の取り組みにより、現在は屋根や外壁に充てんする断熱材の厚みが定められています。
1cm単位で定められている断熱材の厚みと、0.1mmにも満たない塗膜の厚みを同じ文脈で語ることはできません。

屋根材メーカーと塗料メーカーが示す日射反射率

ケイミュー株式会社:コロニアルグラッサ

コロニアルを製造しているケイミュー株式会社は、塗膜の付加価値が高い「コロニアル遮熱グラッサ」とよばれる商品を供給しています。
一般塗料で製造された安価な「コロニアルクァッド」と比べて、高い遮熱性能が備わった「コロニアル遮熱グラッサ」は色ごとにの遮熱レベルを3段階にわけています。

遮熱レベル 表面温度(黒との差)
レベル1 レッドなど -5度
レベル2 シルバーなど -11度
レベル3 ホワイト -19度

エスケー化研:クールタイトシリーズ

戸建て住宅用塗料の最大手メーカーであるエスケー化研は、遮熱塗料として「クールタイト」とよばれる商品を供給しています。
各色事に日射反射率のデータを公開しています。
ホワイトを代表とするパステルカラーが高い日射反射率を示しています。
濃い色と明るい色では30%以上の日射反射率の差があります。

屋根の温度を下げるおすすめの色は?

グレーとシルバーがおすすめ

ほこりの付着による汚れが目立たないグレーは、テイガク一押しの屋根の色です。

工場などの大型倉庫の過半数が日射を反射するシルバーが選ばれます。

経年変化による効果低減

屋根は紫外線や雨風の影響が受けやすい部位です。
そのため、塗料が色あせるスピードが速いです。
つまり、遮熱塗料の遮熱効果が時間の経過と共に低減しやすいということです。
また、ホコリや苔の付着による遮熱効果の低減も予想されます。
同じ効果が長期にわたって維持させることは難しいです。

筆者の見解をもう少し踏み込みます。
いずれ遮熱塗料の遮熱効果を高める成分の効果は失われます。
一方、色あせは屋根の色が明るくなるので遮熱効果が高くなる可能性があります。
汚れが付くと断熱効果が高くなると、とらえられます。
以上のことから、遮熱塗料を使うメリットは一般の人が期待しているより高くはないというのが筆者の意見です。

まとめ

このページでは、屋根の色と遮熱塗料の効果について解説をしました。
遮熱塗料はその日射反射率の高さによって熱の吸収を抑制し、屋根の夏の暑さを軽減する効果が証明されています。
しかし、その効果はどの色を選択するのかによって大きく変わります。
そして、実際の効果は限定的です。
外壁も含め遮熱塗料の効果が世間では大きくアピールされています。
同じお金を使うのであれば窓対策にお金を使う方が効果があるかもしれません。
これから遮熱塗料を用いた工事をおこなう予定がある人は、色の選択と用いる場所の効果を理解したうえで、工事を検討してください。

この記事を書いた人
著者 前川 祐介
前川 祐介 代表取締役社長
テイガク サイト制作責任者
宅地建物取引士
建築物石綿含有建材調査者
著者経歴

大阪府堺市生まれ。千葉県立船橋東高校→法政大学→サノフィ(旧アベンティスファーマ)株式会社を経て、父親が経営する板金工事会社である昭和ルーフリモ株式会社へ入社。
中央工学校夜間建築学科卒業。年間100棟以上の屋根と外壁工事に携わった経験を活かし、テイガク記事の執筆とユーチューブ動画撮影をおこなっています。趣味は日本史学。

運営会社

昭和ルーフリモ株式会社は2001年設立の板金工事会社です。
これまでの金属屋根と金属サイディング工事件数の合計は20,000棟を超えます。
板金工事は足場を組み立てるため、外壁塗装の工事事業にも注力しています。

国土交通大臣許可(般-25)第22950号
許可を受けた建設業:板金工事業/屋根工事業/塗装工事業 他

代表前川が本音で解説「板金工事会社とは?」

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