屋根材にはたくさんの種類があり、それぞれ耐用年数が違います。それでは、屋根の寿命はどのぐらいなのでしょうか。また、メンテナンスのタイミングはいつがいいのか、気になっている方も多いかと思います。
そこで、今回は、屋根材としてよく使われる4種類の屋根材を取り上げて、リフォームやメンテナンスの時期についてお話ししていきます。それぞれの屋根材の詳細や特徴については、屋根の種類 各素材のメリットとデメリット【画像付】を見ていただけると、イメージが沸きやすいです。
コロニアル(化粧スレート・カラーベスト・軽量スレート瓦)の耐用年数

「コロニアル」はケイミュー株式会社から販売されている「化粧スレート」の商品名です。
(※ケイミュー…2003年に松下電工とクボタの外装事業部が統合して設立された会社)コロニアルは「化粧スレート」以外に、「カラーベスト」「軽量スレート瓦」などとも呼ばれることもありますが、今では「コロニアル」が化粧スレート自体を示す一般名詞化しています。

写真は、ケイミューのコロニアルクァッドという商品です。
「コロニアル」は新築の戸建て住宅を中心に採用されています。化粧スレート市場でケイミューは90%以上のシェアを獲得しており、「コロニアル」はその中の主力商品に当たります。
知らないうちに、町でコロニアルの屋根の住宅を目にしている方も多いかもしれません。
コロニアルのリフォームとメンテナンス時期
コロニアルの耐用年数は25~30年なので、各メーカーでは、30年を目安に、カバー工法、もしくは葺き替えの少し大規模なリフォーム工事の検討を勧めています。


一方で、屋根の状況をチェックして、屋根の塗装を行うメンテナンスは10年ごとの実施がベストです。
10年も経つと、屋根はどうしても色あせたり、汚れが目立ったりするものなので、屋根を塗装することで、きれいな外観を維持できます。
リフォームのポイント
化粧スレートの中には、通常の製品より耐久性能が低いものがある
通常の製品は30年ぐらいでのリフォームで十分ですが、中には耐久性能が低いものもあります。
アスベスト規制が始まった時期に販売された化粧スレートは耐久性が低く、ヒビや割れ、ズレなどの不具合が目立つ場合は、緊急のリフォーム工事が必要になります。
化粧スレートのグレードによって、耐用年数が異なる
化粧スレートにはいくつかのグレードがあり、そのグレードによって、耐用年数は異なります。
例えば、グラッサコート(特殊塗膜)を用いたコロニアルは、色感を長期間キープできるため、リフォームやメンテナンス時期が通常の製品とは異なります。
カバー工法が使えず、葺き替え工事が必要な場合がある

激しく劣化した状態の化粧スレートはカバー工法ができません。その場合は、葺き替え工事を行います。葺き替え工事は費用や工事日数がかさむので、できるだけ葺き替えまで必要でないタイミングで、カバー工法を実施するように検討しましょう。
アスベスト入りの化粧スレートは撤去や処分の費用が高額になる

上でお話ししましたアスベスト入りの化粧スレートは、適切な処理が必要になるため、撤去や処分の費用も通常より高額になってしまいます。
そのため、葺き替え工事ではなく、カバー工法によるリフォームをおススメしています。
和瓦(陶器瓦)の耐用年数
全国で最も使用されている屋根材の和瓦(陶器瓦)は耐用年数が長いのが特徴です。
しかし、最初の設置費用が高額になってしまい、また、重量(耐震性)の問題もあるので、和瓦を使った住宅は年々減少しています。
その一方で、洋風の住宅にも適合したデザイン(F型瓦)という瓦は、新築分野でデザイン性の高さと耐用年数の長さが好評で、今人気が出ています。

和瓦のメンテナンス時期

和瓦の耐用年数は60~100年と全ての屋根材で最も長く、色あせもないので、塗装の必要もありません。
また、和瓦は割れることがありますが、破損や飛び散った瓦を差し替えたり、葺き直したりすることで長期的に維持できます。

メンテナンスの時期については、台風や地震などの自然災害が起きた際に、瓦の破損やズレなどの状態確認を行うようにしてください。
瓦と瓦の隙間を埋める漆喰の剥がれが原因となって雨漏りが発生することもあるので、漆喰の塗り替えに合わせて、メンテナンス計画を立てることも大切です。
和瓦のリフォームのポイント
和瓦を新しく葺く場合や葺き直し、差し替えなどは和瓦工事会社(和瓦職人)に依頼する
和瓦工事、コロニアル工事、板金工事(金属屋根の工事)は、同じ屋根工事分野でもそれぞれ必要とする技術や職人が異なるので、本職である和瓦工事会社(和瓦職人)に依頼するのが一番です。
旧耐震基準で建築された和瓦の戸建て住宅は、葺き替え(屋根の軽量化)の際に自治体から補助金が支給される
各自治体によって、補助の条件や内容が異なるので、あらかじめお住まいの土地の役所の窓口に問い合わせたり、ホームページをチェックしたりするようにしてください。
和瓦の葺き替えリフォームの際には、軽量でメンテナンス性に優れた金属屋根を用いるのが一般的
耐震性のことを考えて、重い瓦をやめて、軽い屋根に変えたいというご相談は多いです。特に古い家では、瓦の重みで家の一部がゆがんだり、襖が開けにくくなったりということもよくあります。台風で瓦が飛んでしまい、近隣に被害を与えてしまうというケースも考えて、金属屋根にする方も多く、和瓦の葺き替えリフォームでは金属屋根への変更が一般的になっています。
和瓦は長寿命だが、建物の老朽化が進行している場合は、葺き替え工事の検討が必要
確かに、和瓦の寿命自体は長いのですが、建物の老朽化が進行している場合は、瓦の下の防水シートが破れていたり、瓦の隙間から水がしみ込んだりする可能性があります。建物の老朽化が進んでいる場合は、台風の後などに、一度点検をしてもらうといいでしょう。
トタン瓦棒屋根の耐用年数
「トタン瓦棒屋根」はトタンと垂木(たるき)で構成された金属屋根です
トタンはサビやすいなどデメリットが多いため、現在ではトタンの代わりにガルバリウムが用いられています。
ただし、「ガルバリウム瓦棒屋根」は歴史が短いため、瓦棒屋根自体を「トタン屋根」として示されることがしばしばあります。
瓦棒屋根は軽量で、初期費用が低額なので、多くの戸建て住宅で使用されています。他にも、低勾配の屋根や、屋根の上に室外機やバルコニーを設置する際にも、瓦棒は選ばれます。

トタン瓦棒屋根のリフォーム時期

トタン瓦棒屋根の耐用年数は15~20年です。(参考までですが、ガルバリウム瓦棒屋根の耐用年数は25~30年です。)
しかし、サビ止めを含めた塗り替えのメンテナンスを継続して行うことで、耐用年数の長期化が見込めます。
塗装は使用している塗料によって塗り替えのサイクルが異なり、塗料の中でも使用頻度が高いアクリル塗料では「5~8年」、ウレタン塗料では「8~12年」ごとに塗り替えが推奨されています。
トタン瓦棒屋根のリフォームのポイント
トタン瓦棒のリフォーム方法は原則、葺き替え

トタン屋根以外の金属屋根の場合、今の屋根を下地として、その上に瓦棒屋根を貼るリフォームの方法がありますが、トタン瓦棒屋根の場合、リフォームが必要な瓦棒のほとんどがすでに耐久性が損なわれていて、下地としての機能が期待できないので、葺き替えをおススメします。
トタン瓦棒屋根は一度サビが発生すると、急速にサビが広がる恐れがある
トタン瓦棒屋根は一度サビが発生してしまうと、急速に広がる恐れがあるので、定期的なメンテナンスが必要です。他にも、再塗装のメンテナンスも必要になってきます。
瓦棒屋根のリフォームやメンテナンスは
板金工事会社(金属屋根の工事会社)への依頼がベスト
屋根の工事会社は、金属屋根の工事会社、和瓦の工事会社、コロニアル(スレート瓦)の工事会社の大きく3つに分けられます。
昔から瓦棒屋根のリフォームやメンテナンスは、金属屋根の工事会社である板金工事会社が行っており、技術も経験も豊富です。
リフォームやメンテナンスについてご検討の方は、まず板金工事会社に相談してみるのをおススメします。


写真は、テイガク屋根修理のリフォーム工事の様子です。
トタン瓦棒屋根からガルバリウム瓦棒屋根へと葺き替えました。
成型ガルバリウム鋼板の耐用年数
成型ガルバリウム鋼板とは、あらかじめメーカーの工場で屋根瓦の形に加工されたガルバリウム鋼板製の金属屋根で、アイジー工業「スーパーガルテクト」やニチハ「横暖ルーフα」ケイミュー「スマートメタル」などが有名です。
価格も手ごろで、施工性やメンテナンス性、耐久性の優れているため、現在、屋根のリフォームで最も多く使用されているのが成型ガルバリウム鋼板です。実際、テイガク屋根修理の屋根工事でも、80%以上が成型ガルバリウム鋼板によるリフォーム工事です。

成型ガルバリウム鋼板屋根のリフォーム時期について

成型ガルバリウム鋼板は25~30年を目安に、塗装か葺き替え工事の検討がメーカーより推奨されています。
しかし、平成17年に金属屋根専門の工事会社として創業し、それ以前にも成型ガルバリウム鋼板屋根による施工を行ってきた実績がある私どもテイガク屋根修理は、今まで一度も葺き替えを要する成型ガルバリウム鋼板に遭遇したことがありません。
現場感覚では、成型ガルバリウム鋼板は30~40年の耐用年数があると認識しており、メンテナンスについては、10年か15年ごとの実施が望まれます。
ガルバリウムはトタンと比較すると、遥かに耐久性能に優れていますが、サビや色褪せには注意が必要です。
保証期間からみた成型ガルバリウム鋼板
メーカーから推奨されているコロニアルと成型ガルバリウム鋼板のリフォーム時期は同じです。
下記に使用頻度が高いコロニアルの「コロニアルクアッド」と成型ガルバリウム鋼板の「スーパーガルテクト」を比較します。


コロニアルクアッド | スーパーガルテクト |
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リフォーム時期は30年を目安に検討する | リフォーム時期は30年を目安に検討する |
しかしその一方で、各製品のメーカー保証期間と内容は全く異なります。
コロニアルクアッドのメーカー保証 | スーパーガルテクトのメーカー保証 |
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色褪せ 2年(新築のみ) | 色褪せ 15年 |
雨漏り 10年(新築のみ) | 赤さび15年 穴あき25年 |

保証期間に大きな差があるだけではなく、コロニアルで製品保証が認められるのは新築物件だけで、リフォームで使用する際には製品保証が認められていません。
このことからも、リフォーム工事では成型ガルバリウム鋼板の耐久性が優れていると言えるでしょう。
また、販売から約30年が経過し、評価も確立しています。
成型ガルバリウム鋼板のリフォームのポイント
成型ガルリウム鋼板にはグレードがある
例えば、天然石を屋根表面に付着させた製品は、塗り替えの必要がないとされています。塗膜を2層から3層にし、フッ素塗料でコーティングした高品質の製品も販売されており、製品によって、リフォームの時期は様々です。
成型ガルバリウム鋼板のリフォームやメンテナンスは、
板金工事会社(金属屋根の工事会社)にご相談を

成型ガルバリウム鋼板のリフォームやメンテナンスの時期は製品によって異なるため、工事の内容やスケジュール、金額について知りたいとお考えでしたら、現場経験の豊富な板金工事会社(金属屋根の工事会社)に相談するようにしてください。
見落とされがちな屋根本体以外の耐用年数
実は、屋根のリフォームやメンテナンス時期を判断する際には、屋根本体だけではなく、板金部位や下地部位の耐用年数も考えて、判断しなければいけません。
どうしてかと言うと、雨漏りは屋根本体の劣化ではなく、板金部位と下地部位の劣化や施工不良で引き起こされることが多いからです。下に屋根の雨漏り部位のランキングを載せておきます。

こちらでは、雨漏り箇所として、上位に上がってくる板金部位と下地部位についてもお話をしていきます。
板金部位の耐用年数
建築物の排水箇所には、雨が内側に入らないように、金属製の雨仕舞板金が用いられます。屋根でも雨水が集中する部位に板金が取り付けられています。
「谷樋板金」「棟板金」「雨押え板金」「軒先・ケラバ板金」などの板金の種類がありますが、現在、これらの板金はガルバリウムが使われています。
しかし、現存する戸建て住宅で用いられている板金の多くはトタンが使われています。
トタンの耐用年数は15~20年であり、板金部位の耐用年数のほうが屋根本体より短いという問題があります。
実際に屋根の修理の理由として多い、雨漏りの80%以上は「谷樋板金」や「雨押え板金」などの板金部位から発生したものです。(弊社調べ)


「棟板金」はサビで穴が空いたり、釘の保持力が低下したりすることで、風災による飛散リスクもあります。
このように、屋根本体だけではなく、板金部位の定期的なメンテナンス計画も重要になります。

尚、屋根全体を成型ガルバリウム鋼板にし、板金部位もガルバリウム製にすると、屋根の素材が同じになるので、屋根本体と板金部位の寿命のギャップの問題が解消され、メンテナンスのスケジュールが組み立てやすくなります。これが、成型ガルバリウム鋼板でリフォームを実施するメリットの1つです。
下地部位の耐用年数
屋根本体の下側には「下葺き材」と「野地板」が敷かれていますが、このふたつの部位の耐用年数は見過ごされているのが実情です。このふたつの部位は屋根材と同様に注意を払う必要があります。
下葺き材とは雨水の浸水を防ぐシートのことで、新築でも現存する住宅でもよく使われているのは、最低限の品質を満たす「アスファルトルーフィング940」がよく使われています。
製造会社の資料によると、「アスファルトルーフィング」で耐用年数は約10年で、施工後8年で品質が大幅に低下します。
耐用年数が10年である下葺き材を使用する理由は単純で、新築住宅を供給する事業者は住宅の引渡しから10年の瑕疵(構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の欠陥に対する)保証責任が義務づけられているからです。
建築会社の立場では、建築後10年の間に雨漏りが発生しなければ良いので、建築会社は「目に見えない」下葺き材は安い製品を積極的に使用することがよくあります。
野地板とは屋根の下に敷く下地材のことです。
40年ほど前の昔の戸建て住宅では、バラ板と呼ばれる幅の狭い板(主に杉)が用いられていました。
現在は施工性が良く、強度の高い構造用合板(コンパネ)を野地板として使用します。

構造用合板の耐用年数は約20年ですが、使用する屋根材や屋根を葺く工法によって耐用年数が変わります。
例えば、屋根材と下地材の間に断熱材や空気層がない瓦棒は野地板へのダメージが受けやすく、他の屋根材より野地板の耐用年数が短い傾向があります。
最後に

今回は屋根のリフォーム時期やメンテナンス時期についてお話をしました。
年数などの数字はあくまでも目安になります。建築後40年近く経過しても屋根として十分に機能している化粧スレートもたくさんあれば、10年も経たずにボロボロになってしまう化粧スレートもあります。
また、同じ屋根材でもグレードの違いや気候など環境の違いもあり、ここではリフォーム時期やメンテナンス時期を明確に示すことは簡単ではありません。
できるだけ建築後10年目、20年目などの節目に、専門業者へ調査と診断の依頼をおススメします。
その際、屋根本体に合わせて、板金や下地の状態確認も行っていただくと、将来的に雨漏りや建物の腐食などのリスクを抑えれます。