軒天の雨漏り原因と張替えの修理方法と塗装費用について

軒天(のきてん)のリフォーム方法と費用について解説します。
軒天は軒天ボード、軒天井(のきてんじょう)や軒裏(のきうら)、軒先(のきさき)などと呼ばれています。
軒点は色褪せや汚れが目立ちやすい部位です。
表面がけばたつことで大きく建物の外観が損われたり、台風の影響で剥がれるなどの不具合も生じます。
また、軒天のリフォーム工事は屋根本体の工事と合わせて行いましょう。
「買い物するついでに郵便局に行く」「洗濯するついでにお風呂を掃除する」など、「ついでに」何かをすることはとても効率的です。

軒天とは

軒天とは軒先の裏側にある天井を示します。
軒天ボードと呼ばれる板を張りつけたり、外壁左官材(塗り壁材)を塗って外壁と一体化させたりします。
古い建築物では、軒裏を露出したままの建築物が多いです。
寺社仏閣などの歴史的建築物も軒裏にボードは張られていません。
しかし、雨ざらしは建物とって良くありません。
軒裏を軒天ボードなどで仕上げることは、住まいを長期的に守るための重要な役割を果たします。
近年、軒先のない家(軒ゼロ住宅)が増加傾向にあります。
施主側のデザインの好みもありますが、多くの場合は設計会社や建築会社の工事費用削減が背景としてあげられます。
軒先を長く設けて軒天ボードを張ると、当然、屋根と軒天の面積が増えます。
例えば、軒先の長さを600mm確保すると、屋根工事費が軒先がない住宅に比べて1.2倍~1.3倍ほど高まります。

軒天重ね張りリフォーム

軒天の材質と種類

軒天のタイプはふたつに分類されます。
「ボード」と「外壁一体型」です。
外壁がサイディング張りの場合は「軒天ボード」が使われます。
モルタルなどの塗り壁の場合は外壁材と同じ素材で仕上げられる「外壁一体型」になることが多いです。
「外壁一体型」は外壁材と同じリフォーム方法になります。
以下では軒天ボードの種類について説明します。

2-1.カラーベニヤ(ベニヤ板)

カラーベニヤは築30年を超える住宅の軒天で多く使用されています。
新築工事では使用することが少なくなっています。
ただし、施工面や費用面で大変優れており、リフォーム工事ではよく使用します。
テイガク屋根修理でも軒天のリフォームでカラーベニヤをよく使用します。

カラーベニヤ軒天

2-2.ケイカル板(けい酸カルシウム板)

ケイカル板は最も主流である軒天材です。
カラーべニアに比べるとケイカル板の価格は若干高めです。
ケイカル板は耐久性や耐火性、耐水性に優れています。
防火性能の基準をクリアした製品(軒裏30分準耐火構造適合品)が多いため、法律による制限を気にすることなく使用できます。
その上、デザインや色も豊富です。
和風住宅に適した木目調の軒天ボードもあります。
通気性を確保した有孔ボードもあります。
グレードや厚みにより商品価格が異なるため、幅があります。
ケイカル素材ではないですが、ダイケン工業のダイライトなども良く使用されています。
なお、石膏(せっこう)ボードは内装材であるため、屋外の軒天ボードとしては用いることができません。

軒天ボードのメーカー

2-3.金属(スパンドレル)

金属製の軒天にスパンドレルと呼ばれる仕上げ材があります。
スパンドレルは軒天だけでなく、外壁にも使用されています。
ビルやマンションなどの比較的大きな建築物の軒天仕上げ材として用いられています。
主な原料はガルバリウム鋼板です。

防火有効ボード

軒天ボードなどで軒裏を仕上げるメリット

3-1.屋根裏の延焼を防ぐ

火災が発生した場合、軒裏に火が襲いかかります。
軒天ボードがあると、火災時の延焼拡大を防いでくれます。
もしろん、軒裏には一定基準以上の防火性能が求められます。
準防火地域の木造2階建てでは、軒天には耐火時間30分以上の防火性能を要します。

3-2.軒裏を隠す

軒天がない場合、野地板や垂木、桁(けた)、母屋(もや)などが露出した状態になります。
下地材や構造材が露出した状態は決して良いことではありません。
意匠を整えるための役割もあります。

3-3.屋根裏換気ができる

軒天に有孔板を使用したり、軒裏換気口を設置する事で、屋根裏の内部結露を防止できます。

有効ボードについて

ケイカル板の軒天には、表面に穴がたくさん付いた有孔タイプの商品があります。
屋根裏に溜まった熱気や湿気を外部に排出するために作られています。
なお、屋根裏換気は建築基準法には規定されていませんが、フラット35の住宅ローンや、住宅性能表示制度を利用する場合に規定されています。

穴の大きさは、定められた計算方法で面積を求める必要があります。
具体例:軒裏に換気口を設ける場合、換気口の面積は天井面積の1/250以上とする。等

有孔ボードには、板の一部にだけ穴が空いているタイプと全面に穴が空いているタイプがあります。
一部に穴が空いているタイプは防火有孔板と呼び、通気だけでなく、防火の役割も果たします。
防火有孔板の使用の有無は火災保険料の金額設定に関わることがあります。

全面に穴が空いているタイプは全面有孔板と呼び、準耐火構造の住宅には使用できません。

「ケイカル板」=「防火性能が備わった板」ではありません。
ケイカル板もお客様のお住まいの地域特性によって、使用できないボードがあるので注意が必要です。

軒天換気

軒裏を仕上げるデメリット

4-1.汚れが目立つ期的なメンテナンスが必要

軒天は雨や風、つららなどの影響を受け、汚れたり、剥がれたりします。
つばめなどが巣を作ることもあります。
軒天ボードは白やクリーム色で仕上げられていることが多いです。
汚れが目立ちます。
定期的なメンテナンスが必要になります。

露出した軒天

軒先を出すメリットとデメリット

5-1.軒ゼロ住宅について

軒裏を仕上げるメリットとデメリットについて解説しました。
軒裏は軒天ボードや左官材料で保護するメリットが高いです。
必ず仕上材を用いてください。
その一方、軒先自体がない住宅(軒ゼロ住宅)が増えています。
もちろん軒先が出ていないため、軒天がありません。
軒先があるかないか、軒の出が短いか長いかでもメリットとデメリットがあります。

5-2.軒の出があるメリット・デメリット

軒の出があることは「雨漏り防止」「日差しの調整と保護」「急な雨の雨除け」「外壁や室外機の耐用年数が高まる」「雨だれ防止」などのメリットがあげられます。
一方、軒の出があることで「屋根の面積や軒天の改修が必要となりメンテナンスコストが増大」「建物と敷地境界線との距離が短くなり、建築基準法の取り扱い基準に違反」「スッキリとしたデザイン」などがあげられます。
軒ゼロ住宅の危険性について詳しくはこちら
デメリットもありますが、軒先があることは雨漏りのリスクを低減し、長ければ長いほど優れた住宅と言えます。

軒天のメンテナンス

軒天の雨染みと雨漏り

6-1.軒天は雨漏り発見機

水は低い方向に集中するため、雨は軒先部分に比較的多く漏れます。
軒先部分の雨漏りは、軒天に雨染みとして残ります。
雨漏りは発見するタイミングにより、将来の修繕方法や費用が大きく変わります。
もちろん、雨漏りを早期に発見し対処することは、被害の拡大や、将来の修繕費用を抑えることにつながります。
是非、定期的に軒先を見上げて、軒天に雨染みがないかチェックしてください。
尚、雨染みは雨漏りではなく、結露による染みの可能性もあります。
目視だけで判別するのが困難な場合、プロの屋根工事専門家に相談してください。

雨漏りによる軒天のシミ

6-2.軒天と外壁の取り合部は雨漏りの原因になりやすい

軒天と外壁の取り合い部は構造上、雨仕舞の弱点になります。
この取り合い部から雨が漏れることがしばしばあります。
主な原因は、暴風雨時の下から吹きあがる雨水の侵入です。

軒天と外壁の取り合い部の雨漏りの多くは、浸水する箇所と排水する箇所が異なります。
例えば、サッシまわりの防水処理を十分に施したにも関わらず、サッシから雨漏りが改善しない場合、私たちは軒天の取り合い部からの雨水の侵入を疑います。
実際に、軒天と外壁の取り合い部に防水処理を施すことで、ピタリとサッシまわりの雨漏りが改善します。
防水処理はコーキングによる処理が多いです。
しかし、コーキング処理の場合、施工後数年でコーキングが剥がれて再び、雨漏りを発生させてしまうの注意が必要です。

この取り合い部の対策で最も効果的な方法は、軒天と外壁の取り合い部に雨仕舞板金やを取り付けることです。
費用がかかりますが、根本的な解決につながります。
新築住宅では軒天の張り付け張りつけは大工さんが行います。
しかし、雨仕舞を目的とした改修工事の観点からは板金職人(金属屋根職人)による作業が最も信頼できます。
テイガク屋根修理の板金職人(金属屋根職人)は、金属屋根工事だけではなく軒天の張り替えや雨仕舞処理も得意としています。

軒天と外壁の取り合い部

6-3.軒樋のオーバーフローによる軒天の腐朽

台風などの豪雨時、雨水が軒樋(のきどい)の排水能力を上回り、樋から溢れ出ることがあります。
樋(とい)や集水器にゴミなどが詰まっている場合も同様です。
溢れだした雨水は軒天を腐朽させたり、雨漏りを引き起こします。
雨天時には、樋がしっかり機能しているのか定期的にチェックする必要があります。

樋のオーバーフローによる雨漏り

軒天のリフォーム方法

7-1.軒天の重ね張り(カバー工法)

既存の軒天が下地として機能できる場合、補強を行った上、新しい軒天ボードを重ね張ります。
重ね張りは工期が短く、工事費用もお手頃です。

7-2.軒天の張り替え

既存の軒天が著しく劣化している場合は、既存の軒天を撤去し張り替えます。
この場合、撤去の手間と廃材の処分費用が発生します。
また、軒天にアスベストが含有している場合、撤去や処分の費用が多額になります。
アスベスト含有の有無の調査は、行政が無料で行っています。
ご不安がある方は各自治体の窓口にご相談ください。
なお、軒天の場合、結露や雨漏りが集中する一部分だけが著しく劣化していることがあります。
この場合、弊社では重ね張りと張り替えを組み合わせて、適宜適切なリフォームの対処をしています。

7-3.軒天の塗装

軒天ボードが比較的良好な場合、塗装によるメンテナンスを行います。
軒天が乾燥した状態で清浄し、下塗りと上塗りの2回塗りをします。
新築時は主にエマルション塗料(EP塗料)を使用します。
最近のリフォームでは主に非水エマルション塗料(NAD塗料)を使用します。
非水エマルション塗料はエマルション塗料に比べて、付着性や耐水性が高い上、臭気が少ない等のメリットがあります。
軒天の色で暗い色や主張する色を用いると、建物全体が圧迫感のある印象になります。
しかし、純白では汚れが目立ちます。
そのため、グレーがかった白やクリーム色を選択するようにしましょう。

屋根工事と軒天工事

軒天のリフォーム費用

テイガク屋根修理による軒天の修理費用のご案内です。
記載のある工事内容は一部になります。
補修や軒天換気材が付いている場合は別途費用が発生します。
提示している工事金額は屋根本体工事(葺き替え・カバー工法)と合わせて行うことを前提にしています。
また、軒天の改修工事をする職人は屋根職人が行います。
軒天に関わる工事も経験が豊富ですので、工事品質はご安心ください。

工事内容工事費用(税抜)
※1カラー合板(白) 重ね張り5,000/m
※1塗装品ケイカル板 重ね張り6,000/m
※2ケイカル板 張り替え
(既存撤去・処分含)
8,000/m
無塗装ケイカル板の塗装(1回塗り)1,000/m
既存軒天のNAD塗装(2回塗り)1,300/m

※1.下地の劣化が著しく腐食していない場合に限ります。
※2.お住まいの既存軒天の厚みにより、使用するケイカル板の価格が異なる場合があります。
その他
軒天のみの一部補修や全面改修も承っております。
状況によっては足場を必要としない場合もあります。
工事費用・お見積もりに関しては、別途、お問い合わせください。

軒天先行か外壁先行か

軒天と外壁との取り合いで、軒天と外壁どちらを先行して施工するかが良く問われます。
外壁を先行する方が絶対に良いです。
外壁を軒桁(のきげた)近くまでたっぷりと張り、その上に軒天を張る流れが正しいです。
軒天と外壁の取り合い部から雨が浸入した場合、建物内部にまで雨水が浸水するリスクが低減します。
しかし、軒天と外壁は軒天ボードを張られてしまうと見えなくなる部分です。
外壁資材のコストカットや、工程上の理由で屋根と軒天を先に仕上げたがる工事会社や大工さんが多いです。
軒天と外壁の大規模改修を行う際は外壁先行で張り替えることをお勧めします。

テイガク屋根修理の軒天補修の実例

弊社が手がけた軒天工事について解説いたします。

軒天の劣化

10-1.既存の軒天

反りや雨染み、塗装剥離など、かなり劣化が進行しています。
この状態では、既存の軒天ボードを下地として利用ないので、重ね張り(カバー工法)はできません。
リフォームの方法は張り替えになります。

軒天張り替え

10-2.軒天の張り替え

軒天を張り替えました。
軒天の両端に取り付いている棒は野縁と呼ばれるものです。
通常、野縁は軒天の裏側に取り付けるものですが、建築後数十年が経過した住宅では綺麗に軒天ボードを張れません。
多くの場合、壁際や破風板と軒天との間に隙間ができます。
見切り材として、野縁を外側に付け隙間を隠します。

軒天のリフォーム

10-3.軒天の塗装

仕上げに塗装を行い、シーリング処理をして完成です。
今回の工事は野縁を見切り材として使用する必要があったため、無塗装のケイカル板を使用しました。
もちろん、あらかじめエマルション塗装の仕上げがされたケイカル板もあります。
現場の状況に応じて、適宜、使用材料を使い分けます。
綺麗になりました。今回は全空きタイプの有功ボードを使用しました。
軒裏の換気もよくなり、結露防止効果や断熱性能が高まります。

軒天リフォーム完成

まとめ

・軒天は建物の保護において重要な役割をはたしています。
・軒天と外壁との取り合い部は雨漏りが発生しやすいです。
・軒天は外壁先行で張りつけてください。
・軒天の修理は屋根や外壁工事と合わせて行ってください。
・軒天のリフォーム方法は「重ね張り」「張り替え」「塗装」の3つあります。

この記事を書いた人
著者 前川 祐介
前川 祐介 代表取締役社長
テイガク サイト制作責任者
宅地建物取引士
建築物石綿含有建材調査者
著者経歴

大阪府堺市生まれ。千葉県立船橋東高校→法政大学→サノフィ(旧アベンティスファーマ)株式会社を経て、父親が経営する板金工事会社である昭和ルーフリモ株式会社へ入社。
中央工学校夜間建築学科卒業。年間100棟以上の屋根と外壁工事に携わった経験を活かし、テイガク記事の執筆とユーチューブ動画撮影をおこなっています。趣味は日本史学。

運営会社

昭和ルーフリモ株式会社は2001年設立の板金工事会社です。
これまでの金属屋根と金属サイディング工事件数の合計は20,000棟を超えます。
板金工事は足場を組み立てるため、外壁塗装の工事事業にも注力しています。

国土交通大臣許可(般-25)第22950号
許可を受けた建設業:板金工事業/屋根工事業/塗装工事業 他

代表前川が本音で解説「板金工事会社とは?」

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