木造住宅では木がたくさんつかわれています。
木は水に弱く乾燥が十分でない場合、腐食します。
放置をしておくと建物の構造だけでなく、人体にも悪影響を及ぼす可能性があります。
資産価値はゼロではなくマイナスになることもあります。
このページでは雨漏りを放置しておくと生じるリスクについて解説します。
屋根からの雨漏りを放置して起こるリスクとは?
屋根の強度低下
雨漏りを放置すると、屋根の強度が弱まるリスクが出てきます。
屋根の内部となる“小屋組み”は、「垂木(たるき)」や「母屋(もや)」「桁(けた)」など、いくつかの木材が組み合わさる形で構成されています。
その中でも重要なのが、屋根材を構造的に支える「野地板(のじいた)」です。
野地板とは厚さ9㎜~12㎜の木の板です。
野地板のうえに雨水の浸透を防ぐ「防水シート」が張られ、その上に仕上げになる「屋根材」が張られています。
室内側の天井でシミが見られるということは、防水シートの機能が失われて野地板にまで水が浸み込んでいる状況です。
水分を含んだ野地板は腐ってしまい、屋根材を支える力がグンと弱まります。
その結果、屋根が「飛ばされる」「めくれる」「浮く」といった不具合が起こりやすくなります。
テレビで見る大型台風の影響で屋根が吹き飛ばされる光景の多くは野地板の劣化が原因です。
野地板保護のために屋根からの雨漏りは絶対に放置せず、すぐに直さなければなりません。
火災に繋がる漏電が起こる
屋根裏には電気コードが配線されていますが、雨漏りで水が屋根裏の配線付近に侵入することによる漏電で電気が止まることがあります。
屋根裏の配線は木材の周りにあるため、電気系統のショートにより発火が起こると、大変危険です。基本的に目にすることがないため、ふだんは屋根裏の電気配線と火災のリスクを結びつけて考えないかもしれませんが、雨漏りで湿気が起こることで、火災のリスクが高まるでしょう。
カビによる健康被害
雨漏り放置でカビ発生
木材に雨が浸みることで湿気が強まり、カビが発生します。
カビが発生した空間の空気を吸い込むことで起こるアレルギー反応に気をつけなければなりません。
免疫力の高い大人はそれほど影響がなくても、子供や高齢者、持病を持っている人、体の弱い人などは、カビにより体調不良が起こりやすくなります。
咳や喉の違和感、頭痛などの症状が見られますが、ひどくなるとヒューヒューと息苦しくなるような喘息や肺炎も引きおこす可能性があります。
体力のない子供や高齢者にとっては、軽視できない体調悪化にまで発展するかもしれないので注意しなければなりません。
シロアリやダニが増殖
シロアリにも注意が必要です。
シロアリは「湿気が強い木材」が大好物。
雨漏りで木材が濡れることは、シロアリにとってのエサを増やし、快適な居住空間を作り上げていることに繋がっています。
シロアリが木材を食べると、食べた部分はスカスカ空間となり、木材の強度が失われます。
シロアリは床下だけではなく屋根裏にも発生します。
雨漏りで湿気が増えると、カビやダニ、シロアリが好む環境になります。
雨漏り放置を先延ばしする費用負担
屋根から雨漏りが起こっている状況を放置しても、自然に症状が改善することはありません。
何かしらの対策をしなければ、雨漏りの状況がひどくなるいっぽうです。
初期症状の頃に対応せずに、先延ばしにすると費用負担はどんどん膨らみます。
つまり、雨漏りを放置する時間が長いほど、費用負担が増えるのです。
雨漏りの原因としては、「屋根材がずれている」「屋根が浮いている」「屋根や外壁にひび割れが起こっている」などさまざまです。
初期のうちであれば、補修工事だけで済みます。
それほど費用はかからないでしょう。
しかし、雨漏りを放置したまま長い時間が経過すると、雨漏りの規模も大きくなります。
部分的な補修では済まずに、屋根なら葺き替え(ふきかえ)など、大掛かりな工事が必要になります。
葺き替えの場合、古い屋根を全てはがす作業となるため、工事期間も長くなります。
お金の面でも、工期の面でも、初期症状のときに何とか対処しておけばよかったと後悔することになります。
屋根工事負担の目安(80㎡の屋根の場合)
工事内容 | 費用目安 |
---|---|
部分修理 | 20万円 |
屋根カバー工法 | 100万円 |
屋根葺き替え(アスベストなし) | 150万円 |
屋根葺き替え(アスベストあり) | 180万円 |
屋根葺き替え(垂木補強あり) | 220万円 |
資産価値はどうなる?
ホームインスペクションの義務化
2018年4月より中古住宅を売却する時、ホームインスペクション有無の報告が義務化されました。
ホームインスペクションとは住宅診断のことで、住宅の劣化状況や欠陥を第三者の住宅診断士が調査する業務のことです。
雨漏りは代表的なホームインスペクションの業務です。
天井にシミがあると、築浅の建物であっても建物の価値はゼロどころかマイナスの査定になるかもしれません。
買い手は購入後に修繕費用を負担しないといけません。
部分修理で納まらない場合は建て替えになるため、解体費用を負担することになります。
雨漏りを隠しきることはできない
家の売買においては、「建物に起こっている不具合」となる“瑕疵(かし)”を買主に伝える義務があります。
「分からずに売るならいいのでは?」と思うかもしれませんが、売主が気づいていない不具合でも後から責任を問われます。
売却後にその事実が発覚すると、買主側は「知っていたら買わなかった」と損害賠償を請求することもできます。
加えて契約不適合による取引解除の対象になってしまいます。
まとめ
雨漏りを放置する期間が長いほど、家の価値はどんどん下がってしまいます。
そればかりか、修繕費用も高くつき、マイナスの資産となるかもしれません。
苦労して建てた大切なマイホームです。
資産価値を下げないためにも、雨漏りが発生したら、すぐになんらかの対処をしてください。