屋根の形 切妻と片流れ 寄棟どれがいい? メリットとデメリット

見落とされることが多い屋根の形

シンプルな切妻屋根

今回は屋根の形について考察します。
屋根の形は住宅構造の中でも、見落とされることが多いです。
しかし、屋根の形ひとつで住み心地、将来発生するメンテナンス費用がまったく異なります。
屋根の美観やオリジナリティを追求することは危険です。
私たちは「シンプルな屋根=優秀な屋根」であると考えています。

代表的な4つの屋根

上の画像は代表的な4つの屋根です。
左から「切妻-キリヅマ」・「片流れ」・「寄棟」・「方形(ホウギョウ)」屋根です。

これから住宅の購入 建築をご検討されている読者の方へ

戸建て住宅の購入や建築設計時に屋根の形に着目することはとても大切です。
できる限り、シンプルで無駄のない屋根の形をテイガク屋根修理はおすすめします。
屋根の形だけではなく軒先の長さや屋根の勾配(角度)も、雨漏りリスクや将来発生するリフォーム費用に大きく関わります。
以下はよくある残念な事例です。

中古戸建て住宅(中古の投資用賃貸物件含む)の場合

屋根の形 中古住宅

中古戸建て住宅や中古投資用物件を購入時に、屋根の形や屋根の劣化を見落としている人が多いです。
購入後、わずか数年で大規模リフォームを行う事態になることが少なくありません。

この手のご相談は、弊社でも年々増加しています。
特に賃貸物件の場合は居住者がいるため応急処置に頼れず、葺き替えもしくはカバー工法による根本的な修繕工事が求められます。
屋根の葺き替え工事金額は100万円以上かかります。家賃収入が簡単に吹き飛びます。

注文住宅の場合

複雑な屋根の形

注文住宅による内装や間取りの設計に、屋根の形はダイレクトに影響します。
一般に内装のデザインを優先し過ぎるほど屋根の形が複雑になる傾向があります。

中には、シンプルな屋根の形で納まるにも関わらず、必要以上に複雑な形をした屋根もしばしば見られます。
多くは設計士の嗜好が原因です。
屋根の形の決定はついつい後回しになってしまいがちな項目です。
基本設計で図面になった後、建築確認申請をしてしまうとタイムオーバーです。
基本設計はかなり初期段階の設計項目です。
早い段階でしっかり屋根の形を計画することが大切です。

建売住宅の場合

建売による住宅では複雑な屋根を避けられる傾向があります。
コストがかからないシンプルな屋根が建売住宅では好まれています。
しかし、シンプル過ぎると雨漏りリスクが高くなります。
その代表的な屋根が「片流れの軒ゼロ住宅」です。


軒先が(ほとんど)ない片流れの屋根は「屋根面積辺りの雨水を受ける量が多い」、「軒先と外壁との取り合い部から雨水が浸入する」などの理由で、雨漏りリスクが高い屋根です。
中には分譲した「片流れの軒ゼロ住宅」が次々と雨漏りを引き起こし、倒産した建築会社も存在します。

雨漏りしにくい屋根とは?避けるべき屋根の形

屋根の一義的な目的は雨漏りを防ぐことです。
それでは雨漏りしにくい屋根とはどんな屋根を示すのか。
複雑な形状の屋根より、下屋根のないシンプルな切妻や寄棟が雨漏り発生リスクが低いことは間違いありません。
しかし、「コレダ!!」とはっきり断定できません。
インターネット上でも「雨を受ける面積が多い寄棟は雨漏りしにくい」といった見解がありながら、「屋根接合部が多い寄棟は雨漏りしやすい」といった全く異なる見解が確認できます。
実際は、どちらの見解も根拠となるポイントは正解です。

ただし、避けるべき屋根の形はあります。
次に雨漏りしやすい3つの屋根の形をご紹介します。

「谷樋板金」がある屋根

谷樋板金

私たちが実際に経験した雨漏りが発生しやすい屋根の部位別ランキングでは、谷樋板金(たにどいばんきん)は1位です。
L字型やT字型の敷地で住宅を建てる時、連続性のない屋根と屋根が取り合うことになります。
この屋根と屋根の取り合い部(結合部)に用いられるのが谷樋板金です。
このように谷樋を伴い結合した屋根を複合屋根とも呼びます。
複合屋根は極めて雨漏りリスクが高い屋根です。

「下屋根と外壁の取り合い部」がある屋根

下屋根と壁の取り合い

下屋根と外壁の取り合い部で用いられる板金を雨押え板金と呼びます。

「軒先の出」がない(短い)屋根

軒ゼロ住宅

軒の出(ケラバの出含む)が短いと、軒先と外壁の取り合い部から雨水が入り込みやすくなります。
その他、壁面が劣化しやすく窓や開口部からの雨漏りリスクも高くなります。
最近は「片流れの軒ゼロ住宅」が流行していますが、雨漏りリスクの観点ではおすすめできない屋根です。
軒先の出がしっかりある屋根をおすすめします。

ケラバと軒先の違い

結局は工事の品質が重要

屋根工事の技術が重要

雨漏りがしやすい屋根の形や部位はたしかに存在します。
しかし、板金が少なく下屋根もシンプルな切妻屋根でも雨漏りは発生します。

結局は形や部位ではなく屋根工事会社や職人の現場経験数や専門性、使用する屋根材の品質が遥かに重要です。
屋根工事会社を選択できる読者の方は恵まれています。
屋根工事会社の選択には十分な時間を費やして検討してください。

結局、どの屋根の形が一番良いのか?

切妻屋根

残念ながら、この質問にもしっかりとした解答ができません。
屋根の形にはそれぞれ一長一短があり、読者の方が重要視する項目で最良の屋根が決定されるからです。
ただし、総合的なバランスを考慮して判断するのであれば切妻(キリヅマ)を弊社はおすすめします。

  • 雨漏りリスク、将来発生するリフォーム工事費用を考慮すると切妻がベストです。
    切妻は断熱性能も確保しやすいため住宅が快適になります。

  • 初期費用だけを考えた場合は片流れ屋根がベストです。
    片流れ屋根は屋根面積が小さく、雨樋や棟板金が短いためコストがかかりません。

  • 屋根や外壁への悪影響を抑えたい場合は寄棟や方形がベストです。
    屋根面積があるため屋根の劣化が他の屋根の形に比べて遅く、さらに軒の出をしっかり確保していれば紫外線や雨水から外壁が保護されます。

代表的な3つの屋根の形 そのメリット・デメリット

切妻(キリヅマ)

切妻

切妻はお馴染みの三角屋根のことです。
あまり知られていませんがこの形、切妻(キリヅマ)と呼びます。
切妻は雨漏りリスクや将来のメンテナンス費用が低い屋根です。
是非、採用を検討して欲しいおすすめの屋根です。

アイコン 切妻のメリット

工事費用や工事期間を抑えることができる

初期費用が経済的

将来発生するリフォーム費用が経済的

リフォーム時の工期が短い

屋根面積や屋根の形がシンプルであるため使用材料の量やロスを抑えることができる

雨樋や棟の長さも短いのも特徴

作業スピード(人件費)の点でも有利であり、寄棟に比べてるとはるかに経済的

住み心地が良い住宅設計ができる
切妻屋根は軒天換気や換気棟の他、妻側にガラリ換気を設置できる強みがあります。
妻側とは三角(への字)型の外壁側のことです。ケラバ側とも言います。

ソーラーパネルが設置しやすい

屋根裏のスペースが確保できる

雪が落下する場所が予測できる
形状により軒先側から雪が落下します。雪の落下による事故を事前に予測できます。(ただし落ちる量は集中する)

洋風・和風どちらにでも合う

全ての屋根材が利用できる
メーカーは切妻を前提にして屋根材を製造・販売します。

アイコン 切妻のデメリット

妻側(ケラバ側)の壁面に太陽光や雨水が当たりやすいため、妻側壁面が劣化しやすく雨漏りリスクが高くなる

多くの屋根で採用されている形なので個性がない
(ただし、屋根の形は個性や美観で決めるのは避けるべきです)

片流れ屋根

片流れ屋根

片流れ屋根は1面だけで傾斜した屋根です。
雨樋を取り付ける方向は1方向で済みます。
コストを最重視する上では最もおすすめできる屋根です。

アイコン 片流れのメリット

初期費用が経済的

将来発生するリフォーム費用が経済的

リフォーム時の工期が短い

窓を高い位置に取り付けることができ部屋が明るくなる

雪が落下する場所・リスクを予測できる

雪が解けやすい

棟に関するトラブルがない
(屋根のトラブルでは比較的多いトラブル)

ソーラーパネルが設置しやすい

アイコン 片流れのデメリット

壁面量が増える

妻側(ケラバ側)および軒先反対側の壁面に日差しや雨水が当たりやすいため、外壁が劣化しやすい

壁面からの雨漏りリスクが高くなる
(特に軒ゼロの場合は飛躍的に高くなる)

屋根面積が狭いため雨水を受ける量が多く、屋根が劣化しやすい

棟換気が設置できない

寄棟屋根(方形屋根)

寄棟屋根
方形屋根

寄棟は4方向に傾斜面がある屋根です。切妻に次いで多い屋根の形です。
地上に対して水平になる最上部の棟を「大棟」、傾斜がある棟を「下り棟もしくは隅棟」と言います。
大棟がある屋根を「寄棟」、大棟がない屋根を「方形」屋根と呼びます。
寄棟の初期建築費用とリフォーム費用は割高です。
しかし、日射や雨などの影響をやわらげれるため、長期的な住宅保護の観点では最も優秀な屋根です。

アイコン 寄棟のメリット

建築基準法に対応しやすい
狭い敷地では建築基準法における隣地斜線制限、北側斜線制限が有利になる
・落ち着いた雰囲気

4方向全ての外壁が保護できる
(ただし、4方向の軒先を長くすることが条件)

壁面量が減る
(高価な外壁材を使用する場合には経済的)

雨量、雪量を分散させることができる

風の耐久性が高い
(日本瓦などの重い屋根で有効)

アイコン 棟のデメリット

トータルコストの負担が大きい

リフォーム時に部材合わせによる使用材料のロスがかなり発生する

雨樋や棟が長くなる

工期が長くなる

軒天のメンテナンスやリフォームが必要になる

ソーラーパネル数が制限される

4方向全てに雪が落ちる

屋根裏のスペースが小さくなる

ガラリ換気(妻側換気)が設置しづらい

屋根勾配や屋根の形を変更することは可能

勾配(こうばい)に注意する

急勾配の屋根 屋根足場

勾配とは屋根の傾き角度のことです。
急勾配であるほど(屋根の角度はあればあるほど)雨水排水のスピードが速くなり、雨漏りリスクが減少します。
しかし、急勾配は屋根面積が広くなり、リフォーム時には屋根足場が必要になります。

このような理由からテイガク屋根修理では屋根は適度な4寸勾配をおすすめします。
また、勾配をリフォーム工事で変更することは可能ですが、かなり大がかりな工事になります。

屋根の形を変えることはできる

大胆に根の形を変更するリフォーム工事も可能です。
繰り返し発生する雨漏りを根本的に解決させるために行います。
ただし、屋根の形を変える工事もかなり大がかりになります。

まとめ

  • 屋根の形は住み心地だけでなく、雨漏りリスクや将来発生するリフォーム費用と大きく関わります。

  • 屋根の形は美観や個性を重視して決定するものではありません。

  • これから中古住宅の購入や設計を控えている読者の方は、シンプルな屋根の形にこだわってください。

  • 谷樋や下屋根と外壁の取り合い部がある住宅はできるだけ避けてください。

  • 軒の出が短い住宅は避けてください。

  • 屋根勾配は4寸がおすすめです。

  • 屋根の形にこだわることはとても大切です。しかし、施工実績があり腕のいい職人をもつ屋根修理業者に工事依頼することが大前提になります。

この記事を書いた人
著者 前川 祐介
前川 祐介 代表取締役社長
テイガク サイト制作責任者
宅地建物取引士
建築物石綿含有建材調査者
著者経歴

大阪府堺市生まれ。千葉県立船橋東高校→法政大学→サノフィ(旧アベンティスファーマ)株式会社を経て、父親が経営する板金工事会社である昭和ルーフリモ株式会社へ入社。
中央工学校夜間建築学科卒業。年間100棟以上の屋根と外壁工事に携わった経験を活かし、テイガク記事の執筆とユーチューブ動画撮影をおこなっています。趣味は日本史学。

運営会社

昭和ルーフリモ株式会社は2001年設立の板金工事会社です。
これまでの金属屋根と金属サイディング工事件数の合計は20,000棟を超えます。
板金工事は足場を組み立てるため、外壁塗装の工事事業にも注力しています。

国土交通大臣許可(般-25)第22950号
許可を受けた建設業:板金工事業/屋根工事業/塗装工事業 他

代表前川が本音で解説「板金工事会社とは?」

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    1. 「谷樋板金」がある屋根
    2. 「下屋根と外壁の取り合い部」がある屋根
    3. 「軒先の出」がない(短い)屋根
    4. 結局は工事の品質が重要
  4. 結局、どの屋根の形が一番良いのか?
  5. 代表的な3つの屋根の形 そのメリット・デメリット
    1. 切妻(キリヅマ)
    2. 片流れ屋根
    3. 寄棟屋根(方形屋根)
  6. 屋根勾配や屋根の形を変更することは可能
    1. 勾配(こうばい)に注意する
    2. 屋根の形を変えることはできる
  7. まとめ