- ルーフィング(下葺き材)が屋根で最も重要な理由がわかります
- ルーフィングにはたくさんの種類があり、各商品の特徴がわかります
- おすすめのルーフィングがわかります

ルーフィングシートとは屋根本体の下に敷く、「屋根の防水シート」のことです。
「下葺き材(したぶきざい)」ともよばれます。
その他、言葉を短くして「ルーフィング」とよんだり、アスファルト製が多いため「アスファルトルーフィング」ともよんだりします。
ルーフィングシートはテイガク屋根修理の工事現場では必ず登場します。
屋根修理方法 施工例一覧はこちら
しかし、屋根の下に敷くシート(目に見えない建材)なので、あまり重視されない傾向があります。
事前に何も説明を受けないまま建設会社や設計士が勝手に選んだシートをそのまま使用することがほとんどです。
しかし、このルーフィングシートは屋根本体と同じ、もしくは屋根本体以上に「超」重要な建材です。
実際にルーフィングシートはたくさんの種類の商品が販売されています。
今回はルーフィングシートについて詳しく解説いたします。
テイガク屋根修理でよく使うルーフィングの種類と特徴
商品名 | Pカラー | PカラーEX+ | ニューライナールーフィング | タディスセルフ | タディスセルフ・カバー | マスタールーフィング | ノアガードⅡ | 遮熱ノアガードⅡ | タイベック ルーフライナー |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
製造会社 | 田島ルーフィング | 田島ルーフィング | 田島ルーフィング | 田島ルーフィング | 田島ルーフィング | 田島ルーフィング | ケイミュー | ケイミュー | デュポン |
耐久性 | 10年程度 | 20年程度 | 30年程度 | 20年程度 | 20年程度 | 60年程度 | 20年程度 | 20年程度 | 50年程度 |
選定する一番の理由 | 価格重視 | 費用対効果(特に価格) | 費用対効果(特に品質) | 複雑な形の屋根/緩勾配の屋根 | ひび割れが多いスレート屋根 | 品質重視 | 屋根の軽量化 | 屋根材とルーフィングの間に空気層ができる場合 | 野地板の保護/新築時か野地板を含む葺き替え時 |
分類 | アスファルトルーフィング940 | 改質アスファルトルーフィング | 改質アスファルトルーフィング | 粘着層ルーフィング | 粘着層ルーフィング | 改質アスファルトルーフィング/劣化防止層 | 高分子系ルーフィング | 高分子系ルーフィング | 透湿防水ルーフィング |
屋根の下に敷く防水シートだけでもたくさんの種類があり、性能も異なります。テイガク屋根修理では屋根の状況や目的に沿って使用するルーフィングを決定いたします。
屋根の構造や屋根に関する用語はこちらをご覧ください。
【屋根の構造】覚えて絶対損をしない屋根構造と部材用語 22選
1.ルーフィグシート(下葺き材・防水シート)とは
1-1.「アスファルト」が語句の頭に付く建材について
ルーフィングシートとは屋根本体(屋根仕上げ材)の下に敷く、「防水シート」のことです。
野地板(のじいた)とよばれる下地板の上にはります。

英語では「ROOFING SEET」になるので、直訳すると「屋根のシート」ということになります。
業者によってはこの「屋根の防水シート」のことを「ルーフィング」「アスファルトルーフィング」「アスファルトシート」「防水紙」「下葺き材」「ゴムアス」「ゴムアスルーフィング」「改質アスファルト」とよんだります。

ルーフィングシートの主な原料は「アスファルト」です。(一部を除く)
そのため、ルーフィングシートは他のアスファルトを使った建材とゴチャマゼになり、よくいい間違いもされます。
よく混同される単語を以下で整理します。
アスファルトルーフィング

汎用されているルーフィングシートです。
ルーフィングシートの中ではグレードが最も低く、張り付け後10年程度で劣化がはじまります。
「アスファルトルーフィング940」とよばれる製品が最も流通しています。
ほとんどの新築住宅では「アスファルトルーフィング940」が使われています。
理由はわからないですが、緑色の製品が多いです。
改質ゴムアスファルトルーフィング

改良された耐久性の高いルーフィングシートです。
「改質アスファルトルーフィング」「ゴムアス」「ゴムアスファルトルーフィング」ともよばれています。
アスファルトシングル

屋根仕上げ材(屋根本体)のひとつです。
シート状になった屋根仕上げ材で、原材料はアスファルトです。
アスファルトフェルト

外壁用の下葺き材として使います。
モルタル塗り壁で使われることが多いです。
1-2.雨漏りの原因はルーフィング(下葺き材)の破れ
戸建て住宅の雨仕舞いは「一次防水」と「二次防水」の二重構造になっています。
「一次防水」とは屋根本体や板金による仕上げ材による防水のことです。
直接雨水が建物内部に浸水しないための役割を担います。
しかし、屋根本体が劣化したり、四方八方から予測できない雨が降ったりすると、室内側に雨水がすすみます。
つまり、一次防水だけで雨水を防ぐには限界があるということです。
そのため、「二次防水」を用いて雨漏りを抑える設計が住宅建築ではなされています。

具体的には屋根本体の下に敷かれたルーフィングシートが二次防水の役割を担います。
屋根内部の雨漏りを最終的に防いでくれるのは、このルーフィングシートであるということです。
もし屋根から雨漏りがしている場合、それはルーフィングシートが機能していないから(破れたり剥がれたりしているから)と言い換えられます。
ルーフィングシートがいかに重要な建材であるかお分かりいただけると思います。
2.ルーフィングシートの貼り方
2-1.貼る方向

軒先(のきさき)から棟先(むねさき)にめがけて貼ります。
屋根の低いところから高いところにめがけて貼ります。
水下と水上が重ねあうシートの重ね代は20cm以上確保します。
20cmのところに目安となるラインが引かれているルーフィングシートもあるので、重ね代確保の確認ができるものは是非おこなってください。
水平方向の重ね代は10cm以上確保します。
当然、屋根が仕上がってしまうと重ね代の確認ができなくなります。
屋根工事業者がルーフィングシートをケチって重ね代を十分に取らずに貼っているかもしれません。
気になる方は、屋根工事業者にルーフィングシートの重ね代の写真を撮影してもらいましょう。
2-2.弱点になりやすい部位の処置

雨漏りは屋根の平面部から発生することがほとんどありません。
たいてい、屋根の「谷部」や「棟」、「下屋根と壁の取合い部」で雨漏りはよく生じます。
これらの部分は雨仕舞い上における弱点であり、十分にルーフィングシートの重ね代を確保したり、外壁に立ち上げたりする処置が望まれます。
単純に2重、3重にルーフィングシートを重ねるだけでも防水性能上、有効です。
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2-3.貼る道具
ルーフィングシートはタッカー(ホッチキスのようなもの)で貼ります。
タッカーは30cm間隔で使うので、ルーフィングシートに無数の穴ができることになります。
ルーフィングシートが太陽の熱で溶けてタッカーの穴を埋めてくれます。


屋根は水平にはなっていないので、タッカーを直角に打ち付けるには技術が必要です。
タッカーが浮いてしまうとタッカーの穴に雨が侵入する恐れがあります。
一方、強く打ちすぎすると、今度はシートを痛めてしまい破れの原因になります。
タッカーの芯ひとつにも職人さんの技術力が問われます。
そのような技術差の問題を避けるためには、タッカーを使わずに貼ることができるシール式のルーフィングシート(粘着層ルーフィング)をおすすめします。

なお、コロニアルのカバー工法ではタッカーでは十分にルーフィングシートを留めることができないので、釘を使ってルーフィングシートを貼ります。
釘穴から雨水が入り込むおそれがあるので、テイガク屋根修理では釘穴の上に防水テープを貼ります。
釘の下には鋼板チップを敷いて釘の保持力を高めます。
このあたりの施工方法は工事業者によって工夫の仕方が異なります。
3.ルーフィングシートの種類

実際、ルーフィングシートにこだわる人はあまりいません。
ルーフィングシートは仕上がりが見えないので、多くの人にって関心が薄い建材だからです。
これは施主様だけではなく、ハウスメーカーなどの建設会社や設計者にもいえることです。
新築で住宅を建てた時、建設会社が積極的にルーフィングシートについて説明をすることはまずありません。
住宅の供給者からしてみれば、「10年の瑕疵担保責任」がなくなるまでルーフィングシートが機能していればいいといった考えが蔓延しています。
工事契約と工事費抑制を優先するため、最低限の機能を有したルーフィングシートが好んで使われています。
しかし、先に述べた通り、ルーフィングシートは最終的に雨漏りを防いでくれるとても大切な建材です。
ルーフィングシートは「低品質」から「高品質」のものまで、たくさんの種類があります。
ルーフィングシート最大手メーカーである田島ルーフィングでは、戸建て住宅用の製品だけで17種類もの商品を販売しています。
これから屋根工事を控えている読者の方は、工事の見積書内にある「防水シートの項目」を必ず確認しましょう。
たとえば、見積書の項目詳細が「ルーフィングシート」のみの記載であれば、最も低品質のルーフィングシートが使われる可能性があります。
次に、各ルーフィングシートの特徴をご紹介します。
3-1.アスファルトルーフィング940
「アスファルトルーフィング940」は最もよく使われているルーフィングシートです。
940を省いて「アスファルトルーフィング」とよぶことが多いです。
「940」は単位面積質量のことで、重さを示しています。
その他に「アスファルトルーフィング1500」があります。
重いほうが防水性能が向上します。
「アスファルトルーフィング940」は数あるルーフィングシートの中でもグレードが低い製品に位置づけられます。
建設会社から屋根の防水ついて事前説明がない場合、「アスファルトルーフィング940」が使われている可能性が高いです。
「アスファルトルーフィング940」は約10年で大幅に耐久性能が低下します。
下記のデータはメーカーによる自社製品の調査結果です。
そのため、信頼性が高いといえるデータです。

3-2.改質ゴムアスファルトルーフィング

改質ゴムアスファルトルーフィングは「改良」されたアスファルトルーフィングシートです。
「改質アスファルト」「ゴムアスルーフィング」「ゴムアス」ともよばれます。
「アスファルトルーフィング940」と比べて寿命が長く、20年以上の耐久性が期待できます。
テイガク屋根修理では改質ゴムアスファルトルーフィングを標準的に使用します。
定額制の価格設定も改質ゴムアスファルトルーフィングを使用した金額になっています。
これから屋根を新築したり、リフォームされたりする方は、改質アスファルトルーフィングと同等以上の商品を使ってください。
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3-3.マスタールーフィング
「マスタールーフィング」は田島ルーフィングが取り扱う最高品質のルーフィングシートです。
60年近くの耐久性が期待できるルーフィングシートです。
マスタールーフィングを使用する場合は、耐久性の高い屋根材と併用することをおすすめします。
一般的な住宅の屋根は20年~30年ごとに屋根の改修工事が必要ですが、長持ちする屋根とルーフィングシートを用いれば、半世紀以上の屋根機能の維持が期待できます。
ただし、とても価格が高い製品です。

3-4.粘着層ルーフィング

片面(裏面)が粘着シールになっているルーフィングシートです。
タッカーや釘を使わないので穴をあけずにシートを貼ることができます。
粘着層ルーフィングシートは劣化が進行したコロニアルのカバー工法で有効です。
ボロボロになったコロニアルをシート全体で押さえ付け、屋根全体を一体化させます。
シートに隙間ができない構成なので、雨漏りもにしくい特徴もあります。
屋根が沿ったり、剥離したりしやすいノンアスベストのスレート屋根では是非おすすめしたいルーフィングシートです。
田島ルーフィングではノンアスバスト専用ルーフィングとして、「タディスセルフカバー」を販売しています。
さらに、一度貼ったシートを貼り直すことができる「遅延粘着型」のルーフィングシートも販売されています。
複雑な形をした屋根や急こう配の屋根では、「遅延粘着型」のルーフィングシートをテイガク屋根修理では使います。
田島ルーフィングの「タディスセルフ」が有名です。
3-5.不織布(ふしょくふ)ルーフィング
不織布は「繊維素材」のルーフィングシートのことです。
布のようなシートです。
安価なルーフィングシートは「紙」でできています。
言うまでもないことですが、紙より布の方が破れにくいです。

田島ルーフィングの「ニューライナールーフィング」は不織布製の改質アスファルトルーフィングで、テイガク屋根修理でも一押ししているルーフィングシートです。
メーカーから耐用年数が30年とアナウンスされています。
3-6.高分子系ルーフィング

「高分子系ルーフィングシート」は合成樹脂を主成分としています。
高分子系ルーフィングシートは改質アスファルトルーフィングと同等の耐久性能があります。
その一方、重さが改質アスファルトルーフィング1/3であり「軽量」です。
屋根の重さが気になる施主様には高分子系ルーフィングシートの使用をテイガク屋根修理ではおすすめします。
特にケイミューが取り扱う屋根材「ルーガ」など、金属屋根よりも比較的重い屋根材で使ってほしい製品です。
ケイミューでは「ノアガードⅡ」をルーガ専用ルーフィングシートとして取り扱っています。
3-7.遮熱ルーフィング

表面にアルミ反射層を設けたルーフィングシートが販売されています。
アルミ反射層を効果的に発揮させるためには、屋根材とルーフィングシートの間に「隙間」が必要です。
そのため、ルーフィングシートの上に直張りする「コロニアル」や断熱材一体型のガルバリウム鋼板屋根(スーパーガルテクトや横段ルーフαsなど)、瓦棒屋根では使っても意味がありません。
このことを知らずに遮熱ルーフィングシート貼りを希望されるお客様が多いです。
瓦屋根や空気層を設けることができる金属屋根(エコグラーニやT・ルーフなどの石粒付き鋼板屋根)に使用できるシートです。
3-8.透湿防水ルーフィング
戸建て住宅の外壁(窯業サイディング)は防水に加えて、湿気による影響も考えて建設されています。
そのため、外壁仕上げ材の裏側には「透湿防水シート」を貼るのが一般的です。
透湿防水シートを貼ることで、防水だけではなく、室内側の湿気を外に逃がす効果が得られます。
透湿効果がない場合、壁内結露が発生し、外壁材や外壁下地材が痛みやすくなります。
一方、屋根は雨漏りを抑える防水効果だけを追及してきた歴史をたどっています。
しかし現在、屋根の透湿効果を考慮する声が専門家の中からあがっています
透湿効果がない屋根の場合、屋根裏にこもった湿気が野地板(のじいた)にダメージを与えるからです。
建築後30年や40年を過ぎたコロニアルや金属屋根の場合、野地板が水を含んでボロボロになっているといったことが少なくありません。

このような背景から、最近は透湿防水ルーフィング貼りを希望される方が増えています。
商品では、デュポンタイベックの「ルーフライナー」が有名です。
ただし、透湿防水ルーフィングは野地板の保護を目的におこなうため、カバー工法などの屋根仕上げ材の上に直貼りすることができません。
新築時の野地板、もしくはリフォーム時で野地板を丸ごと張り替えた上でしか貼ることができません。
また、遮熱ルーフィング同様、ルーフィングシートと屋根仕上げ材の間に空気層がなければ十分な効果が期待できません。
瓦屋根や空気層を設けることができる金属屋根(エコグラーニやT・ルーフなどの石粒付き鋼板屋根)のみ使用ができます。
4.商品別ルーフィングの使い分け早見表
テイガク屋根修理でよく使用するルーフィングシートを集めました。
お客様のご予算やご要望、屋根の形状によって使い分けをおこなっております。
標準施工品としてPカラーEX+をよく使用します。
ご予算のあるお客様にはニューライナールーフィングをおすすめいたします。
ルーフィング商品名 | 特徴 | 耐用年数 | 価格 |
---|---|---|---|
Pカラー | アスファルトルーフィング940/紙 | 10年程度 | 安い |
PカラーEX+ | 改質アスファルトルーフィング/不織布 | 20年程度 | 普通 |
タディスホワイト | 夏の日差しに溶けにくい | 20年程度 | 普通 |
マスタールーフィング | 高強度不織布+劣化層 | 60年程度 | とても高い |
タディスセルフカバー | 粘着式/ノンアスべストスレート専用 | 20年程度 | 高い |
タディスセルフ | 遅延粘着/複雑な形の屋根/ 雨漏りしやすい緩勾配の屋根 |
20年程度 | 高い |
ニューライナールーフィング | 改質アスファルトルーフィング/不織布/高強度 | 30年程度 | 高い |
ノアガードⅡ | 高分子系ルーフィング/軽量 | 20年程度 | 高い |
タディスクール | 遮熱効果 | 20年程度 | 高い |
タイベック ルーフライナー | 透湿防水 | 50年程度 | とても高い |
5.ルーフィング選びで知っておきたいこと
5-1.じつはコスパがいい
ルーフィングシートは平米あたり数百円でグレードアップが可能です。
100平米を超える屋根はあまりないので、およそ数万円(3万円から4万円程度)の出費で高品質製品がお選びできます。
とてもコストパフォーマンスにとても優れた建材です。
工事費だけを追求せず、できるだけ良いルーフィングシートを選びましょう。
5-2.工事会社から説明されることがほとんどない

テイガク屋根修理が見積書を提出する場合、ほとんどケースで相見積もりになります。
しかし、「ルーフィングシートについて他の会社から何も説明がなかった」とお客様に言われることがよくあります。
ルーフィンシートの重要性を認識している工事業者が少ないということです。
一番安いルーフィングシートを使うのは屋根工事をおこなう意味がありません。
中には在庫としてルーフィングシートを残したくないから、複数のシートを提案しない業者も存在するでしょう。
最近はインターネットで容易に情報が入手できます。
お客様自身がしっかりルーフィングシートの特性を知り、選定することが大切です。
6.まとめ
ルーフィングシートは屋根が仕上がってしまうと、目で見えなくなります。
そのため、コストダウンの対象になりやすい建材です。
もし設計図書にルーフィングシートの商品名などの特記がない場合は、「アスファルトルーフィング940」が使われていると思ってよいでしょう。
ルーフィングシートは最終的に雨漏りを防いでくれる大切な建材です。
ルーフィングシートはたくさんの種類がある一方で、価格差が大きくない建材です。
とてもコストパフォーマンスのよい建材なので、安心できる住まいづくりのためにも、ルーフィングシートの性質は念入りに調べて、できるだけよい製品を使いましょう。