現在では珍しくなった建築屋根構造のひとつ、「パラペット」。
20年以上昔の戸建て住宅の屋根ではよく取り入れられていました。
最近では、屋根の形はできるだけシンプルな形が求められているため、「余計な物」といった認識が強まりつつあります。
実際、パラペット内部の下地や、笠木板金(手すり部分)の腐食などによる、雨漏りのご相談が増えているのも事実です。
今回は「戸建て住宅におけるパラペット」について解説いたします。
パラペットとは
パラペットとは立ち上げられた壁(手すり壁)のことです。
「手すり壁」の他に、「胸壁」ともいいます。
パラペットの最上部である天板(手すり)部分を笠木板金と呼びます。
英語である「parapet」は、よくアメリカの戦争映画で頻繁に登場します。
スナイパーがターゲットを狙う時に、建物の屋上から銃をセッティングするあの場所(構造物)です。
パラペットのメリット
パラペットの主なメリット(必要性)について解説いたします。
2-1.デザイン・意匠性
外壁に看板を取り付けるために、パラペットがあると役立ちます。
屋根が見えなくなるので、外観の生活感を無くすこともでき、デザイン性が高まります。
テイガク屋根修理においても、商店街などで住居兼店舗の形態をとる住宅のパラペッ改修工事が多くを占めます。
2-2.排水
屋根の形に陸屋根(ろくやね、りくやね)と呼ばれる形があります。
傾斜のないフラットな平面状の屋根です。
陸とは平らという意味で、陸(ろく)でなし、陸(ろく)でもないの語源と言われています。
陸屋根の多くはパラペット構造になっています。
立ち上げ壁であるパラペットがない豆腐のような真平らな屋根ですと、屋根にたまった埃などの汚れと雨水が泥水となって外壁に沿って排水されることになります。
パラペットがあれば泥水の排水をせき止められ、雨どいなどで排水することが可能になります。
2-3.防水層形成
陸屋根における屋上の防水層を形成する上でパラペットの立ち上がりは必ず必要になります。
パラペットのデメリット
パラペットは本来、鉄筋コンクリートの建物に用いられるものであり、木造住宅では取り入れるべき構造ではありません。
雨漏りの発生頻度が高くなるからです。
手すりにあたる天板(笠木板金)においては、立下りの長さが短か過ぎて、水が回り込みやすい構造になっています。
その上、納まりがとても難しく、施工面での配慮がとても重要になります。
これから木造住宅の新築でパラペットの導入をご検討をされている方は、できるだけパラペットの導入は避けた方がいいでしょう。
3-1.笠木からの雨漏り
パラペットの笠木板金は雨水が浸入しやすく、雨漏りが発生しやすい危険個所です。
豪雨時、下から吹き上げてくる雨水や、横から伝わる雨水が天板の隙間に浸水します。
3-2.コスト
パラペットと屋根は、雨仕舞いの納め方や、使用する素材が全く異なります。
つまり、どちらかが原因で雨が漏れてしまった場合、余計な出費になってします。
また、修理を行う業者にも注意が必要になります。
パラペット工事業と屋根工事業は全く性質が異なります。
パラペットのリフォームは実質、「外壁リフォーム」と「板金工事」に該当します。
使用する下葺き材も、屋根の下葺き材(ルーフィングシート)は使用せず、外壁用の下葺き材(透湿シート)を使用します。
いつも屋根瓦の修繕をお願いしている瓦屋さんに工事をお願すると、リフォームコストが余分にかかってしまう恐れがあります。
屋根瓦を中心とした屋根工事会社では対応ができないからです。
お客様が発注した工事が、板金工事会社への2次受けになり、結果、工事費が高くなってしまいます。
3-3.内樋の劣化 メンテナンス
パラペットの立ち上がり部と屋根との取り合い部を「内樋(うちどい)」と呼びます。
この内樋は最終的に雨水やゴミを寄せ集めする箇所になるため、かなり激しく劣化しやすい部位になります。
雨樋の排水などの流れが悪くなると、内樋はフラットであるがゆえに、水たまりができます。
水が常時たまっている状態は決して良いことではありません。
内樋がトタンなどの金属製の場合は、落ち葉などのがたまるとアルカリの影響で錆が発生します。
定期的に内樋の清掃を行わなければなりませんが、なかなか屋根に上って清掃する作業は至難なことです。
テイガク屋根修理のパラペット改修工事
テイガク屋根修理で施工したパラペット改修工事のご案内です。
繰り返しになりますが、パラペットのリフォーム工事は板金(金属)工事にあたります。
軽量金属屋根瓦の施工などをご検討の方は、金属板金工事を中止とした屋根工事会社にお願いしましょう。
4-1.パラペット改修 施工前
建築後約50年の日本瓦屋根とパラペットの改修工事です。
東京都板橋区で行った屋根リフォーム施工例です。
お施主様自身で、パラペットの内樋を塗装など行い、メンテナンスされていた形跡が確認できます。
パラペットの笠木板金、内樋板金共に劣化、損傷しています。
いずれも雨漏りしやすい箇所です。
屋根、パラペット共にガルバリウム鋼板の素材でリフォームいたしました。
4-2.既存屋根瓦 パラペット撤去
既存の屋根瓦とパラペット板金を撤去し、処分いたしました。
パラペットの手すりになる部分(笠木)は木材の下地が組まれています。
一般的に、建築後30年を越え、パラペットから雨漏りが発生している場合はこの下地部分が腐食していることが多いです。
新たに笠木板金を施しても、下地が腐食しているとすぐに板金が剥がれてしまう恐れがあります。
当然、笠木の下地も交換いたします。
4-3.透湿シート ルーフィングシート張り
パラペット、屋根、共に下葺き材(防水シート)を張ります。
外壁は壁内結露を防止するため、白いシートである【透湿防水シート】を張ります。
一方、屋根は完全防水、雨漏り防止を目的に、グレーのシートである【ルーフィングシート】を張ります。
これは、フラット35の仕様でも定まっている施工方法です。
ただし、雨漏りが激しい場合などの場合は、防水処理を最優先にするため、ルーフィングシートだけででパラペットの下葺き改修工事を行います。
パラペットと屋根がぶつかる部位(取り合い部)にあたる内樋は水や汚れの影響による劣化が激しい部位になるため、ルーフィングシートやブチル(防水)テープを重ね張りし、防水処理を高めました。
このような配慮ができるかどうかも、工事品質を推し量る上で重要なポイントになります。
4-4.内樋板金
内樋板金を施工いたします。
金属の素材は既存の「トタン」から「ガルバリウム鋼板」による板金で加工します。
原則、内樋板金は職人がお客様の現場で製作いたします。
もちろん、ガルバリウム鋼板はトタンに比べ、耐久性やメンテナンス性ではるかに優れている素材です。
4-5.パラペット修理工事完成
パラペット改修工事と屋根の葺き替え工事、完成です。
笠木板金の奥行きも従来のものより長く施工させていただきました。
これで、水切り板金の防水処理能力を高めれます。
定期的なメンテナンスなどの労務、地震や台風、豪雨時のストレスもなくなり、安心です。
パラペットの改修工事は板金工事業
行政から認可される建説業の許可種別は合計28業種もあります。
このうち、「屋根工事業」と「板金工事業」は分別されており、専門性が異なります。
屋根工事業は日本瓦を中心とした工事になり、板金工事業は1枚の金属板を加工して仕上げる工事です。
金属屋根への葺き替えとパラペット板金改修工事を同時にご検討されている方には、板金工事業を中心としている会社に依頼することをおすすめいたします。
屋根工事業を中心にしている会社の場合、その会社が瓦屋根やコロニアル屋根だけの工事業務をしている可能性があり、他の板金工事会社にパラペット改修工事を横流しされてしまう恐れがあるからです。
また、各工事会社も得意、不得意の工事があります。
尚、テイガク屋根修理はどちらの許可証を保持していますが、金属屋根瓦、金属外壁サイディングを最も得意にしている会社です。
つまり、板金工事業を中心にしている会社です。
左記画像は雨漏りが発生したパラペット付き屋根の現場です。
パラペットの立ち上がりが3センチとかなり低いです。
弊社ではない塗装会社にコロニアルの塗装を行ったところ、大きな雨漏りが発生しました。
塗装により屋根表面が滑らかになり、下からも、横からも雨水が入り込んでしまったのです。
その後、弊社に、雨漏り修理のご依頼をいただきました。
最終的に、パラペット板金を正しく施工させていただき雨漏りは改善いたしました。
パラペットの修理・リフォーム費用
テイガク屋根修理ではパラペットの修繕、リフォーム工事も原則、定額制料金でご提供させていただきます。
パラペット改修工事 | 工事費用 |
---|---|
1メートルあたり | 6000円(税抜) |
まとめ
・意匠などのデザインを目的とした、パラペットの導入はおすすめできません。
・パラペットの笠木部分はとても雨が漏れやすく、内樋は腐食しやすい部位です。
定期的な清掃メンテナンスも必要です。
通常の屋根に比べ、コストや労力がかかります。
・軽量金属屋根の葺き替えに伴うパラペットのリフォームは、「屋根工事業」ではなく「板金工事業」の建築許可証をもった業者、もしくは「板金工事業」を得意とする業者に依頼しましょう。
尚、テイガク屋根修理は「屋根工事業」と「板金工事業」を保持した、「板金工事業」を得意とする屋根リフォーム専門会社です。
テイガク屋根修理は常にお客様の利益に適う正しい情報をご提供することをお約束いたします。