屋根の重さと地震について -軽い屋根材にすることで補助金も-

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各屋根材の重さわかります

屋根を軽くすることで耐震性能がよくなります

軽い屋根材に葺き替える業者の選定基準がわかります

熊本地震 重い屋根

築40年近い実家に住む母が心配だから、屋根を軽くしたい」このようなご相談をお客様から受けることがあります。
屋根を軽くすることは、住宅の耐震性能を良くする最善策のひとつです。
特に旧耐震基準(建築後40年以上経過した住宅)で建築された重い屋根の住宅は、軽い屋根に葺き替えることをおすすめします。
このページは各屋根材の重さと、屋根を軽い屋根材にする際に依頼する業者の選定基準について解説します。

各屋根材の重さ

土葺き屋根瓦屋根/セメント瓦コロニアルルーガ金属屋根
約60kg/㎡約42kg/㎡約20kg/㎡約20kg/㎡約5kg/㎡
瓦屋根から金属屋根に葺き替え(ふきかえ)ると屋根の重さは1/10~1/8、軽くなります。

地震と屋根材の重さ

屋根の重さの分類で耐震性能が決まる

陶器(粘土)瓦と金属屋根で比較すると8倍以上の差があります。
建築基準法において、各屋根材は「非常に重い屋根」「重い屋根」「軽い屋根」の3つに分類されます。
この屋根の重さの分類は耐震性能を調べるための基準値として、極めて重要な指標(2-2参照)になります。

屋根材重さ建築基準法による分類
土葺き屋根約60kg/㎡非常に重い屋根
瓦屋根/セメント瓦約42kg/㎡重い屋根
コロニアル約20kg/㎡軽い屋根
ルーガ約20kg/㎡軽い屋根
金属屋根約5kg/㎡軽い屋根

軽い屋根材について

金属屋根重さ

コロニアルは「軽い屋根」として分類されていますが、重さは瓦屋根の半分程度です。
そのため、コロニアルは思っている以上に重いと評価する人がいます。
その一方、「金属屋根」は瓦屋根の1/8~1/10です。
コロニアルと金属屋根は4倍近く重さが違うにもかかわらず、建築基準法上では同じ「軽い屋根」のカテゴリーとして分類されています。

金属屋根が過小評価されている印象があります。
私たち金属屋根の工事専門業者としては、建築基準法の屋根の重さの分類をもっと細分化して欲しいと常日頃から思っています。

結局、屋根は軽い方がいいのか?

屋根の重さと耐震性

屋根の重さと地震

「屋根の重さと耐震性には因果関係がない」といった意見が散見されます。
このような意見は、重い屋根瓦のネガティブな印象を払拭したい「瓦メーカー」や「瓦屋根工事業者」からの情報発信であることが多いです。
日本は瓦屋根が最も多く普及(次にコロニアル、金属屋根が続きます)しているので、インターネット上でも瓦屋根を擁護する意見が目立ちます。

しかし、屋根の重さによって家の耐震性が変わることは、学術的に明らかにされています。

構造計算と屋根の重さ

建築家を目指す人は建物の構造耐力に関する「構造力学」を必ず学びます。
その構造力学の計算式の中で「壁量計算」と呼ばれるものがあります。
この計算式では地震に耐えることができる建物の壁量(地震耐力壁)を求められます。
壁量を求めるために、まずはじめにチェックするのは「屋根の重さの係数」です。
屋根の重さの係数は、屋根材の種類によって変わります。

この壁量計算は住宅の耐震性能を調べる”最も”重要かつ基本的な構造計算式です。
屋根の重さは地震の影響と深く関わっているのです。

住宅サポート建築研究所

屋根軽量化は代表的な耐震改修

いうまでもないことですが、屋根を軽くすることで耐震性能が改善します。
「屋根の葺き替えによる屋根の軽量化」は代表的な耐震改修方法のひとつとして広く認められています。

地震より台風の影響を重視していた時代

土葺き屋根の改修工事について

昔の人は屋根は重ければ重いほどよいと考えていました。
「台風」による被害を抑えるためです。
地震対策よりも、台風で屋根瓦の飛散を防ぐことの優先順位が高かったのです。
例えば、昔の屋根瓦は、瓦を土で抑える湿式工法(土葺き屋根)で葺かれていました。

しかし、現在では考え方が真逆となっています。
屋根は重くするのではなく、軽くすることが重視されるようになりました。
大型地震被害が相次ぎ、地震と屋根の因果関係は証明されています。
例えば、屋根瓦は湿式工法を用いず、乾式工法で葺くようになっています。
軽量防災瓦など、軽い陶器瓦屋根も普及しています。
特にリフォーム市場では、ガルバリウム鋼板などの軽量で耐久性の高い屋根材の使用も急速に拡大しています。
地震による倒壊などの影響を避けるために屋根を軽くすることは、公的機関の認定・試験等により評価されています。
「軽い金属屋根でも倒壊するといった部分的な切り取りによる印象操作」や「地震は壁量と関係があるから屋根の重さは関係がないといった論点のすり替え」には惑わされないようにしてください。

軽量防災瓦とルーガについて

軽量防災瓦とは

屋根軽量化に対する関心が強まるにつれて、屋根瓦自体の軽量化も進んでいます。
伝統的な日本の木造住宅を建てる際の瓦屋根として、少しもで軽い瓦を用いることはとても良いことです。

岩福セラミックスの「ウェーブライト」等が有名です。
瓦業界では従来の瓦よりも軽い屋根を「軽量防災瓦」として分類しています。
まるで地震による被害が発生しにくい印象を受ける屋根瓦ですが、実際は従来の陶器(粘土)瓦よりも1割か2割程度、軽くなった瓦です。
つまり、陶器瓦の中で「軽量の瓦」という意味です。
建築基準法でいう「軽い屋根」では決してありません。
金属屋根よりはるかに重いことは留意してください。

屋根材重さ
瓦屋根(従来品)約42kg/㎡
軽量防災瓦約35kg/㎡
金属屋根約5kg/㎡

ルーガ

ルーガ 屋根

和瓦なくして日本の伝統住宅は建てられません。
意匠にこだわりつつ、屋根の軽さも実現されたい方には、ケイミューから販売されているルーガ「雅」をおすすめします。
和瓦の美しさと耐震性を備えた屋根材です。

屋根軽量化は四大耐震改修工事のひとつ

屋根軽量化と補助金

旧建築基準法で建設された住宅に耐震改修工事を行うと、自治体から補助金が支給されます。
耐震改修工事にはいろいろな種類がありますが、主な耐震改修工事は4つあります。
建物の基礎」「接合部の補強」「壁の補強」「屋根の軽量化」です。
重い屋根を軽い屋根に変える改修も補助金対象工事として認めらています。

補助金の受給で注意したいこと

リフォーム業者の探し方

耐震改修工事を行うことで、補助金が支給されるのは周知の事実ですが、手続き方法や支払い金額、条件は自治体によってまちまちです。
例えば、「地元の建設業者でなければ工事ができない」といった制限を設けている自治体もあります。
しかし、地元の建設業者に依頼すると工事費が高くなることがあります。
自社では直接工事を行わず、下請けの屋根専門工事業者に発注するからです。

市内の工務店に依頼したにもかかわらず、結局、市外の屋根工事業者が工事を行うこともあり得ます。

また、補助金の申請には「耐震診断」や「耐震設計等」を行う必要もあります。
そのため、補助金をもらわず、自由に工事業者を選んで工事を行った方が安く仕上がることが少なくありません。
補助金を使わないことも、選択肢のひとつにしておくとよいでしょう。

葺き替えの工事会社について

おすすめの軽い屋根材

断熱材一体型ガルバリウム鋼板屋根

重い屋根材にはガルバリウム鋼板の屋根材への葺き替えをおすすめします。
意匠を重視されるお客様には和瓦デザインの商品もご用意があります。
テイガク屋根修理では、ガルバリウム鋼板の裏側に断熱材が貼り付けられた断熱材一体型の製品をつかうことが多いです。
アイジー工業の「スーパーガルテクト」やニチハの「横暖ルーフα」などが人気です。

軽い屋根に葺き替えるのは金属屋根工事業者

トタン屋根と瓦屋根
板金工について

結局、重い陶器瓦屋根を軽い金属屋根に葺き替えるのは金属屋根工事業者になります。
つまり、板金工事会社が携わる仕事です。
ところが、「瓦屋根だから瓦屋根業者に依頼する」とか「屋根工事会社だから金属屋根も取り扱える」と考える方が多く存在します。

瓦屋根業者と板金工事会社は全くの異業種です。
異業種の業者に依頼することは、中間マージンが発生するだけではなく、適切な工事方法による診断や提案を得られないおそれがあります。

軽い屋根材への葺き替え工事は板金工事会社へご依頼ください。

コロニアル 屋根 リフォーム
ガルバリウム鋼板 屋根
建築板金とは?
この記事を書いた人
著者 前川 祐介
前川 祐介 代表取締役社長
テイガク サイト制作責任者
宅地建物取引士
建築物石綿含有建材調査者
著者経歴

大阪府堺市生まれ。千葉県立船橋東高校→法政大学→サノフィ(旧アベンティスファーマ)株式会社を経て、父親が経営する板金工事会社である昭和ルーフリモ株式会社へ入社。
中央工学校夜間建築学科卒業。年間100棟以上の屋根と外壁工事に携わった経験を活かし、テイガク記事の執筆とユーチューブ動画撮影をおこなっています。趣味は日本史学。

運営会社

昭和ルーフリモ株式会社は2001年設立の板金工事会社です。
これまでの金属屋根と金属サイディング工事件数の合計は20,000棟を超えます。
板金工事は足場を組み立てるため、外壁塗装の工事事業にも注力しています。

国土交通大臣許可(般-25)第22950号
許可を受けた建設業:板金工事業/屋根工事業/塗装工事業 他

代表前川が本音で解説「板金工事会社とは?」

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