
屋根の工事で使われる「葺き替え」は「ふきかえ」と読みます。
古い屋根材を取り除き、新しい屋根材を張る工事を意味しています。
「葺」という漢字は、屋根に関わる用語としてよくつかわれます。
わたしたちにとって、あまり馴染みのない漢字かもしれません。
しかし、屋根は建物で最も重要な部位です。
「葺」をつかった用語を知っておくと絶対に損はしません。
是非、このページで言葉の意味を整理してください。
葺き替えの読み方と意味
葺く(ふく)とは

葺くとは屋根を仕上げる行為を意味します。
江戸時代までの住宅屋根は茅葺き(かやぶき)に代表されるように、屋根は草を被せて仕上げていました。
「葺く」の語源です。
現在の屋根は陶器瓦やコロニアル(スレート・カラーベスト)、ガルバリウム鋼板など多種多様です。
これら新建材を含めて屋根を覆う行為を「葺く」とよびます。
また、屋根工事の一環として建材を覆う行為を指すこともあります。
たとえば、屋根材の下にルーフィングという防水シートを敷くときも「ルーフィングを葺く」といった使い方をします。
葺き替え(ふきかえ)とは

「葺き替え」とは古い屋根材を撤去して、新しい屋根材に張り替えることを意味しています。
同じ種類の屋根材を新しく手配して葺くこともありますし、まったく違う屋根材を葺くこともあります。
また、屋根の傷み具合によっては屋根材の下の桟木(さんぎ)や防水シート、さらにその下にある野地板(のじいた)を交換することもあります。
画像のように屋根のゆがみを補正する下地調整などをおこなうこともあります。
屋根材だけではなく、下地を張り替える工事を含めて「葺き替え」とよぶこともあります。
つまり、葺き替えといっても、屋根の仕上げ部分だけを交換する工事なのか、それとも野地板まで交換する工事なのかによって、工事の価値や費用が異なることになります。
葺き直しとは
葺き替えに似た言葉に「葺き直し(ふきなおし)」があります。
これは古い瓦をいったん取り外して下地の補修などをした後に、古い瓦を再利用して屋根を仕上げる工事のことです。
主に瓦屋根の改修工事で用いられる用語です。
再利用できない箇所は一部、新しいものに交換します。
全ての屋根材を新しいものに交換する「葺き替え」よりは費用を抑えられます。
重ね葺きとは

重ね葺き(かさねぶき)とは、古いの屋根の上に新しい屋根を重ねて葺く工事のことです。
カバー工法とよばれています。
コロニアル(スレート・カラーベスト)の上に、軽い金属屋根(ガルバリウム鋼板)を重ねて張る工事をよくおこなわれています。
横葺き(よこぶき)と縦葺き(たてぶき)
横葺き(よこぶき)と縦葺き(たてぶき)は金属屋根の施工でよく用いられます。


屋根の流れに対して横向きに張る金属屋根を横葺き屋根、屋根の流れに沿って縦方向に張る金属屋根を縦葺き屋根とよびます。
それぞれ一長一短があります。
瓦葺き(かわらぶき)とは
瓦葺き(かわらぶき)とは粘土を焼いて固めた陶器瓦や、セメントを基材としたセメント瓦で屋根が葺かれている、あるいはこれから葺くことを意味します。
「あの家は瓦葺きだ」や「これから瓦葺き工事をする」といった使い方をします。
陶器瓦には古くからある和瓦(日本瓦とも呼びます)や、昭和以降に登場した洋風デザインの洋瓦などがあり、耐久性の高さから広く用いられている屋根材です。
一方のセメント瓦は1970〜1980年代に流行しましたが、色あせや耐久性が陶器に比べて劣る欠点があり、新たにつかわれることはほとんどありません。
これから新たに瓦葺き工事をおこなう場合は、陶器瓦をつかって屋根を仕上げる工事だと考えてよいでしょう。
瓦葺工とは

瓦葺工(かわらぶきこう)とは陶器瓦やセメント瓦を葺く工事を行う職人さんのことです。
さらに瓦の工事を専門に行う業者のことを瓦葺工事会社とよびます。

一方、ガルバリウム鋼板などの金属屋根を葺く職人さんは板金工(ばんきんこう)とよばれます。
その工事を行う業者は板金工事会社となります。
スレートを葺くだけを専門にしている職人さんはスレート工とよびます。
一口に屋根職人といっても、取り扱う屋根材によって職人さんが異なります。
代表的な葺き替え工事の例
代表的な屋根材の葺き替え工事の手順例を3例、紹介します。
既存の屋根材や下地の状態によって手順が異なることもありますので、あくまで1つの例としてお考えください。
またすべての葺き替えに共通して、事前に近隣挨拶と足場の設置を行います。
瓦から金属屋根に葺き替え

瓦の葺き替えは、瓦だけではなく野地板(のじいた)も新しくすることがほとんどです。
関東地区で見かけることがほぼありませんが、瓦屋根は「土葺き(つちぶき)」といって、瓦の下に土をのせて仕上げた屋根を見かけることがあります。
土葺き屋根の場合、土を取り除いて処分する工程と、土の重みで歪んだ屋根をフラットにする下地調整の工程が加わります。
瓦の葺き替え工事の手順
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既存の瓦と桟木の撤去
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野地板の増し張りもしくは張り替え
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防水シート張り
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新しい屋根材を張って仕上げる
基本的に瓦屋根は重い屋根に該当します。
瓦より重い屋根はないため、瓦の葺き替え工事では金属屋根に限らず全ての屋根材を張れます。
コロニアルから金属屋根に葺き替え

コロニアルはアスベスト入りの古いコロニアルと、アスベストが含まれていない新しいコロニアルがあります。
ここではアスベスト入りのコロニアルを想定した手順を簡単に紹介します。
コロニアル(スレート)の葺き替え工事の手順
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既存のスレートを撤去
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構造用合板を重ね張り
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構造用合板の上に防水シートを張る
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新しい屋根材(金属屋根)を施工
コロニアルを同質素材のコロニアルに張り替える工事をおこなうことも可能です。
しかし、コロニアルをつかった改修工事はメーカー保証が受けられません。
そのため、テイガクではおすすめしておりません。
耐風性や耐久性に優れた金属屋根に葺き替える工事がおすすめです。
トタン屋根の葺き替え

トタンとは鋼板に亜鉛メッキを施した薄い金属屋根材です。
低価格ですばやく施工できることなどが受けて、戦後から1970年代に広く普及しました。
トタン屋根は漏水などで下地まで傷んでいることがほとんどのため、既存に重ねて葺くカバー工法ではなく、下地を含めた屋根全体での葺き替えをおすすめします。
トタン屋根の葺き替え工事の手順
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既存のトタンを撤去
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新たな野地板を張り、その上に防水シートを張る
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新しい屋根材(縦葺き金属屋根)を施工
まとめ
葺き替えとは、古い屋根を剥がして新しい屋根に張り替える工事のことです。
屋根の構造によって使用できる屋根材が限られる場合もありますが、消費者が選べる屋根材の選択肢は様々です。
なかでも現在、葺き替えでは費用対効果に優れた横葺きの金属屋根に葺き替えるケースが多くなっています。
世の中にどのような屋根があり、どのようなメリットデメリットがあるのかも詳しく調べておきましょう。