縦葺き屋根とは?
シンプルな形状の屋根で用いることが多い金属屋根
縦葺き(たてふき)とは屋根の傾きに沿って張るタイプの金属屋根のことです。
みなさんがイメージするトタン屋根が縦葺きです。
基本的には屋根の一番高いてっぺんの棟から軒先にかけて1枚の金属の板で屋根を仕上げます。(例外あり)
屋根1枚当たりの長さが長くなるので、長尺屋根とよぶことがあります。
また、凸っとした突起物の中に木があるトタン屋根の形状の正式名称は瓦棒(かわらぼう)といいます。
従来はトタン屋根のネガティブなイメージが強く、縦葺きは戸建て住宅で敬遠されがちでした。
しかし、ガルバリウム鋼板の登場により再評価され、新築の戸建て住宅で縦葺きの金属屋根を張るケースが急増しています。
代表的な縦葺きガルバリウム鋼板屋根
瓦棒(かわらぼう)
トタンの鉄板と木の棒を組み合わせたおなじみのトタン屋根です。
現存する縦葺き金属屋根の多くがこの瓦棒です。
派生品として、木の棒を取り除いた三晃式(芯木なし瓦棒)とよばれる屋根もあります。
立平(たてひら)
屋根材の縦の継ぎ目を折り曲げてジョイントさせる縦葺き金属屋根です。
瓦棒で用いる木の棒がないタイプの縦葺き金属屋根です。
新築戸建て住宅の採用頻度が高まっています。
折板(せっぱん)
倉庫や工場で用いられている金属屋根です。
屋根の断面が富士山の山型のフォルムになっています。
横葺き屋根とは?
複雑な多面体の屋根で用いることが多い金属屋根
横葺きとは屋根の傾き方向とは逆の水平方向に張るタイプの屋根ことです。
東京などの住宅密集地域は隣地境界の影響があり、シンプルな屋根が少ないです。
屋根の形状が複雑(多面体)な屋根が多いです。
複雑な形状の屋根の場合、一定の長さで張る縦葺き金属屋根は不向きです。
横葺き金属屋根が適しています。
そのため、都心や郊外では、新築リフォーム共に横葺きのガルバリウム鋼板屋根を見かけることが多いです。
なお、瓦やスレート屋根(波型スレート屋根を除く)の張り方も横葺きに該当します。
縦葺きは金属屋根にしかいない特有の張り方です。
代表的な横葺きガルバリウム鋼板屋根
長尺タイプの横葺き金属屋根
屋根のリフォームがきっかけで急速に普及が拡大した金属屋根です。
リフォーム時は、屋根の耐久性や止水性、断熱性にこだわる人が多いです。
そのため、1枚当たり3メートル超える断熱性能に優れた断熱材一体型の金属屋根が人気です。
長尺なので、屋根の継ぎ目が少なく、止水性に優れています。
銅板
神社でよく見かける銅の屋根です。
昔の横葺きの金属屋根とえば銅板屋根のことでした。
縦葺き屋根のメリット・デメリット
縦葺き屋根のメリット
1.長尺(勾配を緩くすることができる・雨漏りしにくい)
縦葺き屋根は屋根1枚当たりの長さ長く、棟から軒先にかけて継ぎ目が一つもありません。
そのため、屋根の傾きである勾配(こうばい)を緩くして張ることができます。
このことはつまり、縦葺きは雨漏りがしにくい屋根とも言い換えられます。
縦葺き | 1寸から2.5寸 |
横葺き | 4寸から6寸 |
ただし、勾配を緩くできること甘んじて、許容できる勾配ギリギリで屋根が施工されていことが多いのも事実です。
2.屋根面積が減り工事費用が安くできる
屋根の勾配は緩ければ緩いほど、屋根面積が少なくなります。
つまり、縦葺きは横葺きよりも少ない屋根面積で屋根を仕上げることができます。
これは屋根工事価格に関わります。
屋根工事の価格抑制のため、新築住宅では縦葺きのガルバリウム鋼板屋根が人気です。
3.工期が短い
切妻や片流れのようなシンプルな屋根の形の場合、短期間で屋根を仕上げることができます。
棟から軒先まで同じ長さの金属板(屋根)を等間隔に張るだけで屋根を完成させられるからです。
屋根を切断する工程が極端に少ないので、シンプルな形の屋根では最短1日で屋根工事が終わります。
横葺きほど手間がかかりません。
4.太陽光パネルを適切な位置に設置できる
縦葺きの金属屋根は太陽光パネルの位置を気にすることなく自由に取り付けることができます。
横葺きの金属屋根は屋根と屋根のつなぎ目の位置に制限があるため、期待している数の取り付けができない場合や適切な位置に取り付けができないおそれがあります。
縦葺き屋根のデメリット
1.断熱性能がない
金属屋根は鉄板で屋根を仕上げるイメージです。
したがって、縦葺き屋根は断熱性能が低く、夏は暑く冬は寒いです。
もちろん、費用が高くなりますが、断熱材を付加させたり、通気層のある縦葺き金属屋根(デネブエアルーフ)を用いたりするこは可能です。
しかし、そもそも縦葺き屋根は工事費用抑制を目的に選ばれる屋根です。
断熱性能がないことは、承知のうえので採用されているのが実情です。
2.雨音がする
雨音も断熱性能と同様で、鉄板に雨が当たる音が室内へと響きます。
3.複雑な形状で採用できない
1枚の屋根の長さを均等にして張ることができない多面体の複雑な屋根は縦葺きの屋根には向いていません。
横葺き屋根のメリット・デメリット
横葺きのメリット
1.断熱性と防音性に優れた製品がある
現在、リフォームで用いられる最も普及している屋根材は厚さ10㎜を超える断熱材一体型の横葺き金属屋根です。
断熱材一体型の金属屋根は、高い断熱性能が認められています。
体感として感じられるほどの効果が得られます。
もちろん、断熱材は雨音も遮音してくれます。
【YouTube動画】スーパーガルテクトの断熱効果について
2.複雑な屋根でも施工ができる
横葺きの金属屋根はシンプルな屋根はもちろん、どんな複雑な屋根でも施工ができます。
3.メーカー長期保証
横葺きの金属屋根の多くは国内製造品もしくは輸入品です。
ほとんど商品にメーカーの長期保証が設けられています。
縦葺きの金属屋根は現場加工品が多く、メーカー保証が得られないこと多いです。
横葺き屋根のデメリット
1.工事価格が高い
横葺きの金属屋根はメーカーや商品にもよって異なりますが、縦葺き金属屋根よりも平米あたりの単価が高めです。
屋根を張る方向 | 屋根材 | 費用 |
---|---|---|
横葺き金属屋根 | 断熱材一体型エスジーエル鋼板 | 約80万円 |
横葺き金属屋根 | ガルバリウム鋼板(断熱材なし) | 約70万円 |
縦葺き金属屋根 | ガルバリウム鋼板(断熱材なし) | 約65万円 |
2.高度な技術が必要(国内メーカー品)
横葺きの金属屋根、特に国内メーカーの金属屋根は高度な板金工事技術が必要です。
止水性を高めるための鋼板を折ったり曲げたりする加工が多く、熟練の技術が求められます。
輸入品の金属屋根は、ほぼ切断するだけで仕上げるため、比較的容易に工事ができます。
緩勾配の屋根に横葺き屋根の施工は要注意!
緩い勾配の屋根に横葺き屋根を仕上げるケースが後を絶ちません。
横葺き屋根は本来、2.5寸以上の勾配がある屋根に張るものです。
緩い勾配の屋根は縦葺きの金属屋根を張るのがセオリーです。
また、2.5寸までOKだからといって、許容できるギリギリの2.5寸に張ることもできれば控えたいです。
緩い勾配の屋根に無理をして横葺きに仕上げることは、雨漏りのリスクが高くなり、耐久性にも問題が生じます。
このような施工不良の多くは、屋根工事会社の認知不足から発生します。
2寸勾配のトタン屋根のリフォームで、スレート屋根に葺き替えてしまって雨漏りを引き起こす。
このような事例は意外と多いです。
緩勾配の屋根には緩勾配に適した縦葺き屋根を張る。
断熱材一体型の横葺き金属屋根を張れないケースが多い。
これからトタン屋根などの縦葺き屋根のリフォーム工事を検討している人はこのことを把握したうえで屋根のリフォーム工事に臨んでください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
屋根の形状により、縦葺きと横葺きの違いについてお分かりいただけましたら幸いです。
テイガクでは、屋根の形状に適した葺き替えをご提案します。
勾配が緩い屋根や、複雑な形状の屋根も多くの施工実績がございます。
お見積りと現地調査は無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。