スレート屋根の苔は放置しても大丈夫?塗装や屋根カバー工法時の苔の処置について

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スレート屋根に苔が付いても問題はない?

苔が付いたスレート屋根
苔が付いたスレート屋根

塗装会社から「屋根に苔が付着しているため、塗装をしたほうがよい」と勧められた経験がある方もいるかもしれません。
本当に苔は屋根に悪影響を及ぼすのでしょうか?
必ず除去しなければならないのでしょうか?

cを述べると、屋根の美観を保つ目的で苔を除去し、塗装を施すことには一定の価値があります。
しかし、苔が付いているからといって屋根の性能に大きなダメージを与えるわけではありません。

苔を放置した屋根はどうなるのか?

屋根に苔が生えているという理由だけで、性能上の異常が起こる懸念はありません。
苔はあくまでも美観の問題です。
ケイミュー株式会社のスレート屋根のメンテナンススケジュール表を見ると、「美観上必要に応じて」屋根塗装を検討すると示されています。
苔や汚れの除去について何も指摘をおこなっていません。

スレート屋根はそもそも2枚~3枚重ね

スレート屋根の断面構造を見れば、その理由は明確です。
スレート屋根は2~3枚の板が重ねられて構成されています。
たとえ表面のスレートが汚れてダメージを受けていても、その下には別のスレートが重なっているため、下層の屋根材には一切負担がかかりません。
つまり、構造上、表面に苔が付いているからといって、直ちに屋根の機能が低下するという論理にはならないのです。

スレート屋根に苔が付きやすい理由

スレート屋根に苔が付きやすい理由は3つあります。
その原因も抑えておきましょう。

1.スレート屋根は水分を吸収しやすい

スレート屋根の主成分であるセメントは、水を吸収します。
湿潤状態になった表面は、苔が繁殖しやすいです。
また、スレート屋根の表面はざらざらしていて粗く、苔が根付きやすく、除去しにくいです。

2.立地環境の悪さ

スレート屋根の苔は、北面に多く付着します。
隣に高い建物があったり、密集している地域などは、日陰になり、風通しも悪いため苔が繁殖しやすいです。
また周囲に自然が多いと苔の胞子が屋根に付着しやすいため、苔が発生しやすいです。

3.塗膜の剥がれ

雨風などにより屋根の塗膜が剥がれると、屋根材の表面が露出し、水分を吸収しやすくなります。
一般的に、10年程度で塗膜の劣化が顕著になり始めます。

スレート屋根の屋根塗装の必要性について

スレート屋根の塗装は美観維持のため行う
スレート屋根の塗装は美観維持のため行う

屋根の苔対策として、多くの方が一番に検討するのは屋根塗装ではないでしょうか。
しかし、塗装はあくまで屋根材の表面を保護するものであり、苔が発生しやすい環境を変えない限り、塗装をしても数年後には再び苔が発生する可能性が高いです。

屋根は悪環境なので外壁よりも早く汚くなる
屋根は悪環境なので外壁よりも早く汚くなる

また、塗料の種類や環境にもよりますが、一般的に塗装の寿命は5年〜10年程度と言われています。
そのため、短い期間で塗り直しが必要となり、その都度費用が発生します。
金銭面を考えても、屋根塗装はコストパフォーマンスが優れているとは言えません。

高圧洗浄により屋根が割れる可能性がある

屋根塗装では塗料を塗る前に、まず高圧洗浄を行います。
ノンアスベストのスレート屋根は割れやすいため、高圧洗浄のような大きな力を加えると割れる可能性があります。
そのため高圧洗浄は塗装以前に、屋根材自体の故障に繋がりやすくなります。

そもそも塗装できないスレート屋根がある

のぼるだけで簡単に割れるスレート屋根
2000年前後に製造されたスレート屋根はのぼるだけで簡単に割れる

2000年前後に製造されたスレート屋根(パミールやコロニアルNEOなど)はアスベストが含まれておらず割れやすいです。
この時期に製造されたスレート屋根に塗装を行っても、屋根自体が10年前後で寿命を迎えるため、塗装費用が無駄になってしまいます。
2000年前後に家を建てたり、屋根工事を行なった方はご注意ください。
※2000年代後半のスレート屋根は、初期の不具合を受けて改良されています。

屋根カバー工法もしくは葺き替え工事を検討

テイガクでは、スレート屋根は塗装を控えて、屋根カバー工法もしくは葺き替え工事をおすすめしています。
アスベスト含有有無によって耐久性は変わりますが、スレート屋根の寿命は20年~30年ほどです。
いずれは金属屋根によるカバー工法や葺き替え工事が必要となります。
屋根塗装による費用をかけずに、いずれ必要になる本格的な工事のためにお金を貯めておくと良いでしょう。

スレート屋根における屋根塗装とカバー工法のメリット・デメリット

メリット デメリット
屋根塗装 ・工事価格が安い

・屋根が綺麗になる
・屋根が割れる可能性がある

・苔が生えやすい環境は変わらないため再発しやすい

・塗装の寿命が5年〜10年と短く、費用対効果が悪い

・屋根材自体の劣化を解決できない
屋根カバー工法 ・屋根本体の耐久性を向上させられる

・新しい防水シートを貼ることで防水性能が改善すると屋根材を重ねるため防水性が向上する

・屋根が二重になるので断熱性・遮音性が上がる

・ノンアスベストの割れやすい屋根でも対応できる
・が塗装より工事費用が高い

・下地が劣化している場合は葺き替え工事が必要

屋根カバー工法時は洗浄も検討

屋根に大きな苔があると屋根カバー工法はできない
このような苔があると屋根カバー工法はできない

屋根カバー工法時は基本的に高圧洗浄をおこなうことはありません。
しかし、屋根の苔の量が多い場合は、重ねて張るルーフィングや屋根材の納まりに影響が及ぶため、高圧洗浄をおこなったうえで屋根カバー工法をおこなうこともあります。
事前に屋根の苔の増殖状態を確認のうえ、必要に応じて洗浄をして苔を取り除きます。

高圧洗浄を行った上でルーフィングを貼ることもある
洗浄を行った上でルーフィングを貼ることも

苔が付きにくい金属屋根

金属屋根には、表面が「平滑」なものと「粗面」なものがあります。
石粒付き金属屋根はスレート屋根と同様に表面が粗面のため、苔が付着しやすい性質を持っています。
一方、表面が平滑な金属屋根材であれば、苔が付着しても雨水で流れ落ちやすく、美観の維持に優れています。
苔による屋根表面の劣化が気になる方には、アイジー工業の「スーパーガルテクト」やニチハの「横暖ルーフ」など、表面が平滑な金属屋根材を使用することをおすすめいたします。

スレート屋根の苔に関する動画や施工例

以下はテイガクのYouTubeチャンネルでスレート屋根の苔について解説した動画です。
実際のお客様宅の屋根を例に、塗装より本格的な改修工事をすることの必要性を解説しております。

スレート屋根の苔(コケ)について

スレート屋根の苔(コケ)について

【検証動画】苔が生えたコロニアルにルーフィングは貼っていいのか?

【検証動画】苔が生えたコロニアルにルーフィングは貼っていいのか?

以下は苔が発生した屋根をカバー工法でリフォームした施工例です。
新しい金属屋根に張り替えて、美しく生まれ変わった屋根をご覧ください。

画像中央の アイコン アイコンを左右に移動すると、画像の比較ができます

スレート屋根のリフォームならテイガクへ

ご自宅の屋根に苔が目立ち始めたら、リフォームを検討するタイミングかもしれません。
実際にスレート屋根の苔対策として、屋根塗装と一緒に苔の除去をされる方が多いです。
しかし、屋根塗装には「美観の維持」という効果しかありません。
屋根の性能を根本的に改善し、長く安心して暮らすためには、金属屋根を用いたカバー工法や葺き替え工事をおすすめいたします。
耐久性に優れた金属屋根にリフォームすることで、苔が付きにくく長期間強度を保てる屋根を手に入れることができます。
テイガクでは、現地調査とお見積りを無料で承っております。
屋根の苔や老朽化でお悩みの方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人
著者 前川 祐介
前川 祐介 代表取締役社長
テイガク サイト制作責任者
宅地建物取引士
建築物石綿含有建材調査者
著者経歴

大阪府堺市生まれ。
千葉県立船橋東高校→法政大学経営学部→サノフィ(旧アベンティスファーマ)株式会社を経て、父親が経営する建築板金工事会社(昭和ルーフリモ株式会社)へ入社。
最終学歴、中央工学校夜間建築学科。
年間100棟以上の屋根と外壁工事に携わった経験を活かし、テイガク記事の執筆とユーチューブ動画撮影をおこなっています。趣味は日本史学。

運営会社

昭和ルーフリモ株式会社は2001年設立の板金工事会社です。
これまでの金属屋根と金属サイディング工事件数の合計は20,000棟を超えます。
板金工事は足場を組み立てるため、外壁塗装の工事事業にも注力しています。

国土交通大臣許可(般-5)第22950号
許可を受けた建設業:板金工事業/屋根工事業/塗装工事業 他