この記事は「屋根機能の維持」という観点で屋根塗装が必要か不要かについて、解説します。
「美観維持」という観点においては、人によってとらえ方が異なるため、屋根塗装の意味はあるかもしれません。しかし、「屋根機能の維持」の観点で結論をのべると、「スレート屋根の塗装は意味がありません」。
そのため、テイガクでは屋根塗装は原則、おすすめしていません。
屋根塗装にお金をかけるくらいなら、子供の教育費や歯並び、ご自身の趣味にお金を使ったほうが価値があると筆者は思っています。
いずれ必要になる屋根カバー工法や葺き替え工事の資金として、大事なお金を残しておいた方が賢明です。
この記事では、塗装工事だけではなく金属屋根の工事を得意とする会社だからこそ語れる、屋根塗装の意味について解説します。
目 次
表示塗装後10年経過した屋根の様子
左の屋根は屋根塗装をしたスレート屋根です。おそらく塗装後、約10年程度経過しています。
右の屋根は屋根塗装をしなかったスレート屋根です。
スレート屋根は、屋根と屋根の継ぎ目のところに雨水が集中し、継ぎ目のところから色あせる傾向があります。
色あせたところは徐々に左右に広がり、最終的には屋根全面が黒ずんだ感じになり色あせます。
スレート屋根は屋根塗装をしないと水分を吸収し屋根機能が低下するといった表現は、筆者は間違っているというスタンスです。
消費者が誤認をする言い回しです。
実際多くの屋根は屋根塗装をしないで色があせても、苔が生えても、屋根機能に影響が及ぼすことは、ほぼありません。
美観維持の観点から屋根塗装が推奨されることがありますが、筆者は塗装をしない屋根のほうが自然な感じがして、好印象です。
スレート屋根の苔も味わいのように感じられます。
屋根塗装の意味がある屋根と意味がない屋根
金属屋根の塗装は意味がある
金属屋根は錆が発生すると拡大する恐れがあります。
特にトタン屋根はほったらかしにすると、瞬く間に錆が拡がります。
したがって、定期的な屋根塗装をおこなうことで屋根の寿命を維持し、耐久性を向上させることができます。
トタン屋根は10年~15年に一度の屋根塗装が必要です。
なお、ガルバリウム鋼板やエスジーエル鋼板は、錆が発生しても拡大しない性質があります。
スレート屋根の塗装は全く意味がない
屋根機能維持の観点において、スレート屋根の塗装は意味がないです。
屋根塗装をしてもしなくても、屋根の機能は変わりませんし、雨漏りが解消されるといったこともありません。
屋根塗装をした後、雨漏りが生じたり、棟板金や屋根がはがれたことを塗装会社に原因を追究しても、「それは屋根塗装とは関係がなくて、屋根自体の問題です」。もしくは「自然災害が原因です」。とあしらわれるだけで終わることでしょう。
また、スレート屋根の中には、屋根塗装をおこなうと屋根が傷む逆効果になる商品もあります。
スレート屋根の塗装が意味がない7つの根拠
1.屋根の構造を知れば意味がないことが分かる
よく語られている間違った指摘
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「屋根塗装をしないと雨水が屋根を浸透して雨漏りが生じる」は誤り
スレート屋根は水を含むようになり、次第に屋根の裏側に雨水が回って、スレート屋根を固定している釘から雨水が入り込み雨漏りが生じる。
これらは間違った指摘です。
スレート屋根の断面を見ると、1枚で仕上げられておらず、実質的に2枚重ねになって仕上げられています。
つまり、表面の1枚目の屋根がどうなろうと、2枚目(下段)の屋根がある限り、屋根の機能に悪影響は及ぶことはありません。
もちろん、2枚目(下段)の屋根がはがれてしまうと屋根の機能は低下しますが、そこまでに至るケースは極めてまれです。
1枚目の屋根の色あせや水が含むことは、屋根機能の観点からは、何も心配する必要はありません。
2.そもそも屋根の中に雨水が入り込む設計
スレート屋根は屋根の内部に雨水が入り込む設計になっています。
毛細管現象とよばれる現象で、スレート屋根に降り注いだ雨水は勾配に逆らって屋根の下側へと浸水します。
入り込んだ雨水は屋根と屋根のすき間から排水されます。
タスペーサーとよばれる屋根のすき間を空ける部材を屋根塗装の際に取り付けるのもこのためです。
もし屋根塗装をすることで屋根の雨漏り防止になるといったセールス表現をされたのであれば、それは間違いです。
なぜなら、スレート屋根は雨水が内部に入り込んで外に排水させる構造になっているからです。
3.屋根材メーカーは屋根塗装は美観維持としている
スレート屋根の製造会社であるケイミューのカタログを見ると、スレート屋根のメンテナンスの考え方が掲載されています。
屋根塗装は「美観上必要に応じて」と明記されています。
つまり、美観を気にしなければ屋根塗装をおこなう必要はないと読み解けます。
4.塗装により効果は立証されていない
屋根塗装をすることで屋根の寿命が延びたというエビデンスは得られていません。
もちろん、屋根塗装をして屋根に雨漏り保証を設けてくれる塗装会社は、筆者が知る限り、聞いたことがありません。
屋根機能維持に対する証拠を示したり、責任を負ったりせずに屋根塗装をしているのが実態です。
塗料メーカーの屋根塗料のカタログには屋根機能を改善させるかのような表現は一切していません。
「屋根の耐久性」や「屋根の寿命」「雨漏り」「屋根の機能改善」といったキーワードは全く用いていません。
スレート屋根は経年と共に耐久性が衰える屋根材です。
アスベスト入りの屋根では40年、ノンアスベストのアスベストが含まれていない屋根は20年~30年が限界です。
屋根の表面だけを塗装をしたところで、2枚目の屋根や屋根の裏側など屋根全体の劣化が進むので、寿命を抑えることはできません。
5.塗料が剥げると汚くなる
屋根塗装後は苔や汚れが取れて綺麗に感じますが、5年10年経過すると汚くなります。
屋根塗装された屋根の色あせは、化学物質が溶けた感じであり、自然な色あせとは程遠い姿となります。
人にもよりますが、自然に色あせしたスレート屋根の方が味わいがあって良い気がします。
6.外壁塗料と足並みを揃えることが難しい
屋根は外壁よりも劣悪な環境です。
紫外線や雨風の影響を常に受けている部位です。
そのため、塗料の色あせのスピードが早いです。
たとえば、屋根塗料と外壁塗料、同じ塗料を用いた場合、屋根塗料の耐候年数(色あせ年数)は外壁塗料の約半分です。
住宅塗料製造メーカーのエスケー化研のホームページをみると、以下のように、外壁用の期待耐候年数と屋根用の期待耐候年数が記載されています。
外壁用の期待耐候年数と屋根用の期待耐候年数
塗料 | ジャンル | 期待耐候年数 |
---|---|---|
エスケープレミアムシリコン (外壁用) |
ラジカル | 14-16年 |
エスケープレミアムルーフ (屋根用) |
ラジカル | 7-9年 |
街中を歩いていると、外壁は綺麗なのに、屋根が汚い建物をよく見かけます。
消費者は外壁塗料にはこだわり、屋根塗料は軽視する傾向があります。
つまり、屋根塗料よりも外壁塗料のグレートを上げる傾向があります。
本来は逆です。
屋根で用いる塗料は外壁で用いる塗料よりもワンランクもしくはツーランクうえの長持ちする塗料を用いなければいけません。
しかし、屋根塗料のグレートをあげると多額のコストが発生します。
高額なコストをかけてまで屋根塗装にこだわることに疑問も感じます。
7.屋根塗装を30年間したことのない住宅は多い
実際に30年以上屋根塗装をせずに屋根が機能している住宅は、数えきれないほど存在します。
街中を歩いていると、これまで1度も屋根塗装をおこなっていないと思われる屋根、たくさん見かけられます。
もちろん、雨漏りが生じていて生活に支障をきたしていれば、屋根になんらかの処置が必要になるわけなので、屋根に何も処置をしていないのであれば、屋根塗装をしないでも屋根機能が維持するということが理解できます。
実際の証拠があることから、屋根塗装が不要であることが読み解けます。
なぜ塗装業者から屋根塗装を推奨されるのか?
外壁塗装とセットで販売しやすいから
モルタル外壁や窯業サイディングなどの外壁は、スレート屋根とは違い2枚重ねになっていません。
そのため、劣化が進んだ外壁は、外壁がひび割れたり、たわんだりするリスクを抱えることになります。
定期的に外壁塗装でメンテナンスをおこなうことは有効な手段です。
しかし、「屋根塗装は外壁塗装のついでにセットでおこなっておけば良いもの」、「何となく塗っておけば良い」といった軽い感じで考えていると考える消費者が多いです。
塗装会社も利益になるため、外壁塗装と屋根塗装について、十分な説明をせずにセットで販売する傾向があります。
そもそもスレート屋根は2枚重ねになっており、そして、屋根内部に雨水が入る構造になっている屋根です。
本来、外壁塗装と屋根塗装を同レベル、同じ考えでメンテナンスをおこなうものではありません。
屋根塗装の効果が限定的であることを情報発信をしている塗装会社様も
屋根塗装をおこなうことは自社の利益に結びつくため、不要論の問題提起を誰もしません。
塗装会社は外壁塗装と屋根塗装をセットに販売できれば売上が上がります。
塗料会社も売上があがります。
塗装会社を紹介してくれる塗装会社紹介サイト運営会社も売上があがります。
屋根材製造メーカーも、塗装を一度でも処置してくれれば、製造責任から免れるため、屋根塗装の不要論については黙認しています。
しかし、屋根塗装の効果が限定的であることを情報発信している塗装会社様も存在します。
塗装を主業務にする立場でありながら、不利益を被る情報を発信しています。
この記事とあわせて、こちらの塗装会社様のブログをご覧ください。
最悪なのは屋根塗装をしてはいけない屋根に屋根塗装
2000年前後に製造されたスレート屋根は塗装不可
危険なことは、屋根のことに十分な見識がない塗装会社に屋根と外壁を塗装されてしまうことです。
2000年前後に製造されたノンアスベストの屋根に塗装はおこなっても意味がないです。
お金の無駄遣いです。
スレート屋根の製造年
1990年代後半以前 | 塗装可能 |
2000年前後 | 塗装不可 |
2006年以降 | 塗装可能 |
2000年前後に製造されたスレート屋根の塗装をおこなってはいけない理由
1990年代半ば頃に製造されたスレート屋根には、スレート屋根の主成分であるセメントを強化させるためにアスベストを含めていました。
アスベストの発がん性が問題視され、2000年前後からアスベストを抜いたスレート屋根が製造されるようになりました。
2000年前後に製造されたスレート屋根は、アスベストのような耐久性を持ち合わせておらず、築後10年程度経過してから割れや欠けなどが生じやすくなることがよく知られています。
あまりに程度が酷い商品は、消費者庁からリコールがなされています。
人が屋根の上にのぼるだけで、簡単に屋根がパリパリ割れてしまいます。
屋根塗装時に職人さんが屋根の上にあがって作業をおこなうので、屋根を傷める結果を招きます。
また、屋根塗装時の高圧洗浄でも屋根を水圧で屋根が傷んでしまいます。
塗装をしてはいけない代表的なスレート屋根
パミール
1996年~2008年に製造されたスレート屋根。
築後10年程度経過すると、屋根と屋根の層が剥離しはじめます。
コロニアルNEO
2001年~2008年に製造されたスレート屋根。
築後10年程度経過すると、割れや欠けが発現します。
屋根の上にのぼると簡単に割れるのも特徴。
屋根に関する知識と経験がない塗装会社が最も塗装しがちな代表的な屋根。
屋根塗装より棟板金の交換と換気棟設置
棟板金内部の下地の腐食に注意
屋根の不具合は屋根本体よりも棟板金から起因する不具合の方が多いです。
棟板金が起因する雨漏りや、はがれといった不具合が頻繁に発生します。
屋根塗装時に棟板金の釘を補修する行為は意味がありません。
なぜなら、棟板金の下地の腐食が進んでいるからです。
腐食した下地にいくら釘やビスで固定をしても、がっちりと棟板金を固定することはできません。
屋根のメンテナンスは棟板金が何よりも優先されるべきです。
屋根の耐久性を高めるなら換気棟を設置
屋根の耐久性を高めるのであれば、屋根裏の湿気を取り除く、換気棟を設置してください。
換気棟は屋根内部の湿気を外に排出してくれる役割があります。
屋根の内部結露を抑えることで、屋根の下地でである「野地板」や防水シートである「ルーフィング」の劣化を遅らせることができます。
さいごに
このページではこれまで常識だと思われていた屋根塗装について、全く異なる意見を述べています。
しっかりと根拠を示すことで、屋根塗装の必要性を読者の方に投げかけています。
日常的に毎日、スレート屋根を葺き替えたりカバー工法しているひとつの板金工事会社の結論です。
スレート屋根はいずれカバー工法や葺き替えなどの工事が必要になる屋根です。
屋根塗装をおこなわずに、将来必要になる大がかりな工事のためにお金を残しておくことが賢明だと、筆者は日頃から感じています。
そして、屋根塗装よりも不具合頻度が高い「棟板金の交換」や屋根の寿命を高めて屋根下居室が過ごしやすくなる「換気棟の設置」に注目してほしいです。
十分な説明をしない、あるいは屋根のことについて理解が浅い塗装会社様は少なくありません。
パミールやコロニアルNEOなどの塗装をしてはいけない屋根に塗装をしたり、多くの屋根を踏み割った状態で屋根塗装をしたりしている現場を今でも多く見かけることがあります。
もちろん、世の中は屋根塗装を推し進めている会社様が大多数です。
異論や反論があるはずです。
テイガクの意見を参考にしたうえで、情報を整理し、消費者様自ら屋根塗装が本当に必要であるのかご判断ください。