ガイドライン工法とは?|屋根瓦の新しい張り方と費用について

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ガイドライン工法とは

ガイドライン工法とは、地震や台風に強い瓦屋根を実現するために設けた新しい瓦屋根の施工方法のことです。
阪神大震災を経た2000年建設基準法改正を受け、2001年に設定されました。
瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」が発行され、耐震性と耐風性に優れた瓦屋根の張り方の基準が確認できます。
「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」は「一般社団法人全日本瓦工事業連盟」のホームページからダウンロードできます。

変更点従前ガイドライン工法
瓦をとめる釘の本数4枚につき1本2枚につき1本
(2階の屋根はできれば全数緊結)
瓦の留め具の種類釘もしくはビス
棟瓦の施工方法湿式工法乾式工法
瓦の構造非防災瓦防災瓦
(組み合わせ葺き)
※ガイドライン工法は各地域の基準風速などで施工法が変わります。各地域に適した施工基準は「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」で確認をしてください。

ガイドライン工法ができる以前の瓦の張り方

桟木(さんぎ)に引っ掛けて留める
桟木(さんぎ)に引っ掛けて留める

現存する多くの瓦屋根は引っ掛け桟瓦葺(ひっかけさんかわらぶき)とよばれる工法で張られています。
桟木(さんぎ)とよばれる細くて小さい木に瓦を引っ掛けて留めつける工法です。
引っ掛け桟(ひっかけさん)工法や乾式工法ともよばれます。
ただし、瓦のてっぺんに取り付ける棟瓦(むねがわら)だけは、土と漆喰を用いる湿式工法で積み上げられていることが多いです。
棟瓦は、ぐし瓦とよばれることもあります。

土をつかって瓦を留める「土葺き」
土をつかって瓦を留める「土葺き」

土をつかって瓦を張る方法を湿式工法とよび、土をつかわずに瓦を張る方法を乾式工法とよびます。
瓦全てを湿式工法で張る土葺き屋根は、まれではありますが、今でも見かけることがあります。
土葺き屋根は耐震性に問題があり、早期改修が広くよびかけられています。

ガイドライン工法の瓦の張り方

阪神大震災の影響で瓦の張り方の基準であるガイドライン工法が策定されました。
ここでは大きく変わった3つのポイントを紹介します。

(1)釘の本数を増やす

瓦1枚につき1本の釘をつかう全数緊結(きんけつ)
瓦1枚につき1本の釘をつかう全数緊結(きんけつ)

ガイドライン工法後の瓦屋根は、従来と同じ引っ掛け桟瓦葺工法による施工となります。
しかし、瓦につかう釘の本数や種類に見直しが入りました。
2000年までの瓦の張り方は、瓦4枚につき釘を1本つかって瓦を桟木に打ち付けていました。
ガイドライン工法後では、瓦2枚に1枚(ちどり緊結)につき1本の釘をつかうことが最低基準となっています。
できれば瓦1枚につき1本の釘をつかう、全数緊結が推奨されています。
また、各地域ごとの基準風速地表面区分によって瓦の張り方に基準が設けられるようになりました。
たとえば、周囲に風を遮るものが何もない風の強い沖縄県の建物である場合は、より厳しい施工方法が求められます。

(2)棟瓦の乾式化

棟瓦だけ土で留められている
棟瓦だけ土で留められている

現存する瓦屋根は、瓦(平瓦)は乾式工法、棟瓦だけは湿式工法で仕上げられていることが多いです。
勝手な私のイメージですが、何重にも積み上げられた立派な棟瓦だけは、従来の伝統的な施工方法を守り抜きたいといった瓦業界の意向があったのかもしれません。

漆喰をつかわず乾式面戸を利用する
漆喰をつかわず乾式面戸を利用する

しかし、湿式工法は瓦を固定する力が弱い工法です。
実際に大きな地震や台風が発生するたびに、棟瓦が崩れる被害が続出しています。
そのような背景を踏まえて、棟瓦の乾式工法の工事仕様がガイドライン工法で定められました。
棟瓦の乾式工法では、漆喰(しっくい)を用いず、乾式面戸(かんしきめんど)とよばれるビニール製のシートを用います。
ガイドライン工法により、棟瓦は軽量化し、漆喰のメンテナンスが不要になりました。

(3)防災瓦

防災瓦
防災瓦

昔は瓦と瓦を積み重ねて張るだけでした。
しかし、ガイドライン工法以降の瓦は、瓦1枚1枚がツメ(アーム)で連結する形になっています。
いわゆる防災瓦のことです。

防災瓦のアーム
防災瓦のアーム

ガイドライン工法は防災瓦を用いること前提に定められた工法です。
さらに最近は瓦の軽量化も進んでおり、軽量防災瓦とよばれる新しいジャンルの瓦も登場しています。

関連記事 軽量瓦・防災瓦とは?|瓦屋根に葺き替える場合の新しい選択肢

ガイドライン工法の問題

強制ではない

ガイドライン工法に従って施工された屋根は、耐震性や耐風性が従来の施工方法に比べて明らかに強いです。
いうまでないことですが、これから瓦屋根の工事を検討されているかたは、ガイドライン工法に従った工事をおこなうべきです。

平成11年5月に改正された建築基準法で、瓦は風圧や地震で脱落させてはならないといった条文(性能規制)が明記されました。
ガイドライン工法はその建築基準法の改正にあわせて、瓦業界団体がよびかけている自主規制です。
実はガイドライン工法に沿った施工をおこなうかどうかに強制力はありません。

また、より強固に瓦を固定させる全数緊結などの実施は、施工業者の任意となります。
これは建設業界すべてにおいて当てはまりますが、費用負担や手間のかかる任意の施工方法を積極的に取り組む建設業者はほとんどいません。

もちろん、瓦葺工事会社の中には、「瓦の全数緊結」や「縦桟ビス止め工法」「二重野地通気工法」など、屋根の長寿命化をしっかり考えている会社も存在します。
しかし、ガイドライン工法に従って瓦屋根が施工されていないケースもあるようです。
こらから瓦屋根を新しく張る予定の施主様は注意を払ってほしいです。

ガイドライン工法をおこなう会社の見つけ方

「全瓦連」による認定店
「全瓦連」による認定店

ガイドライン工法で施工ができる瓦葺工事会社は、研修課程を修了することが条件となります。
とりまとめているのが一般社団法人全日本瓦工事業連盟です。
内閣府所管の一般社団法人で、「全瓦連」とよばれています。
かいつまんでいうと瓦葺工事業者が集まった組合です。

全瓦連のウェブサイトで、ガイドライン工法ができる瓦葺工事会社を見つられます。
認定店」のマークがついている会社がガイドライン工法をおこなえる業者です。

ガイドライン工法の費用

瓦屋根工事のざっくりとした費用感です。
野地板と足場料金は含まれておりません。

瓦屋根工事工事費用
従来の工法屋根面積×10,000円+役物代30万円
ガイドライン工法・全数緊結(屋根面積×12,000円+役物代30万円)×消費税
ガイドライン工法・縦残釘留め(屋根面積×13,000円+役物代30万円)×消費税

おおむね従来の瓦屋根工事に比べて20%~30%程度、高くなると思われます。

石州瓦のメーカー株式会社丸惣のホームページに詳細の工事価格が掲載されています。
参考にしてください。

台風に強い瓦屋根とは

2019年台風15号による瓦屋根の被災
2019年台風15号による瓦屋根の被災

2019年に発生した台風15号では、ガイドライン工法で仕上げられた屋根でさえも被害が多く発生しました。
ガイドライン工法に準拠した施工方法(防災瓦を使用した65㎜の釘どめ)では、地表面祖度区分Ⅱ以下のエリアでは耐風圧性能が不十分とされています。
地表面祖度区分とは、市区町村による海岸近くや建物周りに障害物がない風が強い地域を指定した区分のことです。
耐風性能を上げるには、釘どめではなく、45mmもしくは51㎜長さのビスで全数緊結することなどが日経ホームビルダーの掲載記事で提案されていました。
もちろん、風の影響が少ない地表面祖度区分Ⅲだからといって、周囲に建物がなかったり、高台にあったりする地域はより風に強い施工が求められます。

2019年台風15号による屋根被災の様子
2019年台風15号による屋根被災の様子

そもそも、ガイドライン工法は阪神大震災の被災を受けて定められた瓦の張り方です。
近年発生している風速50mを超える異常な台風までを想定した作成はされていないでしょう。
ガイドライン工法だから100%安心ともいえません。

さいごに

ガイドライン工法のなかでも工事方法の品質に差があります。

全数緊結+2枚毎パッキン付きステンレスネジ補強例(参照:山形県瓦工事組合施工ガイドライン)

瓦屋根の最大メリットは耐久性が高いことに尽きます。
長寿命だから新築時に瓦を選択したかたが多いはずです。
そえゆえに、瓦屋根は釘ではなくビスをつかうなど、より高品質なガイドライン工法の施工を求めてほしいと思います。
具体的には基準風速38m/s以上の施工方法を新築時から取り入れることをおすすめします。
山形県瓦工事組合の施工ガイドラインがわかりやすかったので、参考にしてください。

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この記事を書いた人
著者 前川 祐介
前川 祐介 テイガク サイト制作責任者
宅地建物取引士
著者経歴

大阪府堺市生まれ。船橋東高校→法政大学→サノフィ(旧アベンティスファーマ)株式会社を経て、父親が経営する板金工事会社である昭和ルーフリモ株式会社へ入社。年間100棟以上の屋根と外壁工事に携わった経験を活かし、テイガク屋根修理の記事を執筆しています。

運営会社

昭和ルーフリモ株式会社は2001年設立の板金工事会社です。
これまでの金属屋根と金属サイディング工事件数の合計は10,000棟を超えます。

国土交通大臣許可(般-25)第22950号
許可を受けた建設業:板金工事業/屋根工事業/塗装工事業 他

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  1. ガイドライン工法ができる以前の瓦の張り方
  2. ガイドライン工法の瓦の張り方
    1. (1)釘の本数を増やす
    2. (2)棟瓦の乾式化
    3. (3)防災瓦
  3. ガイドライン工法の問題
    1. 強制ではない
    2. ガイドライン工法をおこなう会社の見つけ方
  4. ガイドライン工法の費用
  5. 台風に強い瓦屋根とは
  6. さいごに