
瓦屋根にはいくつか種類があります。
全ての瓦が同じような耐久性や性能を有しているとは限りません。
最近は従来の瓦の半分の重さで瓦よりも硬くて丈夫な瓦屋根も開発されています。
この記事では、屋根瓦の種類と名称、耐久性について解説します。
目 次
閉じる瓦屋根のシェアは減少傾向
新築の瓦の出荷量

グラフは2024年に公開されたフラット35(旧住宅金融公庫)の最新データを元にした屋根材の出荷統計です。
阪神淡路大震災(平成7年)の発生後、瓦のシェアが低下していることが読み取れます。
屋根材の中にアスベストを含めることが禁止された2000年頃(平成12年)は、スレート屋根の需要が低減し、再び瓦屋根のシェアが1位になっています。
近年は金属屋根のシェアが急上昇している一方、瓦屋根のシェアは11%と激減しています。
既存住宅では最も多い
瓦の販売実績は過去50年を振り返ると他の屋根と比べ物にならないほど多く、現在、建築されている戸建て住宅全の約50%が瓦屋根です。
瓦屋根の種類
瓦屋根の種類は、大きくわけて3種類あります。
粘土が主成分の「粘土瓦」、セメントが主成分の「セメント瓦」、そしてセメントに特殊樹脂や気泡を含めた「樹脂繊維セメント瓦」の3種類です。
①粘土瓦
粘土瓦は「陶器瓦」と陶器のようなガラスコーティングをしない「いぶし瓦」に分けられます。
そして、粘土の産地ごとに瓦の特徴が異なることから、「三州瓦」や「淡路瓦」など、瓦屋根は製造地域によっても呼び名が変わります。
②セメント瓦
セメント瓦は現在では流通されていません。
既存住宅の屋根でしか見かけることがない瓦屋根もあります。
③樹脂繊維セメント瓦
屋根材最大手メーカーであるケイミュー株式会社は、セメント瓦の改良版と言い換えられる樹脂繊維セメント瓦(商品名ルーガ)を開発しました。
ルーガは、見た目の美しさと軽量性から、徐々に人気が高まっている瓦屋根もあります。
瓦屋根の耐久性
瓦の耐久性は極めて高い
下記に瓦屋根の耐久性を示します。
筆者の主観に基づく評価です。
瓦屋根 | 瓦屋根 | 陶器瓦 | セメント瓦 | 樹脂繊維セメント瓦 |
寿命 | 50~60年 | 40年 | 40年 | 40年 |
瓦屋根そのものの耐久性が高い一方、瓦屋根は耐震性と耐風性に対してマイナスイメージがあります。
建築基準法で求められる構造基準で建築されていない重い屋根の住宅が日本ではまだまだたくさんあります。
地震や台風に対する心配から、瓦屋根を金属屋根に葺き替える人も増えつつあります。
また、強風に対する固定力も従来の瓦屋根は弱く、ガイドライン工法とよばれる瓦を強く固定させる施工方法が最近、法律の改正と共に義務化されました。

陶器瓦の種類と名称
屋根に使われる機会の多い陶器瓦は耐久性が高く、屋根材のなかでは最も長くつかえる屋根材として評価されています。
人によっては、色が限られているようなイメージがあるかもしれません。
しかし、実は色のバリエーションが多いのも特徴です。
陶器瓦といぶし瓦との違い
陶器瓦といぶし瓦はいずれも土が主成分の粘土瓦に分類されます。

粘土瓦は、粘土を瓦の形にして、高温で焼き上げて作ったものです。
その中で、焼き上げる前に釉薬(ゆうやく、うわぐすり)をかけて、色を出すものが陶器瓦で、様々な色合いが出せ、変色もほとんどありません。

一方、いぶし瓦は、釉薬を使わずに、瓦の焼き上げの最後にいぶして、色を出すことから、いぶし瓦と呼ばれています。
いぶし瓦はネズミ色と銀色の中間のような色で、時間が経つと色ムラが出ますが、それが建物の“味”にもなります。
瓦屋根のJ型・F型・S型・M型とは?
陶器瓦には、J型(和型)、F型(平板型)、S型(スパニッシュ型)M型の4つの種類があります。
J型(和型)
J型(和型)は緩やかなカーブを描いた昔ながらの瓦で、古い家屋の屋根でよく見られる形です。
JAPANの頭文字を取って、J型と呼ばれています。
F型(平板型)
F型(平板型)は平らな板のような凹凸のない瓦で、和風住宅だけではなく、洋風住宅にも使われています。
Flatの頭文字を取ってF型になったという説と、フランス瓦を参考にしたのでF型になったという説があります。
S型(スパニッシュ型)
S型(スパニッシュ型)はSpanishのSから名前がついた瓦で、スペイン瓦を日本の風土や住宅のデザインに合わせて改良したものです。
凹凸がある屋根で、洋風住宅に使われることが多いです。
M型
M型はS型と比べて、瓦の凹凸が深い形をした洋風瓦です。
M型瓦は他の形に比べて軽量(軽量瓦)であることが多いです。
これからの陶器瓦は軽量防災瓦
陶器瓦で最近注目されている瓦が、軽量防災瓦です。
軽量防災瓦は従来の瓦よりも重さが(少しだけ)軽く、台風や地震に強い作りの瓦として宣伝されています。
最近の新築住宅で仕上げらている陶器瓦の大多数が軽量防災瓦です。
なかでも軽量防災瓦のF型は和風住宅にも洋風住宅にも合うため、人気です。
セメント瓦の種類と名称
セメント瓦は現在は販売されていない屋根材です。
その一方で、そろそメンテナンスが必要な時期に来ているセメント瓦葺きの住宅が増えています。
アスベストが入ったセメント瓦も

セメント瓦はセメントを主成分とした屋根瓦のことです。
見た目を自由に成型できるため、陶器瓦と区別がつきにくく似ています。
しかし、陶器瓦とは違い、年数が経つと色あせが発生します。
セメント瓦の一部にはアスベストが使われているため、葺き替え時にアスベスト処分料金が追加でかかってしまいます。
モニエル瓦とコンクリート瓦
セメント瓦やコンクリート瓦、モニエル瓦はほぼ性質や耐久性、形は同じものとして理解いただいて問題ありません。(アスベストの有無を除く)
セメント瓦はセメントが主成分ですが、コンクリート瓦はモルタルを主成分としています。
一方、モニエル瓦は日本モニエルという外資系企業と取り扱っていたセメント瓦のことを言います。
これらの瓦は現在作られておらず、入手が困難です。
そのため、部分的に新しい瓦に交換できません。
セメント瓦の耐用年数
セメント瓦の耐用年数はメーカーや種類にもよります。
一般的には陶器瓦よりも割れやすいとされており、耐久性は30年~40年程度と評価されています。
ただし、テイガク屋根修理の感覚では40年~50年程度の耐久性は期待できると評価しています。
テイガク屋根修理の経験上、そこまで陶器瓦とセメント瓦の耐久性は変わらないと思っています。
樹脂混入繊維補強軽量セメント瓦の特徴と名称

新しいタイプのセメント系の瓦として、ケイミュー株式会社が取り扱うルーガ(ROOGA)という商品があります。
ルーガは樹脂とセメントによるハイブリットタイプの屋根材で、2007年に販売が開始されました。
一般名称は樹脂混入繊維補強軽量セメント瓦で、樹脂セメント瓦、樹脂繊維セメント瓦と呼ばれることもあります。
ルーガは販売から10年以上が経過し、専門家からも高い評価を得ています。
見た目も陶器瓦と違いが分からないほど、よくできています。
樹脂繊維セメント瓦の特徴
樹脂繊維セメント瓦の優れた点は、大きく3つあります。
1つ目は耐震性が高い点です。
樹脂繊維セメント瓦は陶器瓦と厚みは同じですが、重量は半分です。
そのため、従来の陶器瓦にくらべて地震時の揺れが少なく、耐震性を高められます。
2つ目は割れにくく丈夫な点です。
瓦に含まれている繊維材料は補強材の役割があります。
3つ目は色あせしにくい点です。
樹脂繊維セメント瓦は、無機塗料が塗布されていています。
無機はハイグレードの色あせしくい塗料です。
長く瓦屋根の美観が維持できます。
樹脂混入繊維補強軽量セメント瓦の耐用年数
ルーガの対応年数は、メーカーのカタログを見ると30年を目安としています。
30年という数字はケイミュー株式会社の定番屋根であるスレート(コロニアル)屋根と変わりません。
しかし、ルーガはケイミューが販売しているスレート(コロニアル)よりもはるかに厚みがあり、繊維を含ませて補強している屋根材です。
スレートよりも高い耐用年数、40年は最低でも期待ができるとテイガクは評価しています。
さいごに
今回は瓦について解説しました。
瓦は厳かな風合いがあり、伝統的な日本の住宅には欠かせない屋根材です。
その瓦も日進月歩、進化しています。
ルーガなどの軽くて丈夫なユニークな瓦も登場しています。
施工方法もガイドライン工法とよばれる耐震や耐風性能を考えた新しい工法も生み出されています。
良質な瓦屋根の工事をおこなうには「瓦屋根の素材」と「施工方法」、特にこの2つに注目してください。