
1. 横暖ルーフとは
横暖(よこだん)ルーフはかつてチューオーという会社が製造販売していた金属屋根です。
外壁材トップメーカーであるニチハがチューオーを買収したことで、現在はニチハが取り扱う金属屋根として知られています。
横暖ルーフは横葺き金属屋根の中では歴史がある商品です。
金属屋根材の中で販売実績数が最も多かった時代もありました。
販売時期が長く、施工実績も多い屋根であるため、安心して使うことができる屋根です。
2. 横葺きの篏合式断熱材一体型の屋根
横暖ルーフは横葺き金属屋根であり、「断熱材付き篏合式(かんごうしき)」に当てはまります。

横暖ルーフの裏側には断熱材が貼り付けされています。
断熱材には屋根からの熱と、雨音を抑える役割があります。

篏合式(かんごうしき)とは屋根材が上下で引っ掛け合って張る屋根材のことです。
篏合式は風に強く飛ばされにくい特徴があります。
台風で屋根が飛ばされる被害が多いわが国では、嵌合式タイプの金属屋根はぜひ採用して欲しい屋根材です。
3. 横暖ルーフは商品によって性能が全く違う
横暖ルーフは4種類の商品があります。
実はこの4種類、全く違う屋根と言い切れるほど違いがあります。
3-1. 4つのラインナップ
・横暖ルーフα
・横暖ルーフαS
・横暖ルーフαプレミアム
・横暖ルーフαプレミアムS
3-2. 注意点① 断熱材の貼り方が全く違う
まず、横暖ルーフは「横暖ルーフα/横暖ルーフαプレミアム」と「横暖ルーフαS/横暖ルーフαSプレミアム」の2種類に分けることができます。
この2つでは、断熱材の貼り付け方が全く違います。
下記画像は横暖ルーフαと横暖ルーフαSを断面で見た画像です。

横暖ルーフαの場合、篏合する箇所で断熱材がない箇所が生じます。
一方、横暖ルーフαSは篏合箇所にも断熱材が行き届いています。
横暖ルーフを選択する場合はαSを必ず使いましょう。
3-3. 注意点② 鋼板の質が全く違う

次に、横暖ルーフは「横暖ルーフα/横暖ルーフαS」と「横暖ルーフαプレミアム/横暖ルーフαSプレミアム」の2種類にも分けられます。
名前にプレミアムが付く商品、付かない商品では鋼板の質が全く違います。
ニチハのカタログでは、両者の違いが塗膜しかないように読み取れます。
プレミアムが付く商品はフッ素の塗膜であるため、直射日光の熱を反射し、色も長持ちします。
しかし、重要なポイントは塗料の質ではありません。
「横暖ルーフα/横暖ルーフαS」はガルバリウム鋼板が使われています。
一方、「横暖ルーフαプレミアム/横暖ルーフαSプレミアム」はエスジーエル鋼板が使われています。
エスジーエル鋼板はガルバリウム鋼板を改良した鋼板で、従来のガルバリウム鋼板に2%のマグネシウムを加えた鋼板です。
ガルバリウム鋼板の3倍超の耐久性が認められています。
横暖ルーフは穴あき保証を全て”25年”に足並みをそろえています。
ガルバリウム鋼板の塗膜を厚くさせることで、ガルバリウム鋼板の保証年数を押し上げています。
一見すると保証期間が同じなので、同じ鋼板が使われているように感じますが、実は違います。
3-4. 横暖ルーフの種類 早見表
項目 | α | αS | αプレミアム | αSプレミアム |
---|---|---|---|---|
断熱材 | × | ○ | × | ○ |
鋼板 | × | × | ○ | ○ |
※断熱材が充分なタイプを「○」、鋼板にエスジーエル鋼板を用いたタイプを「○」としました。
4. 横暖ルーフはαSプレミアムがおすすめ
4-1. 横暖ルーフはαSプレミアム一択!
横暖ルーフのカタログを見ると、全ての商品の穴あき保証年数が25年に設定されています。
そのため、どの商品も同じ鋼板(質の商品)が使われていると勘違いをするお客様が多いです。
また、ガルバリウム鋼板とエスジーエル鋼板の異なる鋼板が使われていることは目をこらしてカタログを見なければ分かりません。
一般の人では分別がつきにくいです。
横暖ルーフαSプレミアム以外の商品は断熱材と鋼板の質で劣るため、あまりおすすめしたくありません。
横暖ルーフを用いる場合は「横暖ルーフαSプレミアム」しか選択肢がないとも言い切れます。
屋根工事業者から横暖ルーフをすすめられた場合、「横暖ルーフのなんという商品であるか」までしっかりと確認する必要があります。
4-2. 仕上がりがかっこいい!

筆者個人では横暖ルーフαSもしくはαSプレミアムのデザインがとても好きです。
上の屋根と下の屋根がハッキリとした階段状に形成されるため、立体感を感じることができる金属屋根です。
5. テイガク屋根修理の横暖ルーフ施工例と手順
ここからはテイガク屋根修理による「横暖ルーフ」への屋根リフォームをご紹介します。
屋根をリフォームする方法は、「葺き替え」と「カバー工法」の2種類があります。
今回紹介する施工例では、既存の屋根(スレート)に新しい屋根(横暖ルーフ)を被せる「カバー工法」をおこないました。
カバー工法による横暖ルーフへの屋根リフォームをご検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
5-1. 現場調査 リフォーム前のスレート屋根
お客さまから屋根リフォームの見積もり依頼をいただき、現場調査をおこないました。
現場調査では実際に屋根へ上り、屋根の劣化状況の確認や屋根面積を測ります。

現場の屋根は築後13年が経過しているスレート屋根です。
屋根材にはニチハ株式会社のパミールが使われています。
昔のスレート屋根材には耐久性を増すためにアスベストが含まれていました。
1980年ごろからアスベストによる人への健康被害が社会問題になり、1996年にアスベストを含まないスレート屋根材が販売されました。
それが「パミール」です。
しかし、アスベストが含まれていないことにより、パミールは耐久性に大きな問題がありました。
さらに、パミールを施工するときに使用する釘にも、釘頭が錆びやすい問題が見つかりました。
これらの問題によって、パミールの屋根は10年〜15年ほどで屋根材の剥離や釘の錆びといった不具合が起きてしまう可能性が高いです。
今後パミールの屋根に大きな不具合が起きてしまうまえに、カバー工法による横暖ルーフへの屋根リフォームをおこなうことになりました。
5-2. 棟板金と下地の取り外し

古い棟板金と下地を取り外します。
雪止め金具も付けられていたため、おなじく切断します。
屋根をフラットな状態にして、ルーフィングシートの貼り付けへ進みます。
5-3. 粘着式ルーフィングシートを貼り付ける

古い屋根のうえからルーフィングシートを貼ります。
ルーフィングシートとは、屋根からの雨漏りを防ぐ防水シートです。
屋根材や屋根の各種板金に不具合が生じて雨水が侵入してきてしまったとき、ルーフィングシートが屋根裏への雨水侵入を防ぎます。
今回は粘着式のルーフィングシートを使いました。
粘着式でないルーフィングシートは釘やタッカーを使って屋根へ固定します。
しかし、パミールの屋根は耐久性に問題があるため釘やタッカーを使わないことが多いです。
粘着式のルーフィングは裏側がシールになっていて、釘やタッカーを使わずに施工できます。
5-4. 横暖ルーフを張り付け

ルーフィングシートのうえから横暖ルーフを張り付けます。
今回の屋根リフォームでは「横暖ルーフαSプレミアム」を使いました。
4種類ある横暖ルーフの中で、テイガク屋根修理がもっともお勧めする製品です。
「しっかりと断熱材が屋根全体に行き届く」
「ガルバリウム鋼板を改良したSGL(えすじーえる)鋼板が使われている」
上記の条件を満たすのは「横暖ルーフαSプレミアム」だけです。
5-5. 換気棟の施工

棟部分に換気棟(かんきむね)を取り付けます。
換気棟には屋根裏にたまった湿気や熱気を外へ逃す役割があります。
屋根裏には野地板(のじいた)と呼ばれる下地が露出してます。
野地板は屋根全体の下地であり、とても重要な部材です。
野地板には構造用合板という木材が使われています。
木材であるため、湿気や熱気による結露水で腐ってしまうことがあります。
換気棟を取り付けることで、湿気や熱気を外へ逃すことができ、野地板が腐りにくくなります。
5-6. 棟板金の取り付け

棟部分に下地を取り付け、うえから棟板金を被せて固定します。
棟板金の下地として木材を使う工事会社が多いですが、テイガク屋根修理では樹脂下地を使います。
木材の下地は雨水や湿気によって腐ってしまいますが、樹脂下地は腐りません。
下地が腐らないため、棟板金に不具合が起こりにくくなります。
5-7. カバー工法による横暖ルーフへの屋根リフォームが完成です!

カバー工法による横暖ルーフへの屋根リフォームが完成しました。
築後13年が経過したパミールの屋根は、これから数年内に屋根材の剥離や欠けが起こる可能性がとても高い状態でした。
不具合が起きる前に、計画的に横暖ルーフへリフォームすることで、屋根の寿命を大きく伸ばすことができました。
テイガク屋根修理は横暖ルーフを使った屋根リフォームの施工実績が豊富にある板金工事会社です。
横暖ルーフへのリフォームをご検討されている方は、ぜひテイガク屋根修理へご相談ください。
現場調査からお見積もりまではすべて無料にて承っております。