屋根カバー工法はコロニアルの代表的なリフォーム工事として知られています。
「屋根カバー工法は遮熱効果や断熱効果は得られるのか?」
温暖化や在宅勤務の影響で、屋根の断熱効果に関心をもつ人が増えています。
この記事は屋根カバー工法による断熱効果に関して詳しく解説します。
目 次
断熱と遮熱どちらを重視するべきか?
断熱と遮熱の違い
まずはじめに言葉の整理をおこないたいと思います。
「断熱」と「遮熱」の違いです。
遮熱と断熱は、ともに熱を防ぐ効果を表す言葉です。
しかし、意味合いが大きく異なります。
以下はウィキペディアの引用です。
断熱は、熱伝導による熱エネルギーの伝播を減ずることを意味するが、遮熱は、放射の侵入を遮蔽することを意味する。
出典: ウィキペディア
遮熱より断熱
断熱は熱が伝わる量を小さくする効果を意味します。
たとえば、屋根材に当たった太陽の熱が、屋根裏まで到達するのを小さくする効果です。
いっぽう遮熱は太陽の熱を反射する意味になります。
たとえば、屋根材に遮熱塗料を塗り、太陽の熱を跳ね返す効果です。
くわえて、遮熱には素材が吸収した熱を放射する作用を、小さくする意味もあります。
住まいで最も効果を体感しやすいのは断熱です。
壁の中や天井裏などに敷き詰められた断熱材によって、夏は外から熱が侵入するのを防いだり、冬は暖房をした熱が外に逃げてしまうのを防いだりしてくれます。
夏の暑さ対策や冬の暖房効果を考えると、遮熱よりは断熱が重要です。
断熱材の厚みや材質が重要
注文住宅の新築時は「断熱材の厚みは何センチか?」「断熱素材は何か?」「内断熱か外断熱か?」といった議論が頻繁におこなわれています。
断熱については、おそらく最も施工者が時間をかけて検討する項目だと思います。
屋根カバー工法で断熱効果は得られるのか?
断熱効果は得られる
屋根カバー工法は金属屋根に代表される新しい屋根材を、古い屋根材(スレート)の上に重ねて張る工事方法です。
古い屋根材が断熱効果をもたらせてくれるため、屋根カバー工法をおこなうと断熱効果が得られます。
ただし、新たに被せる屋根材にどのような屋根材を使うかによって、得られる効果は全く違います。
テイガクでおこなった実験結果
当社が夏の暑い日に行った、屋根材の表面温度を測る実験では、測定結果にとても大きな差が現れました。
屋根材の種類 | 表面温度 |
---|---|
断熱材が貼っていない黒い金属屋根材 | 71.6度 |
断熱材が貼ってあるチャコールグレーの金属製屋根材 | 64.0度 |
カバー工法で遮熱効果は得られるのか?おすすめの屋根材は?
断熱効果の高い金属屋根
夏の暑さを考慮して屋根カバー工法をおこなう場合は、断熱材付きの金属屋根をつかうかどうかが最大のポイントになります。
商品ではアイジー工業の「スーパーガルテクト」もしくはニチハの「横暖ルーフαS」「横暖ルーフαプレミアムS」がおすすめです。
両者ともに断熱効果のデータを示しています。
カバー工法後のデータ(アイジー工業)
スレートにスーパーガルテクトを張った後の野地板表面温度は以下の通りです。
屋根材の種類 | 表面温度 |
---|---|
化粧スレート屋根 | 約50℃ |
スーパーガルテクト (カバー工法) | 約35℃ |
他社断熱材あり金属屋根材 (カバー工法) | 約38℃ |
他社断熱材なし金属屋根材 (カバー工法) | 約45℃ |
屋根材の比較データ(ニチハ)
もともと、断熱材入りの金属屋根はスレートに比べて断熱効果が高い屋根材です。
そのため、カバー工法に頼らずとも屋根材単体で断熱効果を発揮してくれます。
横暖ルーフαSを含めた各屋根材の野地板表面温度は以下の通りです。
屋根材の種類 | 表面温度 |
---|---|
一般的な金属屋根材(断熱材なし) | 約62.1℃ |
化粧スレート系屋根材 | 約58.3℃ |
一般的な金属屋根材(断熱材あり) | 約41.9℃ |
超高耐久 横暖ルーフαS | 約36.6℃ |
※ニチハの金属屋根は合計4種類あるので、商品に注意してください。
抑えておきたい3つのポイント
断熱材付き
断熱材の厚みはメーカーや商品によって大きく異なります。
アイジー工業の「スーパーガルテクト」とニチハの「横暖ルーフαS」「横暖ルーフαプレミアムS」は、断熱材の厚みが厚く、付加価値の高い屋根材といってよいでしょう。
実際にこれらの製品とその他の製品を見比べてみると断熱材の厚みが全く違うことに気づかされるはずです。
屋根材種類 | 断熱材の厚み(最高厚) |
---|---|
A社 | 4㎜ |
スーパーガルテクト | 16㎜ |
横暖ルーフαプレミアムS | 17㎜ |
遮熱塗料
金属屋根は表面に遮熱塗料を塗布しているのが標準品です。
基本的に断熱材付きの金属屋根でカバー工法をおこなうと、断熱効果と遮熱効果の両方が得られます。
ただし、一部の製品には遮熱塗装を採用していない金属屋根もあります。
したがって、屋根カバー工法をおこなうには遮熱塗料が用いられているかどうかも確認は必要です。
明るい色
屋根材の色の違いは、遮熱塗料よりも熱の吸収に大きな影響をもたらします。
色によって大きく効果が異なる点は、スレート製造大手のケイミューのウェブサイトからでも判断できます。
屋根の色を黒から白にするだけで、屋根裏表面温度が9度も下がることがわかっています。
遮熱性を重視するなら明るい色がおすすめになっています。
遮熱塗料で過ごしやすくなるか?
「屋根に遮熱塗料を塗ることで、家は過ごしやすくなるという宣伝」を見かけます。
果して体感できるほど効果があるものなのでしょうか?
「遮熱塗料を塗るだけでは暑さ対策としては限定的」というのが筆者の意見です。
「断熱材の厚み」や「屋根の色」にこだわらない限り、遮熱塗料だけでは大きく改善しないと評価しています。
遮熱塗料をつかった屋根塗装と断熱材付きの金属屋根によるカバー工法では、遮熱効果・断熱効果は全く次元の違う話です。
つぎに断熱工事ごとの違いを、遮熱効果・断熱効果が高い順にご紹介します。
断熱効果・遮熱効果が高い対策ランキング
1位:断熱改修
断熱改修とは天井裏の断熱材を入れ替えたり、付加したりする工事のことです。
最も断熱性を高める効果がある方法です。
ホームセンターに行って分厚いグラスウールを購入し、天井裏に敷き詰めるだけで効果が実感できます。
断熱材は厚みがあればあるほど効果があります。
2位:屋根通気工法
屋根通気工法を取り入れることで屋根の断熱効果が高まります。
屋根通気工法とは、既存の屋根の上に空気の通り道となる通気層を確保した上で、新たな屋根を形成する工事です。
屋根全体を風通しの良い日陰にするイメージです。
屋根通気工法は材料費や手間賃がかかります。
しかし、断熱改修に次ぐ高い断熱効果が得られます。
屋根通気工法の一つであるケイミューの熱シャット工法における実験では、通常の屋根のみと比べて屋根裏の温度が12度も下がるとの結果を得ています。
夏の暑さ対策には屋根通気工法が最強な理由
3位:屋根カバー工法+換気棟の新設
屋根カバー工法は古い屋根材の上に新しい屋根材を被せ、屋根をリニューアルする工事です。
古い屋根材(スレート)が断熱効果をもたらせてくれます。
新たに被せる屋根材は金属屋根になります。
選ぶ金属屋根の種類の違いによって断熱効果が大きく変わるので注意が必要です。
また、カバー工法を行う場合は屋根の1番高いラインにある棟を、換気棟(かんきむね)に交換もしくは追加することもおすすめしています。
換気棟は屋根裏にこもった熱を排出する役割を持ち、家の暑さを下げる効果があります。
4位:遮熱塗料を塗る
屋根材に遮熱塗料を塗る方法は、最も効果が小さいです。
建物の温度を下げる実際の効果はわずかであり、一方で遮熱塗料はとても高額です。
遮熱塗料を塗布する場合は、屋根の色をなるべく明るい色にしてください。
屋根塗装の費用対効果は低いため、テイガクではあまりおすすめしていません。
換気棟(かんきむね)の設置をお忘れなく
換気棟とは、穴が開いた板金部材です。
屋根の最も高いラインにある棟を既存から換気棟に交換することで、屋根裏にこもった熱を逃し、建物の暑さを軽減する効果が得られます。
換気棟は多ければ多いほど高い効果が期待できます。
屋根カバー工法をおこなう際は換気棟の取り付けを忘れずにおこなってください。
まとめ
実際にテイガクが担当してカバー工法を行った多くのお客様から「以前に比べ夏に2階が過ごしやすくなった」という声をいただいています。
屋根カバー工法で、断熱効果や遮熱効果を高めることは十分に期待できます。
その効果を最大限に活かすためには、「断熱材付き」「遮熱塗料」「明るい色」の3点は工事前に必ず確認をしておきましょう。