野地板増し張りカバー工法とは
どんな工事?
野地板増し張りカバー工法とは、古い屋根の上に野地板を重ねて張ってからルーフィングと屋根材を張るカバー工法のことです。
一般的におこなう屋根カバー工法は古い野地板を再利用するため、新たに野地板を張ることはありません。
直接、コロニアル(スレート・カラーベスト)のうえにルーフィングと屋根材を張ります。
しかし、雨漏りや結露の影響で元の野地板が傷んでしまっていることがあります。
屋根のうえにのぼって、屋根がブヨブヨしている場合などは野地板が傷んでいるサインです。
水を含んで腐った野地板に屋根カバー工法をおこなうと、屋根を固定する力が弱いまま屋根を仕上げていることになります。
そのため、強風で屋根が飛ばされます。
新たに野地板を張ってからカバー工法をおこなうと、しっかり屋根材を固定できるため安心です。
動画】野地板の状態を確かめている様子
野地板の状態を確かめている様子
いくらかかるの?
野地板を張る材料費と手間賃が余分にかかります。
テイガクでは1㎡あたり2,200円(税抜き)いただいています。
通常のカバー工法から20万円前後上乗せされると思ってください。
コンパネと合板の違い
野地板のことをコンパネとよぶ人が多いです。
このページのタイトルにもそのように記載しています。
ただし、野地板にコンパネを用いることはNGです。
野地板には構造用合板を用います。
コンパネと構造用合板はサイズが同じで、材質も木製品なので見た目が似ています。
それぞれ強度や用途が違います。
コンパネは型枠(かたわく)といって、コンクリートを固める時に用いるのが本来の用途です。
それにもかかわらず、なぜコンパネとよぶ人が多いのか?
それは単純にカタカナ4文字のほうが言いやすいからです。
そのため、構造用合板なのにコンパネとよぶ職人さんが現場では多いです。
屋根が重くなるデメリット
意外と重い構造用合板
構造用合板の重さは1㎡あたり約8kgです。
コロニアルのうえに屋根カバー工法をおこなうと以下の計算式で屋根の重さが求められます。
ルーフィング2㎏+金属屋根4kg+構造用合板8kg=14kg/㎡
野地板増し張りカバー工法をおこなうと、通常の屋根カバー工法の2倍以上、屋根が重くなる計算になります。
ちなみに、太陽光パネルを屋根に設置する場合、太陽光パネル12kgに架台(レール)が加わる重さとなります。
ちょうど太陽光パネルを設置する程度の荷重負担が屋根にかかります。
地震の影響はないのか?
耐震設計について
地震の影響は壁の量と深く関わります。
基本的に壁がたくさんある住宅であるほど、地震に対して強い住宅と評価できます。
住宅を建築する際、地震に耐えられる最低限必要な壁量(必要壁量)を求めることが義務付けられています。
この必要壁量を求める計算を壁量計算とよびます。
壁量計算をする際、屋根の重さを調べておかなければ必要壁量を求められません。
つまり、屋根の重さ=必要壁量=耐震性というロジックが成り立ちます。
屋根カバー工法は屋根が重くなる工事なので、当然、必要壁量が増えることになります。
野地板増し張りの影響
平屋の建物で野地板増し張りカバー工法をおこなった場合、約1.1倍の壁量が必要となる結果が求められました。
この数字が大きいのか小さいのかは、人によって見解が分かます。
もちろん旧耐震基準(1981年5月31日以前)の建物には屋根が重くなる工事はおすすめできません。
熊本地震の際は2000年基準(2000年6月1日)以前の建物で、かつ南側に窓が集中している建物で多くの被害が発生した事例もあります。
壁の配置のバランスも耐震強度に関わります。
必要壁量ぴったりで建築されている建物はほとんどないと思いますが、ご自宅の壁に不安を感じている人は野地板増し張りカバー工法を避けたほうがよいかもしれません。
なお、必要壁量は壁の長さだけではなく、壁の中に入っている筋交いの量によっても変わります。
吹き抜けがある大広間の住宅だから壁が不足しているわけではありません。
ご自宅の耐震性にご不安がある人は、壁の耐震補強とあわせて野地板増し張りカバー工法をおこなうことをおすすめいたします。