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アスベスト屋根の見分け方がわかるよ
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アスベスト屋根のリフォーム方法がわかるよ
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ノンアスベスト屋根のリフォーム方法がわかるよ
アスベスト=「悪」のイメージを誰もがもっています。
しかし、屋根機能の側面だけでみるとアスベストは耐久性(粘り気)に優れた素材でした。
現在、アスベストが入っていないスレート屋根が社会問題化しています。
アスベストが使われていた20年前に比べて、大きな台風が来ると割れたり剥がれたりするスレート屋根の不具合が間違いなく増えています。
屋根は「一生もつもの」と思っていたら大間違いです。
まずはじめに自宅の屋根はアスベスト入りかどうかを確認し、つぎにどのような屋根のリフォームが適しているか学びましょう。
※ご注意
こちらの記事は弊社の経験に基づく見解となります。
全てのアスベスト含有屋根やアスベストが入っていない屋根に当てはまる内容ではありません。
参考としてご覧ください。
目 次
再びアスベトが社会問題に
1-1.スレート屋根の耐久性
近年、アスベストが入っていないから心配というお客様が急増しています。
アスベストが入っていない屋根の不具合報告が相次いでいるからです。
アスベストは屋根の耐久性を高めてくれる優れた側面がある素材でした。
法律の規制をうけ、約20年程前にアスベストが入っていないスレート屋根(ノンアスベスト)が流通しました。
それから10数年が経過し、まさに現在、アスベストが入ってない屋根の問題が顕在化しはじめてきています。
建築時に屋根は一生もつと考える方が多いです。
しかし、スレート屋根はアスベスト入りの商品でも30年程度が寿命の目安です。
20年前に販売されたアスベストが入っていない屋根材はさらに寿命が短くなるとテイガクは評価します。
つまり、スレート屋根は築後15年~30年の間に本格的な改修工事(カバー工法もしくは葺き替え)が必要となるということです。
屋根は建物で最も重要な部位です。
一度、雨漏りが発生すると、建物の価値はたちまち地に落ちます。
スレート屋根が「アスベスト入りかどうか」は将来のメンテナンススケジュールだけではなく、建物の価値と大きく関わる大切なポイントなのです。
1-2.スレート屋根の種類
スレート屋根はいくつか種類があります。
戸建て住宅でよく使われているスレート屋根は「平板スレート」と「厚型スレート」の2種類です。
いずれもアスベスト入りとアスベストなしの商品が流通しています。
築年数や図面では見分けられない
2-1.築年数で調べる方法
スレート屋根にアスベストが入っているかは「築年数(製造年月日)でわかる」と紹介しているホームページが多いです。
以下は法律施工日とその内容です。
法律施行日 | 内容 |
---|---|
2004年 | 代替が困難なものを除くすべての石綿製品の 製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止。 しかし、重量の1%以下を含有する白石綿は認可。 |
2006年 | 石綿の含有量が重量の0.1%を越えるものの 製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。 (実質的な全面禁止) |
このように2006年に全面的にアスベストの使用が禁止されました。
実際、テイガク屋根修理のホームページでもわかりやすいため、同様な表現をしているページがあります。
しかし、アスベスト使用の規制がはじまる前から、すでにメーカーは先手を打ち、アスベストが入っていないスレート屋根を製造しています。
つまり、「2006年以降に建築」=「アスベストが入っていない住宅」にはなりません。
たとえば、アスベストが入っていない平板スレートで有名な「パミール」の発売時期は1996年です。
全面規制がはじまるまでブランクが10年もあります。
アスベスト入りと思っていたら、アスベストなしのスレート屋根が使われていたということはよくある話です。
築年数だけでは正確に見分けることはできません。
築年数はあくまでも目安です。
2-2.商品名やデータベースで調べる
実際に使われているスレート屋根の商品名がはっきりすれば、アスベスト屋根かどうかは見分けられます。
製造会社が過去に販売したスレート屋根がアスベスト入りかどうかを公開しています。
国土交通省および経済産業省が運営しているデータベースでも、アスベスト入りスレート屋根のメーカー名や商品名が参照できます。
しかし、スレート屋根の外観だけで商品名をはっきりさせることはかなり難しいです。
スレート屋根はどれも同じようなデザインだからです。
セキスイルーフテック「セキスイU瓦」や松下電工「ニューウェーブ」、クボタ「アーバニー」など、デザインを変えずにアスベストだけをなくした商品もあります。
これらの場合、屋根を剥がして裏側のシリアルナンバーまで把握しなければアスベスト含有の確認ができません。
さらに困ったことが屋根では起こりえます。
実際の屋根に図面とは異なる商品が使われていることです。
たとえば、図面には「コロニアル」と記載があるのに「パミール」が使われている屋根を筆者は幾度も見てきました。
コロニアルは本来、旧クボタ(現ケイミュー)が取扱っていた平板スレートの商品名です。
しかし、流通量が多いため、いつしか平板スレート全般を示す名詞に転じています。
本来。図面にコロニアルと記載があれば旧クボタ製のコロニアルが使われるべきです。
しかし、スレート屋根は見分けることが難しいため、似ている商品であれば代替品でも何でもよいといった風潮がこの業界(分譲住宅業界)にはあります。
最も有効なアスベスト屋根の見分け方
アスベスト屋根かどうかは屋根の「不具合状況」で見分けることが最も有効です。
アスベストが入っていないスレート屋根(ノンアスベスト)はぜい弱で、不具合が生じやすいです。
築10年近く経過している多くのノンアスベスト屋根は小さなヒビを含めるとなんらかの不具合が発生しているはずです。
築後20年も経過すると「ひび」「われ」「かけ」「はくり」などがたくさん生じます。
その一方、アスベスト屋根はしっかりしてるため、不具合が生じにくいです。
下屋根(げやね)を2階の窓から確認できる場合は、目視で屋根の状態を確認してください。
建築後20年未満であり、屋根に複数の「ひび」があれば、その屋根はノンアスベストである可能性が高いです。
目視で確認することが難しい場合は、屋根工事会社に確認をしてもらいましょう。
ただし、屋根にのぼることは避けてください。
たとえば、アスベストがないスレート屋根の中には、簡単に踏み割れたり、釘が抜けてずれ落ちたりする商品があります。
アスベスト屋根の健康被害
以下は国土交通省が発表している内容です。
Q:戸建住宅に住んでいます。屋根材などにアスベストが使用されているようですが、建築基準法により、除去する必要が生じますか。?
A:建築基準法では、吹付けアスベストとアスベスト含有吹付けロックウールが規制対象となっています。
この2種のアスベスト含有建材が使用されていなければ、建築基準法上は除去等の対象になりません。
屋根材、外装材、内装材等の成型板などの中にはアスベストを含有するモノもありますが、こうした成型板は切断・削孔などの作業を伴わない通常の使用環境下では特別な管理を必要としない建材とされています。
しかし、アスベスト含有建材の存在を知らずに日曜大工などの際に、アスベスト含有建材を切断したり、穴を開けたりしてしまうことが考えられます。
アスベストが含まれていることを知らずに、安易に解体・改修工事などの作業を行えば、そこから発生する粉じんによって作業者や周辺にいる人などがばく露するリスクがあるだけでなく、アスベストを含んだ廃棄物がリサイクル施設で破砕処理され、アスベスト含有建材の拡散にも繋がってしまうことになります。
出典: 国土交通省 アスベスト対策Q&A
アスベスト屋根は飛散性(発じん性)が低い屋根です。
「建設業労働災害防止協会による石綿含有建材別作業レベル区分」では発じん性が最も低いレベル3に分類されています。
日常生活での使用では問題とないとされています。
アスベスト屋根のリフォーム基準
5-1.アスベスト屋根のリフォーム方法
アスベスト屋根のリフォーム方法は4つあります。
「塗装」「メイクアップ工法」「カバー工法」「葺き替え」です。
「メイクアップ工法」とは古い屋根の上に「軽い屋根材」を重ね張する工事方法です。
平板スレートでは「Cガード」とよばれる商品が有名です。
屋根機能を維持する観点からはカバー工法もしくは葺き替えが望ましいです。
カバー工法とは古い屋根の上に「防水シート」と「軽い屋根材」を重ね張りする工事方法です。
アスベスト屋根の処分費用はかなり高額であるため、アスベストを封じ込めて工事ができるカバー工法がおすすめです。
5-2.カバー工法の実施基準
カバー工法はどんな屋根にでも適用できる工事方法ではありません。
ある程度、屋根の状態が良好な場合でなければおこなえない工法です。
屋根の状態が良好な状態とは「野地板が良好」であることを示します。
野地板(のじいた)とは屋根材の下に敷かれる厚みが12㎜程の合板のことです。
野地板は木製であるため、結露などの影響を受けて経年劣化により腐食します。
もちろん、腐食した野地板の上に新しく屋根を重ねて張っても意味がありません。
つまり、耐久性が低下した野地板がある屋根にはカバー工法はできないということです。
また、屋根断熱など、野地板が腐食しやすい環境下にさらされている屋根もあります。
野地板の耐久性や環境を調べる方法はいくつかありますが、素人の方では判断ができません。
屋根専門の工事会社に確認にしてもらいましょう。
問題だらけのアスベストなしの屋根
6-1.平板スレート業界の再編
アスベスト屋根の問題はスレート屋根業界全体に大きな影響を与えました。
中には屋根製造業から撤退するメーカーもいました。
厚型スレートは製造されなくなり、平板スレート業界も縮小しました。
具体的には業界1位と2位の松下電工とクボタが屋根製造部門を統合させてケイミューという会社をつくるまでにいたっています。
6-2.現在販売されているスレート屋根は大丈夫?
ケイミューはアスベスト屋根の問題を受け、品質改良した平板スレートを販売しています。
代表的な商品としては「コロニアルクァッド」があげられます。
「コロニアルクァッド」は現在の新築戸建て住宅で最も使われているスレート屋根です。
テイガク屋根修理でもよく使っています。
しかし、「コロニアルクァッド」の販売時期は2008年です。
流通がはじまってからまだ10年程度しか経過していません。
そのため、私たちが期待している通りの耐久性があるかどうかに不確実性が残ります。
代表的なノンアスベスト屋根商品
これから取り上げる商品はアスベストが入っていない代表的な商品です。
いずれも廃盤となっています。
ご注意
「下記の商品=問題がある屋根」ということではありません。
製造時期(ロット)や使用環境によって商品品質に差が生じます。
弊社の経験上、比較的不具合が多い印象がある商品として取り上げます。
7-1.ニチハ「パミール」
不具合が発生しやすいノンアスベスト屋根として有名です。
特徴的な不具合として層間剥離(そうかんはくり)があげられます。
築後10年程度で屋根の先端部分がめくれはじめます。
パミールは釘の腐食も問題です。
屋根を留めている釘が錆びてしまい、屋根が抜け落ちる不具合が報告されています。
7-2.松下電工「レサス」
レサスは松下電工が取り扱っていたスレート屋根です。
パミールほどではないですが、パミールと同様の層間剥離が発生しやすい屋根です。
7-3.クボタ「コロニアルネオ」
コロニアルネオ築10年から15年前に建てられた戸建て住宅の屋根で一番多く使われているはずの屋根です。
コロニアルシリーズはクボタが扱う大人気のスレート屋根ブランドであり、ケイミューになった現在でも引き継がれています。
コロニアルネオの不具合は「ひび」と「欠け」が多いです。
「コロニアルネオ」は商品格差がある印象です。
いたるところにひび割れがある屋根もあれば、不具合が全くない屋根もあります。
7-4.クボタ「アーバニーグラッサ」
アーバニーはコロニアルのスレート屋根の中でも高意匠商品として知られています。
コロニアルの上位商品となる位置付けです。
1982年からある人気シリーズで、アスベスト入りとアスベストなしの両方の商品が流通しています。
アーバニーは他のスレート屋根と形が違います。
一枚一枚がうろこのように小さくなっていて、両脇に切れ込みがあります。
そのため、負荷がかかってしまうと割れやすい特徴があります。
7-5.セキスイルーフテック「セキスイU瓦」
セキスイU瓦は積水化学工業の子会社がかつて取り扱っていたスレート屋根です。
古い屋根に重ねて張れる屋根材として流行した屋根材です。
厚型スレートに分類されます。
30年以上の実績があった屋根材でした。
しかし、アスベストなしの改悪商品が流通したことで販売中止にいたっています。
主な不具合は「割れ」です。
セキスイU瓦は人の重みで簡単に割れてしまうことがあるため、屋根の上にのぼるときは一番神経を使う屋根です。
ノンアスベスト屋根のリフォーム基準
8-1.塗装は屋根の寿命を縮める
塗装会社の多くは外壁塗装と屋根塗装をセットで工事販売し、営業活動をおこないます。
過去に外壁塗装をおこなわれた方は塗装業者の言われるがまま、何も疑いもなしに屋根塗装工事をおこなったはずです。
しかし、ノンアスベスト屋根に塗装をおこなうことをテイガクではおすすめしません。
それには理由があります。
高圧洗浄で屋根寿命を縮めてしまうからです。
通常、屋根塗装をおこなう前に「高圧洗浄」とよばれる屋根の洗浄をおこないます。
長年、屋根にこびりついた「コケ」や「汚れ」などを圧力をかけて洗い落とします。
しかし、この高圧洗浄は洗い落とすよりは「削り落とす」意味合いが強いです。
傷みやすいノンアスベストに負荷をかけることは決してよいことではありません。
高圧洗浄の負荷でノンアスベスト屋根が割れることもしばしばあります。
2,3年前に屋根塗装工事をしたばかりにもかかわらず、ノンアスベスト屋根であったため屋根の多くが飛ばされるといった大惨事を被ったお客様もいました。
ノンアスベスト屋根の塗装は原則おすすめいたしません。
8-2.カバー工法
リフォームを要するアスベストなしの屋根は築後20年に満たない住宅が対象となります。
そのため、野地板の状態が良好であることが多く、リフォーム方法はカバー工法をはじめに検討します。
重ねる屋根は軽い金属屋根を使います。
傷んだ屋根に重ね張りすることに抵抗がある方もたくさんいます。
しかし、適切な施工方法と環境で屋根工事をおこなえば、心配は不要です。
テイガクは創業して20年近く経過した会社ですが、カバー工法が原因で問題が発生した屋根は一度も経験がありません。
8-3.葺き替え
葺き替えでは、屋根材だけでなく野地板も新しく交換するのが理想的です。
実際の工事では古い野地板の上に新しい野地板を重ね張りすることが多いです。
しかし、築後20年に満たない住宅の場合は、古い野地板を再利用して葺き替えをおこなうことがあります。
野地板の状態が良好だからです。
ここで注意いただきたい点がひとつあります。
古い野地板を再利用する葺き替えは金属屋根にしか適用できないといことです。
たとえば、スレート屋根の葺き替えで古い野地板の再利用することをケイミューは禁じています。
スレート屋根はデリケートなので、野地板に多少の歪みがあってもうまく張れないからです。
築20年未満であっても古い野地板は多少の変形をしていますし、葺き替えで古いスレート屋根を剥がす時にも負荷がかかります。
古い野地板を再利用して屋根を葺き替える場合もカバー工法同様、金属屋根を使うことがおすすめです。
スレート屋根のシェアが2位に
9-1.スレート屋根のシェア低下の背景
外に出て周りを見渡すとスレート屋根の建物だらけです。
かつてスレート屋根は最も使用されていた屋根材でした。
しかし、2000年代初頭にアスベスト問題をうけ、スレート屋根のシェアが下がり続け、屋根材別のシェアでは現在、2位となっています。
最も使われている屋根材は金属屋根となっています。
9-2.問題がないようで多いスレート屋根
過去を振り返ると、当たり前のようにスレート屋根は使われていました。
現在でも新築とリフォーム問わず、スレート屋根をすすめる業者が多いです。
理由は工事が簡単であり、価格が安いからです。
工事ができる職人さんがたくさんいるというのも理由になります。
しかし、スレート屋根にはたくさんの問題や課題があるのも事実です。
・アスベスト屋根の葺き替えはカバー工法に比べて1.2倍から1.5倍程度の費用がかかる
・ノンアスベスト屋根は不具合が発生しやすい(特に1990年代から2000年初頭に生産された商品
・リフォームではメーカー保証が得られない
・製品保証のうち「割れ」や「ヒビ」などの不具合は免責
・ノンアスベストの問題から品質改良された商品が発売してまだ10年程度しか経過していない
・葺き替えでは野地板を新設する必要がある
・瓦屋根の半分程度の重さがあり意外と重い
・金属屋根とは異なり、カバー工法で重ねる屋根として使えない
今回取り上げたアスベストについてもスレート屋根の問題の一部分にしか過ぎません。
業者の言いなりにならず、各屋根材にはどんなメリットやデメリットがあり、どんな背景で人気であるか十分に下調べをしましょう。