波型スレートの改修工事の種類
工場や倉庫の屋根材として使用されている波型スレート屋根。
改修工事の種類は3つあります。
「塗装」と「カバー工法」「葺き替え」です。
アスベストが含まれていることが多いため、改修工事では屋根カバー工法がおすすめです。
今回は波型スレート屋根のカバー工法の手順と方法についてご紹介します。
カバー工法に使用する折板屋根の特徴や工事のポイントも合わせて解説します。
屋根カバー工法がおすすめ
波型スレート屋根は屋根カバー工法がおすすめです。
テイガクでも多くのお客さまがこの工事を選択しています。
屋根塗装の場合は、効果は限定的です。
屋根の機能自体を回復させたい場合はあまり有効とはいえません。
また、現存する波型スレート屋根の多くは、アスベストを含んでいることがほとんどです。
葺き替えを選択した際、アスベストの処分費用は大きなコストがかかります。
また、葺き替えは工場や倉庫を営業しながら工事することが難しいです。
もちろん、カバー工法で屋根材を重ねることによって屋根自体が重くなり、耐震性能に影響が及ぶリスクがあります。
しかし、屋根の改修工事のために営業を中断することはお客さまの経営リスクとなるため、葺き替え工事をおこなうことは少ないです。
波型スレート屋根の建物の特徴
波型スレート屋根の建物は倉庫や工場の用途で建てられており、その多くが鉄骨造です。
建物内部から天井を見上げると鉄骨の梁や母屋が確認できます。
外側からフックボルトとよばれるボルトを差し込み、鉄骨の母屋に波型スレートと合わせて引っかけ固定させます。
フックボルトは鉄製で外に露出しているので、錆びが進行していることが多いです。
波型スレート屋根のくわしい内容や、アスベスト入りかどうかの確認方法については、関連ページをぜひ参考にしてください。
カバー工法で用いる屋根材と雨どい
折板屋根(せっぱんやね)とは
波型スレートのカバー工法では、金属屋根を用います。
金属屋根のなかでも折板屋根とよばれる屋根を重ねて張ります。
屋根の断面が富士山の形状をしている山型の金属屋根を張ります。
折板屋根の種類
折板屋根にはハゼ締め式やかん合式、インシュレーション工法などいくつか種類があります。
波型スレートのカバー工法では、ボルトで屋根を固定するボルト式で屋根を仕上げることが多いです。
鋼板の厚み
折板屋根の鋼板の厚みは0.4mm~0.8mmまであります。
0.4mm厚は屋根にのぼると凹ませてしまうリスクがあるため、0.5mm厚で仕上げることが多いです。
鋼板の厚みによって費用が変わります。
もちろん、お客さまのご予算に応じて0.4mmで仕上げることも可能です。
断熱材裏張り
古い波型スレートと折板屋根の間にすき間が生じます。
このすき間は結露水をよび起します。
たとえば、冬にストーブをたくと、まるで雨漏りが起きたかのように大量の結露水が天井からしたたります。
結露水抑制の対策には、断熱材一体型の折板屋根を張ることが有効です。
雨どい
工場や倉庫のような大型建築物にもかかわらず、戸建て住宅用の雨どいを取り付けている古いスレート屋根を街中でとても見かけます。
戸建て住宅用の雨どいでは、ほとんど排水効果が見込めず、ほぼ飾りのようなものになってしまいます。
屋根の長さに応じた雨どいの大きさを求める計算式があり、屋根の大きさにあわせて雨どいを選定しなければなりません。
また、折板屋根のような金属屋根は、スレート屋根よりも雪がすべりやすいです。
雪の重さに耐えうるしっかりとした雨どいを取り付けてください。
屋根カバー工法ができないケースも
建築物の状態や、敷地の状況によって屋根カバー工法が出来ない場合があります。
敷地の問題
波型スレートのカバー工法で筆者が最も気にかけるのが、建築物の敷地まわりにどれぐらいスペースがあるかです。
クレーン車を駐車したり、折板屋根の工作機械を置いたりする必要があります。
また、敷地いっぱいに建築物が建てられていて、足場がかけられにくいことも多いです。
【Youtube動画 折板屋根の持ち上げ】
電力の問題
原則、折板屋根は工場で成型加工されたものを現場に持ち運んで、屋根に張り付けます。
しかし、屋根の長さが長い場合、トラックに乗せて運ぶことができません。
そのような場合は、現場で折板屋根を制作します。
その場合は電気を多く使う作業となり、200Vの電源が必要になります。
電線や増築の問題
折板屋根を持ち上げたい場所に電線があると、電線が邪魔になり屋根材を屋根上に持ち上げることができません。
また、増改築工事で建築された建物がフロント部分にあると、折板屋根を持ち上げることができません。
工事に関する疑問や不安は、現地調査時に施工管理者(現場管理者)に確認しましょう。
屋根カバー工法の手順
古い波型スレート
古い波型スレート屋根です。
経年劣化がはげしく、ところどころ雨漏りが確認できます。
木更津市の現場で台風15号の影響でさらに雨漏りがひどくなってしまいました。
築30年以上昔の建築物の波型スレートには、アスベストが含まれています。
屋根持ち上げ
屋根上に折板屋根を持ち上げます。
屋根下と屋根上に職人さんがいる必要があり、小さな倉庫規模でも4人~5人がかり荷揚げをおこないます。
折板屋根は大型資材なのでクレーン車で屋根を持ち上げます。
駐車ができる十分なスペースが必要です。
折板屋根を屋根上に置きました。
折板屋根の裏側にはペフとよばれる断熱材が張り付けられています。
遮音と結露防止効果も得られます。
落下防止ネット
足場を組み立てて、屋根のうえにネットを敷きます。
ネットは屋根の踏み抜き事故を防止させるものになります。
突風による転倒リスクを考えると、足場組立とネットは現代では常識です。
写真の屋根の穴は明り取りの穴です。
古く錆びた鉄骨下地が穴から確認できます。
フックボルトの頭を切断
古い波型スレート屋根を固定していたフックボルトの突起を切断し、屋根をフラットにします。
タイトフレーム取り付け
タイトフレームとは折板屋根の下地材です。
折板屋根の形と同じ山型のフレーム材で、タイトフレームの上に折板屋根を重ねます。
屋根本体取り付け
折板屋根を張ります。
屋根のてっぺんを棟(むね)とよびます。
棟にあるスレートは屋根を仕上げる障害になるため、取り外します。
一般産業廃棄物としての処分ができないため、アスベスト廃材の処分費が別途かかってしまいます。
明り取りの取り付け
明り取りまわりの作業です。
明り取りはポリカーボネート製です。
タイトフレームには山が連なっているものと、山が一山のものがあります。
一山のフレームはサドルとよびます。
写真左下の一山の部材がサドルです。
山が連なっているフレームは、耐風性能に優れています。
ケラバ抑え金物
屋根の端側の板金部材をケラバ板金とよびます。
ケラバ板金は風で飛ばされやすいため、ケラバ抑え金物とよばれる部材を取り付けると耐風性能が向上します。
東京湾沿岸や大阪湾沿岸地域などは風が強いため、是非取り付け欲しい金物です。
雨どい取り付け
雨どいを取り付けます。
雨どいは折板屋根に金具を直接打ち込み、設置させます。
ケミカル面戸
古いスレート屋根と折板屋根の間にケミカル面戸とよばるスポンジを敷きます。
鳥やハクビシンなどが屋根と屋根の間に入ってこれないようにするための部材です。
波型スレートの見積もり書を作成してもらう際はケミカル面戸の有無も是非チェックしてください。
波型スレート屋根のカバー工法完成
屋根のてっぺんに棟板金を取り付けて完成です。
安全第一に工事を行いましょう
お客様から「足場無しで工事ができませんか?」と尋ねられることがあります。
波型スレート屋根の改修時の事故は建築現場の中でも頻度が高い事故です。
足場や転落防止ネットがない波型スレートの改修工事は極めて危険であり、社会的制裁も厳しい時代となっています。
安全第一であることをご理解のうえ、工事をお望みください。