1990年代の日本の住宅のほとんどはモルタル外壁でした。
最近はサイディングが主流ですが、モルタル外壁にしか出せない独特な風合いを求めて、あえてモルタルを採用する方もいます。
モルタル外壁は構造によって寿命が変わります。
このページでは、モルタル外壁の基本的な特徴と構造から、メンテナンス方法について解説いたします。
モルタル外壁とは?
モルタル外壁とは塗り壁のこと
モルタル外壁とはモルタルを塗布した外壁のことです。
セメントに砂を混ぜたものがモルタルです。
ちなみに、モルタルに砂利を混ぜるとコンクリートになります。
一般的に「塗り壁」はモルタル外壁のことを示します。
サイディングの外壁と異なり外壁材の継ぎ目がありません。
現在はサイディング全盛期
1990年以前の戸建て住宅の外壁材は、塗り壁が第一選択でした。
しかし、塗り壁は手間がかかるため、現在は成型加工されたサイディングボードを張る外壁が主流となっています。
新規着工における各外壁材のシェア率では、モルタルの採用率は5.4%と激減しています。
モルタル外壁のメリット
近年はシェア率が減少しているモルタル外壁ですが、他の外壁材とは異なる風合いを演出できるため、モルタル外壁を選択されている方もいらっしゃいます。
モルタル外壁のメリットの一つに意匠性に優れている点があります。
左官(さかん)と呼ばれる、コテを使って外壁材を塗りつける職人が仕上げていくため、多種多様なデザインが可能です。
機能面では、耐火性・耐久性が高い点です。
モルタルの材料であるセメントは、不燃性が主成分なため非常に燃えづらいです。
万が一燃えた場合も、有毒ガスが発生しません。
モルタル外壁のデメリット
サイディングと比べて工期と手間、費用がかかることが一番のデメリットです。
窯業サイディングに比べて、ひび割れが起こりやすい点もデメリットのひとつです。
モルタル外壁の構造
モルタル外壁は品確法制定(2000年)以前に建築されたかどうかで構造と耐用年数が異なります。
品確法と外壁通気工法
2000年に建築業界に大きなインパクトを残す法律が成立しました。
品確法です。
新築の施工業者に雨漏り10年保証を義務付ける法律です。
この法律の成立以降、外壁通気工法を採用した外壁が増えることになります。
胴縁(どうぶち)で通気層を確保する外壁構造が業界の一般常識となります。
【Youtube動画】外壁通気工法の構造について
1990年代のモルタル外壁の構造
品確法制定前、つまり1990年代のモルタル外壁の構造は、「通気層」がありません。
通気層は、外壁に侵入した外気や水蒸気を外側に通り抜けられるようにするための空間です。
通気層がない、外壁の内側は結露が起きやすく、雨漏りを引き起こす要因になります。
2000年以降のモルタル外壁
2000年以降のモルタル外壁の構造は、通気層が確立されているため、雨水や湿気が排出され雨漏りのリスクを大幅に減らすことができるようになりました。
モルタル外壁構造の各部材と特徴
・木摺り(きずり)
柱に打ち付けられたモルタル外壁の下地です。
モルタルはかなり重いです。
木摺りにはモルタルを支える役割があります。
・アスファルトフェルト(防水シート)
外壁の防水シートです。
現在は透湿性のある透湿防水シートを用いるため、古い建物でしか見かけません。
・ワイヤーラス
鉄のワイヤーはモルタルの剝落を抑えてくれます。
ラス網ともよびます。
網目状のワイヤーが外壁全面に敷かれているので、はじめて見る人は不思議な光景だと感じることでしょう。
・モルタル
モルタルは乾燥するとセメント同様、硬くなります。
モルタル塗る職人さんは左官屋さんになります。
防火地域などの行政に指定されるエリアによって、モルタルの厚みが変わってきます。
・透湿防水シート
雨水の侵入を塞ぎながら湿気は外に逃がすシートです。
・胴縁(どうぶち)
通気層を確保するための木の板です。
通気胴縁ともよびます。
木摺りを固定させる下地の役割も担います。
胴縁があるかないかで外壁の寿命や雨漏りのしやすさが大きく変わります。
「胴縁がある」といった会話は外壁リフォームの現場でよく聞く言葉です。
・仕上げ
代表的なモルタル外壁の仕上げに「スタッコ」や「リシン」「吹き付けタイル」などがあります。
1980年代以前はスタッコもしくはリシンが多いです。
1990年代以降は吹き付けタイルが多いです。
2000年代以降はジョリパットなどの洋風漆喰仕上げの外壁が流行しました。
最近はそとん壁が人気です。
モルタル外壁の仕上げの種類
スタッコ
スタッコは厚みがある荒いテクスチャーが特徴の仕上げ方法です。
表面はザラザラしています。
リシン
小石を更に砕いたような小さなブツブツが特徴の仕上げ方法です。
表面はザラザラしています。
吹き付けタイル
吹き付けタイルは斑点が浮き上がったようなテクスチャーが特徴の仕上げ方法です。
表面はツルツルしています。
ジョリパット
ジョリパットは砂壁のような細かい目が特徴の仕上げ方法です。
扇形などの模様が描けます。
表面はザラザラしています。
モルタル外壁の寿命とメンテナンス
モルタル外壁の寿命
建築時期と実際の外壁を確認して、外壁通気工法で工事された建物か確認しましょう。
通気層のある無しでは、約10年程耐用年数が変わります。
外壁通気工法なし | 30~40年 |
外壁通気工法あり | 40~50年 |
モルタル外壁はひび割れが発生しやすい外壁であるため、定期的なひび割れに対するメンテナンスをおこなっているかどうかも耐用年数に関わります。
モルタル外壁のひび割れ
モルタル外壁のひび割れは、髪の毛程度の細いびび割れである「ヘアークラック」と建物に危険がおよぶ「構造クラック」の2つに大別できます。
ヘアークラックと構造クラックは、外壁塗装のメンテナンス時に補修処置をおこなうことが多いです。
このようなひび割れしている劣化状態を放置していると、雨水が外壁内部に入り込む原因になるので、定期的にメンテナンスをおこないましょう。
はがれ落ちたモルタル
はがれ落ちたモルタルもひび割れと同じように、外壁塗装と合わせて補修処置をおこなうことが多いです。
モルタル外壁の改修方法
外壁塗装
モルタル外壁は定期的な塗装工事が必要です。
塗膜の経年劣化とともにモルタルを保護する機能が低下します。
筆者個人としては地震によるひび割れリスクが常にあるため、あまり高価で対候性が高い塗料を用いず、10~15年程度色もちする塗料でメンテナンスをおこなうことをお客さまにおすすめしています。
なお、ヘアークラック程度であれば外壁塗装だけでひびが埋まります。
画像中央の アイコンを左右に移動すると、画像の比較ができます
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外壁カバー工法
長期的な外壁機能の維持といった点において、外壁カバー工法は外壁塗装より優れています。
特に大きなひび割れや剝落が認められるモルタル外壁には、外壁カバー工法をおすすめします。
金属サイディングの断熱材などにより、一定の断熱効果も得られます。
寒さや暑さ対策としての期待ができる工事です。
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モルタル外壁の修理・リフォームはご相談ください
モルタルの外壁の構造についていかがでしたでしょうか。
テイガクでは、モルタルの外壁塗装・補修工事をおこなっています。
外壁カバー工法によるリフォームも得意としていますので、ぜひお気軽にご相談ください。