スレート屋根材の種類と材質について

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スレート屋根材について

スレート屋根
スレート屋根

スレートは薄い板のような形状の屋根材で、街中で必ず見かけます。
特に都心部や都心近郊の戸建て住宅は、どこもかしこもスレートばかりです。
しかし、わたしたちがよく目にするスレートは、本物のスレートはありません。
本物のスレートに似せて作った商品です。

そして、スレートは、製造された時代や商品によって材質や耐久年数が大きく変わります。

このページでは、スレート屋根の種類と材質について解説します。

スレートの材質の種類

材質が石のスレートが”本物”のスレート

天然スレート屋根
天然スレート屋根

本来、スレートとは石(粘板岩)のことです。
屋根材として用いる時は、この粘板岩を薄くスライスさせて屋根に張ります。
ヨーロッパのお城は石のスレートが屋根に用いられています。
本物の石をつかったスレートのこと「天然スレート」とよびます。

天然スレートの耐久性は高く、色あせもしません。
風合いもかっこうが良いです。
しかし、値段がおどろくほど高く、重量もあります。
わが国ではごく稀にみかけるくらいです。
ちなみに東京駅の屋根が天然スレートです。

材質がセメントのスレートが実際は流通

本物のスレートを用いることができないので、セメントを主成分にした屋根材がわが国では普及しています。
天然スレートに模して(化粧させた)屋根材なので、わたしたちになじみがあるスレートは「化粧スレート」とよびます。
いつしか「化粧」を取り払った言葉が一般的になり、わが国では化粧スレート=スレートの意味になってしまいました。

厚型スレート
厚型スレートで人気が高まっているROOGA(ルーガ)
波型スレート
工場や倉庫でよく見かける波型スレート

セメントを主成分にしたスレートの屋根は、形や厚みなどによって呼び名が変わります。
平板(へいばん)スレートや厚型スレート、波型スレートの3つがあります。

石綿が含まれていないスレート
アスベストが含まれていない第二世代のノンアス

平板スレートは製造時期によって大きく特徴が異なります。
たとえば、20年以上昔のスレートには、セメントの他に、今では禁止となっているアスベスト(石綿)が含まれていました。

第一世代は石綿スレート、第二世代以降はノンアス(アスベスト無しのスレートのこと)と呼びます。
ノンアススレートは第二世代と第三世代に分けられます。

平板(へいばん)スレート

コロニアルやカラーベストのこと

平板スレート屋根
平板スレート屋根

平板(へいばん)スレートとはスレートのなかで薄くて平べったい板のような形状のスレートのことです。
かいつまんでいうと、戸建て住宅で用いられているスレートが平板スレートです。

平板スレートはコロニアルカラーベストともよばれます。
スレートのよび名があまりに紛らわしいので、テイガクではコロニアルとよぶことにしています。

コロニアルの耐久性とメンテナンスについて

コロニアル 屋根 リフォーム

スレートの製造会社について

2000年はじめまで、スレート屋根の市場はクボタがトップシェアを独走していました。
2位は松下電工です。
2003年に1位のクボタと2位の松下電工が株主となり、スレート製造会社を合併させたケイミュー(2010年い社名変更)を設立します。
ケイミューの登場により、スレート市場はほぼ1社独占となります。

第一世代 石綿スレート

平板スレートに限らず、初期のスレートの屋根にはセメントの中にアスベストが含まれていました。
商品名ではクボタの「ニューコロニアル」や「アーバニー」、商品名であからさまにアスベストが含まれていることが分かる松下電工の「フルベスト」が有名です。

1980年から1990年代後半に建てられた戸建て住宅のスレート屋根にはアスベストが含まれています。
石綿スレートの石綿は屋根の機能維持という点では”超”優秀な素材です。
ちょうどその頃に建築された戸建て住宅がそころじゅうにありますが、経過観測すると30年から40年の間は屋根が機能しています。

屋根リフォーム時の様子
屋根リフォーム時の様子

しかし、アスベストの処分費用は高額です。
屋根を張り替える葺き替え工事には多額の費用がかかります。 
30年や40年を待たずに、屋根の状態が良好なタイミングで屋根カバー工法をおこなう人が増えている屋根材でもあります。

アスベスト入りスレート屋根の見分け方

見分け方

第二世代 ノンアススレート

1990年代末から2000年代半ばに製造された平板スレートです。
石綿を取り除いたノンアスベストのスレートで、ノンアスとよぶことが多いです。
ひと言でたとえると「ぜい弱な屋根」です。
アスベストに代わって開発された素材が、アスベストほど強力な耐久性を持ち合わせていなかったことが原因です。

コロニアルNEO
屋根先の欠けと屋根の反り、浮きの不具合が起こりやすいコロニアルNEO

築後15年前後でひび割れや欠けなどが顕在化し、台風などの強風発生時は屋根がはがれ落ちたりすることがあります。
ニチハの「パミール」クボタの「コロニアルNEO」が有名です。
現在、この屋根材の不具合に苦しんでいる人がたくさんいます。

問題発覚後、ニチハはスレート製造から撤退します。
クボタや松下電工は、これまでの誰しもが知る社名から、全く想像ができない社名(ケイミュー)の持ち合い子会社を設立するに至ります。

パミールのリフォーム方法

パミール 屋根

第三世代 改良型ノンアススレート

第二世代のノンアの問題をうけて、2000年代後半には改良型のノンアススレートが販売されます。
現在販売中の平板スレートです。
コロニアルクァッド」や「コロニアルグラッサ」が有名です。
アスベストの代わりに強力なパルプ繊維を含めており、第二世代のノンアススレートよりは頑丈な屋根材です。
ただし、製造から10年程度しか経過していません。
十分な評価をするには、もうしばらく時間を要しそうです。

戸建て住宅におけるスレート屋根のシェア

既存建築物における屋根材のシェアは以下の通りです。
1位は「瓦」で2位が「スレート」、3位が「金属」です。
戸建て住宅全体では瓦が最も多いですが、都心や郊外に限るとスレートが1位です。

一方、現在の新築戸建て住宅における屋根材のシェアは以下の通りです。
1位は「金属」で2位が「スレート」、3位が「瓦」です。

そして、リフォームにおける屋根材のシェアは、言うまでもなく「金属」がダントツのシェア1位の屋根材となっています。

街なかで当たり前のように見かけるスレートですが、現在は屋根材の主役が変わっており、日本の街中の風景もだんだんと変わりつつあります。

厚型スレート

屋根カバー工法を生み出した屋根材「セキスイかわらU」

スレートに厚みをもたせることで瓦風のフォルムにデザインされた屋根材です。
積水化学工業の「セキスイかわらU」が有名です。
デザイン性があり、屋根仕上がりの断面を見ると、空気層(断熱層)が形成されます。

セキスかわらU アスベスト入り
屋根カバー工法後20年が経過したセキスイかわらU

この屋根材が人気博した一番の理由は、カバー工法ができることです。
平板スレートの上に重ねて張るカバー工法ができる屋根材として売り出され、屋根リフォーム業界では大ヒット商品になりました。

現在では金属屋根を用いて屋根カバー工法をおこなうのが一般的です。
しかし、1990年代はまだガルバリウム鋼板の評価が低調だったので、厚型スレートで屋根カバー工法をおこなっていました。

屋根カバー工法が現在ここまで普及している背景には、「セキスイかわらU」などの厚型スレートによる屋根カバー工法の実績のおかげともいえます。

厚型スレートの発売初期はアスベストが含まれていました。
しかし、1990年代後半になると、ノンアスのスレート屋根材として再販されます。
当時のノンアスの評価は先述した通りです。

セキスイかわらUのリフォーム方法

セキスイかわらU

ノンアスの材質の問題

特にセキスイかわらUにいたっては、平板スレートと違って空気層がある形状になっています。
そのため、ノンアスのセキスイかわらUにのぼると、踏み抜いて割ってしまうがとても高いです。
パミールやコロニアルNEOのような第二世代の平板スレートよりも、状態が悪いことが少なくありません。

一部に破損があるセキスイかわらU
一部に破損があるセキスイかわらU

セキスイかわらUは長い歴史のある屋根材でした。
しかし、積水化学工業はこれ以降、屋根材の販売を撤退します。

評価が高まっている厚型スレート屋根「ROOGA」

ルーガ屋根材
素人では瓦と区別がつかず、評価が高まっているルーガ

ROOGA(ルーガ)はケイミューから販売されている、比較的新しいタイプの厚型スレート屋根です。
一般名称は「樹脂繊維混入軽量セメント瓦」です。






瓦風のデザインフォルムで安っぽさはなく、ハンマーで叩きつけても割れない位の耐久性を備えています。
最高ランクの評価に位置付けられるテイガクでもおすすめの屋根材です。
ただし、工事価格もその分高い屋根材です。

ルーガの特徴とリフォーム方法

ルーガ 屋根

波型スレート

工場・倉庫のスレート

波型スレートの材質
波型スレートはセメントが主成分で、屋根の流れに沿って張り付ける。

波型スレートは主に工場や倉庫の屋根材として用いられています。

住宅用のスレートと材質は同じです。
セメントが主成分であり、昔の波型スレートにはアスベストが含まれています。

しかし、素材は同じでも張り方や構造が全く違います。
波型スレートは住宅用のスレート(コロニアル)よりも分厚く、張り方は横張り(横葺き)ではなく縦張り(縦葺き)になります。

波型スレートの内側
波型スレートは主に鉄骨造で用いられる。

波型スレートを張る建築物は木造ではなく鉄骨造です。
波型スレートの下には野地板のような下地材はありません。
住宅用のスレートのように2枚重ねに張らず、長さがとても長い(長尺の)波型スレートを屋根の傾きに沿って屋根を張って仕上げます。

戸建て住宅同様、最近は波型スレートよりは折板屋根(大型建築物用の金属屋根)で屋根を仕上げる機会が増えています。

スレート屋根の種類に関するまとめ

スレート屋根の種類

スレートの屋根は大きく、「天然スレート」「平板スレート」「厚型スレート」「波型スレート」の4つの種類にに分けられます。

「天然スレート」がいわゆる”本物(石)”のスレートに当たります。
しかし、わが国ではほとんど用いられていません。

戸建て住宅では「平板スレート」がよく用いらており、既存の戸建て住宅の中では瓦に次いで2番目に多く用いられている屋根材です。
新築時でも同じく2番目に多い屋根材となっています。
特に都心や郊外でよく見かける屋根材です。

「厚型スレート」はセキスイかわらUなどの商品が1980年代から90年代にかけて流行しました。
ノンアスベスト屋根の不具合問題が顕在化し、かつて流行した商品は軒並み製造中止となりました。
そんななか、ROOGA(ルーガ)とよばれる商品の評価が高まっています。

「波型スレート」が昔の大型建築物の主流な屋根材でした。
最近は折板屋根(金属屋根)の評価が確立したため、新築で用いることが少ななりました。
しかし、既存建物では数多く残されています。
テイガクでも波型スレートの改修するに関するお問い合わせが年々、増えています。

スレート屋根の材質

石の材質の屋根が本来のスレート屋根です。
わが国では、セメントを主成分にした屋根をスレート屋根とよんでいます。

2000年以前のスレート屋根はアスベストが含まれており、屋根の耐久性という点では優れていました。
しかし、撤去処分の葺き替え工事となると多額の費用負担を要します。

そのような背景の元、アスベストが含まれていないスレート屋根が開発されました。
しかし、開発直後に流通したノンアスベストのスレート屋根はことごとぐ(アスベストがないため)ぜい弱でした。

築後15年から20年で屋根の大掛かりな改修工事を迫れて、泣きを見ている人がたくさんいます。

最近は改良型のスレート屋根が開発され、実績を積み重ねてきています。
「コロニアルクァッド」や「コロニアルグラッサ」「ルーガ」といった屋根材です。

平板スレート(コロニアル)はそもそもが5㎜程度の薄い材質であるため、まだ良し悪しの評価を確立するには時間がかかるというのが筆者の意見です。
厚型スレートのルーガについては、実際に取り扱っている中では、とても良い屋根材(耐久性が高く安心して用いられる屋根材であるというのが筆者の印象です。

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この記事を書いた人
著者 前川 祐介
前川 祐介 代表取締役社長
テイガク サイト制作責任者
宅地建物取引士
建築物石綿含有建材調査者
著者経歴

大阪府堺市生まれ。千葉県立船橋東高校→法政大学→サノフィ(旧アベンティスファーマ)株式会社を経て、父親が経営する板金工事会社である昭和ルーフリモ株式会社へ入社。
中央工学校夜間建築学科卒業。年間100棟以上の屋根と外壁工事に携わった経験を活かし、テイガク記事の執筆とユーチューブ動画撮影をおこなっています。趣味は日本史学。

運営会社

昭和ルーフリモ株式会社は2001年設立の板金工事会社です。
これまでの金属屋根と金属サイディング工事件数の合計は20,000棟を超えます。
板金工事は足場を組み立てるため、外壁塗装の工事事業にも注力しています。

国土交通大臣許可(般-25)第22950号
許可を受けた建設業:板金工事業/屋根工事業/塗装工事業 他

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