こちらのページでは、屋根カバー工法の方法と工事手順を解説します。
屋根カバー工法の手順と押さえておきたいポイント
施工手順 | ポイント |
---|---|
1足場組立・養生シート | 軒先(雨どい)の位置から約50センチ手前には障害物をおかない |
2棟板金・雪止め金具の撤去 | 材料とはしご、職人さんがとめる車のスペースを確保 |
3防水シート張り | 防水シートは20種類以上、商品名と特徴を確認 |
4屋根本体張り | 屋根材は100種類以上、商品名と特徴を確認 |
5板金下地取り付け | 腐りにくい素材の下地を用いる |
6棟板金の仕上げ | 立上げ・C型チャンネル仕様を確認 |
7仕上げ確認 | 工事工程を撮影した写真を入手(工事完了後でもOK) |
8足場解体 | 工事完了後、工事保証書とメーカー製品保証書を入手 |
※戸建て住宅のコロニアルに金属屋根を張る工事をモデルにして執筆いたしました。
屋根カバー工法の施工手順【解説動画】
屋根カバー工法の工事手順【解説動画】
屋根カバー工法の施工方法と工事手順
ご注意ください
このページにある工事内容はテイガク屋根修理の実績と経験に基づいています。
他の業者様と施工方法が異なる場合がございます。
足場の組立
まずはじめに足場の組立からはじめます。
軒先(雨どい)から50cm先に足場のパイプ(ビケ)が立ちます。
そのため、軒先から50cm手前には、植木鉢など何も置かないようにしてください。
工事中、釘や金属片がたくさん飛散するのでメッシュ製の養生シートを四方に張ります。
足場の作業は20坪から30坪程度の建物であれば約半日で組み終わります。
足場のパイプを持ち運ぶ車は2トン車が多いです。
道幅が狭い現場では事前対策をしっかり講じなければなりません。
屋根カバー工法に足場は必要?
足場は絶対に必要です。
足場を組むことは最低限のマナーです。
養生シートがない状態で物を落としたり、金属片が飛んだりすると、近隣居住者様や通行人ペットの迷惑になります。
足場やシートを用いずに工事をおこなうことは、周りの人から非常識な人だと思われる社会になっています。
屋根工事品質にも関わります。
職人さんの安全を確保しなければ、しっかりした工事は絶対におこなえません。
敷地の駐車場はどうすればいい?
駐車場と前面道路のスペースは空けていただきます。
職人さんの車の駐車や屋根資材置き場、はしごの立てかけスペースとして利用いたします。
棟板金(むねばんきん)の撤去
屋根のてっぺんを棟(むね)とよびます。
棟板金は名前のとおり、棟に取り付けられている板金のことです。
棟板金は鉄くぎで留められていることが多いです。
屋根カバー工法では、はじめに古い棟板金を取り外します。
一度はずした棟板金を再利用することはできません。
棟板金の下地を取り外し
棟板金の下には、棟下地(むねしたじ)または貫板(ぬきいた)とよばれる下地が取り付けられています。
この下地には、木材が使われていることがほとんどです。
下地を留めている鉄くぎをバールをつかって抜き、下地を取り外します。
多くの屋根には「鉄くぎ」と「木製の貫下地」がつかわれています。
しかし、この鉄くぎと木製貫下地の組み合わせは、棟板金にとってあまり良い組み合わせではありません。
木製の下地は腐りやすく、鉄くぎは錆びやすいからです。
築後10年ほど経過した住宅の棟板金は、下地の腐食や鉄くぎの錆びが原因で、強い風が吹くと棟板金が飛ばされてしまうことがあります。
コロニアル(スレート)でもっとも多い不具合が棟板金の飛散です。
そのため、テイガク屋根修理ではカバー工法で棟板金を工事する時、「鉄くぎ」と「木下地」はつかいません。
棟板金が飛ばされにくい対策を講じます。
対策についてはのち程、解説します。
雪止め金具を切断
屋根の手前側にあたる軒先(のきさき)には雪止め金具が取り付けられていることがあります。
屋根からの落雪を防ぐために、降雪地区では雪止め金具が欠かせません。
雪止め金具はカバー工法をおこなう場合の障害物になるため、全て切断して取り除きます。
切断時の鉄粉が車に付着すると、もらい錆びをおこすことがあります。
雪止め金具はかなり慎重に切断しなければなりません。
これで屋根が完全にフラットな状態になりました。
防水シート(ルーフィングシート)を敷き詰める
屋根の軒先(低いところ)から棟(高いところ)に目がけて、防水シートを敷き詰めます。
防水シートはルーフィングシートや下葺き材(したぶきざい)ともよばれます。
防水シートは最終的に屋根からの雨漏りを防ぐ、重要なシートです。
屋根カバー工法をおこなう一番の目的は防水シートを新しく張ることです。
戸建住宅用だけでも、防水シートは20種類以上あります。
低価格で低品質なものから、高価格で高品質なものまで種類はさまざまです。
防水シートを選ぶ時は、高品質かつ古い屋根に適合する商品を選びましょう。
おすすめのシートは?
費用対効果を考えると、一番多くつかわれているアスファルトルーフィング(940)はおすすめしません。
最低でも改質アスファルトルーフィングとよばれるグレードのシートをおすすめします。
アスベストが含まれていないノンアスベストのコロニアルであった場合は、粘着式のシートをつかうことをおすすめします。
アスベスト入りかどうかの見分け方は?
屋根材の製造時期によりますが、コロニアルの場合は2000年以前と2000年以降の建築物かが目安となります。大手スレートメーカーのケイミューは過去に同社が販売したアスベスト入りとノンアスベストの製造時期をウェブサイトで公開しているので、参考にしてください。
鋼板チップに釘を打ちつけて防水シートを張り付ける
コロニアルと防水シートの間に鋼板チップをはさみ、くぎでシートを張り付けます。
当たり前ですが、防水シートの重ね幅を十分に取ると、防水性能が高まります。
屋根工事は直接目で確認ができないところなので、重ね幅を十分に取らないで仕上げる業者もいます。
こういうところこそが、屋根工事の大事なところであり、業者選び失敗・工事失敗の原因となります。
なお、粘着式の防水シートは釘をつかわないので、コロニアルを傷めずに防水シートを張れます。
軒先とケラバに板金を取り付ける
屋根の外周に幅10cmから20cm程度の板金部材を取り付けます。
軒先唐草(のきさきからくさ)やケラバ水切りとよばれる板金部材です。
板金部材のことを役物(やくもの)とよぶ業者もいます。
本来、板金部材は屋根本体と規格が合うメーカーの純正品(規格品)をつかうべきです。
しかし、メーカー純正品ではない板金部材をこっそりつかう業者が意外と多いです。
規格適合品でないことが原因で、屋根がはがれたりすることがあります。
メーカー純正品の板金部材をつかっているか必ず確認しましょう。
軒先(のきさき)とケラバの違いは?
屋根カバー工法の見積り書を手に入れた際、「軒先」や「ケラバ」といった項目があるはずです。
どれも屋根の先端に取り付ける板金のことです。
地上に対し屋根の先が水平(横)になっている屋根先を「軒先」とよびます。
一方、地上に対し屋根の先が勾配がついている(斜めになっている)屋根先を「ケラバ」とよびます。
基本的には深く考えず、どちらも同じものだと思っていただいて問題ありません。
金属屋根の持ち運び
金属屋根は長ければ長いほど優秀な屋根といえます。
なぜなら継ぎ目が少なくて済むからです。
屋根の1枚当たりの長さも、屋根材を決めるポイントにもなります。
テイガク屋根修理がよくつかっているスーパーガルテクト(画像の屋根)は1枚約3メートルあり、優秀な屋根といえます。
そのかわり資材置き場の確保と屋根上への持ち上げが大変です。
荷揚げ車両の駐車や、はしごの立てかけができないよう場合では、1枚1枚屋根材を手作業で職人さんが持ち上げます。
夏場はかなりの重労働になります。
金属屋根を張り付ける
金属屋根を屋根面に張り付けます。
今回使用した金属屋根材は、アイジー工業のスーパーガルテクトです。
スーパーガルテクトは横葺き・かん合式・エスジーエル鋼板屋根です。
鋼板の裏側には断熱材があり、カバー工法で屋根を仕上げると断熱効果が高まります。
スーパーガルテクトを張る留め具は釘もしくはビスを用います。
基本的に釘で十分ですが、30cm間隔でビス打ちしてあげると耐風性能があがります。
屋根材の種類はたくさんあります。
同時に屋根の施工方法もいくつかあります。
どんな屋根材をつかって、どんな施工方法で仕上げるのか、ぜひ確認してください。
ガルバリウム鋼板とエスジーエル鋼板の違いは?
エスジーエル鋼板は、鋼板製造の最大手である日本製鉄グループに属する日鉄鋼板が取り扱っているガルバリウム鋼板を改良させた新しいタイプの鋼板です。
従来のガルバリウム鋼板の3倍超の耐久性が認められています。
ガルバリウム鋼板からエスジーエル鋼板に切り替えをはじめている大手金属屋根メーカーも増えてきています。
横葺きと縦葺きの違いは?
横葺き(よこぶき)とは屋根の流れに沿って横向きに張るタイプの屋根です。
画像でわかるとおり、スーパーガルテクトは横葺きになります。
一方、屋根の流れに沿って縦向きに張る縦葺き(たてぶき)タイプの屋根があります。
横葺きは複雑な屋根でも施工ができる特徴があります。
縦葺きは工事価格が安い反面、シンプルな屋根でしか施工ができない制限があります。
かん合式とは?
かん合式屋根とは屋根と屋根の継ぎ目の部分を引っ掛け合わせて張るタイプの屋根です。
風に強いつくりの屋根です。
テイガク屋根修理が屋根カバー工法を提案する時は、かん合式の屋根をおすすめすることが多いです。
棟板金の仕上げ
金属屋根材を張り終えたら、棟板金の下地を取り付けます。
棟板金の下地には腐りにくい素材の製品がおすすめです。
この下地は木と違って腐ることがありません。
テイガクでは金属製の棟下地「エスヌキ」を自社で開発しました。
金属でできているので、腐らず変形せず、木よりもはるかに棟板金を固定できる優れた下地材です。
テイガクが推奨する金属下地(エスヌキ)の強度について
テイガクが推奨する金属下地(エスヌキ)は「価格の安いガルバ」と「錆に強いアルミ」の2種類からお選び頂けます。
アルミは、異種金属接触の腐食を考慮した板厚(1.3mm)で設計し、表面にはアルマイト処理(絶縁処理)を施しています。
これまでの数多くの失敗と経験から生まれたテイガクのオリジナルの下地材です。
詳細はこちら
棟板金は(1)屋根材を折り曲げて立ち上げる方法(2)C型チャンネルとよばれる部材をつかう方法(3)立ち上げもC型チャンネルもつかわない方法によって、手間や工事料金が変わります。
(3)の施工方法が最も安いです。
これら棟の仕上がりは用いる屋根材や職人さんによって提案する方法が変わります。
また、棟の内側に取り付ける芯材を木から腐りにくい素材に変えると費用が変わります。
棟の仕上げについて説明がしっかりできるかどうかで、対応者が屋根工事のプロであるかどうかが見抜けます。
テイガク屋根修理では、外側に露出する留め具はステンレスのビスをつかいます。
ステンレスは鉄に比べて錆びにくいです。
もちろん、釘ではなくビスをつかいます。
換気棟(かんきむね)の取り付け
屋根カバー工法をおこなう時は、換気棟の取り付けをおすすめします。
換気棟とは、屋根裏のこもった熱や湿気を外へ自然放出してくれる部材です。
結果的に断熱効果や屋根の耐久性が高まります。
換気棟がない場合は新設することもできます。
換気棟を取り付けると雨漏りするのでは?
屋根にすっぽりと穴を開けることになるので、万が一、換気棟から雨が入り込んでしまうと酷い雨漏りになります。
当然、専門性の高い板金技術と施工業者の保証体制が求められます。
下屋根の施工
2階建ての1階部分の屋根を下屋根(げやね)とよびます。
下屋根には外壁との取り合い部分が生じるため、壁際に雨押え板金(あまおさえばんきん)とよばれる板金部材を取り付けます。
壁押えや壁際板金とよぶこともあります。
シーリングによる部分仕上げ
雨漏りが起きやすいか所はだいたい決まっています。
雨漏りが起きやすい部分に、対策を施すことを雨仕舞(あまじまい)とよびます。
代表的な雨仕舞の方法として、シーリングによる止水処置があります。
屋根と板金のすき間にはシーリング材をなじませて仕上げます。
テイガクのシーリング剤について
テイガクでは2024年10月より、工事に使用するシーリング材に、耐候性・速乾性に優れた「SRシール H100」を採用いたします。(SRシール H100の詳細はこちら)
ご希望のシーリング材がございましたら変更は可能ですので、担当の施工管理士にご相談ください。
カバー工法リフォーム完成
施工工程がわかるお写真をお客様にお渡しし、工事完成です。
足場解体を終えたのちに金属屋根メーカーが発行する製品保証書とテイガク屋根修理が発行する工事保証書をお客様にお渡ししています。
さいごに(筆者より)
以上、テイガク屋根修理による屋根カバー工法の解説でした。
このページに記載している工事方法や手順は、板金工事を中心に約20年間、建設工事に従事してきたテイガク屋根修理の経験に基づく工事手順です。
テイガク屋根修理の施工管理社員や職人さんが共有している施工方法となります。
他の業者様とは異なる施工方法や考えが多分あると思います。
違いについては、あらかじめご了承ください。
このページで一番伝えたいことは、屋根カバー工法は思っている以上に複雑であるということです。
防水シートの種類から屋根材、板金の仕上げ方など、おさえるべきポイントがいくつもあります。
それにもかかわらず、あたかも簡単な工事のようにサラリと語られることが多いです。