横葺き金属屋根の必要勾配
2.5寸以上の勾配が必要
水平に張る横葺き金属屋根は、一定以上の勾配(屋根の傾き角度)が必要です。
一般的には2.5寸以上の勾配が必要とされています。
一方で縦葺きの金属屋根は、1寸以上の勾配でも屋根を葺くことができます。
理由はシンプルで、縦葺きの方が排水しやすく雨漏りしにくいからです。
横葺き金属屋根のウィークポイントは、屋根と屋根のつなぎ目のジョイント部分です。
屋根の勾配が緩い(傾きが緩い)と屋根のジョイント部分から雨水が浸水するリスクが高くなります。
【屋根に必要な勾配】
横葺き金属屋根 | 2.5寸 |
縦葺き金属屋根 | 1寸 |
ちなみに、3寸以下の勾配を緩勾配(かんこうばい)、6.5寸以上の勾配を急勾配とみなす人が多いです。
急勾配の屋根ほど、雨漏りはしにくいです。
横葺き金属屋根の緩勾配は要注意
横葺き金属屋根の緩勾配と急勾配のメリットとデメリットを取り上げます。
緩勾配のメリット |
-
屋根面積を少なくできる(施工費が安くなる)
-
屋根のメンテナンスがしやすい
緩勾配のデメリット |
-
横ジョイント部分から雨水や雪水が入り込みやすい(雨漏りが起きやすい)
-
屋根が目立たない
よくある屋根の雨漏り問題
設計会社や施主は、屋根面積を減らすことで建設工事価格を抑える傾向があります。
そのため、屋根材メーカーが設定する必要最小限の勾配で屋根を仕上げるといったことが少なくありません。
必要最小限の勾配だから安心だと思っていたら、それは大きな間違いです。
筆者の経験上、雨漏りが起きている屋根は、たいてい必要勾配ギリギリで仕上げている屋根です。
そして、大量の雨が降った日だけ雨漏りするといったことも少なくありません。
横葺き金属屋根で安心してお過ごしになるには、できれば3寸以上の勾配はほしいです。
土砂振りの雨は明らかに増えている
グラフはアメダスが公開している大雨の発生頻度です。
2010年以降、猛烈な雨、いわゆるゲリラ豪雨の日数が右肩上がりに増えています。
屋根の必要勾配の基準は、災害レベルの雨量や経年劣化が及ぼす屋根の性能までを見込んでいないはずです。
必要勾配ギリギリで屋根を仕上げるのはリスクが高いことを知っておいてほしいです。
捨て板とは?
捨て板とは、屋根本体の下に入れる排水機能を目的とする板金部材のことです。
写真の板金部材は横葺き金属屋根の横の接合部からの雨水侵入を防ぐために用います。
屋根と屋根のつなぎ目に用いる捨て板のため、ジョイント下地ともよばれています。
屋根勾配が3寸を下回る場合、屋根と屋根のつなぎ目箇所にジョイント下地を入れます。
ジョイント下地は、日本の屋根材メーカーでは用意があります。
ジョイント下地があるおかげで、金属屋根の横同士のすき間に入った雨水が屋根の外側に排水されます。
屋根の勾配が緩い場合、費用と手間がかかりますが、是非、用いて欲しいです。
なお、捨て板はジョイント下地に限らず、金属屋根には数多くの捨て板があります。
金属屋根の弱点・横のつなぎ目とジョイント下地
空気層がある石粒付き金属屋根は注意
石粒付き金属屋根を仕上げると、屋根の下側に空気層が形成されます。
屋根面に屋根材が完全に密接しないため、横同士のつなぎ目箇所にすき間が空きやすいです。
特につなぎ目部分を足で踏みつけてしまうと、すき間が大きくぱっくりと空いてしまいます。
施工マニュアルに、ビス打ち箇所の位置を厳格に求めている屋根材も存在します。
街中で横同士のつなぎ目箇所にすき間が空いている屋根をよくみかけます。
石粒付き金属屋根は1枚当たりの屋根の長さが短く、横同士のつなぎ目が多くなりやすいです。
屋根の止水性能に悪影響を及ぼすリスクがあるため、すき間を空けずに施工がおこなわれているか、しっかり注意を払いましょう。