屋根裏(小屋裏)の構造について

屋根裏(小屋裏)とは

雨漏りした屋根裏
屋根裏の木材の雨染みを見ることで屋根からの雨漏りか判別できる

屋根裏とは、屋根の裏側(天井裏)にあるスペースのことです。

屋根裏を部屋にしている場合は、屋根裏部屋もしくはグルニエとよびます。

建築士は屋根裏とは言わず、小屋裏(こやうら)とよびます。

屋根裏にはたくさんの木部材が用いられて構成されています。

屋根裏の構造を総称して小屋組(こやぐみ)とよびます。

言うまでもないことですが、雨漏りの原因は屋根裏を見て確認できることが多いです。

屋根裏の構造

小屋組みの写真
屋根裏にはたくさんの木材が用いられており、それぞれ名称がある

屋根裏に入って屋根の天井を見上げると大小さまざまな木材や板材があります。

それらの木材すべてに固有の名称があります。

屋根を構成する木材の名称は、戸建て住宅の構造材の中で最も多いです。

あまりにもたくさんあるので、建築士の勉強をしている人は、たいてい屋根に関する用語でつまづきます。

ここでは8種類の構造材をできるだけ優しくご紹介します。

野地板(のじいた)

野地板について

野地板について

野地板は屋根材の下地材です。

垂木(たるき)に打ち付けるかたちで張ります。

一般的には畳と同じサイズの構造用合板(こうぞうようごうばん)を用います。

厚みは12mmが最も多く使われています。

幅20㎝くらいの杉板を野地板(バラ板とよびます。)として用いることもあります。

屋根裏の換気を確保していない場合、結露の影響で腐食がすすみやすくなります。

ちなみに、野地板の耐久性(結露による悪影響)を考えると、構造用合板よりバラ板が望ましいです。

垂木
野地板(バラ板)

職人さんは野地板のことを、よくコンパネとよびます。

コンパネと構造用合板は見た目が似ているので、コンパネとよぶことが多いですが、厳密に両者は異なる板材です。

垂木(たるき)

屋根の構造材

屋根の構造材

垂木とは野地板の下にある野地板を支える木材です。

一般的には45.5㎝の間隔で取り付けます。

野地板を垂木に釘やビスで留め付けます。

ちなみに屋根材も本当は垂木に打ち付けて張るのが望ましいです。

屋根材を垂木に打たなかった場合、屋根材の釘が野地板を貫通します。

屋根材を固定する釘からの雨漏り
屋根材を固定する釘が野地板を貫通して雨水が漏れ出している

屋根業者の用語で屋根材を垂木にめがけて打つことを「垂木留め(たるきどめ)」とよんでいます。

屋根材を垂木に張り付ければ、野地板から屋根材を固定する釘が飛び出ることがありません。

垂木に屋根材を張り付ければ、屋根材の釘穴から雨漏りが発生したり、屋根材が風で飛ばされたりすることが少なくなります。

しかし、ほとんどの新築業者は「垂木留め」をおこないません。

なぜ垂木にめがけて屋根材を張らないのか?

理由は「面倒」だからです。

ハウスメーカーや工務店は嫌がると思いますが、新築時、屋根の施工について意見ができるのなら、屋根材は「野地板留め」ではなく「垂木留め」でお願いすることをアドバイスします。

太陽光パネルの金具 も「垂木留め」の方が固定強度が高いです。

そのため、太陽光パネルの金具は「垂木留め」を必須にしている太陽光パネルメーカーが存在します。

一方で、「野地板留め」をOKにしている太陽光パネルメーカーも存在します。

筆者としては、太陽光パネルは、どんな製品であれ、「垂木留め」を必須にしたほうが良いと思っています。

垂木留めの野地板
釘がひとつも飛び出していない野地板は屋根裏も美しい

垂木の断面は幅3㎝~高さ4㎝くらいです。

関東や関西などの地域でサイズは変わります。

屋根の流れ(勾配)に沿って取り付けるため、地面に対して斜めに取り付けられるかたちになります。

母屋(もや)

母屋
母屋(もや)

母屋(もや)は垂木(たるき)を下から支える木材です。

断面は幅9㎝×高さ9㎝くらいで、柱と同じサイズの木材を用いることが多いです。

母屋は91㎝間隔で取り付けます。

母屋は地面に対して水平に取り付けます。

地面に対して設置する部材を水平部材もしくは横架材(おうかざい)とよびます。

一番高い位置の母屋を棟木(むなぎ)、一番低く建物の外側に位置する母屋を軒桁(のきげた)とよびます。

ちなみに、中心となる建物を意味する母屋(おもや)と同じ漢字表記です。

居住者がいる建物である限り、 母屋までが腐食してしまうことは、あり得ません。

露出した母屋
外壁から露出した母屋

昔は、外壁から母屋が突き抜けている建物が多かったです。

寺社仏閣などの建築物の多くは、母屋が外に露出しています。

しかし、最近の新築は母屋を「鼻隠し」や「軒天ボード」で覆ってしまい、露出させないことが多いです。

棟木(むなぎ)

棟木
棟木(むなぎ)

一番高い位置にある母屋を棟木(むなぎ)とよびます。

屋根のてっぺん部分を棟(むね)とよびます。

棟木を取り付けることを上棟(じょうとう)もしくは棟上げ(むねあげ)建前(たてまえ)とよびます。
本音と建前でよくつかわれる「建前」の語源は棟木の取り付けからきています。

上棟する時、上棟式(じょうとうしき)とよばれるセレモニーをおこなうことがあります。

通常、棟木の上に垂木が乗っています。

そのため、母屋と垂木の間に空気が入り込むすき間ができます。

このすき間を利用して、棟換気を行います。

しかし、下記画像のような住宅では、棟木と垂木の間に空気層ができません。

この場合は、空気が外に排出されないので、棟換気ができないです。

2×4の住宅で多いです。

このような状態で換気棟を取り付けている住宅をしばしば見かけます。

全く意味のない行為であり、残念です。

2×4の棟木
2×4の棟木

軒桁(のきげた)

軒桁(のきげた)
軒桁(のきげた)

軒桁(のきげた)は一番低い位置に取り付けられる母屋のことです。

軒桁は屋外側に位置することになります。

軒の高さ(軒高)とは、この軒桁のてっぺん(天端)の高さのことです。

軒高は建築士試験で頻出する用語です。

小屋束(こやつか)

小屋束とかすがい
小屋束(こやつか)とかすがい

束(つか)とは短い柱のことです。

小屋裏において、母屋と梁の間に垂直に取り付ける柱を小屋束とよびます。

小屋束と母屋(棟木も含)、小屋束と梁をつなぐ金物を「かすがい」とよびます。

夫婦関係を保つことわざである「子はかすがい」の語源です。

名称を知ると人生が豊かに

あずま屋の屋根裏
あずま屋の屋根裏

上記の写真は、筆者が山梨県の公園にある、休憩所で撮影した写真です。

公園などの庭園にある休憩所は「あずま屋」とよびます。

あずま屋はたいてい、天井の仕上げがないので、屋根裏の構造があらわしになっています。

この写真の中でも様々な部材が用いられています。

それぞれもちろん、名称があります。

個々の木材の名前と役割を知ることによって、何気なく見上げていた屋根裏も、「野地板はバラ板を使っていて、釘が野地板から出ていないので垂木に屋根材を留めていてるな」 など、これまでとは違った形で屋根を見ることができるはずです。

この記事を書いた人
著者 前川 祐介
前川 祐介 代表取締役社長
テイガク サイト制作責任者
宅地建物取引士
建築物石綿含有建材調査者
著者経歴

大阪府堺市生まれ。千葉県立船橋東高校→法政大学→サノフィ(旧アベンティスファーマ)株式会社を経て、父親が経営する板金工事会社である昭和ルーフリモ株式会社へ入社。
中央工学校夜間建築学科卒業。年間100棟以上の屋根と外壁工事に携わった経験を活かし、テイガク記事の執筆とユーチューブ動画撮影をおこなっています。趣味は日本史学。

運営会社

昭和ルーフリモ株式会社は2001年設立の板金工事会社です。
これまでの金属屋根と金属サイディング工事件数の合計は20,000棟を超えます。
板金工事は足場を組み立てるため、外壁塗装の工事事業にも注力しています。

国土交通大臣許可(般-25)第22950号
許可を受けた建設業:板金工事業/屋根工事業/塗装工事業 他

代表前川が本音で解説「板金工事会社とは?」

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