強い台風に耐えられる屋根カバー工法をおこなうには

こちらの屋根は8年前に他業社で屋根カバー工法をおこなった屋根です。
台風で屋根がはがれ、室内が生活できないくらいの雨漏りが発生しました。
施主様が業者に修理依頼の相談したところ、「台風のせいだから関係がない」。とあしらわれてしまいました。
近年、屋根カバー工法を最近おこなったにもかかわらず、屋根がはがれたといったご相談例が相次いでいます。
業者選びと屋根材選びに加えて、屋根の張り方についても十分な知識を得て欲しいです。
二度と屋根工事で失敗しないように、「台風に強い屋根カバー工法」をテーマに解説をいたします。

台風に強い金属屋根がわかる動画

台風に強い屋根について

台風に強い屋根について

台風の被害

建物で重要な部位は屋根

台風がもたらす屋根被害についての関心が年々、高まっています。
2018年と2019年と大きな台風が相次ぎ、屋根がめくれたりする屋根の事故が多発しました。
また、台風は同時かつ広範囲に被害を与えるため、屋根を修理したくても業者が見つからず修理ができないといった問題も顕在化しました。

ブルーシートの屋根
2019年 自然災害の被災地の様子

1年以上、屋根にブルーシートを貼ったままとなり、不安と隣り合わせの生活を余儀なくされた人がたくさんいました。

火災保険申請代行やブルーシート貼りなどで多額の金額を請求する悪徳業者が生まれるきっかけにもなりました。

屋根は建物で最も重要な部位です。
外壁の色あせや古びたキッチンなんかより、安心安全な屋根をリフォームするほうが重要です。
雨漏りが起きてしまったら、どんな綺麗な外壁も素敵なキッチンも価値がゼロになります。

一番の不幸

風ではがれた金属屋根
屋根がはがれてしまっている様子

一番の不幸は屋根カバー工法をして数年も経たないうちに、台風で屋根がはがれて雨漏りが起きてしまうパターンです。
数年前に屋根カバー工法で100万円程度のお金を使い、大型台風の影響で屋根がはがれてしまい、カバー工法は繰り返しできない工事なので、前回カバー工法で張った屋根の分を含めて屋根を張り直す葺き替え工事をおこない、結局、200万円の出費となるパターンです。

まさに最悪です。
このような人が年々、増えています。

台風被害は免責

台風や地震などの自然災害による工事の不具合は全て免責となります。
すべての建設業者に当てはまる事実です。
自然災害による不具合を無償で修理してくれる業者は存在しません。(善意を除く)

つまり、カバー工法をおこなった業者に相談しても「台風のせいだから、修理費は自己負担になりますよ」。のひと言で、終わりになる可能性が高いです。

2度とこのような思いをしたくないと心に誓い、必死になって屋根のことを学び直されている人が明らかに増えています。
屋根リフォーム=屋根カバー工法」のような風潮になり、何でもかんでも屋根カバー工法で済ませてしまうような空気になっています。

そこで屋根カバー工法をおこなううえで注意して欲しいこと4点まとめました。
大きな台風がきても安心できる屋根カバー工法のポイントとして抑えてください。

耐風性能に強い屋根材

各屋根材の耐風性能

以下の図は各主要屋根材の耐風圧性能の数値(Pa,N/㎡)です。

屋根材の種類耐風圧性能
(Pa,N/㎡)
留め方
スレート(コロニアル)-2248鉄リングくぎ4本留め
アスファルトシングル-3200シングル用くぎ4本留め
金属縦葺き-2646225mm間隔でくぎ2本留め
金属横葺き-3663455mm間隔でビス留め
※ 日経ホームビルダーより参照(一部詳細を省略)

横葺きかん合式屋根を30センチ間隔でビス留め

横葺き金属屋根が最も風に強いデータが得られています。
そして、横葺き金属屋根のビス留め間隔を30cmすると、耐風圧性能の数値が-5661に上がり、全ての屋根材で最も耐風圧が高い数字を示したこともわかりました。

したがって、屋根カバー工法で台風に強い屋根の仕上げを求める場合は以下が条件になります。

POINT
  • 横葺き金属屋根

  • かん合式

  • ビス留め

  • ビスの間隔を30cm

屋根材同士を噛み合わせる嵌合式
屋根材同士を噛み合わせる嵌合式

おすすめの商品は、スーパーガルテクトや横暖ルーフαプレミアムSのような商品です。

台風に強いおすすめ商品

横暖ルーフはαSプレミアムしか選択肢がない理由
スーパーガルテクト

避けるべきカバー工法

差し込み葺きの屋根材
スレートのすき間に鉄板を差し込むだけの工法

台風による屋根の被害を最優先にする場合、差し込み葺きの金属屋根材を用いたカバー工法は避けましょう。
差し込み葺きとは、既存のスレートに金属の鉄板を差し込む工法です。

差し込み葺きの写真
差し込み葺きの仕上げ、とても屋根が綺麗に仕上がっているように感じます

残念なことに、差し込み式による屋根のリフォームを最新の画期的なカバー工法として宣伝をしている業者が存在します。
いうまでもないことですが、差し込み式で仕上げた屋根の耐風性能は古いスレート屋根に依存するので、耐風圧性能の向上は期待できません。

本当のカバー工法の施工写真
防水シートとかん合式金属屋根で仕上げた本来のカバー工法

屋根カバー工法で綺麗になったと喜んでいた数年後に、強風でスレートごと屋根がはがれ落ちるといった悲劇が待ち受けているかもしれません。

工法の意味を理解しないと後悔する工法

リコロニー

野地板(のじいた)強度の確認

野地板の重要性

野路板劣化の様子
築40年が過ぎた野地板、水分の吸収や穴あきが確認できます

野地板(のじいた)とは屋根材の下に敷く木の板のことです。
野地板の下には野地板を固定する垂木(たるき)とよばれる木の棒が取り付けられています。
横葺きかん合式の屋根をビスで張り付けても、下地となってビスを固定する野地板が腐ってしまっていては、カバー工法をおこなう意味がありません。
築年数で野地板の痛み具合を推測します。

雨漏りがなかった場合の野路板の状態

築年数野地板の状態
築10年以下
築20年以下
築30年以下△~〇
築40年以下×~△
築40年以上×

雨漏りがあった場合の野路板の状態

雨漏りの程度野地板の状態
雨染み程度△~〇
しばらく放置×
野地板チェッカー
野地板チェッカー

また、野地板チェッカーという道具を用いて野地板の状態を確認することもできます。

結露によって野地板の寿命が変わる

野地板の劣化は屋根裏の湿気に影響を受けます。
したがって、屋根裏の乾燥対策(換気対策)や断熱対策ができているかどうかがポイントになります。
住宅性能表示制度いわゆる品確法(2000年)が制定される以前の建物は、屋根裏の換気や断熱が不十分であることが多いです。

真夏の屋根裏部屋がサウナのような状態になっていないでしょうか?
そのような建物は野地板が湿気で傷みやすい状態にあるといってよいでしょう。
屋根カバー工法をおこなう際、必ず屋根の換気についても計画をしなければならなりません。

換気棟(かんきむね)の取り付け

屋根裏の湿気対策

屋根裏の湿気対策は、屋根裏に空気が抜ける穴をつくることが一番の対策方法です。
代表的な換気方法は3つあります。

POINT
  • 妻換気(つまかんき)

  • 軒天換気(のきてんかんき)

  • 棟換気(むねかんき)

この中でおすすめは、棟換気です。
換気棟とよばれる板金部材を取り付けて屋根の湿気を外に逃がす方法です。

換気棟とは?

換気棟取り付け
換気棟、板金の穴から湿気と熱気を自然放出させます

換気棟とは屋根のてっぺんに取り付ける部材です。
換気棟には穴があります。
湿気は屋根の一番高いところに集まるので、この換気棟から屋根裏の熱と湿気が放出されます。
当然、野地板を湿気から守り、長持ちさせる効果が期待できます。

築20年以上の建物には換気棟が取り付けられていないことが多いです。
一方、現在の新築戸建てには、当たり前のように換気棟が取り付けられています。
カバー工法をおこなう際、換気棟は必ず取り付けましょう。

換気棟の数は?

換気棟の数は多ければ多いほど湿気が放出できるので、たくさん取り付けることは野地板の耐久性を考えるとおすすめです。
1台だけではなく、2台、3台取り付けたほうが良いでしょう。

換気棟が取り付けられている様子
セキスイハウスの多くの住宅では惜しむことなく換気棟を取り付けています

たとえば、棟のほとんどが換気棟で構成しているセキスイハウスのようなハウスメーカーも存在します。
素晴らしい考えをもっているハウスメーカーです。

換気棟を取り付ける際、野地板にも穴を開けることになります。
そのため、雨漏りを心配される人が多いです。
しかし、実績と経験が豊富な板金工事会社であれば、安心安全な換気棟の取り付けができます。
不安になることはありません。

板金工事会社の選定

よくある失敗例

金属屋根の工事は板金工事に直接お願いしてほしいです。
いうまでもないことですが、金属屋根の屋根カバー工法は板金工事会社がおこなう工事だからです。

テイガクの自社倉庫
テイガクの自社倉庫

屋根は住宅のなかで最も重要な部位なので、屋根の状態や商品選定、工事会社の工事力(倉庫の有無)、創業年数、実績数などを業者選びのポイントにすべきです。
しかし、外壁塗装のついでに屋根カバー工法をおこなうとか、チラシを見てなんとなく安心な業者そうだからとか、といった安易な気持ちで工事をおこなう人が少なくありません。


塗装工事会社は自社で屋根材を仕入れたり、板金工を抱えたりすることはないので、外注工事になることがほとんどです。
リフォーム業界は元請けと下請けの2重構造の受注システムになっている業界です。
板金工事を本業にしていない会社は、野地板の状態や換気棟の取り付けなど頭になく、いつも通りの商品で屋根カバー工法をすすめるはずでしょう。
台風に強い屋根カバー工法どころか、本来、葺き替えにすべき工事なのに屋根カバー工法を提案するいったこともあるかもしれません。

カバー工法をオススメしない屋根材の状態についての動画

【過去最悪】カバー工法がダメなパミールの状態

【過去最悪】カバー工法がダメなパミールの状態

リフォームトラブルで雨漏りは2位、部位は屋根

公益財団法人リフォーム紛争処理支援センターが毎年発表している住宅相談統計年報2020年度版を見ると、いかに屋根のリフォームのトラブルが多いかがわかります。

リフォーム後のトラブルの相談の表
不具合の2位が雨漏りで、原因箇所は屋根

リフォーム後のトラブルの相談は、はがれが1位で雨漏りが2位となっています。
雨漏りの原因か所は屋根が多く、次に外壁となっています。
屋根のリフォームをした後、屋根から雨漏りが起きたということです。

台風のせいだから、修理費は自己負担になりますよ」。
で後悔しないよう、屋根材や工法、業者選びには十分注意をしましょう。

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フリーダイヤル:0120-94-8807 年中無休(9:00-18:00)
この記事を書いた人
著者 前川 祐介
前川 祐介 代表取締役社長
テイガク サイト制作責任者
宅地建物取引士
建築物石綿含有建材調査者
著者経歴

大阪府堺市生まれ。
千葉県立船橋東高校→法政大学経営学部→サノフィ(旧アベンティスファーマ)株式会社を経て、父親が経営する建築板金工事会社(昭和ルーフリモ株式会社)へ入社。
最終学歴、中央工学校夜間建築学科。
年間100棟以上の屋根と外壁工事に携わった経験を活かし、テイガク記事の執筆とユーチューブ動画撮影をおこなっています。趣味は日本史学。

運営会社

昭和ルーフリモ株式会社は2001年設立の板金工事会社です。
これまでの金属屋根と金属サイディング工事件数の合計は20,000棟を超えます。
板金工事は足場を組み立てるため、外壁塗装の工事事業にも注力しています。

国土交通大臣許可(般-5)第22950号
許可を受けた建設業:板金工事業/屋根工事業/塗装工事業 他

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