


ルーフィングとは

ルーフィングとは屋根材の下に敷く防水シートのことです。
屋根材の下に葺くシートのため、下葺き材(したぶきざい)ともよばれています。
戸建て住宅では野地板(屋根の下地)の上に張られ、最終的に雨漏りを防ぐ重要な役割を担っています。
屋根は屋根材の一次防水とルーフィングの二次防水の2つの層がで構成されています。
屋根の防水構造
一次防水 | 屋根材(瓦、スレート、金属屋根など) |
二次防水 | ルーフィング(防水シート) |

一次防水である屋根材だけでは、すべての雨水を完全に防ぎきることはできません。
風雨や経年劣化によって雨水が侵入することもあります。
そうした際に、ルーフィングが建物内部への水の侵入を食い止める「最後の砦」となります。
ルーフィングにはさまざまな種類があります。
基本的には、改質アスファルトルーフィング(通称:ゴムアス)以上のグレードを用いるのが望ましいです。ゴムアスは柔軟性と耐久性に優れているルーフィングです。
しかし、昔ながらのアスファルトルーフィングが未だに採用されている実態があります。
「改質」が付いているかいないかで耐久性が全く違います。

30年以上昔の建物の多くは、アスファルトルーフィングである可能性が高いです。
ルーフィングの耐久性
ルーフィング | 耐久性 |
---|---|
アスファルトルーフィング | 低い |
改質アスファルトルーフィング | 高い |
ルーフィングの価格とコストパフォーマンス


ルーフィングは、建材専門店だけでなく、ホームセンターでも販売されています。
大規模なホームセンターでは、価格や性能の異なる複数種類(3〜4種類程度)のルーフィングが取り揃えられているでしょう。
ルーフィングは、ざっくり分けると、低・中・高の3つのグレードに分かれます。
低グレードは、耐用年数が10年のアスファルトルーフィング940、中グレードは、耐用年数が20年の改質アスファルトルーフィング、高グレードは、耐用年数が30年の両面不織布改質アスファルトルーフィングです。
グレードによって価格が変わりますが、その価格差は決して大きくありません。
ルーフィングのグレードと価格
グレード | 分類 | 商品名 | 耐用年数の目安 | 価格(1本あたり) |
---|---|---|---|---|
低グレード | アスファルトルーフィング940 | Pカラー | 約10年 | 約5,500円 |
中グレード | 改質アスファルトルーフィング | PカラーEX+ | 約20年 | 約6,000円 |
高グレード |
両面不織布改質 アスファルトルーフィング |
ニューライナー ルーフィング |
約30年 | 約8,500円 |
※商品は田島ルーフィング株式会社の商品です
また、商品のグレードが上がったからといって職人の施工手間が大幅に増えることもありません。
たとえば、屋根全体にルーフィングを施工する際、グレードを1ランク上げたとしても、価格差はおよそ1万円程度です。
つまりルーフィングは、わずかなコストの差で耐久性や性能を高められる、極めてコストパフォーマンスの良い建材であるといえます。

住宅価格の高騰に加えて、消費者が屋根の施工後にはルーフィングのグレードを確認できないこと、そもそも屋根自体への関心が低いことなどが背景となり、多くの住宅で低グレードのアスファルトルーフィングが使用されている実態があります。
特に建売住宅では、最も安価な「アスファルトルーフィング940」と呼ばれる最低レベルのルーフィングが広く採用されています。
アスファルトルーフィング940とは

アスファルトルーフィング940の「940」は、重量を指します。
JIS規格(JIS A 6005)では、屋根面積1㎡あたり約940 gのアスファルトの含浸があるシートを屋根で用いる防水シート(ルーフィング)の最低基準として定めています。
一般的に「アスファルトルーフィング」と言うときは、「アスファルトルーフィング940」を指していると考えて差し支えありません。
また、アスベストルーフィング940は、表面が緑色である商品が多いです。
アスファルトルーフィング940が使われがちな理由
実には多くの建売住宅やローコスト住宅で、最低ランクのルーフィング(例:アスファルトルーフィング940)が採用されているのが実情です。
その背景には以下のような理由があります。
-
住宅価格の高騰で少しでもコストを削減するため
-
完成後は屋根下の防水シートが見えなくなり品質が注目されにくいため
-
消費者の屋根・防水に対する関心が低いため
こうした理由から、長期的に見れば高耐久なルーフィングを使うべき場面でも、価格優先で低グレード品が選ばれる傾向があります。
欠陥住宅?アスファルトフェルトを用いた屋根

筆者が屋根の雨漏り調査をしていると、本来使うべきアスファルトルーフィングではなく、アスファルトフェルトが使われている現場にしばしば遭遇します。
築後30年以上の昔の建物に多いです。
アスファルトフェルトは主に外壁用の防水シートであり、屋根用のアスファルトルーフィングと比べて薄く、防水性能も劣ります。
屋根の防水性は外壁以上に重要であり、本来は用途が明確に異なります。
しかし、実際の現場では、施工管理の不備やコスト削減のため、アスファルトフェルトが屋根に使用されてしまうことがありました。
現在では手抜きと指摘されるような工事も、過去には珍しくなかった実情があります。
チャンネル登録者数 1万人
テイガク公式 Youtube はこちらYoutube撮影者 テイガク 代表 前川祐介
ルーフィング貼りの費用と原価
ルーフィングを貼る工事費用は、貼り手間込みで1㎡あたり約1,100円です。

例えば、一般的な戸建て住宅の屋根面積は約80㎡とします。
1本で約15㎡をカバーできるため、必要なルーフィングは6本です。
1本5,500円のルーフィングを用いる場合、41,250円です。
ルーフィング貼りは多くの場合、1日で終わります。
職人さんの1日の労務費の原価を30,000円とすると、ルーフィング貼りの原価は71,250円です。
そこに建設会社の利益を乗せると合計で約90,000円です。
1㎡あたりの計算にすると、1㎡あたり約1,100円となります。
よく見る不適切な見積書
よく見る不適切な見積りでは、ルーフィングの商品名の記載がありません。
ルーフィング工事として一括りに表記されていて、どのような商品が使用されているのか不明です。
適切な価格設定かどうか判断ができません。

正しい見積書(テイガクの見積書)
正しい見積り書は、ルーフィングシートの商品名が記載されています。
もちろん、テイガクではきちんと商品名を記載してご提示しています。
以下の画像は、テイガクのお客様に提示している見積り書をそのまま転載しています。

ルーフィングの商品名の記載があり、価格も適正価格です。
貼り手間(施工費)を含めた価格となっています。
業者さんによっては、「商品価格」と「貼り手間価格」を分けて見積もり記載をする業者さんも存在します。
なお、テイガクは完全自社施工で定額価格によるルーフィング張り工事を提供しているため、市場価格より安価な価格設定になっています。
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ルーフィングの最低耐用年数
ルーフィングの耐久性の最低基準は、一般的に10年が目安とされています。
これは住宅瑕疵担保履行法によって、建築事業者に施工後10年間、雨漏りに関する責任が課せられていることに由来しています。
言い換えれば、ルーフィングは最低10年もてばよいものとも表現できます。
10年を超えれば、建築事業者の責任は免れるからです。
ルーフィングの防水性能は“日本工業規格(JIS規格/JIS A 6005)”によって基準が定められています。
主要なルーフィングメーカーはこのJIS規格に準拠した製品を製造・販売しています。
しかし、あくまでもJIS規格は最低基準です。
こうした背景から、ローコスト住宅では、耐用年数が約10年の最も安価な「アスファルトルーフィング940」が採用されています。
最大手メーカーの田島ルーフィングでは、自社製品の耐久試験をおこなっており、「アスファルトルーフィング940」はわずか5年で大幅に性能が劣化していることが読み取れます。

改質アスファルトルーフィングが望ましい理由
住まわれる方にとって、わずか10年で劣化が進むルーフィングを使い続けることは、長期的な視点から必ずしも望ましいとは言えません。
改質アスファルトルーフィングの場合は、約20年の耐久性があるルーフィングです。
テイガクの場合、アスファルトルーフィングから耐久性に優れた改質アスファルトルーフィングへの変更は、わずか1万円の追加費用で実現可能です。
住宅の耐久性や資産価値を考えると、より耐久性の高いルーフィングの採用を検討することがとても重要です。
改質アスファルト(ARK-04s規格)について

ルーフィング製造会社の団体であるアスファルト防水協会(JWAA)では、独自の規格を制定しています。
特に従来の「アスファルトルーフィング940」よりも耐久性に優れた「改質アスファルトルーフィング(ARK-04s規格)」の採用を強く推奨しています。
実際の現場では「アスファルトルーフィング940」が経年劣化により硬化し、破損しているケースをこれまで数多く目にしてきたので、筆者自身もアスファルト防水協会(JWAA)の方針に賛同しています。
屋根材メーカーのカタログでも、ARK-04s規格品を推奨品として記載している例が多く見られます。
そのため、最低でもARK-04s規格を満たす製品を選択することをおすすめします。
ARK-04s不適合製品が発覚!
あるメーカーの製品が、ARK-04s規格品として不適合と判定されました。
業界団体による抜き打ち検査によって発覚したものです。
その影響で、アイジー工業のスーパーガルテクトのカタログ(2025年)からも同メーカーの製品が除外されています。
屋根の防水シートは、住宅の防水性を左右する最も重要な建材の一つですが、このように規格基準が守られていない事例も存在します。
安心・安全な施工のためには、信頼性の高い規格品の使用と確認が不可欠です。
最大手メーカーの商品だけでも20種類!
ルーフィング製造会社の最大手は、田島ルーフィング株式会社です。
田島ルーフィングが取り扱う屋根用ルーフィングの種類は、なんと20種類以上あります!
その一方、消費者から特に指定や指摘がない限り、屋根工事で使われるルーフィングは最も安価な商品が選ばれる傾向があります。
そのため、消費者自身がルーフィングの性能や商品特性を理解しておくことが重要です。
ルーフィングの構造と貼り方
ルーフィング貼りの手順
ルーフィングは屋根工事の方法によって、貼り付け方法が変わります。
新築時と葺き替え時
一般的にルーフィングは、タッカー(ステープル)というホッチキスの針に似た留め具を使用して固定します。タッカーを野地板の木材にしっかりと打ち込んで固定する方法が一般的です。
屋根カバー工法時(アスベスト入り)
スレート屋根の上にルーフィングを敷く場合、タッカーだけでは固定力が不十分です。
そのため、専用の釘を使用してルーフィングを固定します。この際には「テッポウ」と呼ばれる機械式の釘打ち機を用いて、板金チップをかませてルーフィングをしっかり打ち止めていきます。
屋根カバー工法時(ノンアスベスト)
スレート屋根の中でも特にノンアスベストタイプは、釘を使用してルーフィングを固定しようとすると、スレート材自体が割れてしまい、ルーフィングの保持力が弱まる恐れがあります。
そのため、このような屋根には、タッカーや釘ではなく、裏面に粘着層が設けられた粘着式のルーフィングを使用します。
ノンアスベストスレート屋根の中には、単に屋根の上を歩くだけでも割れてしまうほど脆いものも存在します。
粘着式のルーフィングを使用することで、屋根全体を一体的に覆い、たとえスレートに割れが生じていても、しっかりと密着・固定し、屋根の防水を高めることができます。
ルーフィング貼りの注意点
軒先から棟へと張る

ルーフィングを施工する際の基本原則として、「軒先(低いところ)から棟(高いところ)に向かって順に貼っていく」というルールがあります。
これは、雨水が高い場所から低い場所へと流れる性質をふまえた施工方法で、上に重ねるルーフィングが下のルーフィングを覆うようにすることで、水が建物内部に浸入するのを防ぐ仕組みです。
筆者が過去に調査した雨漏り現場では、ルーフィングが「逆向き」に貼られていたことが原因で雨漏りが発生していました。
この現場は、どう見ても素人による施工であり、屋根の基本を知らないまま作業が行われていたようです。
十分な重ね代を確保する

ルーフィングは、上下方向で100mm以上、左右方向で200mm以上の「重ね代(かさねしろ)」を確保して貼り重ねる必要があります。
この重ね代は、雨水の侵入を防ぐうえで重要なポイントです。

多くのルーフィング製品には、施工時の目安として上下にラインが印刷されています。
このラインは「ここまで重ねるべき」という目印であり、ルーフィング同士を重ねたときにラインが隠れていれば、正しく施工されていると判断できます。
壁際は立ち上げる(新築時)

屋根と外壁が接する「取り合い部」は、雨水が集中しやすく、雨漏りの原因になりやすいです。
新築工事では、外壁の仕上げ材(例:窯業系サイディング)を張る前に、屋根側のルーフィングを外壁側へ立ち上げるように施工します。
この「ルーフィングの立ち上げ処理」によって、雨水が屋根から壁内部に回り込んだ場合でも、ルーフィングが受け止めて屋外へ排水できるようになります。
なお、屋根カバー工法の際は、立ち上げる必要はありません。
軒先板金の上?下?
ルーフィングを軒先板金(軒先唐草)の上に敷くか、それとも下に敷くか、しばしば議題にあがることがあります。テイガクでは上に敷いたことが原因で雨漏りが生じた事例を経験しています。そのため、屋根の施工方法(カバー工法か葺き替えか)、使用する屋根材の種類、既存下地の状態などによって最適な貼り方を選択しています。そのため、テイガクでは現場ごとの状況に応じて、経験豊富な職人が最も信頼性の高い納まりを選択するようにしています。
立てて保管

ルーフィングは立てて保管(縦置き保管)する必要があります。
直射日光を避けた室内で保管させます。
実は建築士試験でルーフィングの保管方法の問題は頻出します。
ルーフィングの種類
ルーフィングの種類は主に3種類

ルーフィング(防水シート)は、主に「アスファルト系」「高分子系」「とんとん葺き」の3タイプに大別されます。
日本ではアスファルト系ルーフィングが標準仕様とされており、多くの住宅で採用されています。
一方、海外(特に欧米)では高分子系ルーフィングが標準的であり、長寿命かつメンテナンス性に優れた屋根仕様が一般的です。
それぞれの特性や価格には明確な違いがあり、用途や建物の構造、予算によって選定します。
種類 | 価格 | 特徴 | 主な用途・地域 |
---|---|---|---|
アスファルト系 | 安価 | 扱いやすい・普及率が高い | 日本の住宅全般 |
高分子系 高耐久 | 高価 | 高耐久・環境性能が高い | 欧米の住宅 |
とんとん葺き | 高価 | 通気性あり・伝統的 | 神社仏閣、古民家 |
田島ルーフィングの商品だけでも20種類以上
ルーフィングを製造している国内メーカーだけでも複数存在し、海外メーカーを含めれば10社近くにもなります。
国内最大手は田島ルーフィング株式会社であり、同社のルーフィング製品だけでも、カタログに掲載されているものは20種類を超えます。
つまり、ルーフィングが品質や価格など「ピンからキリまで」幅広く存在することを意味しています。
しかしながら、多くの消費者は、ルーフィングにこれほど種類があることをほとんど認識していません。
アスファルト系ルーフィング
アスファルトルーフィングは、日本国内で最も広く使われているルーフィングです。
アスファルトを含浸あるいはコーティングさせた防水シートです。
アスファルトだけでは長期維持が困難なため、ゴム成分を含めた改質アスファルト(ゴムアス)が開発されています。
基本的には、柔軟性・耐久性を高めたゴムアス製品を用いるのが望ましいです。
しかし、建売住宅では現在でもアスファルトだけのアスファルトルーフィング940が多くの現場で採用されています。
また、ルーフィングは紙製品と布製品(不織布)の2種類があり、耐久性は圧倒的に布製品が高いです。
破れにくさとしなやかさを布製品は備えています。
紙製品ではなく、布製品を意識的に選択することを強くおすすめします。
1:アスファルトルーフィング940
おすすめ度 | ★ |
特徴 | 最安値・低グレード |
用途 | 新築 |
素材 | 紙+片面不織布 |
貼り方 | タッカー・釘打ち |
代表的商品 | Pカラー(田島ルーフィング株式会社) |
2:改質アスファルト系(ゴムアス)/片面不織布
おすすめ度 | ★★ |
特徴 | コスパ良好・中グレード |
用途 | 新築・葺き替え・屋根カバー工法(石綿含有) |
素材 | 紙+片面不織布 |
貼り方 | タッカー・釘打ち |
代表的商品 | PカラーEX+(田島ルーフィング株式会社) |
3:改質アスファルト系/両面不織布
おすすめ度 | ★★★ |
特徴 | 耐久性30年以上・ハイグレード |
用途 | 新築・葺き替え・屋根カバー工法(石綿含有) |
素材 | 両面不織布 |
貼り方 | タッカー・釘打ち |
代表的商品 | ニューライナールーフィング(田島ルーフィング株式会社) |
4:改質アスファルト系粘着タイプ/紙
おすすめ度 | ★★ |
特徴 | 遅延粘着・低グレード |
用途 | リフォーム・屋根カバー工法(ノンアス)・施工性良好 |
素材 | 紙 |
貼り方 | 粘着 |
代表的商品 | タディスセルフ(田島ルーフィング株式会社) |
5:改質アスファルト系粘着タイプ/片面不織布
おすすめ度 | ★★★ |
特徴 | コスパ良好・中グレード |
用途 | リフォーム・屋根カバー工法(ノンアス)・施工性良好 |
素材 | 不織布 |
貼り方 | 粘着 |
代表的商品 | タディスセルフカバー(田島ルーフィング株式会社) |
6:改質アスファルト系粘着タイプ/不織布+2重アスファルト層
おすすめ度 | ★★ |
特徴 | ハイグレード |
用途 | リフォーム・屋根カバー工法 |
素材 | 紙+不織布/2重アスファルト層 |
貼り方 | 粘着 |
代表的商品 | タディスセルフアーマー(田島ルーフィング株式会社) |
7:改質アスファルト系粘着タイプ/フィルム層
おすすめ度 | ★ |
特徴 | 高価・超高耐久 |
用途 | 新築・リフォーム・緩勾配・陸屋根 |
素材 | フィルム基材 |
貼り方 | 粘着 |
代表的商品 | アンダーガムロンK(田島ルーフィング株式会社) |
8:改質アスファルト系重層/超高耐久タイプ
おすすめ度 | ★ |
特徴 | 高価・超高耐久 |
用途 | 新築・葺き替え |
素材 | 紙+片面不織布 |
貼り方 | タッカー・釘打ち |
代表的商品 | マスタールーフィング(田島ルーフィング株式会社) |
高分子系ルーフィング
高分子系ルーフィングは、ポリプロピレンやポリエチレンなどの化学繊維で製造されたルーフィングです。
欧米では主流のルーフィングで、アスファルト系と比較して軽量でありながら、耐久性や耐熱性、防水性に優れているのが特徴です。
製品にもよりますが、高分子系のルーフィングの重量は1㎡あたり約0.4kg程度と、アスファルトルーフィングより軽量な傾向があります。
そのため、屋根への負荷を軽減できます。
中には、屋根の湿気を外に排出できる透湿性を備えた製品もあります。
ただし、透湿ルーフィングを用いる場合は、屋根の内部に通気層を設ける必要があります。
9:高分子系/透湿性なし
おすすめ度 | ★★ |
特徴 | 軽量・ハイグレード |
用途 | 新築・リフォーム |
素材 | ポリプロピレン |
貼り方 | 釘打ち |
代表的商品 | ノアガードⅡ(ケイミュー) |
10:高分子系/透湿性あり
おすすめ度 | ★★ |
特徴 | 軽量・ハイグレード・透湿性(要通気層) |
用途 | 新築・リフォーム |
素材 | ポリエチレン |
貼り方 | タッカー |
代表的商品 | タイベック ルーフライナー(デュポン ジャパン株式会社) |
11:高分子系/透湿性・遮熱性あり
おすすめ度 | ★★★ |
特徴 | 軽量・透湿性・遮熱性あり |
用途 | 新築・リフォーム |
素材 | ポリエチレン/アルミニウム |
貼り方 | タッカー |
代表的商品 | 遮熱ルーフエアテックス(フクビ化学工業株式会社) |
12:高分子系/透湿性・超高耐久
おすすめ度 | ★★★ |
特徴 | 軽量・超高耐久・透湿性(要通気層) |
用途 | 新築・リフォーム |
素材 | ポリプロピレン |
貼り方 | タッカー(粘着層あり) |
代表的商品 | ウートップハイムシールド(ウルトジャパン株式会社) |
トントン葺き
トントン葺きとは、薄くスライスした木の板を重ね、防水性能を持たせた下葺きのことです。
薄い木板を多数並べて形成した屋根をイメージすると分かりやすいでしょう。
昭和初期や大正時代の古い建物では、このトントン葺きが広く使われていました。
ルーフィングが「下葺き」とよばれる理由には、昔はこのような二重構造で屋根を構成していたことが背景としてあげられます。
日本の伝統建築や寺社仏閣においては、現在でもトントン葺きが用いられることがあります。
13:木質系

おすすめ度 | ★ |
特徴 | 工数が複雑 |
用途 | 寺社仏閣 |
素材 | 木 |
貼り方 | 釘打ち |
代表的商品 | なし |
ルーフィングの特徴と使い分け
ルーフィングは耐久性だけではなく、様々な付加価値があります。
用途によってルーフィングを使い分ける必要があります。
粘着式ルーフィング

粘着式ルーフィングとは、裏面に粘着剤(シール)が付いている防水シートのことです。
粘着式ルーフィングは、裏面の剥離紙をはがして貼るだけで施工でき、釘やタッカー(ステープル)を用いてないため、釘穴もなく防水性に優れています。
主にノンアスベストの屋根にカバー工法で屋根を仕上げる時に採用します。
【主な用途や目的】
ノンアスベスト屋根への屋根カバー工法 |
不織布ルーフィング

不織布ルーフィングとは、不織布(繊維を絡めてシート状にした布)を基材としたルーフィングのことです。安価な紙質製品と比べて、耐久性と強度に優れています。
シートの片面のみ不織布を採用している製品と両面に不織布を採用している製品があります。
もちろん、表と裏、両面に不織布を採用している製品が耐久性が高いです。
【主な用途や目的】
ノンアスベスト屋根への屋根カバー工法 |
アスファルト系のルーフィングは不織布製品がおすすめ
ルーフィングは、紙製よりも布(不織布)製の製品のほうが明らかに耐久性に優れています。
実際、ルーフィングメーカーのカタログには「紙質」か「布質(不織布)」かが明記されています。
屋根工事の際に業者から見積もりを取る場合には、採用されるルーフィングが「布製(不織布)」であるかを事前に確認しましょう。
透湿ルーフィング

透湿ルーフィングとは、防水性を保ちながら湿気を外部に逃がす機能を備えたルーフィングのことです。
屋根内部の湿気を外部に排出できるため、野地板など屋根構造材の結露や腐食を防止する効果があります。
その性能を最大限に活かすには、屋根材とルーフィングの間に通気層を設ける構造が必要です。
ヨーロッパでは標準的に普及していますが、日本においては、外壁では透湿防水シートと通気層が一般的に用いられている一方、屋根への採用はほとんど進んでいません。
手間がかかることと、スレート屋根に代表される価格重視の屋根材が普及していることが背景として挙げられます。
屋根の機能を長期に維持させるためには、外壁と同様、透湿ルーフィングと通気層の組み合わせを再現する必要があります。
【主な用途や目的】
野地板の長期維持(結露防止) |
野地板は結露によって腐食する

築後30年、40年と長期間経過した屋根の野地板は、たいてい腐食が進行しています。
腐食原因の多くは、結露による水濡れです。
屋根の耐久性を維持するためには、野地板を湿気や結露から守ることが重要です。
たとえガルバリウム鋼板などの高耐久な屋根材を採用しても、その下の野地板が腐食してしまえば、屋根全体の耐久性を保つことはできません。
外壁では既に透湿防水シートと通気層が当たり前のように採用されていますが、屋根への普及はまだ遅れているのが現状です。
こうした背景から、屋根の透湿性能の重要性について広く認知を高めるために、「透湿ルーフィング協会」が発足されています。
遮熱ルーフィング

遮熱ルーフィングとは、ルーフィング表面にアルミ箔などの反射材を貼り付けることで、太陽からの輻射熱を反射し、屋根裏や室内の温度上昇を抑える効果があるルーフィングのことです。
遮熱性能により室内環境の快適性向上や冷房効率の改善が期待できます。
特に夏の暑さ対策として効果的です。
【主な用途や目的】
夏の暑さ対策 |
劣化したルーフィングと雨漏り
雨漏りの原因の多くは、ルーフィングの破れによるものです。
そのため、雨漏りを直すことは、ルーフィングを貼り直すこととほぼ同義です。
屋根カバー工法や屋根葺き替えも、本来の目的はルーフィングを新しく敷き直すことです。
一般的なアスファルトルーフィングは年数が経つにつれて硬化し、柔軟性が低下して破れやすくなります。
特に、壁際などの立ち上げ部分は折り曲げられているため、ルーフィングに亀裂が生じやすく、注意が必要な箇所となっています。

築後40年が経過したルーフィングの様子。

穴が開いた箇所があり、まさにその箇所から雨漏りが発生していた。
おすすめルーフィングと選び方
ルーフィングの選び方
ルーフィングを選ぶ際の基本的な基準は、「費用対効果の高さ」です。
もちろん、用途により最適なルーフィングの特徴は変わります。
ここでは、テイガクが自信をもってお客様におすすめし、実際の工事で採用しているルーフィングをご紹介いたします。
テイガクの工事現場使用しているルーフィング例
工事方法 | ルーフィングの種類 | 商品名 |
---|---|---|
屋根カバー工法(アスベスト入り) | 両面不織布ルーフィング | ニューライナー |
屋根カバー工法(アスベストなし) | 片面不織布粘着ルーフィング | タディスセルフカバー |
屋根カバー工法(アスベストなし) | 高耐久片面不織布粘着ルーフィング | カスタムライト |
屋根葺き替え(金属屋根/スレート屋根) | 両面不織布ルーフィング | ニューライナー |
屋根葺き替え(瓦屋根) | 透湿ルーフィング | ウートップ |
おすすめのルーフィング
ニューライナールーフィング

ニューライナールーフィングは、30年以上の耐久性が認められたルーフィングです。
表面と裏面の両方が不織布となっています。
ハウスメーカーの注文住宅で採用されていることが多いルーフィングです。
葺き替えやアスベスト入りスレート屋根のカバー工法時におすすめです。
項目 | 詳細 |
---|---|
テイガク工事単価(貼り手間含む) | 1,000円/㎡ |
メーカー | 田島ルーフィング株式会社 |
耐久性 | 30年以上 |
特性 | 両面不織布タイプ |
張り方 | タッカー(葺き替え)/釘(カバー工法) |
タディスセルフカバー

タディスセルフカバーは、屋根カバー工法用に開発された粘着式不織布ルーフィングです。
軽量であるため、屋根の重量負担も抑えられます。
コロニアルNEOやコロニアルクァッド、パミールなどのノンアスベスト屋根の重ね葺き時におすすめです。
項目 | 詳細 |
---|---|
テイガク工事単価(貼り手間含む) | 1,000円/㎡ |
メーカー | 田島ルーフィング株式会社 |
耐久性 | 20年以上(テイガク推定) |
特性 | 片面不織布タイプ |
張り方 | 粘着式 |
タディスセルフとタディスセルフカバーに注意
田島ルーフィングの商品を扱う屋根工事業者は多く存在します。
同社が販売する粘着ルーフィングには「タディスセルフ」と「タディスセルフカバー」という2種類があります。
両者は商品名が非常に似ていますが、性能には大きな違いがあります。
-
タディスセルフ:紙質ルーフィング(表面の色が紫色で識別可能)
-
タディスセルフカバー:不織布ルーフィング(耐久性が高い)
価格差はそれほど大きくないため、耐久性に優れたタディスセルフカバーを選択することをおすすめします。ただ実際には、タディスセルフのほうが市場で多く流通しているのが現状です。
見積書に記載された商品名を誤認しないよう、しっかりと確認することが重要です。


カスタムライト

カスタムライトは、アスファルト層を2重にした粘着式不織布ルーフィングです。
表面が滑りにくく溶けにくいため、夏でも施工がしやすいです。
タディスセルフカバーよりもワンランク上の耐久性をお求めの場合におすすめのルーフィングです。
項目 | 詳細 |
---|---|
テイガク工事単価(貼り手間含む) | 1,300円/㎡ |
メーカー | 日新工業株式会社 |
耐久性 | 25年以上(テイガク推定) |
特性 | 片面不織布タイプ(2層アスファルト) |
張り方 | 粘着式 |
ウートップ

ウートップは、ドイツの企業「ウルト社」が製造する透湿ルーフィングです。
ヨーロッパでは住宅の高気密・高断熱化が進んでおり、結露対策として透湿ルーフィングを用いる施工が一般的です。
さらに、屋根の長寿命化を目的としているため、ルーフィングの耐久性は非常に高く、ウートップの耐用年数は約80年と超高耐久です。
項目 | 詳細 |
---|---|
テイガク工事単価(貼り手間含む) | 1,500円/㎡ |
メーカー | ウルトジャパン株式会社 |
耐久性 | 80年以上 |
特性 | 高分子透湿タイプ(2層アスファルト) |
張り方 | タッカー(葺き替え) |
さいごに

この記事を通じて、ルーフィングが私たちの生活にとっていかに重要であるか、ご理解いただけたのではないでしょうか。
思っている以上にルーフィングは奥が深く、押さえておきたいポイントが多いと感じられた人もいるはずです。
屋根の防水シートにはさまざまな種類があり、その特性に適した工法や商品を選ぶことが重要です。
一度、適切な屋根工事を行えば、生涯にわたってルーフィングを意識する必要はなくなります。
むしろ、屋根のことを調べる機会がないというのは、日々安心して暮らしている証であり、幸せなことではないでしょうか。
読者の皆さまが安心できる屋根工事を終え、この記事を二度と閲覧する必要がない生活を送られることを心より願っております。