屋根材の下には必ずルーフィングシートとよばれる防水シートが敷かれています。
下葺き材(したぶきざい)とよぶこともあります。
ルーフィングシートは屋根からの雨水侵入を最終的に防ぐ大切な役割を担います。
本記事では、ルーフィングシートの中から、透湿ルーフィングとよばれるジャンルのシートについて解説いたします。
特に新築工事や屋根を葺き替える人に知っておいて欲しい情報です。
ルーフィングシートが「透湿性」か「非透湿性」かは、これから屋根工事をはじめるの人にはとても大切なポイントです。
透湿に対する認識
外壁では常識
戸建て住宅の外壁を施工する際、透湿性の防水シートを張ることは常識となっております。
壁内が結露しないように防水シートは透湿性の機能を持ち合わせています。
壁内の湿気が外に排出されるので、断熱材や構造材、外壁下地材、外壁材が長持ちします。
高気密高断熱の住宅を施工するうえで透湿性の確保はとても重要なポイントです。
屋根では全く使用されていない
一方、屋根では全く透湿の考えが浸透していません。
つまり、透湿ルーフィングというものがあるのに、ほとんどつかわれていません。
アスファルト系のルーフィングが用いられています。
透湿ルーフィングとは?
ルーフィングシートとは名前のとおり、ルーフィングシートに湿気を通す機能が加わったシートです。
この透湿ルーフィングと対をなすのが非透湿ルーフィングです。
現在わが国のシェアの内訳は透湿ルーフィングが5%、非透湿ルーフィングが95%程度です。
非透湿ルーフィングしか使われていない状況と言い切れます。
湿気を逃がしてくれる働きがあるシートなので、正しく透湿ルーフィングの屋根をつかった屋根の寿命は当然、、長くなります。
それではどうして透湿ルーフィングがほとんどつかわれないのでしょうか?
透湿ルーフィングがつかわれない理由
面倒くさいこととお金がかかることが背景としてあげられます。
透湿性を発揮させるには透湿ルーフィングを貼るだけでは意味がありません。
屋根に通気層を設けなければ透湿性の本来の効果が機能しません。
さらに通気層だけではなく、空気が通り抜ける入口と出口も必要です。
外壁工事で常識になっている外壁通気工法の屋根バージョンを施工する必要があります。
外壁では当たり前になっている工事ですが、屋根で通気層を設ける工事は、簡単なことではなくとてつもない時間とコストがかかります。
そのため、屋根にとって必要なことはわかっているのに、誰もしようとせず見て見ぬふりをしているといってよいでしょう。
つぎに屋根の透湿性の重要性について解説します。
ルーフィングにこそ通気と透湿
屋根裏には湿気が溜まりやすい
暖かい空気は上に溜まる性質が持っています。
さらに暖かい空気はより多くの湿気を含む性質があります。
そのため、夏の熱気や冬の暖房によって室内からの暖かい空気が天井へ移動し、最終的に屋根裏へと暖かい空気が湿気として溜まります。
屋根裏には野地板(のじいた)とよばれる屋根の木下地があります。
屋根材がはがれないように支えてくれるとても大事な建材です。
しかし、屋根裏に湿気が溜まってしまうと野地板に負荷を与えてしまいます。
非透湿ルーフィングをつかっていると、屋根裏の湿気が行き場を失い、野地板を結露で濡らしてしまう結果を招きます。
特に猛暑日の突然の雨や、真冬の加湿器使用などは野地板に悪影響を及ぼします。
40年程度で野地板がボロボロになり、屋根全体を張り替えしなければならないといったことになります。
透湿ルーフィングこそが屋根の寿命を伸ばせる
野地板が腐食すると、屋根材を固定している釘やビスが浮き、屋根材のが飛ばされる事態にいたります。
もちろん雨漏りの原因にもなります。
そのため、野地板をできるだけ長もちさせる屋根通気工法や透湿ルーフィングの使用を取り入れる施工が大事になります。
透湿ルーフィングは軽くて丈夫
湿気を通すということは、雨水も通してしまうのではないか? と不安になるかもしれません。
結論からいうと、透湿ルーフィングはきちんと防水性の機能があります。
雨漏りをしっかりと守ってくれる防水シートです。
さらに非透湿ルーフィングよりも軽く、重さは1/3です。
屋根をより軽くするメリットも得られます。
透湿ルーフィングのシェアは今後伸びていく
透湿ルーフィングの国内シェアは5%程度であり、とても低いです。
しかし、透湿ルーフィングは優れた製品であることに間違いはありません。
2004年には日本国内のシェアを伸ばすため、透湿ルーフィング協会が発足しました。
透湿ルーフィング協会による普及活動によって、今後日本国内でも透湿ルーフィングのシェアが伸びていく可能性はとても高いです。
透湿ルーフィングの種類と特徴
透湿ルーフィングには主に3種類のシートがあります。
透湿ルーフィング
最もポピュラーな透湿ルーフィングとして、タイベックのルーフライナーが有名です。
耐久性以外にも透湿ルーフィングとしての防水性、強度、熱収縮性、防風性など様々な規格に合格しています。
野地板の乾燥を促進させ、野地板の腐敗や変形を防止するデータが得られています。
粘着型透湿ルーフィングは、シートの裏がシール式になっているルーフィングです。
野地板に直接貼って施工します。
左画像は、ビッグテクノス株式会社のラップタイトという製品の写真です。
このようにシートの裏側がシール式になっています。
粘着型でないルーフィングの場合は、通常タッカーや釘で屋根に固定します。
粘着型ルーフィングの場合は、タッカーや釘を使用せず、野地板にぴったり密着して貼ります。
そのため、タッカーや釘による貫通孔が空くことがなく、ルーフィングと野地板の間に雨水が侵入する可能性もありません。
こちらのルーフィングも、透湿ルーフィングのJIS規格「JIS A6111」に適合している製品です。
遮熱型透湿ルーフィング
遮熱型透湿ルーフィングは、湿気を通す機能に加えて、高い遮熱性能を併せ持ったルーフィングです。
左画像は、フクビ化学工業株式会社の遮熱ルーフエアテックという製品の写真です。
表面がアルミのように反射する素材になっているため、熱の吸収を抑える効果が備わっています。
この遮熱型透湿ルーフィングを野地板の上に敷くことで、遮熱効果によって屋根から野地板へ熱が伝わることを防げます。
こちらのルーフィングも、透湿ルーフィングのJIS規格「JIS A6111」に適合している製品です。
透湿ルーフィングの施工方法
屋根通気工法
透湿ルーフィングを使用する際には、基本的に屋根に通気層を設ける屋根通気工法を採用する必要があります。
透湿ルーフィングを施工する場合は、野地板の上に透湿ルーフィングを敷いた後、ルーフィングの上に通気胴縁(つうきどうぶち)を取り付けます。
屋根材と透湿ルーフィングの間に通気層(空気層)ができます。
ただし、通気胴縁をつかわずに、ある程度の通気層を確保できる屋根材があります。
金属屋根には屋根材の裏側に断熱材がない商品があります。
断熱材がない分、通気層の役割を果たしてくれます。
左画像はディーズルーフの「ローマン」とよばれる商品です。
波型の形状になっており、凸部分が空気層の役割を担います。
そのため、透湿ルーフィングの上から波型で通気層がある金属屋根を張り付ける場合は、通気胴縁(つうきどうぶち)を用いずに施工をおこなえます。
葺き替えリフォームをおこなう場合は、通気層が確保できる屋根に透湿ルーフィングをつかう工事をテイガクではおすすめしています。
透湿ルーフィングのまとめ
非透湿ルーフィングに比べて1㎡辺りの単価は2倍ほどになります。
その一方で耐用年数も約2倍(50年〜60年)になります。
透湿ルーフィングと非透湿ルーフィングの比較
名称 | 種類 | 耐用年数 | 単価 |
---|---|---|---|
透湿ルーフィング | 透湿 | 50年〜60年 | 高い |
アスファルトルーフィング | 非透湿 | 15年〜20年 | 安い |
改質アスファルトルーフィング | 非透湿 | 20年〜30年 | 普通 |
性能を発揮させる条件がありますが、透湿ルーフィングは素晴らしい建材です。
これから屋根を新しく施工される方や、葺き替えをされる予定の方は透湿ルーフィングの使用を是非、検討してください。