「棟板金の交換にいくらかかりますか?」
「棟板金の修理工事には足場が必要ですか?」
「火災保険を利用して修理すことはできますか?」
棟板金に関するこのようなご相談をたくさんいただいています。
このページでは、屋根修理の”プロ”であるテイガクが棟板金の交換費用や工事内容について詳しく解説します。
※「金属製」の棟についての解説になります。「瓦」の棟についてはの記事ではございません。
棟板金(むねばんきん)とは
棟(むね)とは戸建て住宅の最も高い位置に取り付ける屋根部材です。
スレート瓦や金属屋根で用いる棟は金属製であるため棟板金(むねばんきん)と呼ばれています。
「とうばんきん」とよぶひとがいますが、正しくは「むねばんきん」です。
断面で見ると「ヘの字型」の板金で、板金の下には棟下地(むねしたじ)とよばれる下地材が2本、平行に取り付けられています。
棟板金交換のすすめ
戸建て住宅で最も不具合が発生する部位
新築で住宅を建てる際、ほぼ棟板金の留め具は鉄の釘、棟板金の下地は木材を用いています。
さらに20年以上昔の棟板金はトタンのような錆びやすい素材が用いられています。
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鉄の釘は抜けやすい
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木材は腐りやすい
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トタンは錆びやすい
現在、建築されている住宅の多くの棟板金は不具合が起こりやすい3拍子が揃っています。
そのため、棟板金は屋根の中で最も不具合が多い部位となっています。
建物の一番高いところに取り付ける部材だから、不具合が多いのは当然です。
戸建て住宅で最も不具合が多い部位と言い切ってもよいでしょう。
おすすめの施工方法
もちろん、棟板金の長寿命化のための施工技術の見直しが図られています。
たとえば、現在、棟板金はトタンではなく、錆びに強い「ガルバリウム鋼板」や「エスジーエル鋼板」などが用いられるようになっています。
棟板金を支える下地は最近(2021年7月以降)、テイガクでは「金属下地(エスヌキ)」を採用するにいたっています。
そして、棟板金を固定させる留め具は「鉄の釘」ではなく、「ステンレスのビス」を用いてドリルで固定します。
ただし、新築住宅では棟の構造など施主様が知る由もありません。
そのため、板金部材がガルバリウム鋼板製であることを除いて、根本的な施工方法は現代でも変わっていません。
棟板金が浮いたり剥がれてしまった時にはじめて、この部分の脆さが露呈します。
テイガクが推奨する金属下地(エスヌキ)の強度について
テイガクが推奨する金属下地(エスヌキ)は「価格の安いガルバ」と「錆に強いアルミ」の2種類からお選び頂けます。
アルミは、異種金属接触の腐食を考慮した板厚(1.3mm)で設計し、表面にはアルマイト処理(絶縁処理)を施しています。
これまでの数多くの失敗と経験から生まれたテイガクのオリジナルの下地材です。
詳細はこちら
棟板金の耐用年数とメンテナンス
棟板金の耐用年数は約15年、長くて25年です。
棟板金の機能しなくなるメカニズムは以下の通りです。
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棟板金を固定している留め具である釘が浮く
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釘と棟板金のすき間に雨水が入り込む
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棟板金の継ぎ目のシーリングのすき間に雨水が入り込む
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棟下地の木が腐る
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釘が外れる
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棟板金が浮く
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板金に錆が発生し、拡大する
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棟板金が風で飛ばされる
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状況によっては雨漏りが発生する
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最悪の場合には事故もしくは事件になる
このように棟板金の不具合は徐々に進行します。
雨漏りや事故にならないためにも、定期的な棟板金のメンテナンスは重要です。
特に注目すべき項目は、棟板金の裏に取り付ける木製の棟下地の劣化です。
棟板金の交換工事の流れ・方法
それでは、テイガクがおすすめする棟板金の取り換え工事をご紹介します。
古い棟板金の確認
棟板金が台風で飛ばされたお客様からご相談をいただきました。
幸い事故には至りませんでした。
現場確認と応急処置、保険申請の必要書類作成(写真等)をご依頼いただきました。
外れた棟板金
こちらが棟板金の下にある棟下地です。
木は経年と共にこのように劣化します。
痩せ細るといった表現が正しいです。
このような下地に棟板金を取り付けても十分な固持力が見込めません。
何度もこのような不具合を私たちは経験しているので、棟板金の下地に木を用いることはおすすめできません。
貫板(ぬきいた)とは?
この棟板金の下地に用いる木は貫板(ぬきいた)ともよばれています。
一般的には杉の貫板を棟下地として用います。
もちろん杉よりも高耐久な材木もあり、防腐加工をしたも材木もあります。
いちがいに「木が悪い」と結論づけるのも難しいところです。
棟板金の応急処置
外れた棟板金を応急処置しました。
ブチルテープとよばれる防水テープを用いることがテイガクでは多いです。
もちろん、この処置はその場しのぎとなります。
保険会社によっては、応急処置に要した費用も保険請求できることがあります。
棟板金の修理工事開始
本格的に棟板金の取り換え工事を開始します。
まずはじめに古い棟板金を全て取り外します。
これが築後19年が経過した棟下地である貫板の姿です。
この下地が機能をしていたいのは素人目でも明らかです。
棟の下地の取り付け
最近、テイガクでは画像のように棟の下地に金属だけでできた下地を用いる現場が増えてきています。
もちろん、金属は木や樹脂よりも高価な素材です。
その分、工事費用が高くなってしまいます。
しかし、金属下地は棟板金を留めるビスがしっかりと効き、変形することもありません。
屋屋根の工事費用は決して安くはありません。
年々強くなっている風のことを考えると、多少高くてもより安心できる素材のもので施工をおこなうことをおすすめしたいです。
棟板金交換工事の完成
棟板金の交換工事完成です。
棟板金の交換工事だけであれば約1日~2日程度で終わります。
棟板金の交換費用と修理価格
テイガクの棟板金交換価格
テイガク屋根修理の棟板金取り換え費用は2パターンあります。
棟板金交換工事のみの場合
棟板金の工事内容 | mあたり(税込み) |
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交換工事費 (撤去・処分費含) |
6,600円/m |
材料費 金属下地(エスヌキ) |
1,320円/m |
屋根工事を伴った場合
棟板金の工事内容 | mあたり(税込み) |
---|---|
交換工事費 (撤去・処分費含) |
2,200円/m |
材料費 金属下地(エスヌキ) |
1,320円/m |
足場工事の費用について
足場の組立費用は1棟あたり、およそ16万円~18万円が平均的な相場です。
また、階段があったり、屋根の傾きが急な場合だったりなどの環境が変わると、別途費用がかさみます。
つまり、棟板金の交換工事よりも足場の費用が高くなる計算です。
屋根工事は危険が伴います。
いつゲリラ豪雨や突風、地震などの天災が発生するか分かりません。
そのため、勾配(屋根の傾き)がある屋根では足場の組立が必須です。
足場を組み立てることは危険防止だけではなく、作業効率を向上させ、丁寧な工事ができることになります。
将来にわたり安心・安全な工事を提供してくれることは決してありません。
棟板金の交換工事/モデル価格
切妻屋根の棟の長さは平均で約9m、寄棟の場合は約30m、複雑な多面体の場合は約40mです。
それでは、建坪(1階の床面積)が約20坪だった場合、どのくらいの合計工事金額になるのでしょうか?
建坪20坪(1階の床面積) | 合計工事価格(税込み) |
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切妻屋根 | 25万円~30万円 |
寄棟屋根 | 30万円~40万円 |
複雑な屋根 (多面体の屋根) |
35万円~45万円 |
屋根カバー工法や葺き替え工事と一緒におこなうのが賢明
足場工事の費用が棟板金工事の過半を占めます。
棟板金が最も不具合が多い部位であることは、よく知られている事実です。
しかし、屋根本体そのものも未来永劫、持続するものではありません。
数十万出費して棟板金を交換する位なら、いっそのこと屋根工事や外壁工事と一緒におこなう方が賢い選択です。
「台風15号の後に棟板金を取り替えたのに、台風19号で屋根が剝がれてしまった」
こんな笑い話にならない悲しいケースが後を絶ちません。
棟下地について
これまで、私たこれまで、私たちは何度も棟板金の交換を要する現場を経験しています。
全ての不具合現場に共通するのは棟下地の劣化です。
テイガクでは棟下地に木の下地を用いることをおすすめしておりません。
木材は雨や湿気による影響で痩せ細り、腐ります。
棟板金の下地が劣化することは、棟板金が風で飛ばさずに固定させる固持力に致命的な問題となります。
そこで行き着いたのが、金属下地(エスヌキ)です。
最も棟板金の固定に効果的な下地を自社で開発いたしました。
もちろん、従来の木を用いた施工もおこなっております。
しかし、あまりにも不具合が多いところだからこそ、安心できる工事をお客様にご提供したいと考えております。
換気棟(かんきむね)について
棟板金(かんきむね)は棟板金の交換時にあわせておこなうことを強くおすすめします。
換気棟は屋根裏にこもった熱と湿気を自然に放出してくれる部材です。
棟板金の下地について
棟板金の裏に敷かれている棟下地が棟板金不具合の根本的な問題だと解説しました。
それでは、棟下地の下はどのようになっているのでしょうか?
実は、棟板金の下地の下にも下地があり、その下地には「木」が用いられています。
この棟下地の下地については、テイガクでは「木」でも問題はないと考えています。
「木がダメ」ということを繰り返しお伝えしているので、誤解が生まれやすい部位ですが、直接的に棟板金に関わる部位ではないのでそこまで意識しなくてもよいでしょう。
もし、「木」を使うことに抵抗がある場合は、「樹脂」を用いた施工に置き換えれます。
火災保険の適用について
棟が飛ばされた場合は火災保険が適用
天災(台風・突風・竜巻など)により棟板金が外れてしまった場合は火災保険が適用されます。
積極的に火災保険を活用しましょう。
火災保険の申請方法はとても簡単です。
火災保険金の申請には、被災した部分を修理するための見積書が必要です。
見積書はお客様自身で作成できるものではないので、当然、修理ができる業者に依頼することになります。
そのため、火災保険の申請について、ひとつの業者と関わりをもってしまうと、その時点で工事依頼をする業者が決まってしまいます。
火災保険の申請にお客様と関わりをもった業者は、「相見積もりをせずに工事会社が決まる」という出来レースになるのです。
実際には、保険契約をしている被保険者が工事会社を自由に決める権利があります。
しかし、「保険金はおりたが、今回の工事は他の工事会社に依頼します」なんて、お客様は言いづらいはずです。
業者からしてみれば、相見積もりをせずに工事会社が確定できるメカニズムのビジネスほど「おいしい商売」はありません。
もし、原価10万円で済む工事を100万円かかる工事として保険会社に認めさせれば、正に「ぼろ儲け」です。
中には、度が過ぎた過大請求や不正請求をおこなう業者も存在します。
火災保険の申請が大きな社会問題になっているのはこのためです。
問題の根底にあるのは、工事をおこなう会社ではなくても、営業を主体にする会社のような工事を丸投げする会社でも簡単に参入ができてしまうビジネスモデルが問題の原因だと、テイガクは考えています。
「保険サポート」や「保険サービス」など、あたかも保険申請のプロのような名前で活発に集客活動をしている会社が年々、増加しています。
実際にウェブサイトやインターネット広告でも、「火災保険で100万円!修理費がなんと0円で!」といったフレーズが溢れかえっています。
無料で修理ができるなんて、まさに魔法のような話しです。
しかし、無料で修理することばかりに目を向けてしまうと、最も大事なことに目が奪われてしまいます。
最も大事なこと、それは安心できる棟板金の工事をおこなうことです。
そして、保険金額は見積書を出す業者ではなく、事実上、保険会社が最終的に決定することも理解しておきましょう。
是非、この記事を参考にしていただき、棟板金が被災されてこれから修理を検討されている方の依頼先を考え直すきっかけになれば、嬉しいです。