台風被害にあったときにの備えとして「損害保険」があります。
そのほかに「共済」があります。
風災被害にあった屋根の修繕費用を得る点では、どちらも似ている制度です。
しかし、保険と共済は運営母体が違うので、内容には異なる点が多いです。
屋根の修理に関して調べてものをしていると保険に関する情報ばかりなので、共済も同じような補償が得られると思いがちです。
このページでは、数ある共済のなかでも加入者が多い「県民共済(都民共済)」と「こくみん共済」に焦点をあてて解説します。
※この記事は2020年8月1日時点の保障内容について執筆しています。
従前の共済商品と保障内容が異なる可能性があります。
※弊社は屋根の工事会社であり、共済申請の支援サービス斡旋等の業務はおこなっておりません。
共済申請に係るお問い合わせ等のご案内はできかねます。
※お客様ご自身で共済を申請するための参考として、本ぺージを作成いたしました。
予めご理解ください。
目 次
台風で屋根が被災したとき、共済から修理費用が支払われるのか?
住宅被災を対象としている共済の場合、「風水害」を設定していることが多いです。
台風や暴風雨、突風、竜巻、高潮、高波、洪水、豪雨、降雪、雪崩などで被災にあったときに共済金が支払われます。
しかし、民間の損害保険よりも掛け金が少ないのが共済の特徴です。
つまり、火災保険などの損害保険と違い、共済では修理にかかる費用の全額が支払われないことがあります。
請求できる修理費用は、損害状況や加入している共済の種類やプランによって変わりますし、お勤めの企業や公共機関によっても受け取れる共済金は異なります。
共済は保障・火災保険は補償
共済と火災保険では用いる言葉に違いがあります。
たとえば、民間の火災保険では保険金のことを「補償金」とよびますが、共済の場合は共済金のことを「保障金」とよびます。
加入者が支払う「保険料」については、共済では「掛け金」になります。
ちなみに、民間の火災保険の場合、加入者が支払うお金を「保険料」とよび、保険会社から支払われる補償を「保険金」とよびます。
保険料・掛け金の支払い方法にも違いがある
民間の火災保険では、保険期間の保険料をまとめて「一括払い」することが多いです。
以前は30年を超える一括払いが可能でしたが、現在の最長は10年です。
保険会社の利益を圧迫するほどの大規模な自然災害が相次ぎ、驚くほどのスピードで保険契約の期間が短縮されています。
共済の場合は、長期分を一括で払うことはできないことがほとんどです。
掛け金は「月払い」であることが多いです。
それでは、はじめに県民共済(都民共済)の保証金額について解説いたします。
県民共済(都民共済)の保障金額
県民共済(都民共済)に加入している人が火災や風災で被害にあったときに受け取れる共済金は「風水害等見舞共済金」とよばれています。
県民共済では共済金を見舞金として位置付けています。
どのくらいの共済が支払われるか、少し例をあげて見ていきましょう。
風水害等見舞共済金(住宅および家財)
加入額2000万円以上で住宅および家財が一部破損した場合、損害額が50万円を超えて100万円以下なら、見舞共済金の限度額は40万円です。
加入額2000万円未満なら加入額の2%が限度額です。
下記はざっくりとした共済金の金額です。
被害額(請求額) | 共済金(支払額) |
---|---|
100万円超 | 60万円 |
50万円超100万円以下 | 40万円 |
20万円超50万円以下 | 20万円 |
20万円以下 | 一律5万円 |
共済金支払いの基準額に大きな幅があるのが特徴です。
たとえば、屋根修理会社がお客様に提出した見積書の金額が50万円の場合、共済金は20万円になります。
もし51万円だったら、共済金は倍の40万円になります。
見積書の金額が1万円違うだけで支払われる金額が20万円違ってきます。
風水害等見舞共済金(付属建物等)
住宅に付属している門や塀、物置、カーポートなどが一部破損した場合にも見舞共済金が支払われます。
損害額10万円を超えた破損で、一律5万円となっています。
ただし、家財のみの共済に加入している人は、支払いの対象外です。
屋根瓦や棟板金飛散等の一部損壊の場合、県民共済で支払われるマックスの共済金は65万円になります。
こくみん共済(全労災)の保障金額
こくみん共済の商品(住まいる共済)では、火災や自然災害に対する保障の範囲によって2つのプランを選べます。
「火災での被害」だけ重視している保障は「シンプルプラン(火災共済)」、台風や地震などの自然災害も重視している保証は「ベースプラン(火災共済+自然災害共済)」となります。
ちなみにどちらのプランも、台風で被災をすれば共済金を受けとれます。
ただし、「火災共済だけの加入」か「自然災害共済にも加入している」かで、被災したときの支払い金額が大きく異なります。
火災共済のみの風水害等共済金
支払い基準が設けられた「共済金」と共済金を元に算出される「臨時費用共済金」の2つの合計金額が支払われます。
たとえば、住宅の一部損害が50万円を超え100万円以下の場合、限度額20万円の範囲で共済金が受け取れます。
共済金に加えて共済金の15%(20万円の場合は3万円)が臨時費用共済金として支払われます。
害額(請求額) | 共済金(支払額) |
---|---|
100万円超 | 40万円 |
50万円超100万円以下 | 20万円 |
20万円超50万円以下 | 10万円 |
20万円以下 | 一律5万円 |
自然災害共済(保険)での風水害等共済金
火災共済に加えて自然災害共済にも加入していると、さらに共済金が手厚くなります。
50万円を超え100万円以下の一部損害の場合は、支払い限度額が100万円と設定されています。
その他、一口あたり7,000円などと口数あたりに支払い金額が設定されていますが、口数あたりで共済金を計算すると支払限度額を超えることが多いです。
そのため、支払い限度額が請求可能金額と考えてよいでしょう。
結論をいうと、自然災害共済の場合、修理費用を請求した満額の支払いが期待できます。
もちろん、修理費用を請求した金額を超えて共済金が支払われることはありません。
害額(請求額) | 共済金(支払額) 大型タイプ | 共済金(支払額) 標準タイプ |
---|---|---|
100万円超 | 840万円 | 600万円 |
50万円超100万円以下 | 100万円 | 100万円 |
20万円超50万円以下 | 50万円 | 50万円 |
20万円以下 | 20万円 | 20万円 |
付属建物等特別共済金
住宅に付属している門や塀、物置、カーポートなどが一部破損した場合にも見舞共済金が支払われます。
損害額10万円を超えた破損で、一律3万円となっています。
請求し忘れがちな共済金なので、忘れずに請求をしましょう。
支払額減額の特例措置
共済金の支払い額が削減される場合があります。
台風や暴風雨で被災した人が増えると、共済の財源不足が起こるからです。
加入している組合の総支払限度額を超えるときは、共済金が削減されるただし書きが説明事項の書類に明記されています。
今後、風災害の住宅被害が増加することは間違いがないため、期待通りの保障が受けられない可能性があることは注意してください。
共済の種類やプランによって対応が異なる
共済から支払われる修繕費用は、加入している共済の種類やプランによって変わります。
今回取り上げた「県民共済」や「こくみん共済」だけではなく、「企業共済」や「公的機関の共済」も保障内容が他の共済と異なるはずです。
賃貸住宅の空室時の被災は減免とする共済やり災証明書の提出を義務付ける企業共済などもあります。
期待通りの共済金が受け取れないことがあるので、共済の契約内容にはしっかり目を通しておきましょう。
共済を利用して保障金を申請する方法
共済を利用するための手続きの流れを簡単に説明していきます。
基本的には民間の損害保険の請求と変わりません。
1: 加入している共済に連絡する
加入者の名前や電話番号、加入者番号などを尋ねられるので、スムーズに伝えられるように、共済契約証書を手元に準備しておきましょう。
そのほか、り災日時や損害の程度も確認されるので、事前にメモしておくといいでしょう。
下記に確認される項目をまとめておきましたので、チェックしてください。
大型自然災害直後は電話回線が混雑するため、ウェブサイトのお問い合わせフォームからお手続きしてください。
県民共済は各都道府県ごとにウェブサイトが用意されています。
ご契約された都道府県の共済ページから申請をしてください。
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ご契約者の氏名、生年月日など
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組合員番号
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事故発生の日時
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事故発生の場所
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事故の原因
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事故の状況、損害の程度
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官公署への届出(り災証明等)の有無
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火災の場合、隣家への類焼の有無
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お支払いできる他の共済(保険)の有無と保険会社(共済)名
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今後のご連絡先など
り災証明とは
り災証明書とは、台風などの災害によって住宅が被害を受けた場合に、被害状況の調査に基づいた損害の程度を認定し、公的に証明する書類です。
市役所や区役所の職員が現地確認をおこなったうえで発行されます。
り災証明があると共済金の支払い対応がスムーズに運びます。
しかし、大規模な災害直後はり災証明発行にかなりの時間を要します。
そのため、共済の申請と同時にり災証明発行の申請をおこなってください。
2: 書類の提出
共済金請求書類が送られてくるので、必要事項を記入し、書類を提出します。
共済の職員が現地調査をおこなう場合もあります。
必要書類は加入先によって異なりますが、おおむね「共済金請求書」と「修理業者から提示された見積書」「損害箇所が分かる写真」の3点です。
3: 共済金の支払い
提出した書類の内容が審査され、問題なければ共済金が支払われます。
記入内容に不備があると、問い合わせが来ます。
請求内容によっては、照会や再調査がとなることもあります。
支払いまでどれくらい時間がかかる?
筆者の体験だけのはなしになりますが、共済金(特に県民共済)は支払い金額に基準がある分、民間の損害保険より比較的スムーズに支払われる印象があります。
書類を提出したその週に共済金が振り込まれたお客様もいました。
もちろん、大規模な災害が生じた場合、共済金の申請数が急増するため、対応が遅くなります。
財源の問題もあります。
被害を発見したら、できる限り早く申請をしましょう。
まとめ
台風による被災の際、共済は保障の対象になることが多いです。
したがって、共済金として被災した部分の修理費用が加入者には支払われます。
しかし、加入している共済の種類やプランによって支払われる金額に大きく差があります。
修理費用が全額カバーできるというよりも「修理費用の足しにできる」という表現の方が合っている共済もあります。
共済がつかえると思っていたら、大きな自己負担を強いられるケースもあるので注意をしてください。
これから新規で共済加入を検討されている人は、できる限り風災や水災被害の保障が手厚い共済に加入することをおすすめします。