【早期対策】土葺き屋根とは?耐震性と葺き替え費用について

土葺き屋根

この記事では、土葺き屋根の問題点について解説するとともに、葺き替えの改修方法や費用、葺き替えに使用したいおすすめの屋根材についてご紹介します。
ご自宅が土葺き屋根の方は、記事を参考にして葺き替えを早めに検討しましょう!

土葺き屋根の葺き替えに関する動画

関西地区の瓦屋根の方は必見!屋根葺き替えで必要な下地調整について
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関西地区の瓦屋根の方は必見!屋根葺き替えで必要な下地調整について

土葺き屋根とは?湿式工法について

土葺き工法、湿式工法

土葺き工法とは大量の土を使って屋根瓦を固定しする工事方法です。
床土(葺き土)と呼ばれる土を使います。
土葺き工法は、湿式工法従来工法と呼ばれることもあります。
屋根全面に床土を敷き詰めて更に重い屋根瓦を葺くため、建物の重量が増して建物が安定するなどのメリットがありました。

アイコン 土葺き屋根のメリット

・建物が安定する
・屋根瓦が風で飛ばされなくなる
・土には断熱効果がある
・雨漏り時に土が雨水を吸水してくれる

昭和20年より昔に建てられた木造住宅の瓦屋根には、土葺き工法が採用されていることが多く、昭和初期までは主流な工事方法でした。

現在は土葺き工法で屋根を葺くことはない

現在では耐震性への悪影響から、土葺き工法で屋根を葺くことはありません
土葺き工法がなくなった大きなきっかけは、関東大震災と言われています。
関東大震災により家屋が壊滅し、その後の建替えによる復興後、関東地区では土葺き屋根を見かけることがなくなりました。
しかし、比較的地震が少なかった関西地方では今でも多くの土葺き屋根が現存します。
関西地区にある建築後50年を超える木造住宅は土葺き屋根である可能性が高いです。

現在は、阪神・淡路大震災で倒壊した家屋の多くが土葺き屋根であることや、屋根の軽量化に関する法整備などの影響もあり、土葺き屋根は急速に減少しています。

乾式工法(引っ掛け桟瓦葺工法)が主流に

引っ掛け桟瓦葺(ひっかけさんかわらぶき)

現在の瓦屋根は土を使わない、引っ掛け桟瓦葺(ひっかけさんかわらぶき)工法が主流です。
土をつかわずに瓦を張る方法のため、乾式工法ともよばれています。
引っ掛け桟瓦葺では、桟木(さんぎ)と呼ばれる薄い木の棒を取り付けて屋根瓦を引っ掛けます。
葺き土を使用したないため、屋根の重さは土葺き屋根よりも軽くなります。
ただし、引掛桟工法の屋根だから耐震性能が安心であると判断するのは間違いです。
陶器やセメント製の屋根瓦はとても重いため、現在の建築基準法で認める耐震基準に適用されているとは限りません。
2000年までの瓦の張り方は、瓦4枚につき釘を1本つかって瓦を桟木に打ち付けていましたが、2022年のガイドライン工法改訂からはすべての部位の瓦を釘などで緊結することが義務付けられました。

アイコン ガイドライン工法とは

ガイドライン工法は、地震や台風に強い瓦屋根を実現するために設けられた瓦屋根の施工方法です。
2000年建設基準法改正を受け、業界団体により平成13年(2001年)に制定され、改訂を繰り返してきました。
2024年1月に発生した能登半島地震での屋根被害調査では、ガイドライン工法に基づいて施工された屋根は被害を受けていないことが、国土交通省の研究所より公表されました。
ガイドライン工法の屋根の張り方は、地震対策にとても有効であることが証明されました。

テイガクのガイドライン工法の記事はこちら

瓦屋根のガイドライン工法とは?

瓦の葺き替えは4大耐震改修工事の1つ

代表的な耐震改修工事は4つあります。
「建物の基礎」「接合部の補強」「壁の補強」「屋根の軽量化」の4つは木造住宅の4大耐震改修工事になります。
瓦屋根の葺き替えは、4つの中の「屋根の軽量化」に当てはまります。
屋根材の軽量化は耐震性能を向上させるための重要な要素のひとつです。
軽量の屋根材として「スレート屋根」「金属屋根」「アスファルトシングル」の3つが認められていて、重い瓦屋根は軽い屋根材に葺き替えることが耐震改修では推奨されています。

軽量の屋根材のそれぞれの重さ

しかし、この3つの 屋根材の重さは決して同等ではなく、かなりの差があります。
圧倒的に「金属屋根」もしくは「アスファルトシングル」が軽いです。
耐震改修を目的に屋根工事をお考えの方は「金属屋根」への葺き替えを検討しましょう。

各屋根材と1㎡あたりの重量

屋根材の種類 平米あたりの重量
瓦屋根(土葺き) 70kg
瓦屋根(引掛) 45kg
ルーガ(特殊樹脂配合セメント瓦) 20kg
スレート(コロニアル) 20kg
アスファルトシングル 12kg
金属屋根 5kg
屋根の葺き替え

土葺き屋根を金属屋根に葺き替えた場合の屋根重量

それでは、100㎡の土葺き屋根を金属屋根に葺き替えた場合、どのくらい屋根の重さが軽くなるのでしょうか?

葺き替え前の屋根の重量

屋根の内容 1㎡あたりの重量 100㎡に換算
土葺き屋根 70kg/㎡ 7,000kg

葺き替え後の屋根の重量

屋根の内容 1㎡あたりの重量 100㎡に換算
野地板 10kg/㎡ 1000kg
ルーフィング 1kg/㎡ 100kg
金属屋根 5kg/㎡  500kg
合計 1,600kg

上記のように、屋根の重さが5,400kgも軽くなり、屋根の重さは1/4以下になります。
土葺き屋根を金属屋根にすることは、建物の耐震性を考えるうえで有効な手段です。

土葺き屋根の葺き替えの手順(テイガクの施工現場から)

土葺き瓦屋根

大阪府豊中市の築40年の土葺き瓦屋根の建物です。
土葺き屋根の葺き替えは「葺き土の撤去」、「下地調整」の費用が発生するのが特徴です。
そのため、土葺き屋根の葺き替えは一般的な葺き替え費用より10%~20%工事費用が高くなります。

瓦と土の撤

①瓦と土の撤去
既存の瓦と土の撤去をおこないます。
写真から大量の土で瓦を固定していることがよく分かります。

下地調整

②下地調整
屋根をフラットに仕上げるため、下地調整をおこないます。
下地調整では、木材のチップで高低差をなくしていきます。

アイコン 土葺き屋根はほぼ100%下地調整が必要

下地調整とは屋根面を平らにするための工事のことです。
長い間、瓦や土の荷重を受けてきた屋根面は年月の経過とともにたわんでいます。
たわんだ状態の屋根面に屋根材を張ると、雨漏りや屋根材の破損やめくれなどの原因になります。
そのため、下地調整をおこないたわんだ屋根面を平らにする必要があります。
しかし、下地調整を行わない施工をお勧めする業者さんが存在します。
工事費用が安いことを理由に下地調整を行わない工事は絶対に避けてください。
工事終了直後は問題がなくても、近い将来、下地調整未実施による屋根のトラブル(雨漏りや屋根の捲れ)が発生するはずです。

野地板張り

③野地板張り
下地調整を終えたら、新規の野地板を張り付けていきます。
テイガクでは野地板として構造用合板という厚さ12mmの頑丈な合板を使用しています。

ルーフィングシート張り付け

④ルーフィングシート張り付け
屋根の防水の役割を持つ、ルーフィングシートを張り付けます。今回は田島ルーフィングのニューライナールーフィングを使用しました。

新しい屋根材を張り付け

⑤新しい屋根材を張り付け
新規の金属屋根材を張り付けていきます。
屋根材は、アイジー工業のスーパーガルテクトで、瓦と比較して約10分の1の重さです。
屋根としての機能耐久性を回復させるとともに、耐震性を大きく向上させました。

土葺き屋根の葺き替え費用

土葺き屋根の葺き替えでは、他の工事と異なり、古い瓦屋根や葺き土の処分費用だけではなく、下地調整が必要となります。
屋根面積が100㎡の土葺き屋根を、葺き替える際にかかる費用の目安は次の表のとおりです。
※足場組み立て費用は含まれておりません。

30坪(100㎡)の土葺き屋根の葺き替え費用

工事項目 平米単価(税抜) 金額(税抜)
土葺き屋根の撤去処分 5,000円/㎡ 500,000円
下地調整 1,800円/㎡ 180,000円
野地板重ね張り 3,100円/㎡ 310,000円
ルーフィング※1 900円/㎡ 90,000円
屋根仕上げ材張り※2 6,600円/㎡ 660,000円
板金部材取り付け 250,000円
諸経費 150,000円
合計金額 2,390,000円
※1:PカラーEX+(改質アスファルト/ゴムアス)
※2:断熱材一体型エスジーエル鋼板

瓦風の屋根材

瓦をスレート屋根や金属屋根に葺き替えることに抵抗がある方も多くいます。
最近では、瓦特有のデザインを模した金属屋根も登場しています。
瓦を葺き替えたいけれど、瓦の趣を残したい方におすすめの屋根材をいくつかご紹介します。

ルーガ・雅

ケイミューのルーガ
ケイミューのルーガ

ルーガは屋根材最大手のケイミューから販売されている新しいタイプの屋根瓦です。
セメントが主成分で、気泡を含んだハブリット構造の屋根材であり、耐久性と軽量性に優れた屋根材です。
販売開始から10年が経ち専門家からの評価も高く、急速に使用され始めています。
テイガクでもたくさんの施工実績があります。

ルーガ 屋根

和瓦風金属屋根

株式会社セキノ興産のかわら455R
株式会社セキノ興産のかわら455R

陶器瓦の葺き替えは金属屋根による葺き替えが最も多いです。
費用対効果が高いことが一番の理由になります。
金属屋根メーカーも消費者の需要に応えており、和瓦風金属屋根の製造及び販売をしています。

日本瓦の形状に型取った金属屋根は日本の伝統建築物にも使用され始めています。
2010年、浅草寺では清水建設により和瓦風金属屋根による施工が行われました。
「年間3000万人が訪れる日本有数の観光地であり、老朽化による災害被害を最小限に抑えるため」が主な理由です。
たしかに、地震や台風で参拝者に被害が及ぶことを考えると、当然ともいえる対処法です。

金属屋根メーカーの中には厚みがあり耐久性が高い商品や優美な曲線がある商品、鬼瓦・棟瓦・軒先飾りなどの部材が揃った商品など、商品ごとに違いがあります。
お客様の好みに合った金属屋根をお選びください。

和瓦風金属屋根メーカー一覧

メーカー 商品名
株式会社セキノ興産 かわら455R
中山化成株式会社 ニュールーフィックス
福泉工業株式会社 クレスパルーフ
株式会社カナメ 洋瓦王

軽量陶器瓦

軽量タイプの陶器瓦
軽量タイプの陶器瓦

1つ目は、軽量タイプの陶器瓦です。
新東株式会社の「セラムFシリーズ」は平米あたり42kgで最軽量に分類できる商品です。
その他にも、株式会社鶴弥の「スーパートライ110」や三州野安株式会社の「セラフラットⅢ」など多くの種類があります。
陶器製の意匠性を優先させたいお客様にお勧めです。
なお、陶器瓦葺きの工事はテイガクでは承れません。
お近くの瓦葺き工事業者様にご相談ください。

軽量瓦・防災瓦とは?|瓦屋根に葺き替える場合の新しい選択肢

土葺き屋根の軽量化リフォームはテイガクで

テイガクでは土葺き屋根を「軽量金属屋根」や「ルーガ」などに葺き替える工事を承っております。
工事はお客様と直接契約するため、定額料金で工事を承ります。
屋根工事を専門とする監督と職人さんが手掛ける高品質リフォーム工事をご提供いたします。
土葺き屋根の葺き替えをご検討のお客様はテイガク屋根修理にお問い合わせください。

この記事を書いた人
著者 前川 祐介
前川 祐介 代表取締役社長
テイガク サイト制作責任者
宅地建物取引士
建築物石綿含有建材調査者
著者経歴

大阪府堺市生まれ。千葉県立船橋東高校→法政大学→サノフィ(旧アベンティスファーマ)株式会社を経て、父親が経営する板金工事会社である昭和ルーフリモ株式会社へ入社。
中央工学校夜間建築学科卒業。年間100棟以上の屋根と外壁工事に携わった経験を活かし、テイガク記事の執筆とユーチューブ動画撮影をおこなっています。趣味は日本史学。

運営会社

昭和ルーフリモ株式会社は2001年設立の板金工事会社です。
これまでの金属屋根と金属サイディング工事件数の合計は20,000棟を超えます。
板金工事は足場を組み立てるため、外壁塗装の工事事業にも注力しています。

国土交通大臣許可(般-25)第22950号
許可を受けた建設業:板金工事業/屋根工事業/塗装工事業 他

代表前川が本音で解説「板金工事会社とは?」

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