これまで屋根工事といえば、瓦屋根の工事のことを指し示し、瓦葺き職人を主役とする建築世界の花形職業でした。
しかし、この20年の間で、屋根工事業界は大きく変容しました。
現在は、金属屋根の工事が屋根材で最も多く用いられ、屋根職人も建築板金職人が主役になりつつあります。
かつては安っぽいイメージで、日の目を浴びることがなかった金属屋根(建築板金)が今、新築でもリフォームの分野でも急速に普及しています。
この記事では、なぜ金属屋根の人気が高まったのか、その背景を詳しく解説します。
金属屋根が人気な理由
金属屋根のシェア
2024年現在、金属屋根は、屋根材で最も出荷されている屋根材です。
これまでの瓦(粘土瓦)やスレート(セメント系)のシェアを追い抜き、ナンバーワンのシェアを誇っています。
これから日本の屋根は金属屋根へと、どんどん置き換わる見込みです。
2021年屋根材市場調査 素材別シェア
金属系 | 63.2% |
セメント系 | 15.0% |
粘土瓦 | 13.4% |
シングル材 | 5.6% |
石粒付金属 | 2.9% |
金属屋根の寿命
20年前、金属屋根は瓦やスレートに次ぐ、第三の屋根材でした。
当時の金属屋根で用いる素材といえば、トタン屋根です。
皆さんのイメージ通り、トタン屋根は穴が空きやすくて遮音性と断熱性が悪い素材です。
トタン屋根は10年ほどで錆が発現するため、10年ごとに塗り替えが必要です。
屋根の寿命としては30年程度でしょう。
しかし、トタンを改良させたガルバリウム鋼板が世に出て、屋根材市場が一変しました。
ガルバリウム鋼板は、トタンほどのメンテナンスを要せず、30年以上の機能維持が期待できる素材です。
安全かつ安心して利用できることが認められたガルバリウム鋼板の登場がきっかけとなり、金属屋根は屋根材シェアナンバーワンとなりました。
さらに最近では、ガルバリウム鋼板を改良させた更に耐久性が高いエスジーエル鋼板が用いられる機会も増えています。
これからますます、金属屋根の存在感は高まることでしょう。
金属屋根の寿命
トタン屋根 | 20~30年 |
ガルバリウム鋼板の屋根 | 30年前後 |
エスジーエル鋼板の屋根 | 35年前後 |
金属の種類
メッキ鋼板とは?
単なる鉄板を屋根に使っていては、錆に耐えられません。
そのため、メッキ層で鋼板(鉄)を保護させたメッキ鋼板を用います。
多くの金属屋根でメッキ鋼板が用いられています。
メッキの種類によって呼び名が変わります。
もちろん、耐久性や価格も変わります。
トタン
トタンとは、亜鉛メッキ鋼板のことです。
亜鉛をメッキさせた鋼板です。
20年以上昔は、金属屋根の主要な素材として用いられていました。
最近はガルバリウム鋼板、もしくはエスジーエル鋼板が主流となっています。
ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は、亜鉛にアルミを加えたガルバリウムでメッキをさせた鋼板です。
アメリカのベスレヘム・スチール社が開発した鋼板です。
錆にくく、軽量であることから、現在、多くの金属屋根で用いられるようになっています。
エスジーエル鋼板
エスジーエル鋼板は、亜鉛とアルミにマグネシウムを加えたエスジーエルでメッキをさせた鋼板です。
日本の日本製鉄が開発した比較的新しい素材です。
ZAM鋼板やスーパーダイマもエスジーエル鋼板と同じ特徴を備えています。
エスジーエル鋼板はガルバリウム鋼板の3倍超の耐久性があり、特に沿岸地域において錆発現抑制が優れている特性が評価されています。
金属屋根メーカーの製品でも、エスジーエル鋼板の製品(スーパーガルテクト・横暖ルーフαプレミアムS等)が登場しています。
石粒付き鋼板
石粒付き金属屋根は、鋼板の表面に石粒が付着した屋根材です。
日本国内では、韓国製品とニュージーランド製品の屋根材が流通しています。
ジンカリウム鋼板と称して宣伝がなされています。
ジンカリウム鋼板は、日本のJIS規格に当てはめると、ガルバリウム鋼板です。
その他の素材
金属屋根には、メッキ鋼板以外に、ステンレスやアルミ、銅、チタンなどがあります。
これらの素材は、公共の大規模施設や寺社仏閣などで採用されるため、使用は限定的です。
金属屋根の張り方
縦葺き
シンプルかつローコストな屋根の張り方
雨水が流れる方向に沿って張る、縦方向に張る屋根材の張り方を、縦葺きとよびます。
街中で見かける昔ながらのトタン屋根は、縦葺きです。
切妻や片流れの屋根である場合、縦葺きであれば施工が簡単なため、新築の建物などでよく採用されています。
工場や倉庫などの大型施設で採用されることも多いです。
切妻・片流れとは?
おなじみの三角屋根の形状の屋根のことを切妻とよびます。
屋根面が1面だけで形成された屋根のことを方投げとよびます。
いずれもシンプルな屋根の形状で、屋根材や工事コストを抑制できる屋根のかたちです。
折板屋根とは?
折板屋根は、主に倉庫や工場などの大型施設で用いられる金属屋根です。
断面が富士山のような山の形に成型加工された金属屋根を用いることが多いです。
戸建て住宅の金属屋根の厚みは0.4㎜以下が多いですが、折板屋根は0.5㎜以上が多いです。
公共施設の屋根は0.8㎜以上の鋼板を用います。
横葺き
リフォームで用いる機会が多い屋根の張り方
地面に対して水平、横向きに張る屋根材の張り方を、横葺きとよびます。
複雑な屋根では、縦葺きではなく、横葺きが適しています。
建築基準法における日射の取入れの関係で、住宅密集地は複雑な屋根が多いです。
そのため、屋根カバー工法などの屋根リフォーム時では、横葺き屋根が採用されることが多いです。
豊富な性能と性能
戸建て住宅の屋根リフォームでは、横葺き屋根のシェアが圧倒的に高いです。
そのため、夏の暑さを改善したり、温度差がもたらす結露を抑制したりする断熱材一体型の製品や意匠性に優れた瓦風のフォルムの製品など、ラインナップが豊富です。
金属屋根のメーカー
屋根材取扱い会社
金属屋根を販売する会社は国内で20社近くにものぼります。
屋根材メーカーが鉄鋼メーカーから金属屋根の原料となる鋼板を購入し、各地の工場で屋根のフォルムに成型させて、屋根材として日本各地へ流通させます。
金属屋根の人気の高まりから、海外からの輸入品も近年、増えています。
会社名 | 主力商品 | 製造 | 用途 |
---|---|---|---|
ニチハ | 横暖ルーフ | 国内 | 戸建て |
アイジー工業 | スーパーガルテクト | 国内 | 戸建て |
ケイミュー | スマートルーフ | 国内 | 戸建て |
メタル建材 | エテルナ | 国内 | 戸建て |
セキノ興産 | ダンネツトップ | 国内 | 戸建て |
元旦ビューティー | ダンカクルーフ | 国内 | 戸建て |
福泉工業 | シルキーG2 | 国内 | 戸建て |
協和 | Zルーフ | 国内 | 戸建て |
稲垣商事 | ヒランビー | 国内 | 戸建て |
マックス建材 | マックス瓦 | 国内 | 戸建て |
中山化成 | ニュールーフィックス | 国内 | 戸建て |
三晃金属工業 | 丸馳折版ロック | 国内 | 倉庫/工場 |
淀川製鋼 | ヨドルーフ | 国内 | 倉庫/工場 |
ディートレーディング | ディプロマットスター | 輸入 | 戸建て |
伊藤忠建材 | スカイメタルルーフスレート | 輸入 | 戸建て |
LIXIL | Tルーフ・クラシックR | 輸入 | 戸建て |
ルーフタイルグループジャパン | セネター | 輸入 | 戸建て |
金属屋根の製造から消費者に届くまでの流れ
屋根材メーカーが鉄の原材料から屋根を製造しているわけではありません。
日本製鉄やJFEなどの鉄鋼メーカーから屋根材の原材料となるコイルを屋根材メーカーが購入して、屋根材を製造しています。
つまり、どの屋根材の金属も、元をたどると1社もしくは2社に集約されます。
ただし、鋼板の素材(ガルバリウム鋼板かエスジーエル鋼板か)や厚み、メッキ量、塗膜などは屋根材メーカーごとに異なります。
国内メーカーの流通形態
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鉄鋼メーカー……鉄やメッキ鋼板を製造する会社
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屋根材メーカー……鋼板を購入して屋根材を製造する会社
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卸業者……屋根材メーカーから屋根材を建築板金工事会社に卸す会社
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建築板金工事会社……金属屋根を購入して工事を提供する会社
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消費者……金属屋根の工事を依頼
金属屋根の工事
金属屋根の工事を手掛けるのは?
金属屋根のプロは建築板金工事会社
金属屋根は板金工事会社が手掛ける工事です。
基本的には、瓦屋さんではなく、板金屋さんによる専門工事です。
しかし、最近は瓦の需要が激減していることもあって、瓦の職人さんが板金工事を手掛けるようにもなっています。
もちろん、板金工事会社に屋根工事を依頼することをおすすめします。
板金工事一本で技術を磨いてきた職人さんとそうでない職人さんとでは、施工のレベルが全く異なります。
専門的な提案を受けられるだけではなく、安い工事価格での提案が受けられるはずです。
金属屋根工事会社の見分け方
瓦屋さんと板金屋を見分ける方法は簡単です。
瓦屋さんは、瓦を屋外、特に道路側に面した場所に瓦を積んで保管します。
理由は瓦は重いのと、雨に濡れても問題がないからです。
そのため、瓦屋さんの倉庫施設は、施設の屋外に瓦が山積みなっていることがほとんどです。
一方、金属屋根の専門工事会社である建築板金工事会社はというと、倉庫内に金属屋根を保管します。
理由は金属屋根は軽いのと、雨に濡れると錆びてしまうからです。
また、日本製の金属屋根は3mと、とても長いため、倉庫の天井高が高いのも建築板金工事会社の特徴です。
金属屋根を専門扱う工事会社を見つけるには、工事会社の倉庫の有無だけではなく、倉庫の周囲や大きさを見て判断をしてください。
もちろん、ビルのテナント、国道沿いのコンビニ跡地を改修したような店舗では、金属屋根の工事を直接のかたちで消費者様に提供することはできません。
建築板金工事会社とは?大阪中央工事センターのご紹介
全板連(建築板金工事会社が加盟する組織)
全板連は全国の建築板金工事会社や板金職人が集まった組合組織です。
瓦の工事会社が集まる組織(全瓦連)も存在します。
地元の建築板金工事会社をお探しの方は、全板連のウェブサイトから検束をしてください。
外壁塗装会社やリフォ会社紹介サイトで金属屋根の工事を依頼
外壁塗装会社に金属屋根を用いたリフォームを依頼する人が増えています。
もしくは、金属屋根のリフォームができるリフォーム会社を紹介してくれる紹介サイト経由でリフォームを依頼する人も多いです。
たとえば、外壁塗装にも関心があって、外壁塗装もできる金属屋根のリフォーム会社を紹介サイト運営者に複数の会社を紹介してもらった場合、流通形態は下記の通りになります。
外壁塗装と金属屋根のリフォームを紹介サイトに依頼した場合の流通形態
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紹介サイト運営会社……工事代金の10%が紹介手数料として発生
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外壁塗装会社……金属屋根の工事を板金工事会社へ依頼したときの中間マージンが発生
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板金工事会社……屋根工事料金が発生
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お客様……1〜3が加算された金額が請求される
屋根や外壁のリフォームができるリフォーム会社を紹介してくれるサービス(マッチングサービス)を利用した場合、リフォーム会社は紹介サイト運営会社に紹介成約料として、工事代金の約10%を支払うことになります。つまり、中間マージンが発生します。
また、外壁塗装会社は自社で建築板金工事ができないため、金属屋根の工事は外注となります。
その結果、工事金額が高くなったり、不透明な工事になったりすることになります。
金属屋根の工事は原則、直接工事ができる建築板金工事会社に依頼をすることをおすすめします。
金属屋根はここに注意!
金属屋根の評価が高まっているため、金属屋根が万能であるかのように思われがちです。
しかし、金属屋根は決してパーフェクトな屋根ではありません。
ここでは特に注意してほしい点を2点、紹介します。
棟板金の飛散
棟板金(むねばんきん)とは、屋根の最も高い箇所に取り付ける板金部材のことです。
台風などの強風時、棟板金が飛ばされてしまう被害がよく発生します。
棟板金の裏側に棟板金を固定する下地があり、主に木製の板が用いられます。
棟板金が飛ばされる原因は、金属屋根の下地の腐食です。
そのため、10年や20年に一度は、棟板金の交換を検討してほしいです。
なお、折板屋根で用いる棟板金の下地は金属製の下地を使用するため、長期に棟板金の固定が期待できます。
温暖化による風の強さが増している背景もあり、戸建て住宅でも金属製の下地の採用が注目されています。
棟板金の工事は手抜き工事が多い部位でもあるため、素材や施工方法について、消費者様は、よく理解をして工事の検討をおこなう必要があります。
野地板の結露
真夏の金属屋根の表面温度は90度近くまで上昇し、一方、冬場は室内の暖かい空気が屋根裏に滞留します。
屋外と屋内の温度差が大きくなると、屋根材の裏側に結露が生じやすくなります。
結露は屋根材を支える野地板(のじいた)にダメージを与え、その結果、金属屋根を支える力が弱まります。
たとえば、裏側に断熱材や空気層がないトタン屋根は、スレート屋根や瓦屋根よりも野地板の寿命が短い傾向があります。
野地板は金属屋根をしっかりと固定させる役割があるため、野地板を長期にわたって健全に維持させることも屋根のメンテナンスを考えるうえで重要です。
野地板の寿命を長くするには、断熱材一体型の金属屋根を用いたり、換気棟を取り付けたりする方法が有効です。
金属屋根のメリット・デメリット
金属屋根のメリット
・総合的(耐久性・施工性・価格・耐震性・メンテナンス性)に優れている
・断熱材一体型金属屋根の断熱効果が優れている
・モダンデザインや伝統的な瓦風のデザインの商品などデザインが豊富
・屋根カバー工法で用いることができる
・リフォームでもメーカー保証を得ることができる
・処分時にリサイクルができコストがかからず環境にやさしい
・穴をあけずに屋根に太陽光パネルを設置できる
・台風で屋根が捲れても補修が簡単にできる
大きな地震や台風などで被害にあった屋根を想像できますでしょうか?
瓦屋根の住宅は地震で倒壊したり、台風で屋根がはがれたりすると、文字通り「瓦礫」と化します。
一方、多くの金属屋根は1枚当たりの長さが長くて軽い特徴があるため、仮にはがれたとしても、応急処置が用意におこなえいます。
金属屋根の廃材は、お金になることもあります。
大規模災害のような万が一の場合においても、金属屋根は有益な屋根材です。
金属屋根デメリット
・瓦よりも耐久性と通気性がない
・建築板金専門の工事会社や職人の数が少ない
・沿岸地域や工業地域は錆び発生リスクが高い
金属屋根の工事品質は、職人さんの技術力に大きく左右されます。
金属屋根の人気の上昇とともに、建築板金職人だけではなく、瓦葺き職人や経験の浅い職人が金属屋根の工事を担う機会が増えています。
実績や歴史がある建築板金工事会社であるか、消費者自身がうかがい知る力を身に付ける必要があります。
建築板金専門の職人でなければ一定品質の工事を提供することは難しい
金属屋根の工事ならテイガクで
新築だけではなく、建物の維持メンテナンスでも金属屋根の存在感は年々、高まっています。
寂しい気もしますが、20年後30年後、これまで主流であった瓦やスレートの屋根は、金属屋根へと変容し、日本の街並みの外観は様変わりするはずです。
テイガクは創業から20年以上、金属屋根の工事を専業にしてきた建築板金工事会社です。
古くなった屋根を金属屋根に葺き替えたり、屋根カバー工法をしたりすることが得意な会社です。
各拠点に屋根材を保管し、直接工事のかたちでお客様に金属屋根の工事を提供いたします。
これから金属屋根のリフォーム工事をおこなう予定の方で、テイガクの施工エリアにお住まいの人は、是非、テイガクにご相談ください。
お見積りの作成までは無料で承っております。