外壁リフォームでおすすめの金属サイディング。
「ガルバリウム鋼板」ではなく「アルミ」によるサイディングとは?
基本的な特徴からメリット、デメリットまで丁寧に解説します。
目 次
閉じるアルミサイディングとは
アルミ製の外壁材
アルミサイディングとはアルミ製の外壁材(金属サイディング)のことです。
断熱材一体型の商品が広く普及しています。
金属の外壁材(金属サイディング)といえばガルバリウム鋼板の外壁と思っているの方が多いのではないでしょうか。
じつは金属の外壁材には、ガルバリウム鋼板だけではなく、エスジーエル鋼板やスーパーダイマ、アルミ、トタンなど鋼板の種類がいくつかあります。
アルミサイディングはあまり聞きなれないので新しい素材のように感じられるかもしれません。
しかし、アルミサイディングは金属サイディングで最も歴史が古い外壁材のひとつです。
街中でも比較的多く、アルミサイディングで外壁カバー工法がされた住宅を見かけることができます。
そして、アルミサイディングはガルバリウム鋼板のサイディングよりも価格が高いです。
訪問販売の営業でよく扱われていた商材
アルミサイディングの全盛期は今から約40年ほど前にさかのぼります。
長年、住宅リフォームの仕事をしている人であれば誰もが知る事実ですが、アルミサイディングといえば訪問販売でよく扱われていた商材です。
ミュージシャンで作曲家の小林亜星さんのCMでおなじみの、新興産業などが取り扱っていた金属サイディングは、まさにアルミサイディングです。
「さいでりあ」とよばれる商材です。
「パット!さいでりあー」。の「さいでりあ」は、じつはアルミサイディングの商品名のことです。
当時、1棟あたり400万円くらいの価格でアルミサイディング工事を提供していました。
断熱材一体型の金属サイディングといえば今ではよく知られている外壁材ですが、当時はそのような付加価値が高い外壁材はなく、情報化社会でなかったことも背景に、驚くほど高額で販売されていました。
また、ローンの借り換えとリフォームローンを組ませることで販促を進められた時代だったこともあり、新興産業は急成長を遂げました。
その後の新興産業がどのような経緯をたどったかは、インターネットで確認することができます。
窯業サイディングとの違い
価格 | 重さ | 耐候性 | 断熱性 | |
---|---|---|---|---|
アルミ | × | ◎ | ◎ | ◎ |
窯業 | ◎ | × | × | × |
一般的な窯業サイディングに比べてアルミサイディングは耐候性や断熱性の点で優れています。
外壁の目地に打つシーリングの露出も少ないため、外壁は窯業サイディングほどシビアなメンテナンスが必要ありません。
外壁カバー工法で用いるアルミサイディングは古い外壁の上に空気層を設けて仕上げるため、一度のリフォームで30年以上の外壁機能と美観維持は十分、期待できます。
アルミサイディングを張って約30年が経過した築60年の建物の評価
ガルバリウム鋼板の時代に
現在、金属の外壁材といえば、ガルバリウム鋼板です。
その他、ガルバリウム鋼板を改良させたエスジーエル鋼板の評価が高まっています。
ガルバリウム鋼板の人気の背景はコストパフォーマンスです。
筆者としても基本的に金属サイディングはガルバリウム鋼板をおすすめする機会が多いです。
市場もガルバリウム鋼板が中心であり、アルミサイディングが採用される機会は減少しています。
一方でアルミサイディングはもっと評価さてもよい外壁材だと、筆者は思っています。
アルミはガルバリウム鋼板よりも品質が優れていることは誰しもが認める事実です。
アルミサイディングの種類
アルミサイディングの組成はアルミ単体ではなく合金です。
アルミに何を添加するかで耐久性が変わります。
一般的にはマグネシウムを添加させた5000番系とよばれるアルミサイディングが用いられます。
A5052もしくはAl-Mg系ともよばれます。
マグネシウムは塩害に対する耐性が強いため、沿岸地域でも安心して用いることができます。
ガルバリウム鋼板にもマグネシウムを添加させたエスジーエル鋼板が登場し、これからの金属外装材はアルミサイディング同様、マグネシウムが添加された屋根材と外壁材のスタンダードになるはずです。
アルミサイディングのメーカー
現在、アルミサイディングをメインに工場生産している製造会社は「YKK AP」と「東邦シートフレーム」だけです。
昔の金属サイディングはアルミサイディングのことであり、ほぼ全ての会社がアルミサイディングを製造していました。
しかし、現在はアイジー工業を含め金属サイディングメーカーはほぼアルミサイディング製造事業から撤退しています。
サイディングメーカーと工場所在地
リフォーム会社のオリジナルサイディング
もし自社でサイディングや塗料を製造しているのであれば、資材を製造をするための工場設備を保有しているはずです。
工場設備がないにもかかわらず、オリジナル塗料やオリジナルサイディング(サンプル・モデルサイディング)を提案しているリフォーム会社が存在する場合、そのリフォーム会社のオリジナル商品は大手メーカーから供給されたOEM品の可能性が高いです。
「製造工場があるのか?」という点も確認しておきましょう。
もちろん、OEM品をオリジナル品と称して販売することは問題がない行為です。
アルミサイディングのメリット
アルミサイディングの特徴と種類について、よく比較されるガルバリウム鋼板と合わせて解説をします。
軽い
ガルバリウム鋼板やトタンよりアルミサイディングは軽いです。
約半分の重さです。
外壁カバー工法をおこなう際、より軽い外壁材であるアルミは耐震性が高く、地震への影響を抑えることができます。
ただし、耐震設計をおこなう際、屋根の総重量は耐震設計の計算式に組み入れられますが、外壁の総重量は組み入れられないためので、外壁は屋根の重さほど耐震性への影響は軽微です。
また、最近は旭トステム株式会社のサポートカバー工法などの耐震性を上げる外壁カバー工法も確立されています。
外壁カバー工法(約150㎡の外壁)
金属サイディングの素材 | 重量 |
---|---|
アルミ | 約285kg |
ガルバリウム鋼板 | 約550kg |
錆びにくい
アルミはガルバリウム鋼板より錆びにくいです。
ただし、ガルバリウム鋼板にはアルミを含んだメッキが被覆されておりアルミ同様の防蝕作用があります。
アルミほどではないですが部分的で錆が拡大しない特性をガルバリウム鋼板は有しています。
もちろん、外壁の機能維持に及ぶ影響は多くの場合ありません。
施工しやすい
金属サイディングをメインにおこなう職人さんは、アルミサイディングの現場の場合は本当に大喜びです。
理由はガルバリウム鋼板よりも軽いからです。
テイガクのサイディングの高齢の職人さんも特にアルミサイディングの時はモチベーションが高いです。(完全に内部事情の話ですが、、、)
評価の確立
今から30年前以上に大ブームになったアルミサイディング。
現在、いたるところにアルミサイディングの建物を見かけることができます。
そのため、30年経過した外壁の状態の評価がおこなえます。
一部不良製品が普及したこと、施工業者の低い技術力で施工されたことなどの要因を除くと、実際のアルミサイディングの状態はおおむね良好です。
また、多くの外壁が塗装やシーリングを含めたメンテナンスをされた形跡がありません。
地震の影響もありません。
30年経っても何も問題がなく外壁が機能していることは証明されています。
「論より証拠」です。
この点は、市場にまだ30年以上の普及実績がないガルバリウム鋼板の外壁より、すでに販売から30年以上が経過しているアルミサイディングが評価できる点です。
実際の建物の状態に勝る評価はありません。
実は、すでに廃業した新興産業でリフォームされたアルミサイディングの外壁は良質である傾向が高いです。
そして、当時のアルミサイディングはアイジー工業が製造していました。
外壁カバー工法で得られるメリット
外壁カバー工法で得られるメリットについて解説します。
(アルミサイディング特有のメリットではありません)
雨漏りリスクを大幅に解消
外壁の外側に胴縁とよばれる下地を取り付け、その上に外壁材を張って仕上げため、外壁内部に雨水が侵入するリスクを大幅に低減させることができます。
断熱効果が高くなる
金属サイディングは窯業サイディングやモルタル外壁と比べて断熱効果が高いです。
外壁のうえに断熱効果が高い外壁材が重ねられるため、夏と冬が過ごしやすくなります。
ただし、アルミサイディングはガルバリウム鋼板のサイディングより断熱効果が若干低いです。
断熱カバー工法?補助金はおりる?
外壁カバー工法のことを「外断熱による断熱改修」と誤解されている人が少なくありません。
断熱改修の補助金には一定以上の断熱効果(断熱材の厚み概ね30㎜以上)が求められ、残念ながらアルミサイディング(断熱材の厚み概ね15㎜以上)は補助金の対象にはなりません。
外壁デザインを刷新できる
最近の金属の外壁材のデザイン技術は進化しています。
金属素材を生かしたモダンでシンプルなデザインから、インクジェットの技術を用いたリアルで色彩豊かなデザインのものまで幅広くあります。
アルミサイディングのデメリット
コストパフォーマンスが悪い
アルミサイディングの価格は高いです。
鉄にメッキさせたガルバリウム鋼板やエスジーエル鋼板と比べると1.3倍近くの金額になります。
費用対効果の点ではガルバリウム鋼板のほうが優れています。
外壁カバー工法の価格・相場(単色・段出隅/段キャップなし)
金属サイディングの素材 | 相場 |
---|---|
ガルバリウム鋼板 | 総額180万円 |
アルミ | 総額230万円 |
外壁カバー工法の価格・相場(インクジェット・段出隅/段キャップあり)
金属サイディングの素材 | 相場 |
---|---|
ガルバリウム鋼板 | 総額240万円 |
アルミ | 総額310万円 |
ガルバの方がデザインとカラーラインナップが多い
アルミは柔らかい(凹みやすい)ため、硬いガルバリウム鋼板に比べて成型加工が難しいです。
一方でガルバリウム鋼板は成型加工がしやすいため、リアルな柄などの再現しやすく、かつラインナップが多いです。
主力メーカーがガルバリウム鋼板の金属サイディングに注力していることも背景にありますが、デザイン製やカラーラインナップ数は比べられないほどガルバリウム鋼板の商品の方が多いです。
断熱性能の実力
断熱効果は「断熱材の厚み」と「断熱材の素材」そして「鋼板の種類」に依存します。
断熱材が厚いほど断熱効果は高く、断熱材はウレタンよりもヌレートフォームの方が断熱効果が高いです。
現行のアルミサイディングとガルバリウム鋼板のサイディングを比較すると、ガルバリウム鋼板のサイディングメーカーの商品の方が断熱効果が高い設計になっています。
なにより、アルミはガルバリウム鋼板よりも熱伝導率が低く、熱が伝わりやすいです。
断熱効果を期待されている人は、これら3点を抑えたうえでどの外壁材を用いるか検討しましょう。
【参考】断熱材の厚み
メーカー | 断熱材の厚み |
---|---|
YKK AP | 15mm |
ニチハ | 18mm |
【参考】断熱材の種類
メーカー | 断熱材 |
---|---|
YKK AP | 硬質ウレタン |
アイジー工業 | イソヌレートフォーム |
【参考】金属の熱伝導率
素材 | 熱伝導率 |
---|---|
アルミ | 0.53W/m・℃ |
鉄(ガルバ) | 0.18W/m・℃ |
アルミサイディングの耐久性とリフォーム時期
各外壁材の耐久性
外壁材の耐久性
外壁材の種類/空気層の有無 | 耐久性 |
---|---|
窯業/通気層なし | 15~20年 |
窯業13mm厚/通気層あり | 20~25年 |
窯業14mm厚以上/通気層あり | 25~30年 |
ガルバリウム鋼板/通気層あり | 30~35年 |
アルミ/通気層あり | 35~40年 |
外壁カバー工法の適正時期
外壁のデザインを大幅に変えたいと思った時期
最近の金属の外壁材のデザインは20年以上昔と比べてデザインのバリエーションが豊かです。
若い世代の注文住宅の外壁材選び金属サイディングが選ばれるケースが増えていることが背景にあげられます。
外壁塗装では塗りつぶしになってしまい、かつ繰り返しのメンテナンスが必要です。
ダイナミックにデザインを変えられる金属サイディングは、外壁リフォームをおこなううえで高い満足が得られます。
築後20年前後
外壁塗装をおこなわずに、築後20年を目安に外壁カバー工法をおこなうことをテイガクでは推奨しています。
一生で一度の外壁リフォームが実現できます。
テイガクが手掛けたアルミサイディングの施工例
画像中央の アイコンを左右に移動すると、画像の比較ができます
築年数 | 築25年 |
工事前の外壁 | 積水ハウス |
工事後の外壁 | YKK AP シャインウォール(インクジェット) |
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築年数 | 築10年 |
工事前の外壁 | 窯業サイディング |
工事後の外壁 |
YKK AP ルシアスウォール(木目調)+ロカストーン(単色) |
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テイガク東京中央店の外壁工事
築年数 | 築40年 |
工事前の外壁 | モルタル外壁 |
工事後の外壁 |
YKK AP ルシアスウォール(木目調) + シャインウォール(インクジェット)) |
外壁カバー工法の注意点
【重要】雨押え板金の取り付け位置の注意点
屋根と外壁ともに20~30年程度でカバー工法を検討することになるでしょう。
それでは、屋根と外壁どちらを先におこなう必要があるでしょうか?
答えは屋根です。
将来的なメンテナンスと雨仕舞処置を考えると金属屋根の工事を先におこなってほしいです。
その理由は外壁と屋根が取り合う雨押え板金の位置が変わるからです。
NGな工事例:外壁カバー工法後に屋根カバー工法は避けましょう
外壁を先に工事してしまうと、雨押え板金の立ち上がりが外に露出します。
まさにシーリング頼りの構造になってしまいます。
特に雨押え部分は外壁に降り注いだ雨水が大量に雨押え板金部分に滴り落ちるため、雨漏りが起こりやすくなります。
OKな工事例:屋根カバー工法後に外壁カバー工法が正解
屋根カバー工法で雨押え板金を取り付けてから金属サイディングを張った現場です。
雨押え板金は外壁内部に納まっているため、雨水が外壁内部に入るリスクは大幅に低減できます。
胴縁の素材は樹脂製がおすすめ
外壁カバー工法をおこなう際、アルミサイディングの下地にあたる胴縁(どうぶち)とよばれる下地材を取り付けます。
現在、外壁のリフォームでは木製の胴縁ではなく、樹脂製の胴縁を用いるケースが増えています。
理由は水濡れによる木の腐食とシロアリ被害を防ぐためです。
アルミサイディングの工事会社は?
板金工事会社が手掛ける専門工事
アルミサイディングを含む金属の外壁材の工事は、板金工事会社が手掛ける工事です。
板金工とよばれる職人さんが外壁工事をします。
金属屋根を手掛ける職人さんも板金工です。
金属サイディングのトップメーカーであるアイジー工業のカタログを見れば一目瞭然ですが、金属サイディングと金属屋根は親和性が高く(断熱材一体型の金属サイディングと金属屋根)、施工方法が似ています。
金属サイディングは約4mの長尺であるため、金属サイディングの工事を直接提供するには大きな倉庫設備を必要とします。
グーグルマップで事業所が簡単に確認できる時代です。
これからアルミサイディングの改修工事を検討されている人は、「倉庫の有無」で板金工事会社であるかどうかを判断してください。
より価格が安く、より専門的な工事の提案が受けられるはずです。
もちろん、テイガクではアルミサイディングの施工を承っております。
アルミサイディングに関するよくある質問
A
期待耐用年数は30~35年です。
20年経過したら、必要に応じてシーリング補修もしくは塗装を検討してください。
A
およそ200~250万円です。
用いるデザインや張り方によって大きく価格は変わります。