葺き替えは野地板を新しくできる唯一のチャンス
屋根葺き替えを希望されるお客様に「野地板は交換するのですか?」とよくお尋ねされます。
一般的に野地板は「交換」ではなく「増し張り」します。
この記事は屋根の葺き替えで野地板を交換するメリットとデメリットについて解説をします。
野地板の寿命は50年
スレート屋根における工事は、「カバー工法」と「葺き替え」の2種類があります。
いずれも「屋根材」と屋根の防水シートである「ルーフィング」を新しいものに取り換えます。
カバー工法と葺き替えの大きな違いは、野地板を新しくするかどうかです。
野地板とは屋根材を固定させる役割がある屋根材の下地材のことです。
用いられる屋根材や小屋裏換気の有無によって野地板の寿命は変わりますが、一般的な野地板の寿命は約50年です。
屋根葺き替えの際は、古い野地板をはがして交換したり、古い野地板の上に新しい野地板を重ね張りしたりします。
葺き替え時の基本は増し張り
屋根葺き替えの際、古い野地板をはがすことは、ほとんどありません。
基本は、古い野地板の上に新しい野地板の上を重ねて張る「増し張り」で工事を進めます。
なぜなら、野地板をはがす行為はデメリットが多いからです。
ただし、屋根の状態によっては、野地板交換を必要とする場合があります。
そのため、これから屋根の葺き替えを検討されている人は、野地板をはがすメリットとデメリットを把握しておくとよいでしょう。
野地板を張り替えるメリットとデメリット
野地板交換のメリット
屋根が軽くなる
野地板は意外と重いです。
8kg/㎡です。
増し張りをすると、2枚重ねになり、野地板だけで16kg/㎡の重さになります。
よく葺き替えは屋根が軽くなると称されていますが、実はスレート屋根から金属屋根に葺き替えてもほとんど軽くなりません。
しかし、野地板をはがして交換すれば8kg/㎡分、屋根が軽くなります。
地盤が弱い地域や将来大きな地震が発生する見込みの地域では、野地板交換を伴う屋根葺き替え工事を検討する価値は十分あります。
重い屋根に葺き替える場合
金属屋根ではなく、瓦などの重い屋根に葺き替える人は、野地板をはがして交換することを検討してください。地盤調査が義務化されたのは、今から約20年前のことです。地盤が弱い地域や大きな地震が来ることが予想されている地域にお住まいの人も葺き替えを検討するとよいでしょう。
雨漏りによる屋根内部の腐食を修繕できる
雨漏りが生じている屋根や築後40年近く経過しているトタン屋根は、野地板の腐食、そして野地板を支えている垂木が腐食している可能性があります。
腐食が進行している場合、野地板をはがして屋根の内部を補強する工事をおこなう必要があります。
野地板の部分張りもできるの?
野地板を部分的にはがして、張り替えることも可能です。屋根の経験と知識がしっかりとある工事会社に意見を求めましょう。
野地板交換のデメリット
費用がかかる
野地板をはがす作業は、一般の人が思っているより、かなり大変です。
釘でしっかりと野地板は固定されているため、労力が伴います。
処分費もかかるため、野地板を張る費用と同じくらいの費用がかかります。
工期がかかる
はがしている途中に通り雨が降ると、屋根の中が水浸しになります。
屋根工事会社が責任を負うことになるため、野地板をはがす作業はかなりの神経を使います。
野地板を張る作業は通常2日で終わりますが、はがす作業は3日はかかります。
野地板交換を伴う屋根葺き替え事例
和歌山県で屋根の葺き替え工事を依頼されました。
南海トラフが懸念されている地域です。
現行の屋根はスレート屋根で、ケイミューのルーガへ葺き替えを依頼されました。
ルーガはスレート屋根とほぼ同じ重さです。
そのため、野地板を交換することにしました。
屋根と野地板をはがしていきます。
本来は屋根は一気に全部はがしたいです。
しかし、屋根をはがしている途中で雨が降ると、大変なことになるため、部分的にはがしていきます。
新しい野地板を張りました。
野地板にも種類があります。
耐震性能を高めてくれる構造用合板を用いました。
屋根裏から屋根下地を確認した様子です。
新しい野地板が確認できます。
ルーフィングを張り、屋根材を張ります。
桟木を取り付けて屋根を張っていきます。
屋根工事完成です。
比較的重い屋根材を採用したため、工事後の屋根の重さは工事前と変わらない状態です。
大きな地震がくる恐れがある地域であるため、野地板を交換しなければ耐震性能が低下します。
もちろん、屋根は耐震性能を考慮したうえで、工事内容を決定してください。