このページでは石粒付き金属屋根について解説します。
石粒付き金属屋根は、みなさんが思っている以上に種類が豊富です。
価格だけではなく、屋根本体以外で用いる板金役物や施工方法を正しく理解したうえで、どの商品が適切なのか、じっくりと比較検討してほしいです
目 次
閉じる石粒付き鋼板屋根とは?
外国製の金属屋根
石粒付き金属屋根は金属の表面に石粒が付着した外国製の屋根材です。
韓国もしくはニュージーランド、中国から輸入されています。
石粒付き金属屋根の商品
経年と共に不具合が発現する商品に注意
20年後に不具合が発現した石粒付き金属屋根
普及が拡大している5つの理由
価格が安い
日本製の金属屋根よりも安く、中でも韓国や中国製の石粒付き金属屋根は価格が安いです。
工事が簡単
石粒付き金属屋根の工事は、アスファルトシングルやスレート屋根の施工方法と似ていて簡単です。
日本製の金属屋根は金属を曲げて止水性能を高める作業が伴います。
しかし、石粒付き金属屋根は石粒があるため硬く、日本製の金属屋根のような手間が少なくて済みます。
意匠に優れている
石粒のやわらかい温かみが感じられる屋根に仕上がります。
屋根のてっぺんの棟板金や、側面に取り付けるケラバ板金も石粒付きの同質役物にすると、高級感がある外観に仕上がります。
雪止め不要
石粒が雪の落雪を抑えてくれます。
石粒付き金属屋根は基本的に雪止めが不要です。
安全に工事ができる
石粒付き金属屋根の最大のメリットは、石があるおかげで滑りにくく安定した状態で工事ができることです。
勢力が強い台風が来て万が一、不具合が生じたとしても足場をかけずに修復できる可能性があります。
この点は石粒付き金属屋根が評価できる最大のメリットです。
保証期間が長いほど良い屋根?
販売元によって長期の保証期間を設けています。
製品保証は保証年数だけではなく、保証内容や免責事項、保証先などを読み解いてはじめて価値があるものです。
「保証期間が長い=優れている」とは限らず、筆者は保証期間が控えめな会社ほど堅実であると評価しています。
石粒付き金属屋根が急激に増加している理由
販売は主に塗装会社と太陽光パネル設置会社
「塗装会社や太陽光パネル設置会社から石粒付き金属屋根をすすめられていませんか?」
「外壁塗装と金属屋根の工事」あるいは「太陽光発電設置と金属屋根の工事」をセットにおこなう場合、工事金額がかなりの負担になります。
そのため、塗装会社と太陽光販売会社は積極的に石粒付き金属屋根の工事を推し進める傾向があります。
瓦葺き工が担い手になりつつある屋根
石粒付き金属屋根は工事が簡単です。
表現を変えると、日本製の金属屋根よりも施工方法は簡素化されています。
どちらかというと、施工方法はスレート屋根やアスファルトシングルに近いです。
そのため、普段は瓦の工事を担っている瓦葺き工が石粒付き金属屋根を張るケースが増えています。
瓦の需要が激減しており、瓦葺き工が石粒付き金属屋根の専門職人に転じています。
そのため、瓦工事店に屋根のリフォームを依頼すると、石粒付き金属屋根をおすすめすることが多いはずです。
言うまでもないことですが、工事が簡単だからといって、金属屋根の知識と経験が不十分なままで工事をおこなうと、不具合リスクは高くなります。
これから石粒付き金属屋根の工事を依頼する屋根工事会社の技術ももちろん重要なポイントです。
もちろん、金属屋根の専門工事会社であれば日常的に金属屋根を切ったり張ったりしているため、工事は安心です。
石粒付き金属屋根を販売する会社
・塗装会社
・太陽パネル設置会社
・瓦葺き工事会社
石粒付き金属屋根の特徴と構造
石粒付き金属屋根の構造
石粒付き鋼板屋根はガルバリウム鋼板の表面に石粒を付着させたニュージーランド発祥の外国製の屋根材です。
多くの商品で、アスファルトシングルと同じセラミックでコーティングされた石粒が屋根の表面に付着しています。
金属版のアスファルトシングルと表現すれば分かりやすいと思います。
苔の付着や色の退色もアスファルトシングルとほぼ同じです。
英語圏では「Stone Coated Roofing」が一般的な名称として用いられています。
日本では呼び方が販売元によってさまざまです。
石粒付き金属屋根の他のよび方
・ジンカリウム鋼板
・自然石粒粒付き鋼板
・天然石化粧屋根
・砂付き金属屋根
・ストーンチップ鋼板
ジンカリウム鋼板とは?
ジンカリウム鋼板はガルバリウム鋼板のことです。
ニュージーランドや韓国はガルバリウムの規格がなく、ガルバリウムの組成をジンカリウムとよんでいます。
もちろん、日本のJIS規格に当てはめると、ジンカリウムはガルバリウムです。
オーバーラップ式とかん合式
石粒付き金属屋根は商品によって屋根の張り方が2つに分かれます。
1つ目は、2本のビスで屋根を固定させる方法で、オーバーラップ式とよびます。
2つ目は、かん合式タイプで屋根と屋根引っかけて張るタイプ。
手間がかからないかん合式は費用が安く抑えられる一方で、屋根の性能は空気層が厚いオーバーラップ式が優れています。
同質役物とは?
石粒付き金属屋根は「同質役物」と「非同質役物」を選ぶことができます。
同質役物とは石粒が付いた板金部材のことです。
板金部材のことを役物(やくもの)とよびます。
ガルバリウム鋼板の役物を用いることが多いので、GL鋼板やGL通し役物とよんだりします。
一方で、石粒が付いていない板金部材を非同質役物とよびます。
石が付着した温かみのある雰囲気が特徴の屋根なので、屋根が目立つ建物は石粒が付いた板金部材を使いたいですね。
もちろん、石でコーティングされているほうが鋼板の耐久性も高くなります。
性能 | 同質役物 | 非同質役物 |
---|---|---|
見た目 | 一体感がある | 一体感がない |
価格 | 高い | 安い |
耐久性 | 高い | 同質役物よりも低い |
製造国による違い
オリジナルはニュージーランドのデクラ屋根
石粒付き金属屋根は60年前にニュージーランドから発祥した屋根材で、全世界で普及されています。
有用性が認められ、同じような屋根材を製造する大きな会社が世界中で登場しました。
しかし、2019年に石粒付き鋼板を製造する主要な会社が集約され、現在はルーフタイルグループ(本社はニュージーランド)という類のない巨大屋根材メーカーに変容を遂げています。
日本ではルーフタイルジャパンとよばれる会社が代理店として取り扱っています。
オリジナルのデクラ屋根を実際に触れてみると、「かなり頑丈」という印象を受けます。
多くの石粒付き金属屋根が普及していますが、是非、各屋根を手に取って見比べてください。
韓国製の商品が人気
韓国や中国でも同じような石粒付き鋼板の屋根が製造されています。
地理的に近いという背景から、我が国の石粒付き鋼板の屋根の多くは、韓国製の商品が多く普及しています。
もちろん、デクラ屋根と比較すると、多くの点で異なります。
石粒付き金属屋根のデメリット(商品ごとの違い)
もし筆者が石粒付き金属屋根のデメリットをあげるとすると、それは「一貫性がない」ことです。
どの商品も同じような仕上がりに見えて、屋根内部の板金部材の構造や、屋根の組み立て方が全く違います。
この点が日本製の金属屋根と大きく異なります。
板金部材の性能の違い
屋根の内部に取り付ける板金部材の構造に大きな違いがあります。
一部の商品はスレート屋根やアスファルトシングルとほとんど変わらない形状をしています。
板金部材の止水性能(止水構造)は屋根の性能と大きく関わるため、屋根内部に雨水が侵入しにくい板金部材の屋根をおすすめしたいです。
棟下地の取り付け方法の違い
屋根の棟板金の下地の処置の方法は2パターンあります。
直接屋根に穴を空けて下地を取り付ける方法です。
もうひとつは、日本の金属屋根のように屋根に穴を空けずに下地を取り付ける方法です。
当然、後者の方が止水性に優れています。
伊藤忠建材のスカイメタルルーフは屋根に穴を空けずに棟板金を仕上げる屋根材です。
耐候性(色あせ)
この写真の屋根は、元は緑色の屋根でした。
一部の商品でこのような色あせを確認を確認しています。
石の剥落(はくらく)
一部の商品では石の剥落が収まらない商品があります。
石の接着不良が原因で、見た目だけではなく雨樋やバルコニーの排水機能にまで悪影響が及ぶことになります。
石粒の大きさ
石粒付き金属屋根の石は、天然石を砕石したもの、砕石した石をセラミックコーティングしたもの、2種類あります。
製造国によって、石粒の大きさも若干異なります。
石の種類 | 石の大きさ |
---|---|
砕石仕上げ | 比較的大きい |
セラミックコーティング | 比較的小さい |
横ジョイントのすき間
経年劣化や施工不良、ジョイント部の足の踏み入れ等の影響で屋根と屋根の横のジョイント部にすき間ができている屋根を街中でよくみかけます。
すき間が生じやすい商品があります。
屋根の内部に雨水が入り込む恐れがあるため、注意が必要です。
通気性能
空気層があるだけでは、十分な断熱効果は得られません。
石粒付き金属屋根には、通気が確保できる商品とできない商品があります。
石粒付き金属屋根のデメリット
日本製の断熱材一体型金属屋根との違いを中心に、石粒付き金属屋根のデメリットを主に4点ご紹介します。
屋根の継ぎ目が多い
一番大きなデメリットは屋根の継ぎ目が多いことです。
日本製の金属屋根は1mあたり約3mですが、石粒付き金属屋根は約1.3mです。
一般的に金属屋根は継ぎ目は少ないほど止水性能が高くなります。
そして、屋根を固定するビスや釘の数も少なくなります。
日本製の金属屋根であるスーパーガルテクトは横のジョイント部に雨水が入りにくい発明が認められ、
「日本弁理士会会長賞」を受賞しているほど雨水が屋根内部に入るリスクが低いです。
断熱効果は期待できない
下記はデクラ屋根のウェブサイトからの報告です。
米国エネルギー省の研究に特化した評価の高い研究所である オークリッジ国立研究所 (ORNL) は、 DECRA の石でコーティングされたスチール製屋根が卓越したエネルギー節約と卓越した熱性能に貢献するという信頼できる検証を提供する研究を完了しました。
アスファルトシングルと比較して、赤外線遮断顔料を含む DECRA クールルーフカラー(グレーなどの淡い色)は、熱流を 15% 削減しました。
通気を取り付けた換気により、熱流が 30% 減少しました。
デクラ屋根の断熱性能はアスファルトシングルよりも15%改善(通気層を設けることで30%程度改善)する程度です。
大きな改善効果があると評価ができない数値です。
実際の世界的企業が公開している研究結果と、日本の宣伝内容に隔たりがあります。
陶器瓦と同等の断熱効果が本当にあるのでしょうか?
陶器の瓦は空気層が厚く瓦自体も分厚く、そして通気も確保できます。
一方、石粒付き金属屋根の一部商品は空気層がほとんどなく、金属で熱も伝わりやすく、通気もできず塞がります。
板金部材のラインナップが少ない
日本製の金属屋根は屋根材以外の板金部材のラインナップが豊富です。
たとえば、屋根カバー工法の際に採用したいセットバックタイプの軒先板金が石粒付き金属屋根ではありません。
雨どいへの排水設計を含む止水性能の構造という点では、日本製の金属屋根が優れています。
テイガクにおける金属屋根の品質評価基準
テイガクは屋根専門の工事会社です。
屋根材はメーカーや商品ごとに全く性能が異なります。
屋根本体よりも重要といえる板金役物の性能や施工方法も全く異なります。
テイガクでは、屋根材を評価する指標を独自に設け、公正に屋根材を評価しています。
今回取り上げた屋根材すべて、手に触れており、多くが施工実績もある屋根材です。
特に人気が高い金属屋根の評価基準を下記に示します。
23年間20,000棟の工事実績による評価基準です。
金属屋根の品質評価指標
1:メッキ鋼板の質
2:板金役物で用いるメッキ鋼板の質
3:ケラバ水切りの止水構造
4:軒先板金の止水構造
5:棟板金下地(下り棟)の取付構造
6:雨押え板金下地の取付構造
7:各役物板金の折り曲げ回数と長さ
8:本体篏合部の折り曲げ数
9:本体篏合部の深さ
10:本体横ジョイントの止水性能
11:屋根の継ぎ目の数(屋根1枚当たりの長さ)
12:屋根本体を固定する留め具の質(鉄釘orステンレスビス)
13:製造物の均質性
14:消費者への施工マニュアル公開有無と内容
15:換気棟の取付構造
16:記載されているカタログの信頼性
17:屋根本体の折り曲げ加工のしやすさ
18:実際の不具合報告
石粒付き金属屋根でよくある質問
A
お客様のご予算やご要望によって、ご提案する商品が変わります。
テイガク施工エリアにお住まい人は、テイガクの社員がサンプルをご用意して丁寧にご説明いたします。
お気軽にお問い合わせください。
A
日本製の断熱材一体型エスジーエル鋼板の屋根と比べると、日本製の屋根が優れているとテイガクでは評価しています。
A
現在、調査中です。お答えできかねます。