屋根瓦(陶器瓦・セメント瓦)の葺き替え方法と工事費用

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屋根瓦の葺き替え方法と工事費用 屋根瓦の葺き替え方法と工事費用

瓦には寿命があります。
高度成長期に建築された建物は、そろそろ葺き替えを検討する時期かもしれません。
地震や台風による被害も気になります。
しかし、瓦の葺き替え工事は高額です。
住宅リフォームでトップ3に入る高額工事です。
この記事では瓦の葺き替え工事、そのなかでも陶器瓦(日本瓦・洋瓦)とセメント瓦の葺き替えについて解説します。

屋根の葺き替えや費用に関する詳しい記事はこちらから

屋根の葺き替え

屋根瓦の改修方法

葺き替えと葺き直し

葺き替えとは、野地板(下地)を新しくする工事のことです。
屋根は新築時に近い耐久性能、あるいは優れた耐震性能を備えた状態になります。
最近は軽量で耐震性能の高い金属屋根に葺き替える機会が増えています。

葺き直しは、古い瓦を再利用して施工する工事のことです。
陶器瓦そのものは長寿命である一方、瓦は地震や台風時にズレることが多いです。
なお、葺き直しでは、瓦を固定している釘や銅線、漆喰を新しくします。
ひび割れなどがある瓦は、局所的に差し替えます。

【瓦屋根で適用される主な工事】

葺き替え 古い屋根を処分して新しい屋根に仕上げる工事
葺き直し 古い瓦を再利用して屋根を再施工する工事
棟瓦積み直し 屋根のてっぺんの棟瓦を積み直す工事
漆喰交換 棟瓦の漆喰を交換する工事
部分交換 割れた瓦を差し替える工事

葺き替えの方法

【Yotube動画】瓦屋根の葺き替え手順
17:12

【Yotube動画】瓦屋根の葺き替え手順

葺き替え手順(テイガクの施工現場より)

築35年の瓦屋根

築35年の瓦屋根。
耐震性の改善を目的に葺き替えることに。

棟瓦を取り外す

棟瓦を取り外します。
土で棟瓦を固定させる湿式工法が採用されています。
湿式工法は地震や台風で棟瓦が崩れやすいです。

廃材置き場に瓦を積み上げる

瓦を積み上げて保管する廃材置き場が必要です。
お客様宅の庭先をお借りしました。

足場に設置した昇降機で屋根材を上げ下げする

古い瓦をおろしたり、新しく葺く屋根材を持ち上げたりする昇降機を足場に設置させるスペースも必要です。

古い瓦をはがす

古い瓦をはがしていきます。
棟瓦と異なり、屋根瓦は乾式工法による釘打ちでした。

浅木を取り外す

乾式工法では、屋根瓦を固定させる桟木とよばれる木の棒が屋根に取り付けられています。
桟木を取り外します。

バラ板とよばれる野地板

屋根のルーフィングをはがしました。
画像はバラ板とよばれる野地板です。
バラ板の状態はかなり良好です。
バラ板は通気が取れるため、腐食がしにくく長寿命です。

バラ板の上に構造用合板を張る

古いバラ板の上に新しい野地板にあたる構造用合板を張ります。
構造用合板は耐震性能を高めてくれます。

構造用合板の上にルーフィングを敷く

構造用合板の上にルーフィングを敷きます。
田島ルーフィングのニューライナーを用いました。
ルーフィングもたくさん種類があります。

新しい屋根材を張った屋根

新しく屋根材を仕上げて屋根工事、完成です。

アイジー工業のスーパーガルテクト

屋根材はアイジー工業のスーパーガルテクトを使用しました。
スーパーガルテクトは屋根材1枚が3mと継ぎ目が少なくて済むだけではなく、継ぎ目の止水性が極めて高いです。
言うまでもないことですが、屋根材選びも大切です。

瓦の葺き替えで注意したいポイント

①土葺き屋根の下地調整

葺き土を処分する

屋根瓦が乾式工法ではなく、湿式工法の場合は、瓦の処分に加えて葺き土の処分が必要になります。

歪みを補正するため下地調整をする

土葺き屋根は屋根の重量がかなりあるため、屋根面が著しく歪んでいることが多いです。
そのため、屋根面を平坦にさせる「下地調整」の作業が必要になります。

②広小舞板金

すき間が生じた広小舞

屋根の野地板と外壁の取り合いに”すき間”が生じることがあります。
この部分を広小舞(ひろこまい)とよびます。
また、野地板の裏側は露出しているため、吹き込む雨水の影響で野地板の腐食が進行することがあります。

広小舞板金を取り付ける

野地板裏側の腐食とすき間からの雨水侵入を抑える広小舞板金を取り付けると高品質の屋根工事が実現できます。

③野地板は構造用合板12㎜

12㎜厚の構造用合板

野地板は構造用合板12㎜厚のものを使用します。
普通合板やコンパネ、べニア板はNGです、
9㎜厚も不適切です。
素人目線では見た目がどれも同じであるため、消費者は注意を払う必要があります。

瓦の耐用年数とメンテナンス時期

瓦の耐久性が高い理由

瓦屋根の耐久性が高いことはよく知られています。
理由は、屋根内部に通気層が確保できていること、下地である野地板も通気しやすいバラ板であることが大きな理由です。
スレート屋根や金属屋根は、屋根内部のいたるところに湿気による結露水が生じます。
結露水は屋根の防水シートであるルーフィングや野地板を痛める原因となります。

瓦屋根について

瓦屋根について

3種類の屋根材の耐久性能

陶器瓦

陶器瓦
耐用年数 50年
推奨のメンテナンス時期 35~45年
特徴
表面が釉薬でコーティングされた最も普及している瓦屋根です。表面がテカテカしており、色あせもしません。

いぶし瓦

いぶし瓦
耐用年数 40年
推奨のメンテナンス時期 30~40年
特徴
瓦の素地をそのまま生かした伝統的な瓦屋根です。一般的に陶器瓦よりは割れやすく耐久性が若干、劣ります。

セメント瓦

セメント瓦
耐用年数 35年
推奨のメンテナンス時期 25~35年
特徴
セメントを固めて成型加工された瓦屋根です。瓦よりも耐久性が低く色あせやすいため、コストパフォーマンスに劣るとみなされ、現在では製造されていません。

瓦の耐久性よりも施工法が問題

2020年、ガイドライン工法とよばれる瓦の固定方法が義務化されました。
釘やビスによる瓦の固定が義務化されるようになったかたちです。
法律が改正された背景には、瓦屋根の耐風性能の問題があります。
温暖化の影響で風の勢いが増しており、台風で瓦が飛ばされる被害が昨今、相次いでいます

また、耐震設計の基準も昔と現代では大きく変わっています。
現代建築では常識である「地盤調査」や「壁のバランスの検討」などは、考えられていなかったはずです。
瓦自体の耐久性は長期に及びますが、施工方法を現行基準に照らし合わせると、不適合である可能性があります。

葺き替え工事の価格・相場

葺き替え工事の費用の簡易計算式

テイガクの経験に基づく葺き替え相場

瓦から金属屋根に葺き替え

屋根面積×1.4~1.6+足場代20万円+消費税

土葺き屋根から金属屋根に葺き替え

屋根面積×1.9~2.1+足場代20万円+消費税

国土交通省「瓦屋根の改修ってどのくらいかかるの?」より

国土交通省が監修した瓦屋根の改修工事価格の計算式は、下記の通りです。

瓦から瓦の葺き替え費用

屋根面積×17,500円/㎡+棟長さ×6,500円/m

屋根面積の求め方

屋根面積は「建物の投影面積×1.15倍」で求めることができます。
テイガクでは屋根面積を求めるスマートアプリを作成したので、アプリでおおよその面積を知ることもできます。

瓦の葺き替え金額をモデル計算

建物イメージ

建物イメージ

屋根面積 100㎡
屋根面 6面
既存屋根材 陶器瓦(乾式工法)
使用屋根材 断熱材一体型エスジーエル鋼板
工事項目 単価
瓦撤去・処分 300,000円
野地板張り 300,000円
ルーフィング 100,000円
金属屋根本体張り 650,000円
板金役物 200,000円
搬入搬出・諸経費 100,000円
消費税 165,000円
合計金額(税込) 1,815,000円

瓦葺き替えの補助金

瓦屋根の耐震性能もしくは耐風性能向上を目的にした改修は、補助金事業の対象になる可能性があります。
たとえば、土葺き屋根の改修工事は補助金がでる可能性が高いです。
補助金事業は市区町村が窓口の場合が多いです。
詳細はお住まいの市区町村の担当課にお尋ねください。

火災保険の利用

風による被害が原因による瓦のズレなどは、火災保険が利用できる可能性があります。
申請から保険金の支払いは、消費者の人が思っているより簡単です。

屋根瓦の葺き替えメリット

耐震性の向上

屋根の重さは住宅の耐震性能と深く関わります。
重い瓦の屋根を軽い金属屋根に葺き替える工事は、耐震性能の改善効果が得られます。
大幅に屋根の重さを軽くすることができます。

陶器瓦屋根の重量

項目 重量
古い野地板 10kg/㎡
古いルーフィング 1kg/㎡
瓦屋根 60kg/㎡
1㎡あたりの屋根の重量 71kg/㎡

土葺き屋根の重量

項目 重量
古い野地板 10kg/㎡
古いルーフィング 1kg/㎡
瓦屋根 60kg/㎡
葺き土 35kg/㎡
1㎡あたりの屋根の重量 106kg/㎡

金属屋根に葺き替えた場合の重量

項目 重量
古い野地板 10kg/㎡
古いルーフィング 1kg/㎡
新しい野地板 10kg/㎡
新しいルーフィング 1kg/㎡
金属屋根 5kg/㎡
1㎡あたりの屋根の重量 27kg/㎡

アイコン テイガクで多いお客様のパターン

高齢の方の一人暮らしの改修工事が増えています。
住宅の老朽化で地震による倒壊を心配されたお客様のご子息からのご相談が多いです。

どの屋根材に葺き替えるか?

おすすめの屋根材

1.断熱材一体型エスジーエル鋼板

断熱材一体型エスジーエル鋼板
素材 エスジーエル鋼板
本体工事価格 6,000~8,000円/㎡
重量 5kg/㎡
製造国 国産
工事会社 板金工事会社

断熱材一体型エスジーエル鋼板の屋根は、葺き替え工事をおこなう際にはじめに検討したい屋根材です。
ガルバリウム鋼板の3倍超の耐久性が認められている高品質鋼板であるエスジーエル鋼板、屋根裏の熱を大幅に抑制する断熱材が組み合わされています。
輸入品ではない国産の屋根は1枚当たりの長さも3mあり、屋根の継ぎ目を少なくして屋根を仕上げることができます。
継ぎ目は少ないほど雨漏りリスクが抑えられます。

2.ルーガ

ルーガ
素材 ハイブリッドPIF
本体工事価格 7,500~9,000円/㎡
重量 20kg/㎡
製造国 国産
工事会社 板金工事会社/瓦工事会社

瓦風に成型された高耐久高意匠の屋根材です。
ハンマーを落としても割れず、塗膜は色あせしない無機塗料が用いられています。
販売から20年近く経過し、屋根材としての評価は確立しています。

3.平板瓦

平板瓦
素材 陶器瓦
本体工事価格 7,000~8,500円/㎡
重量 20kg/㎡
製造国 国産
工事会社 瓦工事会社

瓦から瓦への葺き替え工事も選択できます。
ガイドライン工法が義務化されたことにより、最近の瓦屋根は耐風性に優れています。
また、瓦そのものの軽量化技術も発展し、従来の瓦よりも1割~2割程度、軽くなっています。

安さを重視した屋根材

4.立平葺き

立平葺き
素材 ガルバリウム鋼板
本体工事価格 5,000~6,500円/㎡
重量 5kg/㎡
製造国 国産
工事会社 板金工事会社

コストを抑えたい場合は、縦葺きの金属屋根がおすすめです。
芯木を用いたない立平葺きが最近の縦葺き金属屋根の主流です。
オプションで断熱材付きの商品が選択できます。

5.石粒付き金属屋根

石粒付き金属屋根
素材 ガルバリウム鋼板
本体工事価格 5,500~7,000円/㎡
重量 6kg/㎡
製造国 輸入
工事会社 板金工事会社/瓦工事会社

海外でよく用いられている表面に石粒が付着したガルバリウム鋼板の屋根です。
石が付着しているため、他の金属屋根と異なり折り曲げ加工がおこないにくいです。
施工が比較的容易な設計となっているため、商品と工事価格共に割安です。

6.アスファルトシングル

アスファルトシングル
素材 アスファルト
本体工事価格 4,500~6,000円/㎡
重量 12kg/㎡
製造国 輸入
工事会社 板金工事会社/瓦工事会社

屋根表面に石粒が付着したアスファルト製の屋根材です。
石粒付き金属屋根同様、施工が簡単で海外で普及しています。
工事価格を重視する場合において、最も安い金額で工事ができる屋根材です。

瓦葺き替えの業者選び

葺く屋根材によって専門業者が変わる

葺く屋根材によって専門業者が変わる

屋根の工事会社は大きく2つに分けられます。
金属屋根の工事を得意とする板金工事会社と、瓦屋根の工事を得意とする瓦屋根工事会社です。
その一方、どんな屋根材でも工事ができるとアピールをする会社が少なくありません。
しかし、どんな屋根工事会社でもあっても、板金と瓦、どちらかの色が強いはずです。
消費者には板金工事と瓦工事、どちらが得意である会社なのか、見分ける能力が求められます。

板金工事会社

テイガク大阪中央工事センター
テイガク大阪中央工事センター

金属屋根への葺き替え工事は、板金工事会社に依頼することをおすすめします。
自社施工でかつ専門性の高い工事が期待できます。

【板金工事会社が施工する屋根材】

メインの屋根材 断熱材一体型金属屋根・縦葺き金属屋根
サブの屋根材 石粒付き金属屋根・スレート・アスファルトシングル・ルーガ

板金工事会社が施工する屋根は金属屋根でかつ長尺です。
原則、雨に濡れないよう室内で保管します。
長い屋根であることから、保管倉庫は大きく、天井高がある置き場を要します。
板金工事会社であるかどうかは、施設を見ることで判断ができます。

瓦工事会社

瓦工事会社

瓦屋根の工事は、瓦工事会社がおこないます。
瓦屋根の現場数が減少傾向にあるため、石粒付き金属屋根やスレート屋根の工事もおこなう機会が増えています。

【瓦工事会社が施工する屋根材】

メインの屋根材 瓦屋根
サブの屋根材 石粒付き金属屋根・スレート・アスファルトシングル・ルーガ

瓦は雨に濡れても問題がないため、屋外に保管します。
また、重量があるため、敷地の奥ではなく、道路側に瓦を並べていることが多いです。
道路から目立つところに瓦を積み貸せ寝ている光景が広がっていれば、瓦工事会社であると判断できます。

アイコン 所属する組合も違う

金属屋根工事を専門とする板金工事会社が集まる組合と、瓦屋根工事会社が集まる組合があります。
この2つの工事は、全くの異業種であるとも言い換えられます。

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