屋根リフォームの見積り書は、とても複雑です。
聞きなれない用語がたくさん見積り書内に記載されているはずです。
この記事では、素人でも分かるよう「屋根塗装」「屋根カバー工法」「屋根葺き替え」の見積り書でお抑えておきたいポイントを解説します。
目 次
閉じる見積り書を読み解くうえで抑えたいポイント
3つの屋根リフォームの特性
屋根リフォーム方法は大きく3つに分けられます。
「屋根塗装」と「屋根カバー工法」そして「屋根葺き替え」です。
3つの屋根リフォームは、それぞれ全く種別が違います。
たとえば、工事業者も変わります。
以下は、基本的なことなので、読者の方は是非、抑えておいてください。
工事内容 | 用いる資材 | 職人 | 工事会社 |
---|---|---|---|
屋根塗装 | 塗料 | 塗装職人 | 塗装会社 |
棟板金交換※ | 板金 | 板金職人 | 板金工事会社 |
屋根カバー工法 | 金属屋根 | 板金職人 | 板金工事会社 |
屋根葺き替え | 金属屋根 | 板金職人 | 板金工事会社 |
言うまでもないことですが、屋根塗装は塗装会社、屋根カバー工法や屋根葺き替えは板金工事会社に依頼すると工事費用は比較的安くなります。ハウスメーカーやホームセンターなどに依頼すると、中間マージンが含まれてしまうため、工事費用は割高になります。もちろん、塗装会社に屋根カバー工法などの金属屋根の工事を頼むと、割高になります。
こんな見積書には注意!
①適正価格ではない見積り書
上記の不適切な見積り書例は、屋根カバー工法の見積り書です。
ルーフィングとよばれる屋根の防水シートの単価が4,000円/㎡となっていて高額単価です。
一般的には1,000円/㎡前後です。
また、ルーフィングの商品名の記載がされていません。
ルーフィングは商品によって性能や価格が変わります。
25坪程度の戸建て住宅の屋根リフォームにかかる費用の目安を下記に示します。
工事 | 工事費用の目安 | 不適切な価格※ |
---|---|---|
屋根塗装 | 20~40万 | 60万円以上 |
棟板金交換 | 20~40万 | 60万円以上 |
屋根カバー工法 | 80~120万 | 180万円以上 |
屋根葺き替え | 110~150万 | 240万円以上 |
②一式表記の多い見積り書はNG
上記の不適切な見積り書例では、金属屋根の板金役物の数量が一式表示になっています。
見積り書は、細かければ細かいほど優れた見積り書と評価できます。
「長さや面積、数量に単価を掛け算」した金額表記が基本です。
「一式いくら」の金額表記が多い見積り書は不透明な点が多く残されており、お客様への配慮が足りない見積り書です。
屋根リフォームで失敗しないためには?
2~3社から見積り書をもらう
1社で工事を決定せず、最低でも2社から、見積り書をもらいましょう。
会社ごとに見積り書の内容は全く異なるはずです。
複数の見積り書を比較することで、見積り書の中身の理解が深まります。
リフォーム業者紹介サイトに頼らない!
インターネット上で、複数の塗装会社や屋根リフォーム業者を紹介してくれるサービス(マッチングサービス)を目に付く機会が増えています。
「無料紹介」を掲げていますが、実際は工事契約費用の10%程度をリフォーム業者が紹介サービス運営側に支払う仕組みになっています。
直接、塗装会社や板金工事会社に屋根のリフォームを依頼すれば、紹介料金の費用がかからずに済みます。
リフォームの見積り書に関する相談窓口に相談する
公益財団法人である「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」は、見積り書が適正であるか無料でチェックをしてくれます。
リフォーム業者の見積り書に不安を感じた人は、積極的に相談してください。
屋根塗装の見積り書はここに注目!
①屋根用塗料の種類
塗料は屋根に限らず、多種多様です。
屋根は外壁に比べて悪環境であるため、塗料の色あせスピードが速いです。
最低でも「ラジカル」グレード以上の耐候性の塗料を用いることをおすすめします。
見積り書に塗料のメーカー名と商品名の記載があれば、塗料のグレードが把握できます。
必ず塗料のメーカー名と商品名があるかチェックしてください。
屋根塗料のグレード | 色もちの目安 |
---|---|
ウレタン | 約5年 |
シリコン | 約8年 |
ラジカル | 約10年 |
フッ素 | 約12年 |
無機 | 約15年 |
②タスペーサーの有無
屋根がスレート屋根である場合、タスペーサーを取り付けの確認をしてください。
タスペーサーとは、スレート屋根にすき間を設けるための部材で、タスペーサーを取り付けることでスレート屋根内部に入り込んだ雨水を屋外へと排水させることができます。
タスペーサーを取り付けずに、スレート屋根のすき間を塗料の塗膜で塞いでしまうと、雨漏りリスクが高まります。
屋根塗装を2度以上おこなう際は、タスペーサー取り付けを強くおすすめします。
③棟板金交換の有無
もし屋根がスレート屋根や金属屋根である場合、屋根塗装よりも棟板金のメンテナンスの方が優先されます。
棟板金を留めている釘が浮いていないか、板金を支持する木下地が傷んでいないか、必ず確認をしてください。
棟板金は住宅で最も不具合が多い部位であり、台風が発生すると、風で飛ばされることがあります。
20年以上経過している屋根は、棟板金の交換も検討してください。
その他:ケレン作業の有無(金属屋根の場合)
金属屋根の場合は、屋根に錆が発生している可能性が高いため、錆を除去する作業をおこなったうえで、塗装をおこないます。
その他:保証内容
屋根塗装が原因で雨漏りが生じたり、屋根が傷んでしまったりすることがあります。
リフォーム業者がどこまで保証をしてくれるのか、その範囲について、確認をしておきましょう。
屋根塗装をしてはいけない屋根に塗装をするトラブル続出中!
2000年代前半に製造されたスレート屋根(アスベストが含まれていないスレート屋根)の多くは“ぜい弱”です。
そのため、絶対に屋根塗装をしてはいけません。
意味がないだけではなく、屋根を痛めてしまうため、屋根の寿命が短くなります。
割れやすい屋根であることを知っていて屋根塗装をすすめる業者もいます。
スレート屋根の種類や性能についても、学んでおきましょう。
金属屋根の見積り書はここに注目!
①防水シートの種類
防水シート(ルーフィング)は屋根からの雨漏りを防いでくれます。
たとえば、田島ルーフィング社の「ニューライナールーフィング」は。メーカーのカタログに「30年以上の耐久性」と記述されています。
一方、同社の「Pカラー」は10年経過したら機能低下が発現することがデータで示されています。
80年の耐久性が認められているウルト社の「ウートップ」などもあり、ルーフィングの種類は多種多様です。用いる商品によって耐久性能が全く異なります。
防水シートの商品名が記載されているか、必ず確認しましょう。
②金属屋根の種類
断熱材一体型のエスジーエル鋼板を用いた高耐久高断熱の日本製の屋根や、比較的安価な石粒付き金属屋根などがあり、金属屋根は多種多様です。
施工方法も、日本の屋根と外国の屋根は異なります。
テイガクが最もおすすめしている屋根材は、「断熱材一体型のエスジーエル鋼板の屋根」です。
どんな屋根材でどんな特徴があるのか、各屋根材の特徴を把握しておきましょう。
鋼板の耐久性 | 耐用年数 |
---|---|
エスジーエル鋼板 | 約35年 |
ガルバリウム鋼板 | 約30年 |
トタン | 約20年 |
断熱材の有無 | 屋根下地の裏面温度 |
---|---|
断熱材一体型金属屋根 | 約36度 |
石粒付き金属屋根(断熱材なし) | 約41度 |
③屋根をステンレスビスのビスで留め付け
屋根を留め付ける留め具にもこだわってほしいです。
筆者は20年経過した、横葺き屋根の雨漏りに遭遇したことがあります。
雨漏りの原因は、屋根を固定する留め具の錆が原因でした。
テイガクでは鉄製の釘を使用することを控えて、ステンレスビスで屋根を固定すること推奨しています。
④メーカー純正品の板金部材
メーカー純正品の板金部材を用いているか、確認しましょう。
画像は、スーパーガルテクトにコロニアルの棟板金が取り付けられた屋根です。
メーカー純正品の板金を取り付けずに施工された金属屋根をしばしば見かけることがあります。
メーカー保証にも関わる問題なので、メーカー純正品を用いるか確認しましょう。
屋根カバー工法時は屋根の反り上がりを抑えるケレバ板金がおすすめ(屋根カバー工法時)
屋根の端部をケラバとよびます。
ケラバにはケラバ板金とよばれる板金が取り付けられています。
ケレバ板金は屋根材よりも高い位置に取り付けられていて、屋根カバー工法時には古いケレバ板金を取り外さずに新しい屋根を張り上げます。
古いケラバ板金が残ったまま、新しい屋根が貼りつけられるため、屋根工事後、屋根が反り上がった仕上がりになってしまいます。
屋根の見栄えが悪いだけではなく、屋根の雨仕舞にも影響(影響はかなり低い)が及ぶため、屋根カバー工法時は古いケレバ板金を乗り越える形に設計された屋根カバー工法用のケラバ板金(幅広タイプのケラバ板金)が開発されています。
より美しく高い品質の屋根工事をお求めの人は、幅広タイプのケラバ板金をご利用ください。
⑤セットバックスターター(屋根カバー工法時)
屋根カバー工法後は、屋根の高さが屋根の厚み分、高くなります。
屋根から雨どいへ流れ落ちる雨水の排水機能に影響が生じます。
近年。温暖化の影響でゲリラ豪雨が降る機会が増えています。
屋根カバー工法時の軒先箇所は、セットバックスターターを採用しましょう。
⑥板金下地の材質
棟板金は風で飛ばされることが多く、板金の裏側に木下地を用いていることが主な原因です。
屋根リフォーム業者の中には、樹脂や金属など、木に頼らない下地を提案する業者も近年、増えてます。
テイガクでも、金属下地をオリジナルで開発し、2024年現在、お客様に提案をしています。
金属屋根の下地材が何であるかを確認しましょう。
⑦換気棟の取り付け
屋根裏の暖かい湿った空気を屋外へと放出してくれる換気棟を取り付けることで、屋根の耐久性が上がり、室内も快適になります。
⑧メーカー純正品の雪止め金具
近年、メーカー適合品ではない雪止め金具を用いたことが原因の雨漏りが増えています。
画像は、スーパーガルテクトにコロニアルの雪止め金具を取り付け屋根です。
設計が異なる(雪止め金具の形が屋根と適合しない)ため、毛細血管現象で雨水が屋根内部に入り込み、将来的に雨漏りを引き起こすリスクが高まります。
その他:構造用合板12㎜(屋根葺き替え時)
屋根葺き替え時は、屋根の下地材である構造用合板を用いて張り直します。
屋根の下地に用いる板材は、何でもよいわけではありません。
コンパネや普通合板は避けて、しっかりを屋根材を留め付けることができる構造用合板を用いましょう。
その他:下地調整の必要性の検討(土葺き屋根の葺き替え時)
屋根が土葺き屋根である場合、屋根の重量の影響で、屋根面が歪んでいるはずです。
歪んだ屋根に対して安定した屋根の張り付けはできません。
そのため、屋根面がフラットになるよう下地調整とよばれる工事を土葺き屋根では取り入れます。
下地調整をおこなわないと、屋根面がたわんでしまうため、将来的な屋根の機能維持に悪影響が及ぼされます。
屋根材ごとの屋根工事に流れについてもっと詳しく知る
このページでは、主に「屋根塗装」「屋根カバー工法」「屋根葺き替え」の各見積り書で抑えて欲しいポイントを解説しました。
屋根リフォームの中でも金属屋根の工事は、読者の人が思っている以上に複雑です。
それぞれの屋根材の製品特徴、施工上で注意したいことなどを理解したうえで屋根工事にのぞんでください。