サイディングには「横張り」と「縦張り」とよばれる張り方があります。
言葉通りそして見た目通り、これらはサイディング材を横に張るか縦に張るかの違いで呼び名が変わります。
窯業サイディングでは「横張り」がほとんどです。
しかし、金属サイディングでは「縦張り」で張るケースが増えています。
それでは、どちらを選べばよいのでしょうか?
またこれらはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
この記事では、金属サイディングの「横張り」と「縦張り」について、それぞれの特徴を解説します。
横張りと縦張りの違い
工事価格や性能が変わる
一般的な金属サイディングのサイズは幅40cm×長さ4mです。
これを横方向に張る商品を横張りサイディングとよび、縦方向に張る商品を縦張りサイディングとよびます。
なお、横にも縦にも張ることができる兼用商品もあります。
横に張るか縦に張るかで見た目が大きく変わります。
しかし、実はデザインだけではなく、張り方によって工事価格や外壁性能が変わります。
なにより、メンテナンスの仕方も大きく変わります。
1番の違いは胴縁の横と縦
横張りサイディングと縦張りサイディングを比較する前に、知っておいて欲しいことがあります。
それは横張りサイディングの場合は胴縁(どうぶち)を縦に取り付け、縦張りサイディングの場合は胴縁を横に取り付けることです。
胴縁とはサイディングの裏に敷く下地材です。
サイディングと下地につかう胴縁が逆方向になります。
一般住宅では幅45センチ、厚み1.8センチの木製胴縁をつかうことが多いです。
胴縁はサイディングを固定する役割だけではなく、通気層を形成する役割もあります。
わずか1.8センチの厚みが建物の断熱性と耐久性を改善させ、雨漏り被害を抑える効果をもたらせてくれます。
私たち外壁工事業者は縦方向に取り付ける胴縁を縦胴縁(たてどうぶち)とよび、横方向に取り付ける胴縁を横胴縁(よこどうぶち)とよびます。
結論を先にいうと、基本的に胴縁は横胴縁より縦胴縁が優れています。
優れているというより、不具合がおこりにくいという表現が正しいかもしれません。
構造的に下地の腐食が起こりにくく、雨漏りも生じにくいです。
【動画】金属サイディングの縦胴縁(どうぶち)取り付け
サイディングの種類 | 胴縁(どうぶち) |
---|---|
横張サイディング | 縦胴縁 |
縦張りサイディング | 横胴縁 |
もちろん、胴縁の違い以外にも注目して欲しい点があります。
より深く横張りと縦張りの違いについて解説します。
横張りサイディングの特徴
縦胴縁(たてどうぶち)は通気が機能しやすい
横張りサイディングを張るには下地にあたる胴縁は縦方向へ取り付けなければ張れません。
「縦胴縁」は、通気の点で有利に働きます。
空気は温まると上昇することから、下から上へと移動して排気されます。
その一方、雨水が入り込んだ場合は上から下へと流れて排出されます。
縦胴縁であればスムーズに空気と水が移動し、流れが遮られません。
つまり通気が機能しやすい構造です。
デザインの種類が多い
横張りサイディングは、ポピュラーな施工方法だけに種類もたくさんあります。
特に窯業サイディングでは9割以上が横張りサイディングの商品です。
デザインやカラーなど、バリエーションが豊富で、好みのものが見つけやすいです。
工事価格が安い
一般的に横張りサイディングは、縦張りサイディングよりも工事価格が安いです。
理由は横張りサイディングは1人でも施工ができるからです。
人件費を抑えることができます。
また施工に慣れた職人さんが多いことも、条件として有利です。
継ぎ目が縦で多くなる
サイディング本体を横方向に張り重ねていくため、継ぎ目(目地)は縦方向に通ります。
窯業サイディングの場合は縦の継ぎ目にシーリング、金属サイディングの場合は縦の継ぎ目に金属キャップを取り付けます。
ほとんどのケースにおいて、縦張りに比べて横張りは継ぎ目が多くなります。
継ぎ目が原因の不具合やシーリングの打替え費用などが負担になります。
縦張りサイディングの特徴
横胴縁(よこどうぶち)で通気が機能しにくい
縦張りサイディングでつかう横胴縁は縦胴縁と比べて、通気が不利に働きやすいです。
現行の施工マニュアルでは横胴縁で施工をする際、胴縁と胴縁の間隔を3センチ以上、通気のためのすき間を設けます。
しかし、この3センチというすき間は今から約20年近く昔に設定された間隔であり、十分な通気が確保できず胴縁の木が腐ってしまうのではないかという議論がしばしばなされています。
通気溝胴縁のススメ
胴縁に溝を設けた通気溝胴縁横胴縁だからダメという(つうきみぞどうぶち)を用いれば、横胴縁が通気の妨げになりにくく、通気が取りやすくなります。
また、横胴縁の長さを1.8メートルから90センチにして通気の数を増やす方法も効果あります。
横胴縁だからダメではなく、手間や費用をかければ対策を講じることもできます。
安心してください。
デザインがシンプル
縦張りサイディングは、おおむねデザインがシンプルな商品ばかりです。
スパン系とよばれる飽きの来ないデザインが若い人を中心に人気を博しています。
しかし、一歩間違えてしまうと工場の外壁のような味気がない雰囲気になってしまいます。
玄関ドアは木製にしたり、2色使いをしたりなど工夫をこらすことが多いです。
継ぎ目が少ない
縦張りサイディングの継ぎ目(目地)は横方向に通ります。
そのため、必要なシーリング量やキャップ量が横張りサイディングに比べてかなり少なくなります。
また、縦張りサイディングは長尺商品として特別加工して張ることが可能です。
たとえば2階建ての外壁の場合、4メートルの長さを5.5メートル(長尺)にすることで、継ぎ目のないすっきりとした外壁にできます。
もちろん、不具合やメンテナンスの機会を低減できます。
横張りと縦張りどちらがいいのか?
横張りと縦張りそれぞれのメリット・デメリットについて解説しました。
それでは横張りと縦張りどちらがいいのでしょうか?
答えは「お客様好みのデザインや価格で選択してください」。です。
外壁のデザインは住宅の意匠を決定づける最も重要な要素です。
悩んで後悔するより、気に入ったデザインやカラーを優先するほうがよいでしょう。
ただし、適切に施工をすることが大前提です。
特にリフォームでサイディングを張る工事をおこなう場合、お客様はサイディング施工業者を選択できる立場となります。
サイディングの施工実績が豊富な業者に工事を依頼してください。