サイディングが広く普及したのは1990年代の後半です。
しかし、当時のサイディングと現在のサイディングはまったく違うサイディングといっていいほど違います。
昔のサイディングはひび割れや塗膜の膨れなどの不具合が起こりやすいです。
現在の基準に当てはめると不適合な製品と施工方法です。
時間の経過とともにサイディングの製造方法や施工方法は大きく違っています。
たくさんある中で不具合を呼び起こす最大の問題がサイディングの直張り(ぢかばり・ちょくばり)です。
サイディングに不具合が生じる原因を塗膜の劣化にしたがる人が多いです。
しかし、外壁塗装をしたところで根本的な解決には至りません。
直張りサイディングは外壁外部ではなく、外壁内部や外壁自体の問題だからです。
今回は直張りサイディングの問題点を中心に、直張りサイディングの適切なリフォーム方法を解説します。
注)このページは主に窯業(ようぎょう)サイディングの直張り工法および外壁通気工法に関するページとなります。
昔のサイディングと今のサイディングの違い
異なる点 | 昔 | 今 |
---|---|---|
サイディング張り方 | 直張り工法 | 外壁通気工法 |
サイディングの厚み | 12㎜ | 最低14㎜/平均16㎜ |
サイディングの留め方 | 釘打ち | 金具留め(釘打ち可) |
防水シート | アスファルト (湿気を通さない) | 透湿防水シート (湿気を通す) |
サイディングの製造方法 | 抄造法(しょうぞうほう)など | オートクレーブ養生 |
目 次
傷んだサイディングの動画
傷んだサイディング
直張りサイディングとは
外壁にサイディングを張る方法は2種類あります。
直張り工法(ぢかばり/ちょくばりこうほう)と、外壁通気工法(がいへきつうきこうほう)です。
サイディングの裏側に空気が通る通気層(空気層)を設けるか設けないかがポイントです。
直張り工法は通気層を設けない工法、外壁通気工法は通気層を設ける工法です。
直張り工法で施工されたサイディングのことを、直張りサイディングや直張り(ぢかばり/ちょくばり)とよびます。
直張りサイディングの構造
柱にサイディングをそのまま打ち付ける工法
直張りサイディングは、木造住宅の柱もしくは柱に張り付けた耐力壁(耐力面材)に防水シートを張り、その上にサイディングを張った構造です。
北海道を除く1990年代には一般的に採用されていた施工方法です。
この工法の問題は湿気による結露です。
サイディングの裏側には隙間がないため、湿気が入り込んでも逃げ道がありません。
外壁の裏側で結露が生じ、結露水がカビや木材を腐らせる原因をつくってしまいます。
気密の悪い箇所は壁内結露を引き起こします。
とくにお風呂場近くは外壁が著しく劣化していることが多いです。
サイディングや建物の寿命が短くなり、健康を損なうことにもなります。
資産価値がゼロになるばかりか、最悪の場合、大掛かりな改修費用がかかることもあります。
外壁通気工法の構造
【動画】外壁通気工法の構造について
外壁通気工法の構造について
胴縁を取り付けて胴縁の上にサイディングのパネルを張る工法
外壁通気工法は、木造住宅の柱もしくは柱に張り付けた耐力壁(耐力面材)に防水シートを張ります。
ここまでは直張りサイディングと同じです。
外壁通気工法では柱があるところに厚み約15mmの胴縁(どうぶち)とよばれる木材を取り付けます。
胴縁にサイディング張り付けます。
そのことによって、防水シートとサイディングの間に通気層ができます。
この施工方法が外壁通気工法です。
湿った空気を外に逃がしてあげる
ただ単に胴縁で通気層を確保するだけではいけません。
通気層のなかで湿気を伴った空気がとどまらないよう、空気を循環させることも大切です。
そのためには、基礎上部に土台水切りとよばれる板金で「すき間」をもうけ、屋根の軒裏や棟部などに「換気口」をもうけます。
湿気が通気層の下から上へと通り抜け、屋外へ排出されます。
こうすることで、サイディングの裏側に発生する結露を抑えられます。
直張りサイディングの調べ方
直張りサイディングであるかどうかは、築年数でだいたい分かります。
1990年代に建築された建物の多くが直張りサイディングです。
以下の動画も参考にしてください。
直張りサイディングの確認方法
【窯業サイディング】直張りサイディングの確認方法
直張サイディングのリフォーム方法
外壁塗装
直張りサイディングに外壁塗装はおすすめしません。
湿気による塗膜不良が起こりやすいことはもちろんですが、結露の影響でサイディングがすでに傷んでいるからです。
サイディングの厚みが12㎜、釘打ちであればなおさらです。
外壁塗装をおこなうついでにクラック(ひび割れ)を埋めても、それは単なるごまかしです。
これから大きな地震がきたら、釘やシーリングまわりにひび割れが生じるはずです。
それでは外壁塗装をする意味がありません。
直張りサイディングの対策として、透湿機能のある塗料で塗り替える方法をすすめる業者がいます。
むしろ、ほとんどのリフォーム会社が透湿機能を口実にして、外壁塗装をすすめているように思えます。
透湿塗料とは、雨水を通さず湿気のみを通す塗料です。
サイディングが含んだ湿気は徐々に抜けるため、湿気が影響で塗膜が剥がれることを抑制します。
ただし、通気層がなく結露が生じやすい環境であることに変わりはありません。
機能性の高い外壁塗装をおこなっても、結露防止効果は期待できにくいと大手塗料メーカーも見解を示しています。
透湿性塗料による塗装は、大きなリスクを抱えたままのリフォームになる覚悟はしておきましょう。
中には直張りサイディングであることを知らせず、黙って営業をおこなう塗装業者もいます。
直張りサイディングに外壁塗装をどうしてもおこないたい場合は、塗装業者が発行する保証期間と保証免責は必ず事前確認してください。
透湿性がある外壁用塗料で塗り替えると、室内の結露防止効果を期待できますか?
透湿性があると、外壁素地に含まれる湿気を逃がしやすいため、塗膜の膨れが起こりにくくなります。
当社の外壁用塗料には透湿性がありますが、室内の結露は、外壁の断熱構造にも左右されるため、透湿性が高い塗料で外壁を塗り替えたとしても、結露防止効果は期待できにくいと考えられます。
出典: 日本ペイント
外壁カバー工法
外壁カバー工法は古いサイディングに金属サイディングを張るリフォーム方法です。
コロニアル(スレート)屋根でよくおこなわれていますが、最近は直張り窯業サイディングでもよくおこなわれています。
性能面とコストパフォーマンスに優れた工事です。
外壁カバー工法では、金属サイディングを張る前に胴縁を取り付けて空気層を確保させることが常識になっています。
湿気による結露の悪影響が低減し、断熱性能や遮音性能が改善されます。
外壁塗装に比べると、格段に快適に生活ができるようになります。
雨漏りが生じている場合は、防水シートを貼ってから外壁カバー工法をおこなうと外壁からの雨漏りが改善します。
もちろん、通気層を設けるだけでも雨漏り対策になります。
また、厚化粧のように塗りつぶされた外壁塗装とは違って、外壁全体の外観が新築同様になります。
スパン系の外観やタイル調、レンガ調など様々な柄を選べます。
ただし、外壁のコンディション次第では張り替えになることがあります。
外壁の張り替え
サイディングの張り替えは最終手段です。
サイディングに著しい歪みや反りが生じていたり、壁内結露で断熱材や柱に著しい劣化の進行が確認できれば張り替えをおこないます。
壁内のコンディションを確認することがきるため、根本的な問題を解消できる意味では最も望ましい外壁のリフォーム方法です。
ただし、廃材処分費と手間がかかるため、工期が長くなり、コストがかかるデメリットがあります。
直張りサイディングは外壁カバー工法
世の中には外壁塗装の会社さんが多いため、外壁のリフォームは外壁塗装をすすめられることが多いです。
そのため、サイディングは塗装をするべきもの、塗装しか方法がないものだと思い込んでいる人が多いです。
インターネットの世界も同じことがいえます。
「サイディングのリフォーム=外壁塗装」の世界が造り上げられています。
外壁塗装には100万円程度、費用がかかります。
本当に100万円を支払う価値はあるのでしょうか?
基本的に直張りサイディングのリフォームは金属サイディングのカバー工法を検討をしてほしいです。
金属サイディングのカバー工法をおこなう会社は塗装会社ではなく板金工事会社です。
外壁塗装では得られないメリットをしっかりと板金工事会社から説明を受ければ、金属サイディングのカバー工法が最も適切な工事であると納得いただけるはずです。