ガルバリウム鋼板の屋根や外壁が人気です。
ガルバリウム鋼板は決してパーフェクトな建材ではありません。
それでも人気なのは、他の建材と比べて優れている点がたくさんあるからです。
その一方で改良型ガルバリウム鋼板であるエスジーエル鋼板(SGL鋼板)の評価も高まっています。
このページではガルバリウム鋼板のメリットやデメリット、寿命、メンテナンス方法についても詳しく解説します。
目 次
閉じるガルバリウム鋼板の特徴
ガルバリウム鋼板とは?
ガルバリウム鋼板とは、ガルバリウムという合金でメッキされた鉄のことです。
JIS規格における正式名称は「55%アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板」です。
メッキとは、金属の膜(まく)のことで、電気や熱の力を利用して鉄などの金属にメッキの膜を被せます。
メッキは金属が腐食しないよう守ってくれます。
ガルバリウム鋼板の中心部は鉄(鋼板)です。
厚みは0.35~0.8mm程度です。
ガルバリウムのメッキで鉄の鋼板が覆われているため、「ガルバリウム鋼板」とよばれます。
身近にあるメッキ鋼板
メッキ鋼板はガルバリウム鋼板だけではなく、わたしたちの身の回りにたくさんあります。
トタンやブリキもガルバリウム鋼板と同じく鉄の表面を処理した鋼板です。
身近なメッキ鋼板の例
名称 | メッキの素材 | 主な用途 |
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ブリキ | スズ | 缶 |
トタン | 亜鉛 | ダクト |
ガルバリウム | 亜鉛+アルミ+シリコン | 屋根と外壁 |
エスジーエル | 亜鉛+アルミ+シリコン+マグネシウム | 屋根と外壁(将来の主流) |
クロム | クロム | 蛇口 |
ガルバリウム鋼板の耐久性
ガルバリウム鋼板の耐用年数はおよそ25年から35年です。
ガルバリウム鋼板は錆びからはじまる穴空きさえなければ、40年以上の耐久性の維持も十分に期待できます。
長く使い続けるには錆びのメンテナンスを定期的におこなってください。
断熱材一体型の商品
ガルバリウム鋼板の厚みは0.35mm~0.5mmが多いです。
1mmにも満たない薄い鋼板のため、断熱性と遮音性に劣ります。
トタンが「暑い」や「うるさい」といったクレームは、薄い鋼板をそのまま用いられていることが背景としてあります。
しかし、現在のガルバリウム鋼板は、屋根と外壁共に鋼板の裏側に断熱材を貼り付けた「断熱材一体型」の製品が主流です。
断熱材があるおかげで、従来の問題点であった断熱性や遮音性が大幅に改善されます。
特に断熱性については、他の主流の外壁材(窯業サイディング)や屋根材よりも優れています。
断熱材一体型金属屋根の断熱効果について
ガルバリウム鋼板のメリットとデメリット
ガルバリウム鋼板のメリット
ガルバリウム鋼板をひとことで表すと「耐震性や耐久性、価格を総合的に比べると最もバランスの取れた素材」です。
コストパフォーマンスに優れた外壁材と屋根とも言い表せます。
もちろん、細部に至るまで建材の良し悪しを比較すれば、ガルバリウム鋼板が他の建材よりも劣る点も存在します。
また、断熱性や遮音性を期待するのであれば、割高な断熱材一体型のガルバリウム鋼板製品の使用が必要でもあります。
ガルバリウム鋼板のデメリット
沿岸部や工場、森林近くでガルバリウム鋼板を用いると、錆びるリスクが高まります。
衝撃で凹みやすい性質でもあります。
価格面では窯業サイディングの外壁やスレート屋根と比べると高価です。
そして、断熱材一体型の製品の施工は専門的な板金技術を必要とし、特定の板金工のみが施工できるという制約もあります。
ガルバリウム鋼板のメリットとデメリットは、「価格」「耐久性」「断熱性」「メンテナンス性」「施工性」「耐震性」「耐風性」「デザイン性」などをよく比較検討したうえで、ご自身で判断してください。
リフォームだけではなく新築でも
リフォームでは独占状態
画像中央の アイコンを左右に移動すると、画像の比較ができます
屋根と外壁のリフォーム分野において、ガルバリウム鋼板は、ほぼ独占的な地位を占めています。
その背景には、「屋根カバー工法」および「外壁カバー工法」の利便性が挙げられます。
屋根カバー工法とは、古いコロニアルの上にガルバリウム鋼板の屋根を重ねてリフォームする方法です。
外壁カバー工法も同様の工事方法です。
これらは、軽量だからこそできるガルバリウム鋼板ならではのリフォーム工法で、仕上がりは外壁塗装とは異なり、新築に近い仕上がりを実現できます。
古い屋根や外壁を取り外し処分する費用や工事期間を抑えることができることから、カバー工法はリフォームにおける有用な手段として急速に普及しました。
新築の屋根
ガルバリウム鋼板に代表される金属屋根は新築分野でもシェアが拡大傾向です。
金属屋根は従来のトタンからガルバリウム鋼板に置き換わり、長い年月と実績数を経て評価が確立しました。
2017年以降、金属屋根はこれまでトップだった瓦やスレート屋根を抜き、トップシェアを維持しています。
2021年屋根材市場調査 素材別シェア
金属屋根 | 63.2 |
スレート | 15.0 |
陶器瓦 | 13.4 |
アスファルトシングル | 5.6 |
石粒付き金属屋根 | 2.8 |
新築の外壁
新築の注文住宅分では、金属ならではのシンプルモダンな素材感を支持する人が増えており、ガルバリウム鋼板の外壁材の人気が高まっています。
2021年外壁材出荷量
金属サイディング | 13.3 |
窯業サイディング | 76.8 |
張り方で性能が変わるガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板の屋根
リフォームで多い「横葺き」
屋根のリフォームでは横葺き(よこぶき)の金属屋根が主流です。
屋根の傾き(流れ)に対して水平に張るタイプの屋根です。
横葺き屋根は、この後に説明する縦葺き(たてぶき)よりも断熱性能などの付加価値の高い商品が多いことや、複雑な屋根の形状でも施工ができるといった利点があります。
新築で多い「縦葺き」
屋根の傾きに沿った縦方向に仕上げられた屋根を「縦葺き(たてぶき)」とよびます。
昔ながらのトタン屋根は典型的な縦葺きの屋根です。
トタン屋根には「芯木(しんぎ)」と呼ばれる木の棒が内部に入っています。
最近の戸建て住宅の縦葺きは、「立平(たてひら)」とよばれる芯木のない形状が主流です。
工場や倉庫などの大型建築物では「折板(せっぱん)」とよばれる形状の屋根がよく採用されています。
縦葺きは横葺きよりも付加価値が低い一方で、施工にかかる日数が短くかつ材料費も安いメリットがあることから主に新築の建物で用いられています。
ガルバリウム鋼板の外壁
排水性能に優れた「横張り」
サイディングのような外壁材は、基本的に水平に張ります。(横張り)
理由は、ガルバリウム鋼板の外壁の裏側に組む下地に当たる胴縁(どうぶち)を縦に取り付けることができるからです。(縦胴縁)
縦に胴縁が取り付けられていると、外壁内部に入った雨水は胴縁の縦のラインに沿ってスムーズに排水できます。
デザインが人気の「縦張り」
多くの大型建築物は縦張りで外壁が仕上げられています。
そして、戸建て住宅も最近は縦張りが人気です。
理由はシンプルでモダンな印象が得られるからです。
アイジー工業が「スパン系サイディング」を開発してから、瞬く間に新築の戸建て住宅でもガルバリウム鋼板の外壁材が選択肢に含まれるようになりました。
ガルバリウム鋼板の錆び
錆びの悪影響
金属建材の最大の敵は錆びです。
一般的に錆びに強いとされているガルバリウム鋼板でも、例外ではありません。
錆びは「白錆び」「赤錆び」「黒錆び」の順に進行し、最終的には鋼板に穴が開きます。
ガルバリウム鋼板を長持ちさせるためには、錆びが発生しやすい環境を理解し、定期的なメンテナンスを行うことが重要です。
錆びやすい環境や錆びる原因
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鉄の留め具の水濡れ(電蝕)
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雨が当たらない場所
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海岸の近く
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工場の近く
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森林の近く
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勾配が緩い屋根
【要注意1】屋根材を固定する留め具
屋根材を留める部位に雨水や結露水が入り込むと、屋根を固定する釘もしくはビスが濡れてしまい、留め具やガルバリウム鋼板が錆びてしまうことが近年、問題視されています。
ステンレス製のビスで固定するなどの工夫が必要です。
【要注意2】雨水が当たりにくい外壁
全く雨水に触れない部位は錆びが発生しやすいです。
ガルバリウム鋼板の表面に付着した塵やその他の不純物が錆びを引き起こす可能性があります。
海岸や工場などの近くは注意
沿岸地域では塩害の影響を受け、工業地域では大気中の炭酸ガスの影響でガルバリウム鋼板は錆びやすくなります。
小枝や枯れ葉が水分を含むと酸性の木酢液(もくさくえき)が発生し、これもガルバリウム鋼板の錆びを引き起こします。
したがって、森林の近くなども注意が必要です。
さらに、屋根の勾配が緩いと、落ち葉や雪、ほこりなどが長期間滞留しやすいため、緩い勾配も注意が必要です。
20年近く経過したガルバリウム鋼板の状態は?
筆者が実際に確認した築18年が経過したフッ素塗膜のガルバリウム鋼板を観察した結果、所々に錆が発生していました。
しかし、錆が拡大する傾向は見られず、制御されているようでした。
ガルバリウム鋼板の錆びを過度に恐れる必要はありません。
エスジーエル鋼板と石粒付き鋼板
エスジーエル鋼板
日本では、ガルバリウムにマグネシウムを添加させた新しい鋼板が注目を集めています。
エスジーエル鋼板やZAM鋼板、スーパーダイマなどです。
いずれも高付加価値の製鉄技術を持つ日本製鉄やそのグループ会社が製造している鋼板です。
マグネシウムが含まれたメッキ鋼板は、ガルバリウムに比べて3倍以上の耐食性が認められています。
日本では屋根や外壁だけではく、土木や船舶に至るまでエスジーエル鋼板が主流になりつつあります。
ガルバリウム鋼板が一般的であるとは言え、時代とともに優れた素材が開発されています。
フッ素鋼板
フッ素塗膜が塗布されたガルバリウム鋼板は、長期間にわたる耐候性が期待できます。
しかし、2022年からフッ素原料の供給量の抑制がはじまっており、フッ素の屋根材と外壁材の価格は高騰もしくはラインナップ数の縮小する事態となっています。
石粒付き鋼板(ジンカリウム鋼板)
ガルバリウム鋼板の表面に石粒を付着させた鋼板があります。
石粒付き鋼板や天然石鋼板などとよばれ、主に屋根材として用いられています。
石粒付き鋼板は輸入品です。
韓国やニュージーランドで製造されています。
金属建材業界
製鋼会社と建材メーカー
製鋼会社がガルバリウム鋼板の原材料を元にガルバリウム鋼板を製造します。
製鋼会社が生産したコイル状の鋼板を、建材メーカーが屋根材や外壁材に加工して販売します。
韓国や中国で製造された建材を販売する輸入販売会社も存在します。
販売先(納品先)は板金工事会社です。
製鋼会社
ガルバリウム鋼板を製造する会社 |
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日本製鉄株式会社 |
JFEホールディングス株式会社 |
株式会社神戸製鋼 |
株式会社淀川製鋼所 |
ポスコ(韓国の会社) |
建材メーカーと輸入販売会社
ガルバリウム鋼板を加工して建材として販売する会社 |
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アイジー工業株式会社 |
JFEホールディングス株式会社 |
旭トステム外装株式会社 |
ケイミュー株式会社 |
福泉工業株式会社 |
東邦シートフレーム株式会社 |
日鉄鋼板株式会社 |
株式会社淀川製鋼所 |
YKK AP株式会社 |
外国で加工された屋根材を販売する会社 |
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株式会社リクシル |
伊藤忠建材株式会社 |
株式会社ディートレーディング |
株式会社ルーフタイルグループジャパン |
板金工事会社
ガルバリウム鋼板を取り扱う専門工事会社
板金工事会社は、ガルバリウム鋼板を用いた工事を専門とする職人である板金工を採用し、材料発注から工事管理まで一貫して行います。
新築あるいはリフォームでも、塗装会社やハウスメーカーが板金工を雇い入れすることはありません。
実際の工事は下請けの板金工事会社に外注されます。
これからガルバリウム鋼板の屋根や外壁工事を検討されている人は、直接、板金工事会社に依頼されることをおすすめします。
テイガクは板金工事会社です。
板金工事会社の見分け方
板金工事会社は金属屋根や金属サイディング、雨樋などを取り扱う制約上、大型倉庫を所有していなければ事業を営むことができません。
中でも日本製の金属屋根と金属サイディングは長さが長いです。
そのため、高い天井がある倉庫を所有している会社であるかで板金工事会社を探り当てることができます。
工事会社の住所をグーグルマップで検索して、板金工事であるかどうか判断しましょう。
同じ屋根でも瓦工事と金属屋根工事は、全く性質が異なる工事です。
瓦屋根は板金工事会社ではなく、瓦工事会社がおこなう工事であり、分業されています。
しかし、近年の瓦需要激減の影響があり、金属屋根の工事をおこなう瓦工事会社が増えています。
多くの瓦工事会社が取り扱う屋根材は、輸入品の石粒付きの金属屋根です。
石粒付きの金属屋根は短いため板金工事会社のような大型倉庫を必要とせず、施工が簡単で技術力も必要としません。
日本製の屋根材や外壁材を取り扱うことができることが板金工事会社の特徴ともいえます。
もちろん、瓦工事会社でも高度な板金技術が備わっていたり、大きな倉庫設備を所有していたりする会社は存在します。
ただし、提案する屋根材で板金工事会社であるかを推し量られることは、知っておいて欲しいです。
メンテナンスと保証
メンテナンス方法
屋根のメンテナンス
屋根のメンテナンスは屋根にのぼっておこないます。
屋根上の作業に危険が伴う場合は、ドローンや伸縮棒を用いて点検をします。
錆びの発生や釘、シーリングの状態を確認し、必要に応じて処置をします。
筆者の経験では、屋根面は雨水が汚れを落としてくれるため、屋根の錆びがもたらすリスクは低いと評価しています。
外壁のメンテナンス
外壁は立地条件に応じて年に数回の水洗いを推奨します。
雨が直接かからない部分のガルバリウム鋼板の外壁は、ホースを用いて表面のホコリや汚れを洗い流すことが有効です。
また、海岸地域や工業地域など錆びやすい環境にある場合は、クリーニングの頻度をさらに上げてください。
塗装によるメンテナンス
「ガルバリウム鋼板の屋根と外壁は塗装が必要」といった意見を聞きます。
もちろん、メンテナンスの頻度を高めればガルバリウム鋼板は長持ちします。
筆者は「色あせで見た目が気になること」や「錆びの拡大が認められること」がない限り、ガルバリウム鋼板の塗装はトタンと違って必要に迫れておこなうものではないと、評価しています。
「ガルバリウム鋼板は塗装をしなければ大変なことになる」や「10年に1回は必ず塗装をしなければいけない」といった表現には疑問を感じています。
ガルバリウム鋼板の保証
メーカー保証は長期保証が得られる
アイジー工業やニチハなどの外装材メーカーの建材は、製品保証が得られます。
ガルバリウム鋼板の場合、10年から25年の期間で保証される商品が多いです。
保証内容はメーカーや商品ごとに異なります。
たとえば、フッ素塗膜が塗布されたフッ素鋼板は、長期の色あせ保証が用意されています。
工事会社による工事保証
メーカー製品保証に加え、工事会社による工事保証も付保されるのが一般です。
施工品質に対する保証です。
保証内容は工事会社によって異なります。
言うまでもないことですが、メーカー保証よりも施工品質の保証の方が重要です。
テイガクでは業界最長の15年工事保証(条件あり)をお客様に用意しています。
自然災害による保証は免責
自然災害による不具合は、保証対象外となります。
たとえば、災害級の大雨や台風で雨漏りした場合、工事会社はその責任を負うことはありません。
建設業界では、技術力不足や手抜き工事がしばしば問題となっています。
そのためにも、メーカー保証や工事保証だけで判断せず、創業年数や専門性、実績数などを考慮したうえで信頼できる業者選びを心がけることが何よりも大切なことです。
ガルバリウム鋼板に関するよくある質問
A
はい、安心して用いられる建材です。
ただし、適切な部材を用いて、技術がある職人さんに工事をしてもらうことが大前提です。
A
エスジーエル鋼板とアルミが優れています。
なかでもエスジーエル鋼板は費用対効果が高い素材であり、おすすめです。
A
日本製の断熱材一体型の横葺き屋根がおすすめです。
日本製の屋根材はかなり止水性能の精度が高く、断熱性能も高いです。
A
日本製の断熱材一体型の横張りタイプの外壁がおすすめです。
断熱材一体型の金属サイディングは外壁材の中でも特に断熱性能が高いことでよく知られています。