新しいコロニアルの補修方法の提案が広まっています。
屋根補修商品をつかったリフォームの提案です。
商品ではケイミューのリコロニーなどが知られています。
古い屋根に鉄板を接着材で貼るだけの手軽さがアピールポイントになっています。
しかし、これらの商品は単体として屋根材になる商品ではありません。
単体で防水機能をもたらす商品ではないため、リフォーム業者から「この商品をつかえば屋根は安心」と言われ、言われるがまま評価してしまうことは危険です。
どのような商品なのかをよく理解したうえで、屋根材選びは慎重におこないましょう。
この記事では接着剤で貼る金属屋根について解説します。
これまでの屋根カバー工法
まず、屋根カバー工法の一番の目的とは何でしょうか?
答えは防水シート(ルーフィング・下葺き材)を新しくすることです。
雨漏りの根本的な原因は防水シートの破れです。
コロニアルの下には、屋根材のすき間から入り込んだ雨水が建物の中に入らないように、防水シートが敷かれています。
この防水シート(一般的によくつかわれているアスファルト940)は10年を経過すると硬化してひび割れを起こし、屋根裏に雨水が入り込む危険性が出てきます。
屋根カバー工法が認知される以前は、屋根材と防水シートをはがして、屋根材と防水シートを張り直す、いわゆる”葺き替え工事”がおこなわれていました。
しかし、葺き替えは費用と工期がかかってしまうことから、傷んだ屋根の上に新たな防水シートと金属屋根を被せる屋根カバー工法が誕生しました。
屋根を葺き替えよりもコストを抑えながら屋根を新しくでき、しかも大切な防水機能も復活できることから、現在カバー工法はコロニアルのリフォームの主流になっています。
屋根カバー工法は金属屋根を切ったり張ったり折り曲げたりする板金工事技術が求められる工事です。
雨漏りとも密接に関わる専門性の高い技術が必要であるため、屋根カバー工法は板金工とよばれる職人さんが実際の工事をおこないます。
接着材で貼る屋根のメリット・デメリット
接着剤だけで貼る屋根の施工方法
新たな屋根のリフォーム工法として普及がはじまっているのが、薄い金属板をそのままコロニアルに接着剤で貼り付ける工法です。
2020年10月に屋根材の大手メーカーであるケイミューが、リコロニーという商品を新たに販売しました。
それ以前にも同じような接着材で貼る屋根は販売されていた経緯はあります。
特にコロニアル製造メーカー最大手(屋根メーカー最大手)であるケイミューが販売を開始したことから、屋根業界全体に大きな波紋がおきています。
残念なことは、この工事方法を屋根カバー工法と称して販売しているリフォーム業者が増えていることです。
一般的な屋根カバー工法は「屋根材の1次防水」と「防水シートの2次防水」を共に新しくできる工事です。
したがって、接着剤だけで貼る屋根は、これまでの屋根カバー工法と目的と精度が異なる施工方法の商品です。
この商品による工事を従来おこなわれた屋根カバー工法とよんでしまうと、認知力が乏しい消費者に誤解を招くことになります。
A社とB社で屋根カバー工法の見出しがついた見積書が提出され、工事価格だけで判断したA社が実は防水シートを貼らないカバー工法だっということもあり得ます。
そのため、テイガクではこれらの商品を用いたリフォーム工事を屋根カバー工法ではなく、これまでのカバー工法と比較してメイク工法とよんでいます。
屋根材そのものと屋根の防水機能を担保する防水シートが置き換わらず、メイクのように表面だけを変える工法だからです。
接着剤だけで貼る屋根のメリット
施工が簡単
メイク工法の屋根は既存の傷んだコロニアルの上に、直接金属板を接着剤で貼り付けていきます。
材料は軽量で施工もとても簡単です。
板金技術も一般的なカバー工法に比べると求められる技術は低いです。
手軽な応急処置
早急に傷んだ屋根の応急処置をおこなう建材として最適です。
近い将来、建物の取り壊しなどを検討されている人で応急処置だけで済ませたい人にはおすすめです。
テイガクでも基本的にこれらの商品は応急処置用として活用しています。
足場が組み立てられて安全性が確保されているなかでの部分的な貼り付けであれば、全くの素人の人でもできるはずです。
予算を抑えて美観を良くしたい
ノンアスベスト屋根は塗装ができません。
ボロボロの状態で美観が損なわれている屋根を最近よく見かけます。
屋根塗装ができず、屋根の美観だけを良くしたいという人にはおすすめです。
接着剤だけで貼る屋根のデメリット
メイク工法のデメリットは、施工をしても防水性は改善しない可能性があることです。
リコロニーの商品説明資料でも「リコロニーによるリフォームでは防水性の改善はできません」と明確に記されています。
つまり、メイク工法の屋根を用いても単体で雨漏りを改善させたり、屋根の機能を長寿命化させたりする機能はあまり期待できません。
これまでの屋根カバー工法とは実現できる目的が全く異なります。
カバー工法とメイク工法の費用
カバー工法とメイク工法の費用の目安です。
概算となります。
㉜ここにグラフが入ります
テイガクによる施工
施工前
太陽光温水器を固定していたコロニアルにボルトの穴があり、そこから雨漏りが起きるとご相談をお客さまから受けました。
コロニアルに穴をあけてしまっているため、当然、防水シートが破れているはずです。
予算も限られており、2、3年後に取り壊しの予定があるとのことなので、接着剤だけで貼る屋根による施工を提案しました。
施工後
開始からなんと1時間で終わりました。
コロニアルの応急処置用の屋根材としておすすめです。
接着剤だけで貼る屋根の問題点
防水シートはそのまま
メイク工法の大きな問題点は、あくまで古い屋根の表面を覆い隠すだけであり、既存の屋根材の下にある傷んだ防水シートはそのまま残ることです。
これでは屋根材の隙間から浸入した雨水が建物の中に入り込むのを防ぐことは変わらず、そのための防水機能も変わりません。
もちろん、防水シートの寿命が延命されるといったことも期待できません。
谷や雨押え部はそのまま
この2つの板金を取り替えることこそが屋根リフォームの要です。
しかし、メイク工法では原則、谷どい板金と雨押え板金の板金自体はそのまま再利用する工事方法です。
つまり、谷どい板金と雨押え板金の防水機能は経年劣化したままつかい続けるということになります。
屋根と屋根が取り合う部分には谷どい板金とよばれる板金が取り付けられています。
また、屋根と外壁の壁際には雨押え板金とよばれる板金が取り付けられています。
これらの板金は建物の築年数によっては反りや浮き、腐食などが発生していることが多く、雨漏りの原因になりやすいところです。
谷どい部分については、特に雨漏りが多い部位です。
また、雨押え板金の裏側には木下地が入っているので、築年数が経過している住宅の場合、下地の腐食による悪影響が発生するおそれがあります。
この2つの板金を交換しないところに板金工事業者であるわたしたちとって、不安が残ります。
雨漏りの工事保証が付かない可能性が高い
通常、屋根カバー工法工事を行う場合、金属屋根材のメーカー保証に加え、工事業者の工事保証が付けられています。
工事業者がお客様に付与する保証です。
たとえばテイガクでは屋根工事後に不具合が生じた場合、通常10年間無償で修理をする工事保証を付けています。
しかし、メイク工法では防水シートや谷、雨押え板金が経年劣化したままで仕上げる工事です。
そのため、雨漏りのリスクが高いままということになります。
これらの商品で仕上げた屋根において、雨漏りの工事保証を付ける業者はいないと考えます。
製品保証の違い
リフォーム工事をおこなうと通常、工事保証とは別にメーカー製品保証というものが建材に付与されます。
カバー工法で用いる金属屋根にはメーカー製品保証が付けられています。
たとえば、アイジー工業の金属屋根スーパーガルテクトであれば、「塗膜15年保証」「赤さび20年保証」「穴あき25年保証」という手厚い製品保証が受けられます。
ケイミューの金属屋根スマートメタルもスーパーガルテクトと同様の製品保証となっています。
しかし、スマートメタルとリコロニーを比べると製品保証の内容に差があります。
屋根は過酷な環境にあり、万一不具合が発生した場合のことを考えると、製品保証がしっかりしている商品は商品選びの大きなポイントになります。
費用対効果に見合わない可能性がある
接着剤だけで貼る屋根はこれまでの屋根カバー工法より初期費用は抑えられます。
しかし、防水機能が復活するわけではなく(現状の経年劣化した防水機能のまま)、耐風性能も既存のコロニアルに依存するため、結果的にコストに見合った費用対効果が得られない事態になる可能性があります。
工事をおこなう前には屋根の状態をしっかりと調査する必要がありますが、防水シートの状態を事前調査で確認することは事実上不可能です。
工事をおこなった後に万が一雨漏りが生じてしまうと、葺き替え工事をおこなうことになります。
その時は新しく施工した接着剤だけで貼る屋根をはがす手間と費用がかかってしまいます。
接着剤だけで貼る屋根の評価
メイク工法を用いたリフォーム工事を新しい屋根カバー工法とよんで販売する業者が増えています。
古い屋根に新しい鋼板を重ねて貼って仕上げる工法なので、この工法自体を屋根カバー工法とよぶことに問題はありません。
ただし、これまでおこなわれてきた屋根カバー工法と施工内容や目的が全く違うので、両者の違いを事前によく理解しておくことがたいせつです。
接着剤だけで貼る屋根は施工がとても簡単なので、板金技術がない塗装業者や瓦業者向けに開発された建材のように思われます。
実際に塗装工事業者からすすめられることが多いと思います。
確かに外観上は真新しい屋根になってくれます。
しかし、屋根の基本的な役割である雨漏りに対する防水機能(防水シートの機能)は、経年劣化したままで工事前と工事後ではほとんど変わらないのではないかというのが筆者の意見です。
もちろん、リコロニーについては防水機能を復活させるものではないと明記されています。
加えて、施工マニュアルにも施工できない屋根の条件などがかなり細かく記載がされています。
これらがお客様にじゅうぶん伝わった上で工事がおこなわれるか、(リフォーム業者が屋根機能の長期維持よりも工事受注を優先した提案をおこなうか、メーカーが指定している条件を遵守して工事の提案をおこなうか、)屋根工事に携わる者としては不安が残ります。
弊社にとって、これらの商品を用いるのは、雨漏りの工事保証をお客様に付与できないなどの理由により、現在のところは限定的です。
もちろん、弊社は板金工事業者なので、技術が無くても施工ができてしまうメイク工法が主流になってしまうと弊社の仕事が無くなってしまうため、立場的な評価が加味された表現になっているかもしれません。
したがって、これから屋根のリフォームを検討されるお客様は、是非、屋根材と施工方法の違いを色々なサイトを通して、確実に理解したうえで選択してください。