サイディングとは? - 外壁材のトップシェアになった理由

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サイディングは日本の住宅で最も普及している外壁材です。

その「サイディング」は素材別に大きく4種類あります。
見た目だけではなく、コストやメンテナンス方法などがそれぞれ異なります。

これから新築で建物を建てられるかたや、外壁リフォームの予定があるかたは、各サイディングの特徴を整理・理解しておくとよいでしょう。
今回はサイディングが外壁材でトップシェアになった理由、そして各サイディングの特徴を紹介します。

外壁材シェア(戸建て住宅の新築)

平成28年調査

種類 シェア
窯業(ようぎょう)サイディング 78.6%
金属サイディング 10.8%
モルタル 6.6%
木質サイディング 1.1%
ALC板 0.8%
その他 2.1%

平成29年調査

種類 シェア
窯業(ようぎょう)
サイディング
78.6%
金属サイディング 11.4%(前年比UP)
モルタル 5.7%(前年比DOWN)
木質サイディング 1.3%
ALC板 1.0%
その他 2.1%

出典:日本サッシ協会/相対的に金属サイディングのシェアが上昇しています

サイディングとは?

外壁パネルのこと

金属サイディングの施工
金属サイディングの施工

サイディングとはざっくりいうと、パネル形状の外壁材のことです。
英語の「siding」のことで、直訳すると「建築用の羽目板」になります。

モルタル外壁の住宅

サイディングが普及する以前の外壁は、モルタル(セメントと砂を混ぜたもの)で仕上げることが一般的でした。
いわゆる「塗り壁」のことです。
モルタルは左官業(さかんぎょう)に当てはまり、左官屋さんがコテをつかって塗って仕上げていました。
技術と手間を要する工事です。

ところが、手間が省けて工期が短いサイディングが登場すると、サイディングは急速に普及しました。
パネル形状になっているので、「アッという間」に張って仕上られます。
施工方法はマニュアル化されているので、左官技術も必要ありません。(注:窯業サイディングに限ります)
最近の新築工事現場では、特定技能実習生がサイディングの施工をしているのをよく見かけます。
当然、工事費用も安くおさまります。

そのような背景があり、サイディングは現在でも国内トップシェア(94.1%/2019年4月調査時)の外壁仕上げ材となっています。

サイディングの工法について

直張りサイディング

サイディングが本格的に普及したのは1990年代です。
しかし、昔と現在のサイディングは、全く違うサイディング材といってよいでしょう。

一番の違いは張り方です。

サイディングの普及しはじめのころは、外壁の下地面に直接、釘で打ちつけていました。
直張り工法」(ちょくばりこうほう)とよばれる張り方です。
私たちは「直張り」や「直張りサイディング」とよんだりしています。
「直張り工法」はサイディングの裏に湿気が入り込むと湿気の逃げ道がなくたまってしまうため、内部結露を起こすなど建物によくない影響を与えます

直張りサイディングに外壁塗装ができない理由

直張り工法の問題を受けて、新たに取り入れられたのが「外壁通気工法(がいへきつうきこうほう)」です。
元々、北海道で取り入れられていた工法でしたが、外壁の耐久性と室内の快適性が大幅に改善することが認められ、2001年以降から全国的に普及がはじまりました。

外壁通気工法

「外壁通気工法」とは、下地面とサイディングの間に胴縁(どうぶち)とよばれる木材を入れ、通気性を確保した外壁構造のことです。
サイディングの裏に湿気が入り込んでも通気層が湿気の逃げ道として機能します。
外壁通気工法のメリットが認められ、現在では標準的な工法として定着しています。
また、通気層は断熱効果ももたらせてくれます。

外壁通気工法を取り入れることで、外壁が長寿命化し、快適に過ごせることが証明されました。
この外壁通気工法のメリットも、サイディングが爆発的に普及した理由のひとつです。

サイディングは4種類

窯業・金属・樹脂・木質の外壁施工写真
窯業・金属・樹脂・木質の外壁施工写真

新築戸建て住宅で採用される外装材のなかで、サイディングの割合は全体の90%です。
そのサイディングは大きく4種類にわけられます。

アイコン サイディングは大きく4種類にわけられる

窯業サイディング

金属サイディング

樹脂サイディング

木質サイディング

それでは、サイディングの種類別にくわしい内容を見ていきましょう。

 窯業(ようぎょう)サイディング

窯業サイディング
窯業サイディング
窯業サイディングの住宅
窯業サイディングの住宅

窯業(ようぎょう)ってなに?

窯業(ようぎょう)とは、セメントなどの非鉄金属を窯(かま)で高温処理して製品化させた工業製品のことです。
窯業サイディングはセメントと木質繊維をおもな原料とした外壁材です。
一般的にサイディングといえば、窯業サイディングのことをいいます。
なぜなら新築戸建て住宅に採用される外壁材のなかで80%弱と、圧倒的なシェアを占めているからです。
新築戸建ての建売住宅ではほぼ100%に近いシェアを占めているといってよいでしょう。

窯業サイディングの主なメリット・デメリット

メリット
  • デザイン性に優れる

  • 施工実績が豊富で業者も多い

  • 価格が安い

デメリット
  • シーリングのメンテナンス費用が高い

  • 全面改修時の費用が高い

メリット1:デザイン性に優れる

窯業サイディングはさまざまなデザインがある
窯業サイディングはさまざまなデザインがある

タイル調やレンガ調などデザイン(再現性)に優れており、本物と見劣りしないほどのクオリティです。
またカラーバリエーションも豊富です。

メリット2:施工実績が豊富

窯業サイディングのシェアが圧倒的に高いことからも性能の高さは実証済です。
最近は光触媒のような耐候性に優れるものや、シーリングレス工法など目地を最大限減らす工法など、昔に比べて製品開発が進んでいます。
厚みも増しており、発売当初は12㎜厚が主流でしたが、最近は16㎜厚が平均で21㎜厚の製品まで登場しています。
施工できる業者もたくさんいることもメリットのひとつです。

メリット3:価格が安い

材料費が比較的安くまた工期も短いため、イニシャルコストを抑えることが可能です。

デメリット1:シーリングのメンテナンス費用が高い

窯業サイディングの開口部まわりにはシーリング材を充てんさせます。
最近は耐久性が高いシーリング材が開発されています。
しかし、ひと昔前やコスト重視の住宅のシーリングは築後10年から15年程度でシーリングの劣化がはじまります。
このシーリング材の交換・補修費用は1棟あたり15万円~25万円近くかかります。

デメリット2:張り替え時の費用が高い

窯業サイディングを張り替えする時期がいつかはきます。
その時の張り替え費用は、他のサイディング材に比べてはるかに高額です。
窯業サイディングはかなり重く、容積があるからです。

アイコン 窯業サイディングは水を含む

現在の窯業サイディングは湿気による結露の影響が受けにくい、外壁通気工法が採用されています。
さらに窯業サイディングの厚みは平均が16mmと厚く、現在はオートクレーブ養生とよばれる工法でかなり耐久性が高い仕上がりになっています。
18㎜厚や21㎜厚の商品まで登場しています。
サイディングが水を含むことで品質に影響をおよぼすことは過去の話しになりつつあります。

水を含むから塗装が必要だという意見を耳にします。
色あせや塗膜劣化の程度では外壁通気工法が施されているサイディングは何も問題なく機能するというのが、筆者個人の意見です。
汚れが気にならなければ、基本的に築後20年位は何もしなくてもへっちゃらだと、いつも思っています。
窯業サイディングの裏側を見てください。
窯業サイディングの裏側は十分な塗装がされていません。
仮に「水を含みやすく水に弱い製品」ならば、サイディングの裏側にも十分な塗装をするべきではないでしょうか。
なぜなら、外壁の内側は湿気による結露が発生しやすいからです。

他の素材を例としてあげると、窯業サイディングとほぼ同じ素材であるスレート(コロニアル)は5.5mm厚で、雨風の影響を外壁よりはるかに多く受けます。
しかも、スレートは通気工法ではなく直張りです。
築30年以上経過し、一度も塗装をしていないにもかからわず、しっかりと屋根の機能を果たしているスレートはいくらでも街中で見かけられます。

「築後10年15年経ったら必ず塗装しなければならない」といった強迫観念にとらわれていませんか?
もちろん、直張りサイディングや開口部のシーリング材が劣化している場合については、シーリングの交換と合わせて外壁塗装をおこなうことはおすすめです。

筆者の経験に基づくひとつの意見として参考にしてください。

金属サイディング

金属サイディングは、その名のとおり金属製の板(鋼板)を成型した外壁材です。
昔はトタンが主流でした。
最近は耐久性が高いガルバリウム鋼板アルミ、ステンレスなどがつかわれています。
また、鋼板の裏側に断熱材を貼り付けた製品が登場し、耐久性断熱性遮音性に優れた外壁材として人気が高まりつつあります。
新築市場でも順調にシェアを伸ばしてており、外壁材としては窯業サイディングに次ぐシェアを占めています。
とくにリフォームで用いる外壁材としてはトップシェアとなっています。

金属サイディング
金属サイディング
金属サイディングの住宅
金属サイディングの住宅

金属サイディングの主なメリット・デメリット

メリット
  • リフォームに適している

  • メンテナンスが楽

  • 耐久性が高い

デメリット
  • 窯業サイディングより割高

  • デザインがシンプル

メリット1:リフォームに適している

外壁カバー工法前
外壁カバー工法前
外壁カバー工法後
外壁カバー工法後

金属サイディングは、とても軽いのが特徴です。
古い外壁材の上にサイディングを重ねるリフォーム(外壁カバー工法)ができる点が大きな強みです。

外壁塗装
新築時のようにはならない

築30年や40年が経過した外壁は、外壁自体に劣化の症状や建物全体のゆがみなどが生じています。
そのため、外壁塗装をおこなっても意味がありません。
外壁カバー工法をおこなって外壁全体を様変わりさせれます。
新築時のようなリフレッシュさが体感できます。

メリット2:メンテナンスが楽

多くの金属サイディングの塗膜は耐候性の高いフッ素塗料がつかわれており、かつ焼付塗装による密着性が高い塗膜で仕上がっています。
標準的な商品すべてが色あせにくい製品となっています。
また金属サイディングで用いるシーリングは外に露出する量が少なく、窯業サイディングのように明らかにシーリングの打ち替えが必要な状態になることがほぼありません。
窯業系サイディングは大規模な地震発生時にひび割れをおこすことがありますが、金属サイディングは建物の揺れによるヒビ割れの心配がありません。

メリット3:断熱性や遮音性が高い

断熱材入りサイディング
断熱材入り金属サイディング

金属と聞くと熱を通しやすく、雨音などが響く印象があります。
実はサイディングの中で金属サイディングは断熱性と遮音性に最も優れています。
理由は金属サイディングの内側に断熱材が充てんされているからです。
さらに金属サイディングを用いでカバー工法をおこなった場合、既存の外壁と金属サイディングの間に通気層を設けられます。
より快適に毎日の生活をお過ごしいただけます。
(注:断熱材がなかったり、十分な厚みがない金属サイディングもあるのでご注意ください)

デメリット1:割高

材料価格は窯業サイディングや樹脂サイディングと比較すると少し割高です。
理由としては板金工とよばれる特別な専門技術を伴った職人さんしか施工ができない工事だからです。
ただし、長期的なコストパフォーマンスでは最も有利な素材です。

デメリット2:デザインがシンプル

金属サイディングの施工写真
金属サイディングの施工写真

シンプルなデザインが好みの方に金属サイディングはおすすめです。
最近は部分的に木質サイディングを組み合わせた複合デザインが人気です。
その一方、より本物のレンガやタイルに違いリアル感や立体感は窯業系サイディングに比べて劣ります。
ただし、最近はプリント技術が高度になってきています。
最新の金属サイディングのデザインはかなり再現性が高いです。

アイコン 金属サイディングは凹む

金属サイディングは凹むことがデメリットとしてよく取り上げられています。
凹みや歪みやすい金属サイディングは、ごく一部の製品(施工方法で仕上げられてた外壁)だけです。
どんな製品かというと断熱材なしの縦張り金属サイディングです

ボールや飛来物などの衝撃は、金属サイディングよりはるかに窯業サイディングの方が耐衝撃性には弱いです。
割れや欠け、ひびなどは圧倒的に窯業サイディングの方が発生します。

凹むことを過剰に心配する必要はありません。

樹脂サイディング

樹脂サイディングは、塩化ビニール樹脂を主原料とするアメリカ生まれの外壁材です。
いわゆるプラスティック製の外壁材です。
アメリカでは外壁材のなかで最も普及しています。
そのシェアは50%以上を占めています。
ただし、日本での普及はまだまだで、シェアは1~2%程度です。
これまでは小規模の輸入代理店だけが取り扱っていましたが、2019年に大手の旭トステムが本格的に販売を開始しました。
これからシェアが拡大する可能性がある注目の素材です。

樹脂サイディングの施工写真 引用元:旭トステム外装株式会社 WALL-J
樹脂サイディングの施工写真 引用元:旭トステム外装株式会社 WALL-J
樹脂サイディングの施工写真 引用元:旭トステム外装株式会社 WALL-J
樹脂サイディングの施工写真 引用元:旭トステム外装株式会社 WALL-J

樹脂サイディングの主なメリット・デメリット

メリット
  • 安い

  • 色あせない

  • シーリングが不要

デメリット
  • 実績がほとんどない

  • デザインが少ない

メリット1:安い

サイディングの中で最も安いです。
外壁カバー工法による施工も可能です。
外壁塗装の選択肢なく、金属サイディングほどの費用がかけられない人におすすめの外壁材です。

メリット2:色あせない

耐候性が高く、色あせ保証も30年と、すべてのサイディング材の中で長い保証期間です。

メリット3:シーリングが不要

樹脂サイディングはシーリングを用いずに施工ができます。

デメリット1:実績がほとんどない

樹脂サイディングは日本の実績がほとんどありません。
基本的に建築業界は使用経験に乏しい商品の受け入れがなかなか進まない業界です。
なぜなら、問題が生じた場合の責任リスクが大きいからです。
外壁のような雨漏りや火事に関わる建材は、なおさら慎重にならざるを得ません。
定着までには、まだまだ時間がかかると考えられます。
また、輸入品であるため、将来的に商品の取り扱いがなくなるリスクもあります。

デメリット2:デザインが少ない

樹脂サイディングはドイツ張り(下見板張り)とよばれるデザインばかりです。
アメリカの映画やドラマでよくみかけるカントリーデザインの外観です。

木質サイディング

木質サイディングは、無垢の木を用いた外壁材です。

昔の木張りの家などはまさに木質サイディングに分類できます。
つまり、戦前の戸建て住宅ではシェアナンバーワンの外壁材でした。
ところが、防火法の規制や気密性、防水性などの観点から割合は急減しました。

最近はレッドシダーの耐久性が評価されたり、防火性能を満たした施工方法が確立されたりもしています。

「金属サイディング+木質サイディング」や「窯業系サイディング+木質サイディング」など無垢の外壁材を組み合わせて仕上げる住宅が若いかたを中心に人気が高まっています。

木質サイディング
木質サイディング
大昔の建物は木質サイディング
大昔の建物は木質サイディング

木質サイディングのメリットとデメリット

メリット
  • 天然無垢のデザイン

デメリット
  • 高い

  • 不具合が多い

メリット1:天然無垢のデザイン

天然無垢の風合いとインパクトは他のサイディングにはかなわないデザインです。
高級感と安心感を備えた外観になります。

デメリット1:高い

サイディングの中で最も高いです。

デメリット2:メンテナンスが大変

木材は水分を吸収すると腐朽やそりの原因にもなるため、より厳格なメンテナンスが必要になります。
木質サイディングの表面は塗装仕上げでメンテナンスをおこなます。
基本的に木目を残す塗料は、木目を塗りつぶす塗料と比べて長持ちしません。
したがって、メンテナンスコストは割高です。

まとめ

ここまでご閲覧、ありがとうございました。
住宅の外壁材はサイディングが圧倒的なシェアを占めています。
その中でも新築の戸建て住宅ではデザイン性と施工性、価格性に優れた窯業サイディングが一番の人気です。
ただし、最近は徐々に窯業サイディングの比率が下がっており、金属サイディングの人気が高まりはじめています。

そのような競争があるなかで、サイディングは日を追うごとに品質と施工性、デザイン性が向上しています。
これからも新しい付加価値を備えたサイディングが登場するはずです。
外壁材をどうするかお悩みの人は、サイディングの最新情報を調べてうえで、ご使用になるサイディングをお選びください。

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この記事を書いた人
著者 前川 祐介
前川 祐介 代表取締役社長
テイガク サイト制作責任者
宅地建物取引士
建築物石綿含有建材調査者
著者経歴

大阪府堺市生まれ。
千葉県立船橋東高校→法政大学経営学部→サノフィ(旧アベンティスファーマ)株式会社を経て、父親が経営する建築板金工事会社(昭和ルーフリモ株式会社)へ入社。
最終学歴、中央工学校夜間建築学科。
年間100棟以上の屋根と外壁工事に携わった経験を活かし、テイガク記事の執筆とユーチューブ動画撮影をおこなっています。趣味は日本史学。

運営会社

昭和ルーフリモ株式会社は2001年設立の板金工事会社です。
これまでの金属屋根と金属サイディング工事件数の合計は20,000棟を超えます。
板金工事は足場を組み立てるため、外壁塗装の工事事業にも注力しています。

国土交通大臣許可(般-5)第22950号
許可を受けた建設業:板金工事業/屋根工事業/塗装工事業 他

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