この記事ではガルバリウム鋼板の屋根と外壁両方のメリット・デメリットについて詳しく解説いたします。
また、新築とリフォーム両方を踏まえた内容になるので、情報量が盛りだくさんです。
これからガルバリウム鋼板の屋根と外壁を検討している人のお役に立てれば嬉しいです。
「ガルバリウム」と「ガルバリウム鋼板」の違い
ガルバリウムとは「亜鉛」と「アルミ」「シリコン」を組み合わせた合金のことです。
そのガルバリウムでメッキを施した鉄(鋼板)の建材がガルバリウム鋼板です。
現代ではそのメリットの多さから屋根や外壁に広く用いられています。
ここまで普及した最も大きな理由が「錆びにくさ」です。
メッキに使われる「亜鉛」は、溶けることで錆びによる穴あきの拡大を抑える「防食作用」を持っています。
この亜鉛をメッキした金属建材を「トタン」ともよびます。
トタンは時間と共に亜鉛が溶けてなくなってしまうと防食作用が失われるという欠点がありました。
そこで「亜鉛とアルミ」を組み合わせたガルバリウムが開発されました。
アルミには亜鉛が溶けてしまった穴を埋めてくれる「保護作用」があり、亜鉛の「防食作用」とサイクルして「自己修復作用」を備えることになります。
これによりガルバリウム鋼板は、長期間錆びが拡大しにくいという革新的な金属建材となったのです。
1990年代にはその耐久性の高さから板金工事の主役は完全にトタンからガルバリウム鋼板へ移行し、建材としてなくてはならない存在となりました。
そしてガルバリウム鋼板が普及するに連れ、錆びへの強さ以外のメリットにも目を向けられるようになり、さらに多くのお客さまに選ばれる建材となったのです。
キーワードは断熱材一体型
ガルバリウム鋼板を選ぶ際はその製品が「断熱材一体型」か「何もない鋼板だけ」かを確かめ、できる限り断熱材一体型の製品を選ぶようにしましょう。
断熱材一体型とはガルバリウム鋼板の裏に断熱材を貼り付けたもので、金属建材の弱点である断熱性や遮音性を補い、結果的に他の屋根材や外壁材より優れた性能を得られる建材となっています。
もちろん、何もない鋼板だけのガルバリウム鋼板に比べると、断熱材一体型はコストがかかります。
屋根と外壁を断熱材一体型にすると一軒あたり30〜40万円程度のコストが増えますが、将来にわたり暑さや寒さ、外の音に悩まされることが避けられるのであれば、決して大きな差ではないと思います。
ガルバリウム鋼板を選ぶ際には得られるメリットが大きい、断熱材一体型の製品を選ぶようにしてください。
ガルバリウム鋼板のメリット11点
まずはガルバリウム鋼板のメリットを11点を取り上げます。
錆びに対する強さ以外にもガルバリウム鋼板には多くのメリットがあり、幅広いかたちで恩恵をもたらしてくれる建材です。
1.耐久性(錆に強い)に優れている
ガルバリウム鋼板の「寿命」について、とてもよく質問をいただきます。
ガルバリウム鋼板の耐久性は25年から30年はあり、正しくメンテナンスをおこなえば40年以上の耐久性が期待できます。
ガルバリウム鋼板は新しく登場した建材のように思っている人が多いです。
実は商用生産が1982年に始まり、広く使われるようになってから既に30年以上経っています。
じゅうぶんな実績があり、安心して用いられる建材と言い切れます。
同じ屋根材であるアスファルトシングルやスレートの20〜30年といった耐久性に比べると、ワンランク上の長寿命建材です。
2.耐震性に優れている
ガルバリウム鋼板はとても軽いため、耐震性に優れた建材です。
地震の際に屋根が重いとそれだけ建物は激しく揺れることになり、建物への負荷はもちろん屋内の家具倒壊などの危険も増します。
地震が起きた際の建物の揺れには大きな差が生まれます。
また外壁材でも同じことがいえます。
モルタル外壁の1/10、窯業サイディングの1/4の重さであり、外壁の重さの観点でも耐震性に優れていることがわかります。
3.断熱性に優れている
断熱性において断熱材一体型のガルバリウム鋼板は、他の建材と比較してたいへん優れた性能を持っています。
断熱性を表す数値の一つに熱貫流率があります。
これは1㎡の材料に対して1時間でどれくらいの熱が通り抜けるかを表したもので、数字が小さいほど熱が通りにくく断熱性が優れることを意味します。
主な屋根材と断熱材一体型のガルバリウム鋼板の屋根の熱貫流率を比較すると、以下のとおりです。
このように断熱材一体型の金属屋根の熱貫流率は他の屋根材に比べ低くなっており、断熱性に優れていることがわかります。
次は外壁材の熱貫流率を比較した結果です。
※金属サイディングは旭トステム外装「Danサイディング」を指します
特に外壁材において、断熱材一体型のガルバリウム鋼板の外壁材は飛びぬけて優れた断熱性があることがわかります。
なお、古い屋根材や外壁材の上に新たなガルバリウム鋼板の建材を張るカバー工法をおこなうと、屋根材と外壁材が2重となるためさらに断熱性を向上させることができます。
つまり、リフォームで断熱性を向上させる目的においても、ガルバリウム鋼板の建材は理想的な材料となっています。
4.遮音性に優れている
金属屋根の雨音・遮音性について
断熱材一体型のガルバリウム鋼板は、遮音性も優れています。
具体的には、日常生活に送るにあたって、騒音は45dB(デシベル)以下にすることが望ましいとされています。
たとえば断熱材一体型のガルバリウム鋼板屋根は雨音が70dBの騒音を31dBに低減し、外壁材では外の80dBの騒音を28dBに低減します。
なお、30dBは非常に小さく聞こえる音であり、目安としてはささやき声と同じ程度とされています。
「金属屋根は雨音がうるさい」。とった声をよく耳にします。
そのような悪評は断熱材一体型ではない金属屋根や外壁材のことを示しています。
断熱材一体型のガルバリウム鋼板製品を採用すれば、家の中に伝わる雨音は小さくなるので安心してください。
もちろん、屋根も外壁もカバー工法で仕上げれば、新旧2重の屋根材となるため、さらに遮音性は高まります。
筆者の経験上、断熱材一体型の製品を用いた場合、音に関するクレームが発生したことは一度もありません。
5.シンプルかつスタイリッシュなデザイン
画像中央の アイコンを左右に移動すると、画像の比較ができます
金属ならではのシンプルでスタイリッシュなデザインを好まれる方が増えています。
モダンなテイストは都会の町並みにもマッチするだけではなく、自然の多い風景にもシンプルさは調和します。
ガルバリウム鋼板に木製の外壁材や建具を組み合わせるデザインも人気です。
将来中古住宅として販売するとしても買い手を選ばず、ガルバリウム鋼板ということだけで資産価値を保つことに一役買ってくれるでしょう。
6.改修時にかかる費用と時間が抑えられる
大型台風や地震による被害は、この先10年、20年、日本各地に繰り返し発生するはずです。
住まいが被害を受けると、屋根を葺き替えたり外壁を張り替えたりすることになります。
もし屋根が陶器瓦だったり、外壁が窯業サイディングであったりする場合、張り替えには想像以上の改修費用と時間がかかります。
もちろん、火災保険や地震保険に加入していれば出費の問題はないでしょう。
しかし、住宅ローンを完済したこで保険未加入を選択した人が被災者となって困窮するといったケースが少なくありません。
また、自然災害は同一地域に一斉に発生するため、業者がすぐに直してくれる保証はありません。
ガルバリウム鋼板の屋根や外壁材は、軽量で極めて作業性が良い建材です。
短時間で張替えることが可能であり、補修なども他の建材に比べて簡単です。
そのうえ、廃材はリサイクルでき、処分費用がかかりません。
むしろスクラップ業者に売ることができます。
金属建材は被災者の負担を軽減し、さらにはリサイクルすることで環境負荷も減らせる点で、人と地球に優しい材料です。
筆者はこの点が一番のメリットだと評価しています
「瓦礫」や「瓦解」という言葉があるように、大規模な台風や地震などが発生する地域ではどこにいっても瓦の崩れが特段、目立ちます。
もちろん、瓦だからという訳ではなく、他の建材でも被害を免れることはできません。
しかし、瓦屋根の屋根やモルタル、サイディングの外壁など重量のある建材の張り替えには、膨大な労力と費用、時間がかかることは紛れもない事実です。
瓦礫の光景を見るたびに、これが全て金属建材だったら被災地の復興も早く済んでいただろうと毎度、思い直しています。
これからの屋根と外壁は「耐震性」と「耐風性」そして「地球環境」の3点を最優先にしたものが選ばれるべきではないでしょうか。
最近、SDGsという言葉をよく聞きます。
持続可能な社会を形成するうえで、屋根と外壁の建材は金属建材が最もふさわしいと筆者は評価しています。
7.カバー工法が採用できる
古い屋根や外壁の上に新しい金属屋根をかぶせるカバー工法が人気です。
屋根と外壁のリフォームでは、まずはじめにカバー工法の可否を考える時代になっています。
よく知られているとおり、ガルバリウム鋼板の屋根や外壁は、軽いメリットを活かして新たに張ることができる材料として用いることができます。
一方で、元の屋根が金属屋根や金属外壁であれば、今度は張られる側の材料にもなります。(※全ての商品が当てはまりません)
たとえば、瓦の屋根はカバー工法で用いることも、用いられることもできない建材です。
金属建材はその軽さとフラットな形状によって、様々な改修方法が選択できる応用力の高い建材とも言えます。
8.シーリングのメンテナンス性に優れている
外壁で高いシェアを占めている窯業サイディングは、各部の継ぎ目にシーリングと呼ばれる防水材(接着剤)を打って、すき間を埋めます。
このシーリングは外部に露出し、紫外線や風雨の影響を受けます。
そのため、年数が経つと硬化によるひび割れや剥離を起こします。
10年から15年の周期で新たにシーリングを交換する改修工事が必要となり、その費用は1回につき約15万円から25万円程度です。
窯業サイディングを外壁材として選ぶ際は、このシーリングにかかる費用をランニングコストとして考えておかなければなりません。
ガルバリウム鋼板の外壁もシーリングと無縁ではなく、シーリングを打つことにはなります。
しかし、金属サイディングの場合、継ぎ目の大部分が「見切り縁(みきりぶち)」とよばれる部材で覆い隠されます。
外部に露出する部分は窯業サイディングの約1/3程度です。
見切り縁で隠されたシーリングは紫外線や風雨の影響を直接受けないため、長期にわたりメンテナンスは不要と筆者は評価しています。
屋根も棟(むね)などの接合か所にシーリングを打ちます。
しかし、外壁のようにシーリングのすぐ裏に大きなすき間がある構造ではないので、適切に金属屋根を仕上げていれば、屋根のシーリングの劣化による雨漏りリスクは極めて低いです。
9.ひびや割れることがない
瓦やスレートなどの屋根材やモルタルや窯業サイディングなどの外壁材は、年数が経つにつれてひびや割れが生じやすくなります。
ひびや割れが原因となる雨漏りに悩まされる人が少なくありません。
大型地震が発生した時や、寒い地域は凍結の影響でひび割れがおこりやすいです。
言うまでもないことですが、ガルバリウム鋼板は金属素材なのでひびや割れの心配がありません。
屋根材のひび割れのしにくさ
屋根材の種類 | ひび割れのしにくさ |
---|---|
陶器瓦 | △ |
セメント瓦 | ○ |
スレート(アスベスト入り) | △ |
スレート(アスベストなし) | × |
ガルバリウム鋼板 | ◎ |
アスファルトシングル | △〜◎ ※アスファルトシングルは割れない代わりにちぎれやすい |
外壁材のひび割れのしにくさ
屋根材の種類 | ひび割れのしにくさ |
---|---|
モルタル | × |
窯業14㎜厚 | × |
窯業16mm厚 | △ |
窯業18㎜厚以上 | 〇 |
ガルバリウム鋼板 | ◎ |
最近の窯業サイディングも進化している
この記事では、現在広く普及している標準的な窯業サイディングを基準と金属サイディングを比較しています。
窯業サイディングの品質も日々、進化しており、厚みが厚くひび割れしにくい商品やシーリングのないシーリングレスタイプの商品、光触媒などの色もちが良く色あせしにくい商品もあります。
しかし、建築時は初期コストを抑えることを優先する人が多いため、実際はひび割れの処置やシーリングの交換、外壁塗装を繰り返しおこなっている人が多いのが実情です。
10.汚れが付きにくい
ガルバリウム鋼板は湿気や雨水を吸収することがないので、、他の屋根材や外壁材に比べて苔やカビなどの汚れが付きにくい素材です。
モルタルやセメントは塗膜が薄くなると表面が粗くなり、そこに苔やカビが付着し根をはります。
スレート屋根や窯業サイディング外壁の建物の日当たりが悪い北側に苔がびっしりと生えて汚くなっているのはこのためです。
ただし、窓枠まわりの雨染みは他の建材と同様、ガルバリウム鋼板は付着します。
外壁はフッ素塗膜以上の商品が標準品なので、色あせによる塗り替え頻度は少なくて済みます。
屋根については、フッ素塗膜の商品は基本的に業者からすすめられることは少ないはずです。
できれば、屋根もフッ素塗膜の商品を選択することをおすすめします。
屋根材の汚れの付きにくさ
屋根材の種類 | 汚れのつきにくさ |
---|---|
陶器瓦 | ◎ |
セメント瓦 | × |
スレート | × |
ガルバリウム鋼板(ポリエステル) | △ |
ガルバリウム鋼板(フッ素) | ○ |
アスファルトシングル(石粒付き) | △ |
外壁材の汚れの付きにくさ
外壁材の種類 | 汚れのつきにくさ |
---|---|
モルタル | × |
窯業サイディング 標準品 |
× |
窯業サイディング ハイグレード品 |
○ |
ガルバリウム鋼板 | ○ |
11.メーカー保証が得られる(リフォーム時)
リフォームで古い屋根材からの葺き替えでスレート屋根を用いた場合、新築と違ってメーカーの製品保証は受けられません。
しかし、ガルバリウム鋼板の屋根や外壁は、リフォームで用いた場合でもメーカーの製品保証が受けられます。
たとえば、ガルバリウム鋼板の屋根であれば穴あき10年保証が標準的に付きます。
弊社で人気の横暖ルーフαプレミアムSの場合、穴あき保証は25年であり、塗膜変退色保証が20年付きます。
常に紫外線や風雨にさらされる過酷な環境下にある屋根材にとって、この保証の有無は長く住むなかで修理費などの出費に大きな差が生まれる可能性があります。
金属屋根材がコストパフォーマンスに優れると言われる理由には、この保証の有無が大きく関わっています。
なお、金属建材加工メーカーの製品ではないガルバリウム鋼板の屋根や外壁はメーカー保証が付きません。
ご注意ください。
ガルバリウム鋼板のデメリット7点
完璧であり一切欠点の無い建材は存在しません。
もちろん、ガルバリウム鋼板にもデメリットがあります。
デメリットを知り納得した上で、ガルバリウム鋼板を用いるか判断してください。
そこでここからはガルバリウム鋼板のデメリットについて紹介します。
1.コストが割高
ガルバリウム鋼板など金属建材は、スレートや窯業サイディングよりも若干、施工価格が高いです。
施工費とは「材料費+作業費」の合計です。
テイガクの工事価格を基準すると、それぞれの相場は以下の通りです。
屋根材の施工単価
屋根材の種類 | 施工単価 |
---|---|
スレート | 4,500円/㎡ |
ガルバリウム鋼板 (断熱材なし) |
5,500円/㎡ |
ガルバリウム鋼板 (断熱材入り) |
6,500円/㎡ |
外壁材の施工単価
屋根材の種類 | 施工単価 |
---|---|
窯業サイディング | 5,000円/㎡ |
ガルバリウム鋼板 (断熱材なし) |
5,500円/㎡ |
ガルバリウム鋼板 (断熱材入り) |
7,000円/㎡ |
もし新築工事で「標準的に用いられるグレードのスレート屋根と窯業サイディング外壁」を「全て断熱材入りガルバリウム鋼板」で仕上げるとなると、40万円から60万円程度のコストアップになるでしょう。
なお、リフォームでカバー工法をおこなう場合は、古い屋根材や外壁材を剥がす費用や廃材処分費がかかりません。
そのため、カバー工法のリフォームでは、ガルバリウム鋼板で仕上げることが最も費用対効果が高くなることが多いです。
2.デザインの再現性が窯業より劣る
外壁のレンガ調やタイル調、石積調といったデザインの再現性は、窯業サイディングに軍配が上がります。
近年の窯業サイディングは本物と見間違うほどのレベルです。
金属サイディングの再現性も一昔前に比べるとかなり良くはなってきています。
しかし、表面に彫り込みができる窯業サイディングの方がよりリアルに再現できます。
一方でスパンサイディングやラップサイディングなど、シンプルなデザインを好む人が増えてきているのも事実です。
金属サイディングだからこそできる質感の需要も高まっています。
金属サイディングのデザインを取り入れている窯業サイディングのデザインが販売されてもいます。
金属サイディングのデザインについては、メリットとデメリットが混在しています。
3.周囲の環境の影響を受ける
ガルバリウム鋼板は沿岸地域の潮風や工場の排気ガス、森林など樹木や落ち葉の影響を受けることがあります。
潮風や排気ガスの成分や落ち葉などがガルバリウム鋼板に触れると、電食を引き起こし錆びる原因となります。
こうした影響を受ける環境でガルバリウム鋼板を屋根や外壁に用いる際は、点検をこまめに行いメンテナンスの頻度を高める必要があります。
沿岸部の工場は基本的に金属
沿岸部や工業地域ではガルバリウム鋼板は不適用といった意見がありますが、実際に沿岸部にある工場や倉庫の屋根や外壁のほとんどが金属でできています。
潮風や排気ガスまみれで、メンテナンスもほとんどおこなってないような建物ばかり立ち並んでいます。
そのことを踏まえると、「沿岸部だからガルバリウム鋼板をはNG」と決めつてしまうことは、過剰反応かもしれません。
過度に恐れず、10年に1回は必ずメンテナンスをおこなうといった心持ちでじゅうぶんではないでしょうか。
4.専門性が高く技術力のある業者が見つからない
ガルバリウム鋼板の施工をおこなうのは板金工職人であり、板金工事業者です。
これからガルバリウム鋼板の屋根や外壁工事を予定している人は、板金工事会社に見積りを依頼されることをおすすめします。
しかし、板金工事は専門性が高い工事であり、技術力のある業者や職人が見つかりにくいデメリットがあります。
屋根においては2017年、わが国ではじめて金属屋根が市場占有率、第一位になりました。
しかしそれでも、屋根工事の数は瓦職人もしくはスレート職人が多く、外壁工事では窯業サイディング職人が桁違いに多いです。
リフォーム分野に至っては、塗装職人が市場の多くを占有しています。
ガルバリウム鋼板を正しく施工できる板金工事業者や板金工がまだまだ少ないのが現状です。
そのため、ガルバリウム鋼板による工事を希望しても、質の高い工事がおこなえる業者では順番待ちになることになります。
5.凹みやすい
ガルバリウム鋼板は外部からの衝撃に弱く、凹みやすいです。
また、一度凹んだところを元に戻すことは実質不可能です。
子供たちがボールで遊ぶ公園や学校の運動に近い場合は、注意をした方がよいでしょう。
また、車庫まわりで用いる場合も注意をしてください。
どうしても凹みが不安な方は、ガルバリウム鋼板の厚さみ0.35mm以上の製品を選ぶことをおすすめします。
また、断熱材が衝撃を和らげてくれるため、断熱材一体型商品を選ぶようにしましょう。
6.マットカラーは傷や汚れが付きやすい
アイジー工業の金属サイディング「ビレクト」を外壁カバー工法で施工
最近、ガルバリウム鋼板の外壁材は艶消しのマットカラーが大人気です。
しかし、これには衣類の金具が擦れるだけで傷や汚れが付きやすいデメリットがあります。
特に黒やグリーンなど濃い色で目立ちます。
ただし、この現象は外壁塗装や窯業サイディングなど他の外壁材でも同様に見られる現象です。
金属建材特有のデメリットではないことはご理解ください。
7.見切り縁(みきりぶち)が生じる
ガルバリウム鋼板の外壁の窓枠周りや外壁材同士のジョイント部分には、見切り縁とよばれる部材を取り付けます。
見切り縁は各部のつなぎ目を保護するための部材です。
約3cm幅の金物が窓枠廻りなどに取り付けられます。
また、外壁面から1~2mm程度の出るため、窓との段差が小さくなり立体感が若干損なわれます。
筆者の経験では、お施主さま(お客さま)が気にされることは少なく、住宅をデザインし設計する設計士が見切縁を気にされている印象があります。
シーリングのメンテナンス性のところでもお伝えしているとおり、見切り縁はジョイントの防水シーリングを保護する役割もあります。
デザイン上の違和感よりも、メリットとしてとらえて良い部分だと思います。
こんな人にガルバリウム鋼板はおすすめ
ガルバリウム鋼板はこんな人におすすめしたいいという点をお伝えします。
デザインが気に入っている人
ガルバリウム鋼板のデザインが気に入っていれば、それ以外の外壁材は選択肢から除外してガルバリウム鋼板に決めてください。
ガルバリウム鋼板でしか成し得ない風合いがあります。
家全体のデザインバランスや周囲の風景となじませることを考えた結果、ガルバリウム鋼板の外壁や屋根がベストな選択なら、迷わずガルバリウム鋼板を選びましょう。
コストパフォーマンスを重視している人
屋根や外壁のコストパフォーマンスを求めるなら、断然ガルバリウム鋼板がおすすめです。
40年以上の耐久性が期待できて錆びにも強い素材です。
災害などに遭ったときの補修をする時、カバー工法などの廃材を発生させない改修をおこなう時、ガルバリウム鋼板にして良かったと思えるはずです。
ガルバリウム鋼板よりもコストが安い建材はたくさんあります。
しかし、長期的なスパンで考えると、ガルバリウム鋼板は圧倒的に費用対効果に優れた建材であることは間違いありません。
建物の耐震性や屋根の耐風性を優先させたい人
ガルバリウム鋼板は、他の屋根材や外壁材に比べ軽量なため、地震での揺れが少なくて済み、建物への負荷が抑えられ室内の家具などの倒壊も軽減できます。
特に屋根が重いと建物の揺れはより大きくなるため、屋根材が軽量であることは耐震性においてとても有利に働きます。
また、屋根の商品の中には、耐風性に優れた商品や施工方法が実現できる商品があります。
それは、嵌合式(かんごうしき)の横葺き屋根です。
嵌合式とは下地に鋼板を固定させるだけではなく、ガルバリウム鋼板とガルバリウム鋼板の接合部を噛み合わせて張る構造のことです。
強固に屋根が固定されるため、単に屋根材を並べて釘で打つだけの瓦やスレートととは耐風性能に違いがあります。
商品名では「ニチハの横暖ルーフαプレミアムS」もしくは「アイジー工業のスーパーガルテクト」を弊社ではよくお客さまにおすすめしています。
海岸地域や周りに建物がない地域は、優れた耐風性能をもつ屋根を意識して選んでください。
エスジーエル鋼板とは?
次世代のガルバリウム鋼板として登場したエスジーエル鋼板は、従来のガルバリウム鋼板の「亜鉛+アルミ」というメッキ組成に「2%のマグネシウム」を添加した鋼板です。
マグネシウムは錆びの拡大を防ぐ亜鉛の消耗を抑える働きがあり、エスジーエル鋼板はガルバリウム鋼板に比べて3倍超も錆びに強い性能を持っています。
このためエスジーエル鋼板の建材はガルバリウム鋼板より保証年数が長く設定されており、たとえばエスジーエル鋼板を使った屋根材の横暖ルーフαプレミアムSは保証期間が25年と、ガルバリウム鋼板の保証期間である10年から大幅に延長されています。
さらに耐久性の高さから、沿岸部では塩害の影響も少なくなるという試験結果もあります。
ガルバリウム鋼板では保証適用範囲が沿岸部から5km離れた場所からでしたが、エスジーエル鋼板では500m離れた場所へと緩和されています。
塩害の影響が考えられるより沿岸部近くの立地も保証することからも、エスジーエル鋼板の錆びに対する強さへの自信がうかがえます。
一般的には金属建材=ガルバリウム鋼板というイメージがありますが、既に時代の主流はエスジーエル鋼板へと移りつつあります。
価格は多少プラスになりますがその費用対効果は非常に大きく、これから屋根や外壁の工事を行うならエスジーエル鋼板の検討をぜひおすすめします。