瓦の屋根といえば土(粘土)を焼き固めた陶器のイメージがあります。
しかし、土ではなくセメントを主成分にしたセメント瓦とよばれる瓦もあります。
現在、セメント瓦の葺き替え工事が増加傾向にあります。
このページではセメント瓦の工事で注意して欲しいポイントや費用について解説します。
目 次
閉じるセメント瓦とは
セメント瓦はセメントを主成分とした屋根瓦です。
コロニアル(カラーベスト)を「薄型スレート瓦」と呼ぶ一方、セメント瓦を「厚型スレート瓦」と呼ぶことがあります。
「モニエル瓦」もセメント瓦の一部として分類されます。
モニエル瓦は「乾式洋瓦」と呼ばれて販売されていました。
セメント瓦は陶器瓦と比べて初期費用が安いため、今より30年から40年前に普及した屋根材です。
しかし、デメリットが多いため、現在では販売されていません。
現在、新築の戸建て住宅でセメント瓦を用いることはありませんが、建築後年数が経過し、葺き替えの必要が迫られたセメント瓦の戸建て住宅が増加傾向にあります。
セメント瓦と陶器瓦の違い
セメント瓦は見た目を自由に成型できるため、「陶器瓦(日本瓦・粘土瓦)」と区別が付きにくく似ています。
しかし、見分け方は簡単です。
陶器瓦の角は丸みを帯びており、一方セメント瓦の角は角ばっている特徴があります。
他にも、セメント瓦の表面はザラザラしていて、経年とともに色褪せる傾向にあります。
セメント瓦が生産されなくなった理由
セメント瓦は現在、生産されていません。
他の屋根材に比べてデメリットが大きかったからです。
耐久年数は陶器瓦より短い
陶器瓦に比べて耐久性能の点でセメント瓦は劣ります。
陶器瓦は60年ほどの耐用年数が認められていますが、セメント瓦の耐用年数は40年前後です。
古いセメント瓦にはアスベストが含有されている
アスベストが含有されたセメント瓦があります。
国土交通省と経済産業省が運営している下記のホームページで確認できます。
石綿(アスベスト)含有建材データベース
アスベストが含有されたセメント瓦の耐久性能は優れていますが、葺き替え時には高額のアスべスト処分費用が発生します。
尚、アスベストの処分費用は右肩上がりに年々高くなっています。
陶器瓦と違い塗装によるメンテナンスを検討
陶器瓦と異なり、セメント瓦は塗料で着色されています。
そのため、塗膜がはがれて、次第に汚くなります。
定期的な塗装メンテナンスが望まれるため、メンテナンス費用を考慮すると、陶器瓦よりコストパフォマンスが悪い屋根となります。
耐震性や耐風性への懸念
相次ぐ大型地震の影響で、耐震性能への関心が高まっています。
セメント瓦は陶器瓦と同じく重量があり、建築基準法で定める「重い屋根」に分類されます。
今から40年近く昔の建物や屋根は、現行の法律が求める耐震強度や施工方法に則った施工がなされていない可能性が高いです。
そのため、多くのセメント瓦の住宅は、耐震性や耐風性への不安が残った住宅であることが多いです。
セメント瓦のリフォーム方法は2つ
セメント瓦のリフォーム方法は2パターンあります。
「塗装」と「葺き替え」です。
経年劣化したセメント瓦は割れやヒビが発生し、強風時にカケが飛散するリスクがあります。
このような不具合(耐久性の低下)が発生した場合は、「葺き替え工事」が必要です。
なお、テイガクでは塗装によるメンテナンスをお勧めしていません。
重量があり、不具合の発生しやすいセメント瓦は、繰り返し行う「塗装」より「葺き替え」の方が明らかに費用対効果の面で優れているからです。
金属屋根への葺き替えが主流
セメント瓦は金属屋根による葺き替えが主流のリフォーム工事方法です。
一般的に、葺き替える屋根材は金属屋根を用います。
金属屋根は軽量であり、メンテナンス性能が良い屋根材です。
金属屋根には「成型ガルバリウム鋼板」「瓦棒」「立平」などがありますが、テイガクでは屋根の裏側に断熱材が付いている「断熱材一体型のガルバリウム鋼板」や「断熱材一体型のエスジーエル鋼板」を推奨しています。
アイジー工業の「スーパーガルテクト」、ニチハの「横暖ルーフ」が有名です。
セメント瓦の葺き替え工事価格と工事方法(100㎡)
アスベスト含有製品の場合、処分費用が高くなります。
※足場組み立て費用や板金費用、諸経費等は含まれておりません。
工事項目 | 平米単価(税抜) | 金額(税抜) |
---|---|---|
既存セメント瓦撤去(アスベストなし) | 3,200円/㎡ | 320,000円 |
野地板重ね張り | 3,100円/㎡ | 310,000円 |
ルーフィング※1 | 900円/㎡ | 90,000円 |
屋根仕上げ材張り※2 | 6,600円/㎡ | 660,000円 |
アスベスト屋根の撤去処分加算 | +1,800円/㎡ | 180,000円 |
※2:断熱材一体型エスジーエル鋼板
セメント瓦の葺き替え工事方法
①既存のセメント瓦の確認
建築後40年が経過したセメント瓦です。
色があせ、セメントの基材が露出しています。
②既存セメント瓦の撤去
既存のセメント瓦と下葺き材を処分します。
画像は既存の野地板の様子です。
昔の野地板は幅の狭い木の板(バラ板)を使用していました。
現在では畳位の幅と大きさがある構造用合板を野地板に使用します。
③野地板張り
野地板(構造用合板)を張ります。
④ルーフィング(下葺き材)張り
ルーフィング(下葺き材)を張ります。
今回使用した下葺き材は「改質アスファルトルーフィング」です。
⑤ガルバリウム鋼板張り
成型ガルバリウム鋼板屋根を張ります。
使用する商品は「スーパーガルテクト」です。
軒先から屋根本体を張り、2段目と3段目には雪止め金具を取り付けます。
⑥屋根葺き替え工事 完成
屋根葺き替え工事、完成です。
新しいタイプのセメント系の瓦「ルーガ」
新しいタイプのセメント系の瓦も販売されています。
ケイミュー株式会社のルーガです。
一般名称は「樹脂混入繊維補強軽量セメント瓦」です。
ルーガは樹脂とセメントによるハイブリットタイプの屋根材で、販売開始から10年以上の実績があり、
施工状態も検証もされ、専門家からも高い評価を得ています。
今後、リフォームで屋根を葺き替える際の選択肢のひとつに成り得る製品です。
セメント瓦のリフォームはテイガクへ
セメントを主成分にした屋根瓦はデメリットが大きく、現在は販売されていません。
セメント瓦のリフォーム方法では、費用対効果を考慮すると「葺き替え」を選択してほしいです。
葺き替えには断熱材一体型の金属屋根がおすすめです。
瓦の風合いに魅力を感じている人は、「ルーガ」のような耐久性やメンテナンス性に優れた屋根材もおすすめです。
テイガクは金属屋根の施工を専門にしている工事会社です。
ルーガでの施工も可能なので、ぜひお気軽にご相談ください。