新築分野においても、ガルバリウム鋼板の屋根が急速に普及されはじめています。
これまで「ガルバリウム鋼板の屋根=リフォーム専用の屋根」といったイメージでした。
そんなイメージが大きく変わろうとしています。
この記事ではガルバリウム鋼板の普及が進んでいる背景に触れると同時に、新築をメインテーマにガルバリウム鋼板の屋根について詳しくご案内します。
新築住宅でも人気のガルバリウム鋼板
なんといっても耐久性の高さ
建売住宅では初期コストが重視されます。
そのため、屋根は単価の安いコロニアル(スレート・カラーベスト)、もしくはアスファルトシングルがよく選ばれています。
最近(2020年現在)はアスファルトシングルがやたらと増えているように感じます。
しかし、注文住宅の分野では屋根の重要性について深く理解をしている建て主や建築家が多いため、最近は新築時にガルバリウム鋼板が選ばれる時代になっています。
ガルバリウム鋼板が選ばれる一番の理由はコストパフォーマンスです。
瓦ほどの耐久性はありませんが、ガルバリウム鋼板はコロニアルやアスファルトシングルに比べると耐久性に優れています。
一方で工事価格は瓦よりも安く済みます。
また、耐震性だけではなく、万が一、台風で被災にあった時のメンテナンス性にも優れています。
メンテナンスのしやすさについては、筆者がガルバリウム鋼板の屋根をおすすめする一番の理由です。
このようにガルバリウム鋼板はメリットが多い屋根です。
しかし、実はあまり語られないもう一つの理由があります。
ガルバの縦葺きは屋根面積が少なくて済む
新築で建築家や工務店がガルバリウム鋼板をすすめる理由は「緩勾配(かんこうばい)で使えるから」が一番の理由(ホンネ)かもしれません。
緩勾配とは漢字のごとく「緩い勾配」のことで、ガルバリウム鋼板の屋根のなかでも「縦葺き」は全ての屋根のなかで「最も緩い勾配」で張れます。
縦葺きとは屋根の流れに沿って、縦方向に張る屋根のことです。
いわゆるトタン屋根のかたちをイメージしてもらえば、しっくりくるかもしれません。
具体的に、一般的なコロニアルや横葺きのガルバリウム鋼板の屋根は、3寸以上の勾配(17度以上の角度)が必要です。
一方、縦葺き屋根は2.5寸以下の勾配でも張れます。
「緩い勾配で屋根を張れる」=「屋根の面積が少なくて済む」ことになります。
また、シンプルな切妻屋根のような形の場合、縦葺きのガルバリウム鋼板屋根は1日で仕上げられます。
つまり、条件によっては、ガルバリウム鋼板の屋根は全ての屋根のなかで最も安く仕上げられる屋根になります。
最近、このことに気づいた工務店やハウスメーカー、建築家が増えているようで、建売住宅でも縦葺きのガルバリウム鋼板屋根が急増しています。
将来問題になるかも?新築の縦葺き屋根
現在、新築で建てられているガルバリウム鋼板の屋根は、その多くが縦葺きです。
屋根の面積を少なくさせる(建築コストを抑える)ため、1.5寸などの「極限に近い緩勾配」で仕上げられていることが多いです。
それだけにとどまらず、もっと屋根の面積を減らすために軒先を全く出さない「軒ゼロ」住宅も増えています。
本来、雨漏りしにくい縦葺きの金属屋根が”極限の状態で採用”されることで、将来、逆に雨漏りを頻発させる事態になる気がします。
大人気なガルバリウム鋼板の屋根ですが、10年後20年後に雨漏りで苦しむ人が増えるような気がしてなりません。
新築で取り入れて欲しい屋根の条件
屋根の素材を検討する前に、まずは屋根の「形」と「軒の出」「勾配」の3点を確認してください。
耐久性の高いガルバリウム鋼板にしたとしても、長期的な観測では価値がないものになってしまうおそれがあります。
これから建売住宅を購入される予定の方も、必ず確認してください。
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屋根の形:基本は切妻もしくは寄棟が望ましいです。下屋根はなくしてください。空から見下ろした時の屋根面の数は6面以下が望ましいです。
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軒の出:軒先(外壁面と屋根先の距離)は最低30cmできれば60cmは必要です。
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勾配:屋根勾配は最低3寸、できれば5寸が望ましいです。6寸以上の場合は屋根にのぼってメンテナンスすることができないので急こう配はNGです。
テイガクおすすめのガルバリウム鋼板屋根
その1:立平葺き(たてひらぶき)
工事費を抑えたい人におすすめ!
立平葺きとは、屋根のつなぎ目を折り曲げた金属だけで接合させて仕上げる縦葺き屋根のひとつです。
最近の新築で建てられるガルバリウム鋼板の屋根の多くが立平葺きです。
ガルバリウム鋼板にしたい人で、かつコストを抑えたい人におすすめです。
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工事費用が安く済む
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遮音性や断熱効果に劣る(対策方法はあり)
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野地板の劣化が比較的早いため、同じガルバリウム鋼板でも屋根の寿命が短い(カバー工法や葺き替えが早い段階でも求められる)
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本格的なリフォーム工事の選択肢は葺き替えのみ
その2:樹脂下地入り瓦棒葺き(かわらぼうぶき)
シンプルな切妻屋根(三角屋根)の形で屋根にお金をかけられない人におすすめ!
瓦棒葺きをおすすめする理由は、2つあります。
ひとつ目は「カバー工法でリフォームできること」です。
縦葺き屋根のなかでも瓦棒葺きは立平葺きと異なり芯木がある形状なので、その上に合板を敷いて新たに屋根を重ねて仕上げられます。
芯木は木だと腐ってしまうため、樹脂製のものをおすすめします。
瓦棒葺きの屋根をカバー工法でリフォームすることは、もうひとつ大きな利点があります。
それは、「空気層ができること」です。
瓦棒の芯木の立ち上がり部分が空気層として働くので、断熱効果や遮音効果をもたらせてくれます。
ふたつ目は「太陽光パネルをしっかりと設置できること」です。
現在、太陽光パネル設置の金具がたくさん販売されています。
全ての金具を見比べると、瓦棒用の金具一番、安心できると筆者は評価しています。
太陽光パネル設置を検討されている人は、ガルバリウム鋼板製の瓦棒をおすすめします。
なお、勾配はメンテナンスのこと考えて、3寸から3.5寸勾配が理想です。
樹脂下地入り瓦棒 メリット・デメリット
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工事費用が安く済む
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メンテナンスしやすい
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カバー工法によるリフォームができる
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太陽光パネルをしっかりと設置できる
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遮音性や断熱効果に劣る(対策方法はあり)
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野地板の劣化が比較的早いため、同じガルバリウム鋼板でも屋根の寿命が短い(カバー工法や葺き替えが早い段階でも求められる)
その3:断熱材一体型の篏合式横葺き屋根をビス留め
複雑な屋根の形状で耐風性を重視されたい人におすすめ!
近年、大型台風が相次ぎ、屋根の耐震性だけではなく、耐風性についても関心が高まっています。
耐風性の高い屋根として篏合式(かんごうしき)の金属屋根をビスを用いて留める方法をおすすめします。
篏合式横葺き屋根のなかでも断熱材一体型の商品をおすすめします。
断熱材一体型の篏合式横葺き屋根 メリット・デメリット
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耐風性に強い屋根に仕上がる
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屋根の断熱効果に優れている
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屋根の遮音効果に優れている
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野地板直張りなので、屋根の寿命は35年から45年程度が限界
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本格的なリフォーム工事の選択肢は葺き替えのみ
その4:屋根通気工法で屋根を仕上げる
予算がある方で屋根の長寿命化を実現されたい人におすすめ!
話の方向性が変わってしまいますが、これから新築で屋根工事の仕上げに関われるのであれば、屋根通気工法を採用して欲しいです。
屋根通気工法を採用すると、屋根材を構造的に支える野地板の長寿命化が期待できます。
さらに屋根の断熱性能も大幅に改善するので、夏は暑さ対策になり、冬は暖房が効きやすくなります。
お金と時間がかかる工事ですが、リフォームで取り入れると更に費用がと時間がかさむことになります。
新築時でできれば採用して欲しい工事です。
屋根通気工法 メリット・デメリット
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屋根が長寿命化する
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屋根の断熱性能が大幅に改善する
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屋根の遮音性能に優れている
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エアコンの光熱費を抑えられる
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工事費用が高くなる