「セキスイかわらU」とよばれる40年近く販売が続いた屋根材があります。
「セキスイ」の名前が付いたブランド効果もあり、屋根を葺き替えたりカバー工法をしたりする際の第一候補として認識されるほど、人気があった商品です。
街中を散歩していると、今でも「セキスイかわらU」で仕上げられた屋根をよく見かけます。
しかし、現在「セキスイかわらU」は問題がある商品として販売中止になっています。
人気があった屋根材がどうして販売中止に至ったのでしょうか?
この記事では「セキスイかわらU」に関する問題とその対処法について解説します。
目 次
「セキスイかわらU」が販売中止に至るまで
大ヒットした屋根材「セキスイかわらU」
「セキスイかわらU」は見た目がかっこ良い屋根材です。
本物の瓦のようなフォルムが人気を博し、1970年頃から販売が開始され、全国で50万棟以上に使用された実績があります。
瓦よりも軽い素材で、コロニアル(スレート屋根)の上に被せる屋根カバー工法で用いることができたので、大ヒットした商品でした。
アスベストを取り除いた商品として”再販”そして販売終了へ
販売された当初、「セキスイかわらU」は、アスベストが含まれていた商品でした。
しかし、アスベストの健康被害による問題を受け、1990年8月に、「セキスイかわらU」はアスベストを取り除いた商品として再販売されます。
ところが、アスベストが含まれていない「セキスイかわらU」は、メーカーが想定していたよりも、はるかに弱くて脆い屋根材でした。
アスベストに代わる丈夫な素材の技術力が未熟だったからです。
その結果、大きなクレームが相次ぐことになり、販売を終了しました。
「セキスイかわらU」の製造販売会社
「セキスイかわらU」を製造販売していた会社は、積水化学工業です。よく勘違いされる「積水ハウス」ではなく、「セキスイハイム」のブランドでビジネス展開している会社です。
セキスイハイムは鉄骨住宅メーカーであり、勾配のある屋根よりはフラットな陸屋根を建築することが多いので、実はセキスイハイムでは「セキスイかわらU」をそこまで多く取り扱ってはいません。
したがって、「積水ハウス」や「セキスイハイム」だから「セキスイかわらU」が屋根に使われているとは限りません。
「セキスイかわらU」は、「積水化学工業」から「積水屋根システム」という関連会社を経て、2013年9月に販売を終了。
現在は「セキスイルーフテック」という会社がアフターメンテナンスをおこなっています。
セキスイルーフテック
〒530-8565 大阪市北区西天満2-4-4(堂島関電ビル)
TEL: 06-6365-4188
FAX: 06-6365-4103
セキスイルーフテックの情報はこちら
ノンアスベスト屋根材の問題
「セキスイかわらU」だけではない問題を抱えたスレート屋根材
セキスイからわUの主成分は「セメント」です。
スレート屋根でよく登場するコロニアルやカラーベストも同質の素材です。
アスベスト含有の問題は、「セキスイかわらU」だけでなく他のスレート屋根も同様でした。
各屋根材メーカーはノンアスベストの屋根製品を開発し、販売することに舵をきります。
そのような背景の中、「ノンアスの屋根材」として真っ先に先陣を切って販売された屋根材が、積水化学工業の「セキスイかわらU」です。
残念ながら1990年8月以降に製造されたノンアスベストの「セキスイかわらU」は、従来の商品と異なり、アスベストのような力強い粘着性がありませんでした。
屋根施工後、数年で表面の塗装が剥離し、ヒビ割れが発生してしまう報告が相次ぐことになります。
過去の実績が全くない状況で販売されたため、十分な検証がおこなわれていなかったのでしょう。
しかし、「セキスイかわらU」はロングセラーでかつ大手化学メーカーの商品という安心感もあり、誰も疑うことなく革新的な屋根材として普及をすすめてしまいました。
この時期に販売されたスレート屋根材すべてに同様の症状が発生しています。
ニチハの「パミール」や松下電工の「レサス」、クボタの「コロニアルNEO」など、数えきれないほどの不具合報告商品がこの時期に製造されています。
「セキスイかわらU」類似商品も注意
「セキスイかわらU」と同質のラインナップ商品として「セキスイかわらcity」があります。
その他に、松下電工からナショナル瓦として慕われていた「ニューウェーブ」という商品があります。この2つの商品も「セキスイかわらU」と同様の問題を抱えており、販売中止に至りました。
アスベストが入っていない「セキスイかわらU」の上に登ってはいけない理由
問題があるスレート屋根の中でも「セキスイかわらU」の不具合報告は、特段多いです。
理由は「セキスイかわらU」には他のスレート屋根とは違って「空気層」があるからです。
ぜい弱で割れやすい素材である「セキスイかわらU」の裏側には「空気層」があるため、素人が屋根の上にのぼると簡単に踏み抜いてしまいます。
屋根の塗装やアンテナの取り付けなどの理由で屋根にのぼる機会があった際、「セキスイかわらU」は簡単に割れてしまいます。
その結果、「セキスイかわらU」の問題が瞬く間に世間に知れ渡ることになりました。
本当に大丈夫!? 「セキスイかわらU」のFRP屋根材によるリフォーム
最近多いFRPの屋根材で被せるカバー工法
最近、「セキスイかわらU」のフォルムで制作されたFRP屋根材(樹脂強化プラスチック素材の屋根)を用いた「セキスイかわらU」のリフォーム方法が流行しています。
古い「セキスイかわらU」の上にそのまま張ることができるので、屋根をはがすことなく簡単に補修ができます。
また、部分的に重ねることもできるので、劣化が進行している「セキスイかわらU」のみを対象に補修することが可能です。
費用がかからずお手軽に改修工事ができるので、どうやら「セキスイかわらU」を製造していた会社も推奨しているようです。
しかし、このFRP屋根材で改修することに、テイガクは全面的に賛成していません。
FRP屋根材を用いるリフォームをおすすめしない理由は大きく3つあります。
FRPの屋根材で補修をする3つのリスク
【デメリット1】屋根が重くなる
一つ目は、屋根が重くなることです。
すでに屋根カバー工法で古いコロニアルの上にセキスイかわらUを重ねて屋根カバー工法をしている人は、FRPの屋根を重ねてしまうと屋根が三重になってしまいます。
この状態では屋根が瓦屋根よりも重くなってしまい、耐震性に悪影響を及ぼします。
【デメリット2】ルーフィングを交換しない
二つ目は、ルーフィングを新しくする工事ではないことです。
ルーフィングとは屋根の防水シートのことです。
屋根の防水機能は、「屋根材」と「ルーフィング」の2つで機能します。
最終的に雨漏りから建物を守ってくれるのが「ルーフィング」です。
ルーフィングにも寿命があり、屋根のリフォームとはすなわち「ルーフィングを新しく貼りなおす」ことでもあります。
そのため、古いルーフィングに全く手を付けずに、FRPの屋根材を張る工事では、屋根の機能を維持させるという点においては不十分な行為です。
長く安心して屋根機能を維持させるためには、ルーフィングを新しくしなければ意味がありません。
【デメリット3】雨押え板金や軒先がそのまま
三つ目は、屋根本体部分にだけFRPの屋根材を被せて、それ以外の「雨押え部」「軒先部」「ケラバ部」はそのまま何もしないことです。
ルーフィング同様「雨押え部」「軒先部」は、FRPの屋根材を被せることができない部位なので、手を加えたくても加えられません。
なお、屋根本体よりも屋根と外壁が取り合う壁際の「雨押え部」の方が雨漏りは生じやすいです。
つまり、FRPの屋根材のカバー工法は、「セキスイかわらU」の上にFRPの屋根材を乗せただけであり、屋根本来の役割である「雨漏りさせない機能」の改善には、ほとんど期待できない工事であると言い換えられます。
「セキスイかわらU」のFRP屋根材を用いた補修については、
こちらの動画でも詳しく解説しています。
「セキスイかわらU」の塗装は無意味
アスベストが含まれていない「セキスイかわらU」に塗装をおこなう行為は無意味であり、お金の無駄遣いです。
部分的な補修も無意味だと思ってください。
時間の経過とともに補修をおこなっていない他の部位に不具合が生じるでしょう。
特に、塗装工事を中心に営業活動をおこなうリフォーム会社は、目先の利益を優先しがちです。
そのため、「塗装でメンテナンスをしておけば、ある程度、屋根は持つので心配ありません」。といったことを言う会社も存在します。
しかし、ノンアスベストの屋根の劣化進行を観察していれば、屋根の塗装が無意味なことはみなさんも容易に想像ができるはずです。
「セキスイかわらU」の正しいリフォーム方法
テイガクでは、「屋根の葺き替え」をおすすめしています。
工事方法としては、「屋根材を全て剥がす葺き替え工事」「古いアスベスト入りスレート屋根を残す葺き替え工事」(ただし、屋根の状態による)があります。
屋根材すべてを剝がす葺き替え工事
基本的に「セキスイかわらU」の改修は、古い「セキスイかわらU」を剝がして、新しい屋根材に張りなおすことが賢明です。
古い「セキスイかわらU」の下に更に「コロニアル(スレート屋根)」があれば、「コロニアル」も一緒に剝がして葺き替えをおこないます。
軽くて耐久性の高い金属屋根に張り替える工事をおすすめします。
屋根材と屋根材の下地である野地板(のじいた)、そしてルーフィングを新しくすることで40年以上の屋根の機能維持が期待できます。
長く安心してお過ごしいただけます。
古いアスベスト入りスレート屋根を残す葺き替え工事
建物が古く、残り20年程度、建物が維持できればよいと考える人も少なくありません。
古い「セキスイかわらU」の下に「コロニアル(スレート屋根)」がある場合、「コロニアル」はそのままにしてルーフィングを貼って屋根材を仕上げる屋根カバー工法で対処することも、屋根の下地状況が良好であれば施工が可能です。
アスベストが含まれているコロニアルの撤去・処分費用は高額なので、多額の費用をかけずに屋根をリフォームすることができます。
「セキスイかわらU」のアスベスト有無、3つの確認方法
リフォーム費用が大きく変わる
アスベストが含まれているかどうかで屋根のリフォーム費用が大きく変わります。
もちろん、「セキスイかわらU」自体の耐久性もアスベストの有無によって大きく変わります。
アスベストが含まれているか確認する方法3つご紹介します。
【確認方法1】製造年月日
「セキスイかわらU」の製造年月日でアスベスト含有の有無が確認できます。
したがって、いつ建物が建築されたかを調べることで、アスベストが含まれているかの判断材料にすることができます。
しかし、この方法を100%信用することはできません。
なぜなら、ノンアスベストの「セキスイかわらU」が販売停止になった時、まだアスベスト含有の規制が始まっていなかったからです。
戸建て住宅を建設した建設会社がアスベストを含んだ「セキスイかわらU」を在庫品として保持していた場合、当然、商品入れ替え前の(アスベスト含有品の)「セキスイかわらU」を屋根材として用います。
屋根材メーカーは商品入れ替えの際、旧商品を廃材として処分することはなく、在庫品を安くしてでも売りさばきます。
つまり、建築年月日でアスベスト入りかどうかを100%確定することはできないということです。
信じられないことですが、アスベスト規制が始まっている年月日にもかかわらず、アスベスト入りの屋根材が使われている屋根の現場を筆者は何度も目にしています。
アスベスト | 製造年月日 | 対処方法 |
---|---|---|
有り | 1970年から1990年8月以前 | 塗装などの定期的なメンテナンス 葺き替え |
無し | 1990年9月以降 | できる限り早期の葺き替え |
【確認方法2】目視
ノンアスベストの「セキスイかわらU」かどうかは、傷み具合を目視で確認する方法が一番簡単です。
下記のような状態であれば、ほぼノンアスベストの「セキスイかわらU」であると思ってよいでしょう。
【症状1】 屋根の表面が剥がれ、白い基材が露出している
【症状2】 屋根の表面に無数の亀裂がある
【確認方法3】ロット番号
最も間違いない方法がロット番号で確認する方法です。
「セキスイかわらU」の屋根の一番高いところである棟(むね)にはロット番号が刻印されています。
「X8510」など英語と数字の羅列が確認できます。
この刻印されたロット番号もしくは写真をセキスイルーフテックに問い合わせると、アスベストが入っているかどうか回答してくれます。
FAXでアスベストが含まれているかどうかの証明書を発行してくれます。
余談ですが、まれに「セキスイかわらU」のことをよく知る廃材業者から、アスベスト含有されていないことを証明する、メーカ発行の証明書の提出を求められることがあります。
【実例】テイガクによる「セキスイかわらU」改修工事
テイガクで「セキスイかわらU」を改修した現場を紹介します。
こちらでは、「セキスイかわらU屋根」を含む全ての屋根材を撤去し、「ガルバリウム鋼板製の瓦棒屋根」にリフォームしました。
【現場】大阪府の高槻市
【築年数】約50年
【ご依頼内容】16年前、既存の瓦棒屋根の上に「セキスイかわらU」をカバー工法で重ね葺き。「セキスイかわらU」の劣化進行に伴い、屋根を全面的に改修したい。
工事1
既存の「瓦棒屋根」と「セキスイかわらU」を撤去し、処分します。
工事2
新たに野地板と呼ばれる下地を張ります。
最初の瓦棒屋根から50年が経過しているため、既存の下地は劣化していました。
カバー工法で施工した「セキスイかわらU」の多くは下地が傷んでいるため、このような野地板張りが必要になります。
工事3
新しく瓦棒屋根を張り、工事完了です。
瓦棒屋根の素材はガルバリウム鋼板です。
50年前のトタンに代表される金属素材に比べて、耐久性やメンテナンス性で優れた素材です。
「セキスイかわらU」のリフォーム工事はテイガクにお任せください
「セキスイかわらU」に関するよくある質問
「セキスイかわらU」は裁判などをして被害の弁償をしてもらえる?
筆者の知る限り、裁判による被害者救済の情報は把握しておりません。
施工後10年以上経過した屋根にお住いの人は、メーカー保証および工事保証の期間が過ぎているため、メーカー側に対する期待の望みは薄いです。
「セキスイかわらU」の上にFRPの屋根材を被せる補修工事で屋根は長く維持するのか?
屋根の下にあるルーフィングを交換する工事ではないなので、屋根の機能維持という点では大きな期待ができないとテイガクでは結論付けています。
FRPの屋根材を被せるという工事は最近生まれた新しい工事であり、「セキスイかわらU」の過去を振り返っても、実績が不十分な工事のため、評価をすることが難しいというのが本音です。
「セキスイかわらU」のサイズは?
「セキスイかわらU」のサイズは1枚あたり幅991.5mm×高さ604㎜×厚み48㎜です。