「実質0円」は結局損をする?火災保険申請代行の儲けのカラクリ

瓦屋根が被災した様子の写真

自宅の屋根が風で被害にあった際、火災保険の利用を検討してください。
火災保険の利用については全く馴染みがないことなので、インターネットで火災保険の申請手続きについて調べる人が多いことでしょう。
おそらくこの記事を見ている方も、そのような方だと思います。

インターネットで火災保険について調べてると、「火災保険の申請だけに特化したウェブサイト」や「火災保険の申請に関するインターネット広告」を目にすることが多いです。
なかには火災保険の申請を代行することで、工事契約を結ぶことを目的とする業者も存在します。
行政機関や自治体は火災保険申請代行会社とよんでいます。

この記事では火災保険申請代行会社の火災保険ビジネスについて、屋根工事会社の視点から解説をします。

急増する火災保険トラブル

災害に便乗した悪質商法が増えています

住宅修理に関するトラブルが急増しています。
問題のある住宅修理業者や保険金請求代行業者(報酬金は支払われた保険金で対応できるという勧誘をしてくる業者)と契約することで、満足できる修理ができなかったり、高額な解約手数料を要求されたりするなどのトラブルに巻き込まれてしまう報告が多いです。

埼玉県による行政処分(業務停止命令6か月)の例

埼玉県は火災保険金の受取りを前提とした「雨どい修理」を訪問販売により行う2事業者に対し、行政処分(業務停止命令6か月)を下しました。
無料という虚偽の言葉を用いて消費者に対して勧誘活動をおこなっていたことや、クーリングオフに応じない迷惑解除妨害行為が問題として指摘されています。

消費者庁による行政指導の例

消費者庁は、住宅の修繕費用の補償に係る保険金申請代行や当該修繕等の役務を提供する5事業者に対し、特定商取引法に違反するおそれがある行為を行わないよう、行政指導を行いました。

トラブルが多い業者の傾向と特徴

POINT
  • 主体となる事業が建設業ではない業者(火災保険申請代行会社)

  • 火災保険についてばかり語る業者

  • 一般社団法人○○や○○サポート組合など公的な団体のような名称の業者

本来あるべき火災保険申請の姿

健全な保険請求の流れ

保険請求の流れはとてもシンプルです。
屋根修理業者から見積書をもらい、見積書と請求書類を損害保険会社に提出してください。
この流れが大前提であり、この通りに手続きをすれば何も問題になることはありません。

屋根修理業者から見積書をもらい、見積書と請求書類を損害保険会社に提出
屋根修理業者から見積書をもらい、見積書と請求書類を損害保険会社に提出

火災保険申請代行会社とは?

火災保険申請代行会社のビジネスモデル

火災保険申請代行会社は自社で修理をおこなわず、営業活動を主体としており、実際の修理は外注を通しておこなう会社が多いです。

火災保険申請の代行会社は自社で工事をおこなわず外注する
火災保険申請の代行会社は自社で工事をおこなわず外注する

火災保険申請代行会社の目的は?

火災保険申請代行会社の目的は、工事契約です。
基本的に火災保険申請代行会社は実際に工事をおこなわず、仲介業務を主体にしています。
そのため、屋根修理業者の費用に火災保険申請代行会社の利益を上乗せをした見積書を作成し、保険契約者経由で損害保険会社に請求する流れになります。
見積書の金額がそのまま損害保険会社から保険金として支払われた場合、屋根修理業者に支払う費用から差し引いた金額が火災保険代行会社の利益となります。

実はこの請求の流れ自体については、全く問題がありません。
なぜなら、火災保険申請代行会社をハウスメーカーに置き換えれば、同じ流れになるからです。

被保険者がハウスメーカーに屋根修理を依頼し、ハウスメーカーは下請けの屋根修理業者の費用に上乗せをして屋根修理見積書を作成します。

ハウスメーカーに屋根修理を依頼する構図と何も変わりがないということです。

それでは、何が問題なのでしょうか?
じつは大きな問題が2点あります。

火災保険申請代行会社の問題:その1

ひとつ目が工事品質です。
火災保険の申請は事実上、「保険申請」と「工事契約」が抱き合わせになります。
この抱き合わせ販売が問題の根源です。
そもそも、火災保険申請代行会社は屋根工事会社でもなく建設会社でもないことが多く、屋根工事に関する経験や知識が身についているのか疑問が残ります。
そのため、保険申請が望み通りに進み、いざ工事をお願いしようとすると、工事内容や工事品質、工事日などに不安が増幅するかもしれません。
工事に不安を感じ、契約解除をしようとすると、多額のキャンセル料金を請求されるかもしれません。
保険申請はエスカレーター式に工事契約になり、相見積もりなどの工事会社を比較検討する機会がごっそり抜け落ちています。
そのことのリスクはじゅうぶんに理解をしておきましょう。

火災保険申請代行会社の問題:その2

ふたつ目が高額請求です。

工事業者が作成する見積書の金額は定価というものがなく自由です。
原価20万円の工事を50万円で販売しても100万円で販売しても問題はなく、法律で制限はされていません。
原価20万円の工事を100万円で見積し、保険請求が通れば、仲介だけの労務で80万円の利益が得られます。
もちろん、保険申請と工事契約は抱き合わせなので、競争原理がはたきません。
保険金が高ければ高いほど利益が増えるので、火災保険申請代行会社はできるだけ高い金額を上乗せして保険請求をしたがります。

よく火災保険申請の広告に、「火災保険で200万円振り込まれました!」といった宣伝をみかけます。
200万円振り込まれたとしても、「その200万円はそっくりそのまま火災保険申請代行会社のものになるだけ」という事実について認識しておきましょう。
1円も被保険者の利益になることはなく、被保険者の保険をビジネスに利用されているだけに過ぎません。

社会的な責任が追及されるハウスメーカーや地域に根付いた工務店などは、あまりにも過度な請求は控えるでしょう。
しかし、良識や常識を欠き、利益だけを追求する会社であれば、平然と過度な請求をおこないます。
当然、保険会社と争うことになります。
結果的に保険金の支払いが遅れたり、満足できる保険金の受け取りができなくなったりします。

火災保険申請代行会社がなぜ急増しているのか?

火災保険申請代行会社が急増しています。
大きな理由は2つあります。

POINT
  • 競争原理がない状況で、工事契約を結ぶことができること

  • 下請け業者に工事を任せるだけで、利益を得ることができること

勧誘方法はさまざま

火災保険申請代行会社が勧誘をおこなう方法はさまざまです。
チラシやウェブ広告、ホームページ、訪問販売などがあります。
最近は業者紹介サイト(マッチングサイト)による勧誘も増えています。
以下のような宣伝を見たときは、火災保険申請代行会社かどうか見極めてください。

POINT
  • 「雨どいの歪みや屋根の修理が無料でできます!」といったチラシ

  • 「保険利用で200万円振り込まれました!」といったウェブ広告

  • 「火災保険の申請」についてばかり記載しているホームページ

  • 「お宅の屋根、今すぐ修理が必要ですよ」といって火災保険の話しを持ち掛ける訪問販売

  • 「火災保険の申請業務に詳しい屋根修理業者を複数社、紹介します!」といった紹介サイト

アイコン 新手の火災保険申請代行会社

火災保険にまつわるトラブルは火災保険の申請代行関連がほとんどであるにもかかわらず、火災保険の詐欺やトラブルなどの問題について取り上げ、非難をして集客を図る火災保険申請代行会社も存在します。年々、集客の手口が巧妙になっているように感じられます。

0円で屋根修理は損をする?

0円で屋根の修理ができるのであれば、それは素晴らしいことです。
しかし、屋根については、保険金の範囲内で修理をおこなわず、追加で費用負担をした方が賢明な判断であることが多いです。

2019年台風15号による瓦屋根の被災
2019年台風15号による瓦屋根の被災

たとえば、瓦屋根の一部がはがれて、被災し部分だけ直しても意味がないでしょう。
なぜなら、つぎに大きな台風がきた時、同じような被害にあう可能性があるからです。
部分修理に頼るのではなく、全面改修をしたほうが安心です。

屋根の被災にあわせて耐久性や耐風性、断熱性の高い屋根材に仕上げたり、外壁塗装や金属サイディング工事を屋根工事のついでにおこなったりすることをおすすめします。

まとめ

注意したい業者5つのポイント

こんな火災保険申請代行会社と屋根修理工事業者には注意をしましょう。

POINT
  • 保険対象(保険申請見積書)外の工事を引き受けない業者

  • 相見積もりに関して難色を示す業者

  • 実際の工事を他社にお願いする際、保険申請に関する手数料(キャンセル料)を請求する業者

  • 屋根材や防水シートなど実際の工事に関する提案力に欠ける業者

  • 工事内容より火災保険金の内容ばかり語る業者

火災保険申請に関する事実5つのポイント

火災保険申請に関する事実をまとめました。

POINT
  • 「火災保険で200万円もらいました」広告の200万円は被保険者の財布には1円も入らない

  • 被保険者の火災保険を利用してお金儲けをしようとする業者がいる

  • 保険会社へ過剰請求することでトラブルに発展する事例が増えている

  • 屋根工事業者に直接依頼をしない限り、屋根工事の品質は判断ができない

  • 保険対象の工事だけではなく、自己負担をかけてでも一度で済む屋根工事をおこなうことが賢明である

この記事を書いた人
著者 前川 祐介
前川 祐介 代表取締役社長
テイガク サイト制作責任者
宅地建物取引士
建築物石綿含有建材調査者
著者経歴

大阪府堺市生まれ。千葉県立船橋東高校→法政大学→サノフィ(旧アベンティスファーマ)株式会社を経て、父親が経営する板金工事会社である昭和ルーフリモ株式会社へ入社。
中央工学校夜間建築学科卒業。年間100棟以上の屋根と外壁工事に携わった経験を活かし、テイガク記事の執筆とユーチューブ動画撮影をおこなっています。趣味は日本史学。

運営会社

昭和ルーフリモ株式会社は2001年設立の板金工事会社です。
これまでの金属屋根と金属サイディング工事件数の合計は20,000棟を超えます。
板金工事は足場を組み立てるため、外壁塗装の工事事業にも注力しています。

国土交通大臣許可(般-25)第22950号
許可を受けた建設業:板金工事業/屋根工事業/塗装工事業 他

代表前川が本音で解説「板金工事会社とは?」

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