野地板とは、屋根材を固定させる下地材のことです。
木の板(野地板)を屋根全面に敷いて、その上にルーフィングと屋根材を敷いて屋根を仕上げます。
垂木とよばれる野地板を固定する木の棒に野地板は張り付けられます。
屋根裏に潜り込み、屋根裏の天井に板があれば、それは野地板です。
昔の屋根、中でも瓦屋根は「バラ板」とよばれる幅の狭い板がよく用いられます。
スレートや金属は、畳ほどの大きさである「構造用合板」を用いることが多いです。
この記事では、これまで20年以上経過した野地板の状態を1,000棟以上は確認をしてきた筆者が野地板の寿命と手抜き工事で見られる野地板の問題点を中心に解説をします。
野地板の役割
屋根材を固定させる
野地板は、屋根材が風で飛ばされないようにしっかりと固定させる役割があります。
最近の戸建て住宅では、構造用合板とよばれる耐震強度を高める板を野地板として用いることがほとんどです。
構造用合板は、屋根を安定的に固定させる本来の役割だけではなく、耐震性を高める機能もあります。
木の板はたくさんの種類があります。
野地板に適した板とそうではない板があるので注意が必要です。
野地板の機能比較表
板の種類 | 屋根材の固定(耐風性) | 耐震性 | 耐久性 |
---|---|---|---|
構造用合板 | 〇 | 〇 | △ |
バラ板 | 〇 | × | 〇 |
普通合板 | × | × | × |
コンパネ | × | × | × |
野地板の種類
質の悪い野地板を用いる”手抜き工事”に注意
野地板は主に「厚みが12㎜以上の構造用合板」もしくは「厚みが12㎜以上の杉のバラ板」を用います。
最近はバラ板が用いれることが少なく、構造用合板のサイズは畳と同じ910㎜×1820㎜のサイズで、従来のバラ板よりも手間がかからずに屋根全面に張り上げることができます。
大切なことは「構造用合板とよばれる種類の板」を用いることです。
板であれば何でもよいわけではありません。
たとえば、見た目がほぼ同じである普通合板は野地板に適していないです。
屋根では耐久性と耐震性の性能を兼ね備えた構造用合板を用いているか、必ず工事前に確認をしましょう。
野地板に適した板 〇
・構造用合板特類2級 12㎜ |
・杉バラ板 12㎜ |
・耐火野地板 |
野地板に適していない板 ×
・構造用合板特類2級 9㎜ |
・普通合板 |
・コンパネ |
構造用合板の見分け方
構造用合板は、構造用合板であることを示すスタンプが押されています。
JAS認定スタンプが押されているかどうかで見極めることができます。
コンパネと構造用合板の違い
コンパネとは、コンクリートパネルの略語です。
型枠合板ともよばれ、主にコンクリートを固める時の”囲い”に用いる板です。
見た目は構造用合板と同じベニヤ板です。
見た目が同じでコンパネがよびやすいこともあって、構造用合板のことをコンパネとよぶ職人さんも多く存在します。
しかし、屋根のような構造部に質の悪いコンパネを用いることはNGです。
普通合板と構造用合板の違い
構造用合板は基本的に針葉樹で硬くしっかりとした木材が用いられています。
普通合板は柔らかく加工がしやすい広葉樹が用いられており、内装用板材です。
コンパネと同様、価格が構造用合板よりも安いです。
そのため、普通合板やコンパネを野地板として用いている他業者の屋根工事を見かけることがあります。
普通合板と堂々と書き残している見積書を筆者は見たことがあります。
安物の不適切な野地板を用いる行為は、代表的な屋根の手抜き工事です。
9mm 厚の野地板はNG
分からないと思って9mm厚の構造用合板を用いる屋根工事業者、多いです。
材質だけではなく厚みにも注意を払ってください!
バラ板とは?
バラ板とは幅8~12㎝程度の幅が狭い板で、瓦の屋根の野地板としてよく用いられています。
「小幅板」や「荒野地」とも呼ばれています。
現代のように材木の成型加工技術が整っていなかった時代に用いられた荒材であるため、板のサイズがバラバラなのが特徴です。
昔の屋根はバラ板で施工がなされていましたが、構造用合板と比べて手間がかかるため、採用される頻度は少なくなっています。
バラ板は構造用合板と異なり、耐震性能を高めることができません。
バラ板のメリットは耐久性です。
板と板の間にすき間が生じ、そのすき間が通気効果をもたらせてくれるため、板の腐食が進みにくい特徴があります。
瓦の屋根が長寿命であることは、野地板がバラ板であるからとも言い換えることができます。
築50年以上経過した瓦の屋根であるにもかかわらず、バラ板が全く劣化していないといった現場を筆者は何度も目にしています。
最近は瓦屋根も含めて軽量化が進んでいるため、筆者は構造用合板よりも耐久性に優れたバラ板で屋根を仕上げることをおすすめしたいです。
建売系のハウスメーカーの中でもバラ板を採用している会社が一部存在し、そのような消費者が認知しないようなところにもこだわっている点は大きな評価に値すると思います。
耐火野地板とは?
耐火野地板は文字通り火に強い野地板です。
建築基準法で定められている準防火地域もしくは防火地域では耐火野地板の使用が義務付けられています。
耐火野地板は複数の種類があり、中でも「木毛セメント板」と「木片セメント板」がよく用いられています。ニチハの「センチュリー耐火野地板(センチュリーボード)」が有名です。
野地板の耐用年数・寿命
野地板の経年変化
野地板は半永久的に維持するものではありません。
野地板は経年と共に劣化が進行し、野地板の機能は低下していきます。
野地板の寿命は、野地板種類だけではなく、屋根材によっても変わります。
野地板の表面もしくは裏面に結露が生じにくい屋根材ほど、野地板の寿命は長くなります。
スレートやアスファルトシングル、金属屋根の野地板の寿命は、30~40年程度です。
なかでも断熱効果がない縦葺き金属屋根(トタン屋根)は、野地板の腐食が進みやすい傾向があります。
いっぽう、瓦屋根は40~50年程度です。
野地板の腐食を確認する方法
野地板は軒先から腐り始める傾向があります。
そのため、野地板の痛み具合を調べるには、屋根先を確認するとよいでしょう。
野地板の痛み具合を調べる方法は、3つあります。
1:屋根にのぼって確認する
野地板が傷んでいる場合、人の体重による負荷で野地板が沈む感じが得られます。
プロが屋根のうえにのぼれば、野地板の傷み具合を把握することができます。
2:室内側から確認確認する
屋根裏もしくは点検口から野地板の状態を確認することができます。
野地板から飛び出ている釘やビスから雨が入り込んで野地板を腐食させていることもあります。
3:野地板チェッカープレートを用いて確認する
野地板の劣化状況を簡易的な道具で調べることができます。
4:機械式の検査機を用いて確認する
費用がかかりますが、野地板の傷み具合を調べることができる機械があります。
公共工事などをおこなう時に用います。
ドローン調査は意味がない!
ドローンで屋根を空撮しても、意味は全くありません。
屋根の本当の状態は、屋根にのぼったり、屋根裏から点検したりしないと分かりません。
野地板が腐食するとどうなるのか?
野地板が腐食すると、屋根を固定する力がなくなります。
そのため、屋根が風ではがれやすくなります。
雨漏りを放置すると野地板はどうなるのか?
雨漏りを放置すると、野地板の腐食が進みやすくなります。
野地板の寿命を長くするには?
結露による水濡れ対策が有効
換気棟の取り付け
換気棟は屋根裏の熱と湿気を取り除く屋根に取り付ける部材です。
換気棟を取り付けることで、屋根裏を乾燥状態にさせることが可能になります。
湿気や雨漏りで野地板が濡れても、換気棟があることで野地板が乾きやすくなります。
居室の暑さ対策で換気棟を取り付ける人が多いです。
しかし、本来の換気棟の取り付けの目的は、野地板を長寿命化させることが目的です。
断熱材一体型の金属屋根を用いる
結露は野地板表面の温度と外気の温度差が大きいほど発生しやすくなります。
わずか1℃の温度差で、1㎡あたり500ccペットボトル約1本分の結露水が野地板表面に発生します。
断熱材一体型屋根のような断熱性能が高い屋根を用いると、野地板の結露を抑制することができます。
尚、この上に屋根材をかぶせると結露は止まります。これは下葺材と屋根材の間に空気層が出来て断熱効果が働くために、野地板が外気温の低下の影響を受けないからです。
よく下葺材施工後に漏水(実際には結露)が発生したが、屋根材を葺いたらと止まったというのはこのためです。
インシュレーションボードを用いる
インシュレーションボードは野地板と組み合わせて使用する下地材です。
野地板の耐久性や断熱性などを向上させてくれます。
大建工業から販売されている吸音性に優れた「ビルボード」や調湿性に優れた「エコヘルボード」が有名です。
インシュレーションボードは費用対効果が高い製品です。
屋根通気工法を採用する
野地板を2層構造にして通気層を確保することで、断熱効果と調湿効果を高められます。(屋根通気層工法)
野地板の価格
2022年、ウッドショックにより、野地板の価格が大幅に値上がりしました。
そのため、野地板の価格変動が激しいです。
1枚当たり、2,000円前後します。
5年前は1,000円程度でした。
野地板工事の平均価格
野地板増し張り価格 | 3,000円/㎡ |
野地板張り替え価格 | 4,500円/㎡ |
安すぎる野地板張り付け価格に注意をしてください。
構造用合板ではない板材で施工される可能性があります。
構造用合板は、普通合板やコンパネよりも値段が高いです。
葺き替え工事と野地板
葺き替えの目的は野地板の新設
以下は、屋根カバー工法と屋根葺き替え工事の主な工事工程です。
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ルーフィング貼り
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屋根材仕上げ
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既存屋根撤去
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野地板張り
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ルーフィング貼り
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屋根材仕上げ
築後40年が経過した屋根は野地板の劣化が一定以上、進んでいます。
40年以上経過したスレート屋根やトタン屋根に屋根カバー工法をおこなうことはできません。
古くなった野地板を新しくすることが屋根葺き替え工事の目的であるとも言い換えられます。
長期の屋根機能維持を期待している人は、野地板を新設する工事、つまり、葺き替え工事をおこなってください。
なぜ古い野地板を残して重ね張りするのか?
よくお客様から野地板の重さも気になるから、野地板をはがした葺き替え工事をしてほしいと言われることがあります。
たしかに野地板をはがすして野地板を1枚にすることで、屋根は軽くなります。
しかし、野地板をはがすことは、デメリットの方が大きく、できれば避けたいです。
野地板をはがすデメリットとメリットを取り上げます。
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屋根が軽くなる(耐震性能改善)
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急な雨の際、室内が水浸しになる
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はがして張り直すコストがかかる
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野地板を無理矢理はがすことで野地板を固定する構造材である垂木を痛めてしまう
野地板張り替えが必要な場合は?
野地板の腐食が進行し過ぎてしまうと、野地板増し張りではなく、野地板を張り替える必要があります。
まれに野地板を支える垂木までもが腐食していることがあります。
垂木が腐食している場合は、垂木を補強する必要があります。
もちろん、垂木を補強する工事は、野地板をはがさなければできません。
まとめ
本来、屋根のリフォームは葺き替え工事が望ましいです。
野地板を新しくできるチャンスは葺き替えの時にしか訪れません。
そのため、屋根を葺き替える場合は、屋根材とあわせて野地板を新しくさせましょう。
野地板で用いる板材は、構造合板12㎜以上の板材を用いてください。
予算の都合で屋根カバー工法をおこなう場合は、「換気棟の設置」「断熱材一体型金属屋根」の2点は検討して欲しい工事項目です。
新築時は構造用合板だけではなく、通気性能が確保できる耐久性が高いバラ板も検討をしてください。