目 次
閉じる破風板とは|位置・名称・鼻隠しとの違い
破風板とは

破風板(はふいた)とは、屋根の妻部(斜めになっている端の部分)に取り付ける板のことです。
破風板をつけることで屋根の内部に雨水が入り込むのを防ぐことができます。
また、火災が起きた際には、火が屋根裏へ燃え広がるのを防ぐ役割も果たしてくれます。

昔の木造住宅では破風板が取り付けられておらず、屋根の骨組み(垂木や母屋)がそのまま露出していました。
しかし、現代では火災や強風から家屋を守るため、破風板の設置が一般的になっています。
また、破風板に使われる素材も、かつて主流だった木材から、防火性能に優れたセメント系素材(外壁と同じ窯業系)が多く採用されるようになりました。
さらにリフォームの現場では、塗装による頻繁なメンテナンスの負担軽減のため、ガルバリウム鋼板を用いた板金巻きによる処置が広がっています。
破風板は傷みやすい

破風板(はふいた)は、その名の通り風の影響を受けやすい場所に設置されているため、特に劣化しやすい部位です。
そのため、塗装による定期的なメンテナンスが欠かせません(ガルバリウム鋼板で板金巻きをした場合を除く)。
また、強風によって板がずれたり、剥がれたりするトラブルもよく見られます。
鼻隠し(はなかくし)との違い

破風板(はふいた)と混同しがちな屋根の部材に、鼻隠し(はなかくし)があります。
どちらも屋根の端に取り付けられる板ですが、設置される場所と役割が異なります。
破風板は、屋根の端の傾斜になっている部分(妻側・ケラバ部)に取り付けられます。
一方、鼻隠しは、屋根の端の水平になっている部分(平側・軒先部)に取り付けられます。
屋根の骨組みを隠したり、雨どいを取り付ける土台としての役割があります。
部位 | 位置 | 露出度 | 劣化のしやすさ |
---|---|---|---|
破風板 | ケラバ部 | 完全露出 | 劣化しやすい |
鼻隠し | 軒先部 | 雨樋で隠れる | 劣化しにくい |
破風板の主な役割
防風・防水

屋根の端は風によるダメージが大きいです。
破風板があることで屋根の内部の木材が直接風雨にあたるのを防ぎ、結果として屋根を守ることに繋がります。
もし破風板が壊れたり、隙間ができたりすると、そこから雨水が侵入し屋根裏の木材が腐食したり、雨漏りが発生することがあります。
実際に筆者が兵庫県神戸市で経験した現場では、破風板の継ぎ目から雨漏りが発生し、外壁内部腐食を招いていました。
防火

破風板には、隣家などで火災が発生した場合、自宅への延焼を遅らせる効果があります。
かつては木製の破風板が一般的でしたが、防火に対する意識の高まりを受け、現在では建築基準法によって不燃材の使用が厳しく規制されています。
そのため、近年ではセメント系素材や金属製など、火災に強い素材を破風板に用いることで、防火性能のさらなる向上が図られています。
意匠性

破風板は、防火や防風の機能だけではなく、建物の見た目を美しく整える役割も持っています。
特に建物の中でも非常に目立つ位置に取り付けられているため、破風板ひとつで住宅の印象が大きく左右されます。
屋根のシャープなラインを際立たせたり、壁の色調と統一感を持たせたりすることで、家全体のデザイン性を高め、より洗練された外観に仕上げることができます。
写真は筆者が撮影した破風板です。
窓枠のモールのカラーと合わせ、少し明るいえんじ色で統一しています。
とってもおしゃれです。
最近は本物の木目のような木目調の破風板もあります。
破風板の素材別特徴と耐用年数
破風板には木やセメントなど様々な素材が用いられます。
それぞれの違い、特徴、メリット・デメリットなどをご紹介します。
破風板の素材 | 価格 | 耐久性 | 耐火性 |
---|---|---|---|
木製 | 〇 | △ | × |
セメント系 | 〇 | △ | 〇 |
ガルバリウム鋼板 | △ | 〇 | 〇 |
エスジーエル鋼板 | △ | ◎ | 〇 |
ケイカル板(軒天) | ◎ | × | × |
木質系破風板(杉・ヒノキ等)

木製破風板の特徴
木質系の破風板は昔の建物で多いです。
加工がしやすく、複雑な形状やデザインにも対応できるメリットがあります。
しかし、塗装が剥がれると木が雨に直接あたり、腐食してしまいます。
木製破風板の耐用年数は20年程度

木製の破風板の耐用年数はおよそ20年です。
ただし、5~10年ごとに定期的な塗装メンテナンスを行うことで、その寿命を伸ばすことが可能です。
一方で、木材は雨風によって劣化しやすく、摩耗や損傷を避けることは難しいです。
さらに現在では防火性能が求められるため、新築住宅で木製の破風板が採用されることはほとんどありません。
特に住宅密集地など隣家との距離が近い場合は、ガルバリウム鋼板による板金巻きを検討することを推奨します。
セメント系破風板

特徴
セメント系破風板(窯業系)は、セメントと繊維を主原料としています。
耐火性・耐久性に優れており、新築時に最も採用されている破風板の素材です。
耐火性はもちろん、木質系破風板に比べてメンテナンスの手間が少ないです。
しかしセメント系破風板は水を吸収しやすく、継ぎ目はシーリング頼りです。
また、風によるひび割れも生じやすいです。
耐用年数

セメント系破風板(窯業系)の耐用年数はおよそ20年です。
ただし、点検の目安は10年~15年で、必要に応じて再塗装やコーキングの補修をおこないます。
他の部位に比べて悪環境であるため、色あせや塗膜剥離が生じやすいです。
窯業系破風板メーカー一覧
日本の主な窯業系破風板メーカーには、以下のような会社があります。
窯業系破風板のメーカーと製品名
メーカー名 | 製品名 |
---|---|
フクビ科学工業株式会社 |
セミックス破風板シリーズ フクビ独自の配合技術により、耐候性の高さが特徴 |
ニチハ株式会社 |
アウティ 窯業系サイディングの トップメーカー 豊富なラインナップが魅力 |
ケイミュー株式会社 |
ウォールライン・光セラ(金具留め) 光触媒コーティング 「光セラ」を施し、 耐候性に優れる |
旭トステム外装株式会社 |
AT-WALLシリーズの幕板(破風板) フッ素を使用した破風板で 塗膜の変色保証15年付き |
金属系破風板(ガルバリウム鋼板など)

特徴
最も耐久性の高い破風板は、ガルバリウム鋼板に代表される金属系破風板です。
一般的には、木製の破風板の上から金属板を巻きつける「板金巻き」によって仕上げます。
ガルバリウム鋼板は高い防水性能に加え、非常に錆びにくい素材であるため、30年以上の優れた耐久性を発揮します。
リフォームでもよく行われる”破風板板金巻き”

すでに取り付けられている既存の破風板を保護するために、リフォームとして金属板で覆う方法もよく行われています。
木製破風板やセメント系破風板に板金を巻いて仕上げます。
金属系破風板の耐用年数は30年以上

金属系破風板は30年以上の耐用年数が期待できます。
一般的なメンテナンスは数年に一度の目視点検や汚れの拭き取り程度で、塗装の塗り直しなど大掛かりな作業はほぼ不要です。
ただし、板金技術を持たない工事会社が施工すると、仕上がりが美しくなかったり、施工不良が起こる可能性があります。そのため、施工する際は、建築板金を専門とする技術力の高い業者に依頼することを強く推奨します。
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テイガク公式 Youtube はこちらYoutube撮影者 テイガク 代表 前川祐介
ガルバリウム鋼板について
ガルバリウム鋼板はアルミニウムと亜鉛の合金でめっきされた鋼板のことです。
この特殊なめっき層が非常に高い耐久性をもたらします。
また、軽量であるため、屋根材や外壁材としても広く普及しており、建物全体の軽量化にも効果的です。
他の素材に比べてメンテナンスの手間が少ないため、長期的に見て費用対効果に優れています。
色やデザインのバリエーションも豊富で、モダンな住宅から和風住宅まで、様々なスタイルに合わせられます。
よくある手抜き工事

破風板に、本来使用が適さない軒天ボード(ケイカル板)や石膏ボードを取り付けている現場を時折見かけることがあります。
これは明らかな施工業者の手抜き工事です。
ハウスメーカーや工務店が施工現場で使われる材料を細部まで管理・チェックできず、下請けの外装業者が不適切な素材で施工したことを見過ごしてしまったのが原因です。
残念ながら、分譲住宅でもこのような不適切施工がなされています。
その結果、施工直後は問題なくても、10年や20年と経過するにつれて破風板にひび割れや亀裂、欠損などの重大な不具合が発生し、住宅の耐久性や美観を著しく損なうことになります。
破風板に使用する素材は、施工段階から適切なチェックが欠かせません。
破風板の劣化チェックリストとメンテナンス
破風板は風や雨によるダメージを受けやすい部分です。
定期的な点検や補修をおこなう必要があります。
破風板が劣化すると起こる3つのリスク
1:雨漏り・構造体の腐食

劣化によりできたひび割れや隙間から雨水が侵入し、屋根の中の木材が腐食しやすくなります。
また、雨漏りは天井や壁のシミ、カビの発生にも繋がります。
放置すればするほど修理費用が高額になる傾向があるため、早めの修理が重要です。
2:美観の低下

破風板の塗装剥がれやひび割れなどは、建物の印象を悪くしてしまいます。
せっかく綺麗な外壁や庭があっても、破風板がボロボロでは建物全体の美観が台無しになってしまいます。
3:火災時の延焼リスク

破風板があれば、もし隣の家で火災が発生しても、もらい火被害の延焼リスクを下げられます。
しかし、破風板が破損していたり、隙間があったりすると、防火の効果がなくなってしまいます。
破風板のメンテナンス方法
塗装

塗装は破風板の表面を保護し、防水性や美観を維持するために行います。
特に木質系破風板や窯業系破風板には必須のメンテナンスです。
塗り直しの目安としては5年から10年ごとが一般的です。
定期的な塗装は破風板の寿命を延ばし、劣化の進行を防ぐ上で最も基本的な手入れとなります。
板金巻き

板金巻きは、既存の破風板の上からガルバリウム鋼板などの金属板を巻き付けて覆う方法です。
板金巻きにより耐久性が向上し、塗装のように頻繁な塗り直しが不要になるため、人気の修理方法です。
長期的なメンテナンスコストを抑えたい方におすすめです。
交換

破風板の腐食やひび割れが広範囲におよんでおり、劣化がひどい場合には交換がおすすめです。
費用はかかりますが、新しい破風板に取り替えることで根本的に問題を解決することができます。
テイガクがおこなった破風板の工事例
実際にテイガクが施工した破風板の工事例をご紹介します。
工事前の状態から工事完了まで、写真とともに詳しく解説しております。
テイガクが撮影した破風板に関する動画
テイガクのYouTubeチャンネルでは、実際の施工現場から破風板について解説した動画を公開中です。
写真や文章だけでは伝わりにくい破風板の構造や役割などをわかりやすくご紹介しています。

破風板について解説した動画
金属系破風板の取り付け修理はテイガクへ
金属系破風板の取り付けや板金巻きつけは、金属に関して専門的な知識と技術をもっている建築板金職人だけができる工事です。
テイガクは建築板金専門の工事会社として、数多くの破風板工事を手掛けてまいりました。
長年の経験で培った経験と技術力で、お客様一人ひとりのご要望に合わせた丁寧な施工をお約束します。
破風板の取り付けから修理、交換まで、どんなことでもお気軽にご相談ください。
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テイガク公式 Youtube はこちらYoutube撮影者 テイガク 代表 前川祐介
よくある質問
破風板と鼻隠しの違いは?
破風板は屋根の妻側(屋根の傾斜がぶつかる三角の面)の端に設置される部材で、防風、防水、防火、美観維持の役割を担います。
一方、鼻隠しは軒先(屋根が水平方向に張り出している部分)の先端に設置される部材で、防水、美観の向上や雨樋の土台の役割があります。
どちらも屋根の端を守る役割がありますが、取り付ける位置と機能が異なります。
破風板のメンテナンス時期は?
破風板の素材によってメンテナンス時期は異なります。一般的な目安は以下の通りです。
木質系破風板: 5年~10年ごとに塗装
窯業系破風板: 10年~15年を目安に塗装やコーキングの補修
金属系破風板(ガルバリウム鋼板など): 20〜25年を目安に塗装
破風板の板金巻きとは?
板金巻きは、破風板にガルバリウム鋼板などの金属板を巻き付けて覆う工事方法です。
ガルバリウム鋼板の持つ高い耐久性や防錆性によって、その後のメンテナンスの手間を大幅に軽減できます。
破風板が劣化するとどうなる?
雨漏りや屋根内部の木材の腐食、美観の低下、火災時の延焼リスクが高まります。
これらのリスクを避けるためにも、早期の点検と適切なメンテナンスが不可欠です。
破風板を金属板で覆う「板金巻き」の改修工事を行うことで、耐久性・防水性・防火性が格段に向上し、長期間にわたって住宅の安全性と美観を維持することができます。
修理に足場は必要?
破風板は建物の高い所にあるため、原則として足場の設置が必要になります。
足場設置費用は修理費用の大部分を占めることもありますが、安全確保と確実な施工のためには必要な経費です。